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2012.11.30

音楽が誘う絵画の世界! ショパン‘ポロネーズ英雄’

4510_2     ピアニスト 仲道郁代                ショパン

4509_2 アルトドルファーの‘アレクサンドロス大王の戦い’(1529年 アルテ・ピナコテーク)

4508_2     ダヴィッドの‘サン・ベルナール峠を越えるボナパルト’(1800年)

4506_2     ジェンティレスキの‘ユディットと待女’(1625年 デトロイト美)

4507_2     アングルの‘ジャンヌ・ダルク’(1851~54年 ルーヴル美)

クラシックで‘英雄’というとまずはベートーベンの交響曲3番を思い浮かべる。でも、ショパン(1810~1849)が大好きな方は♪♪‘ポロネーズ変イ長調 英雄’のほうが先かもしれない。ベートーベンの英雄が国家元首が亡くなったとき国営放送が終日流す音楽というイメージがあるのに対し、ショパンの英雄はじつに華やかな表現でなにか憧れの存在をみせつけるという感じ。

絵画の世界では英雄を描いた作品は沢山ある。最も多いのはギリシャ神話に登場する英雄、ヘラクレス、ペルセウス、アキレウス、またアマゾンという女傑も描かれる。では、歴史画にでてくる英雄は誰れか?すぐ思いつくのはアレクサンドロス大王。

印象深い絵が2点ある。ナポリ考古博にある大きな‘アレクサンドロス・モザイク’(拙ブログ9/3)と南ドイツで活躍した画家アルトドルファー(1480~1538)が描いた‘アレクサンドロス大王の戦い’。30年くらい前に訪問したミュンヘンのアルテ・ピナコテークで唖然としてみていたのがアルトドルファーの絵。

つい最近、BS朝日の‘世界の名画’でこの画家にスポットを当てていた。当時、画面に描き込まれた兵士の数の多さと上空の青の輝きに圧倒され、中央に描かれているアレクサンドロスをはっきりとみてない。だから、この美術館を再訪する機会があれば、敗走するダレイオス3世ともどもしっかり目にやきつけようと思う。

このマケドニアの王よりもっと強烈に英雄のイメージが心に刻み込まれているのがナポレオン。ダヴィッド(1748~1825)の‘サン・ベルナール峠を越えるボナパルト’ほど見栄えのする英雄の絵はない。ナポレオンが実際には驢馬に乗って峠を越えたことをダヴィッドは百も承知だが、まさか英雄を驢馬に乗せて描くわけにはいかない。
当然本当のようなウソをつく。腕が確かだから神のようなナポレオンを描く専属画家に選ばれた。ダヴィッドも演出が必要なことくらいはわかっている。

カラヴァッジョ派のジェンティレスキ(1593~1653)は西洋絵画史上最強の女流画家、敵軍の司令官ホロフェルネスの首を切り落とし祖国を救ったヒロイン、ユディットを描いたこの作品はいつかみたいと願っている一枚。Bunkamuraがデトロイト美展を開催してくれそのなかにこの絵が入っていることを勝手に妄想している。

ジャンヌ・ダルクは見た目はか弱い女性だが、戦場にでると男以上の働きをする。アングル(1780~1867)の絵をみると強い意志の持ち主であることが充分に伝わってくる。

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2012.11.29

脳が本気になるモディリアーニの絵!

4502_2     ‘青い瞳(ジャンヌの肖像)’(1917年 フィラデルフィア美)

4503_2         ‘少女の肖像’(1918年 アサヒビール大山崎山荘美)

4504_2         ‘ネックレスの女’(1917年 シカゴ美)

4505_2         ‘女の肖像’(1917~18年 クリーブランド美)

TV局が制作する美術番組をみるのは大リーグ中継とともに日常生活における大きな楽しみ。だから、年間を通してみるとかなりの数をみている。定番は‘日曜美術館’と‘美の巨人たち’、そして昨年からはこれにBS各局の番組が加わった。最近はなくなったがBSプレミアムの‘極上美の饗宴’と‘美の浪漫紀行’(BSジャパン)、そして今も残っている‘世界の名画’(BS朝日)などなど、、

