ゴーギャンに夢中にさせるメトロポリタン!
アメリカのブランド美術館はどこも印象派およびポスト印象派の名作を数多く所蔵している。そして、いい絵はこうした大きな美術館に集まっているだけでなく、‘夢の美術館シリーズ’でとりあげたような中規模クラスの美術館にも画集に載っているものがしっかりおさまっている。このあたりがアメリカのすごいところで、多くのコレクターが蒐集した質の高い美術資産が公共のものとして一般市民に公開されているのは羨ましいかぎり。
以前NHKでMETを紹介する美術番組があり、アメリカのコレクター群像の一端を知ることができた。今は誰がどの印象派の作品を集中的に集めていたかは記憶がうすれているが、08年に行なった美術館めぐりではコレクターたちが熱い思いで集めた作品の数々を楽しませてもらった。
そのときはシカゴ美が最初の美術館で最後がMETだった。だから、シカゴ、ワシントンナショナルギャラリー、ボストンに比べてMETのコレクションでどの画家の作品がベストかがおおよそわかった。マネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホはどこにもいい作品が揃っているが、ゴーギャンについてはワシントンとMETが充実している。
ではこの二つでどちらに惹かれているかといえば、ズバリMET!その最大の理由はここにはゴーギャン(1848~1903)の全作品のなかで最も好きな‘アベ・マリア’があるから。それだけではない。もう2点、強力なのが控えている。‘昼寝’と‘赤い花と乳房’。そして、今年はさらに現在東京都美に展示されている‘水浴するタヒチの女たち’(拙ブログ10/13)がお好み画に加わった。
‘アベ・マリア’はイタリアルネサンスでお馴染みの聖母子画をみているよう。子どもを肩の上に載せている背の高い女性のやさしい顔が心をとらえてはなさない。一見すると平板な画面構成だが、じっとみていると広重の‘名所江戸百景’のように空間が奥に広がっていく。
4年前最も感激したのが‘昼寝’。顔のみえない女性が横座りのポーズでつくる対角線の動きにハットしたが、それ以上にびっくりしたのが横向きで寝そべっている女の赤い服。こんなに鮮やかな赤はこれまで見たことがない。200%震えた。
ファッション雑誌でもみているような気になるのが‘赤い花と乳房’。画面いっぱいに大きく描かれた二人のタヒチ女にはカリスマモデルの雰囲気があり、原始的で素朴なイメージという感じではなく冷たさのまじったエレガントさを漂わせている。
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