そうした番組のなかにはすごく刺激的な内容のものがときどきある。今年2月に放送された‘極上美の饗宴 モディリアーニ’に出演した脳科学者茂木健一郎さんがとてもおもしろい話をしていたので、今日はそのことを少し。

モディリアーニ(1884~1920)の絵が好きな茂木さん、われわれの脳は一体どのように美しいと感じているか?その秘密を研究している。茂木さんはこんなことを言っている。

‘モディリアーニの形の強度は絵画史上でも特筆すべきユニークな痕跡を私たちの脳に残す。顔を前にして脳はいわば本気になる’

‘人間の脳は生身の人間が目の前にいなければ本気にならないということがわかっている。おもしろい事例だと、アメリカの子どもに中国語の発音を教えようとしてもビデオをみせてもなかなか覚えなくて、実際に中国人の先生が前にいると脳が本気になり発音を覚えることが研究でわかっている’

‘モディリアーニの絵は生身の人間が目に前にいるのではないのに、まるで実際にそこにいるかのように強い生命感を感じさせるように思える。そういう意味で目の前に生身の人間がいるかのように脳が本気になる絵ではないかと思っている’

この中国語の発音の話はよくわかる。目からうろこが落ちた感じ。知識の習得でも物づくりの技術の修練でも学校の先生や職場の上司や先輩から直接教えてもらうほうがやはり理解が早く腕が上達する。中学校の英語の授業でのこと、先生は
‘明日 tomorrow’は‘明日は雪が積ろうか’と覚えるんだよと教えてくれた。このときのことを今でも鮮明に思い出す。

モディの描く女性はうりざね顔で首は長く、そして極端ななで肩と随分デフォルメされた姿になってはいるが、ちゃんと生身の人間が目の前にいる感じがしとても惹きつけられる。脳がまさに本気になっているのだろう。

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2012.11.28

もっと見たいモディリアーニの名画!

4501_2     ‘ポンパドゥール夫人’(1915年 シカゴ美)

4500_2     ‘バラ色の裸婦’(1917年 個人)


4498_2     ‘黒いネクタイの女’(1917年 個人)     

4499_3          ‘ジャンヌ・エピュテルヌ’(1918年 個人)

先月BSプレミアムのアーカイブという番組でみた‘モディリアーニ物語 生きた 描いた 愛した’(08年制作)が大変おもしろかったので、またモディリアーニ熱に火がついた。

好きな画家の作品の追っかけは同時並行的に進行しており、陸上のトラックレースのようなもの。ゴールのテープに近づいている画家がいる一方で、作品と出会うペースが遅くまだ第一コーナーあたりにとどまっている画家もいる。

モディは真ん中を少し過ぎたところかなという感じ。だから、みたい絵がまだいくつも残っている。そのなかでブランド美術館にあるものは訪問計画が実行に移ればみることができる。それが4点ある。
‘ポンパドゥール夫人’(シカゴ美)
‘新郎新婦’(NY MoMA 拙ブログ12/8/16
‘ジプシー女と赤ん坊’(ワシントンナショナルギャラリー 12/7/26
‘農家の少年’(ロンドン テートモダン)

4年前名古屋市美でとても立派なモディの回顧展(08/5/19)が開催されたが、残念なことに‘農家の少年’は巡回したほか会場の展示で会えなかった。そして、10年に現地を訪問したときも飾ってなかった。どうもついてない。

もう3点はみな個人の所蔵するものだから、夢のままに終わる可能性も高い。でも諦めたらすーっと消えていく。で、また何年かしたら回顧展に遭遇しいいことがあるかもしれないと思うことにしている。

心のなかで決めている順番で並んでいる。モディの裸婦像は魅力にあふれている。最も引き込まれているのが‘バラ色の裸婦’(ミラノ)とシュツッツガルトにある‘横たわる裸婦’。

‘黒いネクタイの女’もみたくてたまらない一枚。一つの美術本にはこれが東京のフジカワギャラリーの所蔵となっているのだが、現在もそうなのかわからない。日本には名古屋市美蔵の‘おさげ髪の少女’とか‘アレクサンドル博士’(東京富士美)などいい絵が結構あるから、このすばらしい絵が東京の画廊にあっても不思議でもないが、果たして?

モディは愛するジャンヌの肖像を20点以上描いているが、これまでみたのは9点ほど。ベルン在住のコレクターが所蔵する瞳のある‘ジャンヌ・エピュテルヌ’も一度みてみたい。

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2012.11.27

音楽が誘う絵画の世界! ドビュッシー‘牧神の午後への前奏曲’

4497   フルート奏者のエマニュエル・パユ          ドビュッシー

4494     コローの‘マチネー、ニンフの踊り’(1850年 オルセー美)

4495     ルーベンスの‘サテュロスとニンフ’(部分 1638年 プラド美)

4496     コレッジョの‘ヴィーナス、サテュロス、キューピッド’(1526年 ルーヴル美)

日々の暮らしのなかでクラシックを聴く頻度は以前に比べるとだいぶ少ない。大きな違いは長い交響曲を最初から聴くことがなくなったこと。で、もっぱらピアノソロなど短い曲が中心になっている。今日とりあげるドビュッシー(1862~1918)の♪♪‘牧神の午後への前奏曲’もときどき聴いている。

この曲は昨日の‘交響詩モルダウ’同様、フルートの美しい音色が心の響く作品。現在、最も人気のあるフルート奏者はベルリンフィルにいるエマニュエル・パユ、大変なイケメンで1970年ジュネーブ生まれの42歳。ジュネーブは若い頃住んでいたことがあるのでこの才能豊かなパユには親近感を覚える。

この人のフルートで聴く‘牧神の午後’はもう最高!夢うつつの牧神(パン)の前方には水浴する白い妖精がいるようないないような、こういう静かで幻想的な世界につつまれて心がザワザワするような夢をみてみたいが、実際はどうしてあの人がでてきたの?というような変な夢ばかり。

この曲を聴いてイメージする絵はコロー(1796~1875)の‘マチネー、ニンフの踊り’。ここにいるのは純粋無垢な乙女たち。ところが、ギリシャ神話に登場するパンは上半身人間&下半身山羊のハイブリッド野獣、仲間のバッカスの従者サテュロスやシレノスと変わることなく好色の獣。女とみれば欲望丸出しで突進していく。

だから、音楽で表現された‘牧神’のイメージと絵画に描かれた世界とはまったくちがう。ルーベンス(1577~1640)の絵でもコレッジョ(1489~1534)の絵でもパンやサテュロスはまさに美女と野獣といった感じ。ドビュッシーの書いた曖昧でぼやっとした旋律がパンの野獣のイメージを消しているのがとてもおもしろい。

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2012.11.26

音楽が誘う絵画の世界! スメタナ‘交響詩モルダウ’

4489_2      フルート                            スメタナ

4490_2     ホーマーの‘カヌー下り’(1897年 ボストン フォッグ美)

4491_2     シスレーの‘モールジーのダム’(1874年 スコットランド国立美)

4492_2        ホードラーの‘森の小川’(1902年 スイス ソレール美)

4493_2     コローの‘緑の岸辺’(1865年 ワシントンナショナルギャラリー)

クラシックCDの中には演奏時間があまり長くない名曲をいろいろ集めたものがある。販売促進のためにはネーミングがとても大事、そこで‘元気のでるクラシック名曲選’とか‘癒される名曲20選’とかちょっと買ってみようかなという気にさせる名前がついている。

この癒し系名曲の定番のひとつがチェコの国民的作曲家スメタナ(1824~1884)がつくった♪♪‘交響詩モルダウ’。チェコの首都プラハは9年前訪問し、この街を流れる母なる川、モルダウ川をみた。これがあのモルダウ川かという感じで、自然に哀愁を感じる交響詩のメロディを口ずさんでいた。

この曲、出だしのフルートの奏でる旋律がとても耳に心地いい。スメタナは音楽で川の流れを表現しており、フルートとそれに続くクラリネットが二つの源流のせせらぎを奏でる。そして、これらの支流は合流し森や緑の牧草地を通りぬけ、チェコの南から北へと流れていく。

川やそこに架かる橋を描いた風景画は沢山あるが、川の流れをリアルに表現した作品はそう多くはない。そのなかで動きのある海洋画を得意としたホーマー(1836~1910)の描いた‘カヌー下り’はお気に入りの一枚。流れの激しい川の真ん中にカヌーを描く構成がなんともいい。

シスレー(1839~1899)の絵は5,6年前Bunkamuraであったスコットランド国立美展で遭遇した。穏やかな印象派らしい風景画を描くシスレーにしては珍しい激しい水流をとらえた絵なのでしっかり目に焼きついている。

川の源流の景色がよく伝わってくるのがホードラー(1853~1918)の作品。これは08年オルセーであった回顧展でみたのだが、高い木が林立するなかきよらかな水がごつごつした大きな石の間を滑るように流れていく様が見事に描かれている。

コロー(1796~1875)には川の絵がいくつもあるが、川の流れを一番感じるこの作品に最も惹かれている。これはワシントンのナショナルギャラリーの所蔵。現地と西洋美であったコロー展(08年)と2度みる機会があった。

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2012.11.25

音楽が誘う絵画の世界! マーラー‘交響曲5番 アダージョ’

4484_2     ヴァイオリン                ハープ

4486_2        クノップフの‘見捨てられた町’(1904年 ベルギー王立美)

4485_2     ベックリーンの‘死の島’(1880年 メトロポリタン美)

4487_2     ホイッスラーの‘青と銀色のノクターン’(1872年 テートブリテン)

4488_2     ムンクの‘月の光’(1895年 オスロ国立美)

クラシックとのつきあいは人夫々。小さい頃から父親の影響などで家にクラシックがいつも流れていた人と違って、クラシックを聴く機会といえば学校の音楽の時間とかNHKで10分くらい流れるクラシックアワーくらいのものだった。だから、クラシックへの耳の反応はごく普通。

その状態に変化が起こる契機となったのが社会人になってから聴いたマーラー(1860~1911)の交響曲。クラシックの本を読みアバド、ショルテイ、ハイティングらが指揮した有名な演奏が収録されたCDをあれこれ集めた。以来、ずっとマーラー愛好が続いている。最も好きなのは5番!もう耳にたこができるくらい聴いた。

この5番で何か別の曲が入ってきたのではと思わせるのが弦とハープのために書かれた第4楽章の♪♪アダージョ。このアダージョというとマーラー好きの方はこれが使われた映画‘ベニスに死す’(1971年 ルキノ・ヴィスコンティ監督 トーマス・マン原作)を条件反射的に連想するにちがいない。

この映画をみてからもうだいぶ時間が経つのでどういう話の展開だったか記憶がうすくなっているが、びっくりするくらい美しい若い男性がでてきたことは今でもよく覚えている。どうでもいいことだが、2年前ロンドンの地下鉄でワイワイしゃべっている高校生のグループのなかに映画に登場した人物を彷彿とさせるような子がいた。別にそういう趣味はないのだが、ヨーロッパを旅行していると女の子のような綺麗な顔をした男の子にときどき出会う。

この♪♪アダージョの曲想は映画のイメージとダブっているので、思いつく絵画も死の観念とか滅びの美学をテーマにした象徴主義や表現主義の作品が多い。その代表がクノップス(1858~1921)の‘見捨てられた町’とベックリーン(1827~1901)の‘死の島’。クノップスの絵は昨年ベルギー王立美を再訪したときリカバリー作品のリストに入れていたのに、またしても会えなかった。この画家とはどうも相性が悪い。

アダージョのかもし出す不安や苦悩の心情を少し和らげると、ホイッスラー(1834~1903)の静謐で幻想的な‘青と銀色のノクターン’とかムンク(1863~1944)の‘月の光’といった作品が目の前をよぎる。いずれの絵でも描かれるのは暗い海や川。その退廃的で甘美さの漂う光景が心の奥底のひだにまで溶けていく。

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2012.11.24

白鵬 4場所ぶり23度目の優勝!

4483大相撲九州場所は今日横綱白鵬が鶴竜を破り13勝1敗とし、4場所ぶりに優勝を決めた。

これで白鵬の優勝回数は23回となり貴乃花の22回を抜いた。

ここ2場所は日馬富士に連続全勝優勝され白鵬時代も下り坂かなと思わせたが、この優勝でまた強さを発揮して賜杯を手にする回数をさらにのばしていくような気がしてきた。


歴代の強い横綱の優勝回数は次の通り(カッコの数字は全勝優勝)。
① 大鵬      32(8)
② 千代の富士 31(7)
③ 朝青龍    25(5)
④ 北の湖    24(7)
⑤ 白鵬      23(8)
⑥ 貴乃花    22(4)

新横綱日馬富士は11日目から4連敗で9勝5敗、明日は白鵬がモンゴル人の絆に配慮して力を入れないだろうから10勝はできるが、横綱の成績としては期待はずれ。でも、これは2場所勝ち続けたことの反動。勝ち疲れというやつ。心配することはない。年が明け横綱の地位に慣れてくればまたあのスピードと技のキレがもどってくる。

大関陣は琴奨菊と琴欧洲がカド番を脱出したが、把瑠都は序盤に負傷し来場所は関脇に陥落する。大関には昇進したものの存在感がないのが鶴竜、もともと地味な力士だがもっと力強い相撲をとらないとファンの期待を裏切ることになる。

10勝した稀勢の里は顔だけみると横綱の風格だが、まだ安定して白星を積み重ねられない。来年は優勝してくれるとは思うが、どうだろうか?

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2012.11.23

音楽が誘う絵画の世界! マーラー‘交響曲1番 巨人’

4478_2     コントラバス                    マーラー

4481_2     プッサンの‘日の出を探し求める盲目のオリオン’(1658年 メトロポリタン美)

4479_2     ベックリーンの‘オデュッセウスとポリュフェモス’(部分 1896年)

4482_2     ルドンの‘キュクロプス’(部分 1914年 クレラー=ミュラー美)

4480_2         レーニの‘勝ちほこるダヴィデ’(1603~04年 ウフィツィ美)

マーラー(1860~1911)の交響曲で聴く回数が多いのは1番、2番、5番、9番、今日はその1番の巨人。この曲はマーラーの曲のなかでは短いほうだから、マーラーが聴きたくなったときは耳が寄っていく。

最も耳に馴染んでいるのが第3楽章のコントラバスが奏でる♪♪物憂く葬送風のメロディ、これはまさに巨人が暗闇のなかをのっしのっしと歩いていくイメージ。とても重々しく恐怖心を駆り立てられる、ここはしばらく物陰に隠れてこの怪物が通りすぎるのを待つしかない。

巨人を描いた絵ですぐ思いつくのはプッサンの‘日の出を探し求める盲目のオリオン’。小さい頃は巨人というと条件反射的にガリバーをイメージした。そして、絵画をみるようになって最初に出会った巨人はゴヤの‘巨人’。だが、この絵は3年前ゴヤの作品ではなく、ゴヤの弟子が描いたことがわかった。

プッサン(1594~1665)の盲目の巨人オリオンは4年前、METであった大プッサン展でお目にかかった。見上げるような大きさだった。この場面は目を潰されたオリオンが道案内の少年を肩に乗せて視力をとりもどすため日の出を求めて出かけるところ。

ベックリーン(1827~1901)の絵も目に焼きついている作品、気持ちよく眠っていたのにオデュッセウスに目を突き刺されたポリュフェモスは怒り狂って大暴れ、島を脱出しようとするオデュッセウスたちの乗った船にめがけて大きな岩をぶん投げている。

ポリュフェモスと比べればルドン(1840~1916)の描く一つ目巨人のキュクロプスはやさしいもの。裸で眠るガラテイアに恋し、何度もアプローチするが相手にされない。まあ、一つ目では仕方ないか、高望みというもの。

レーニ(1576~1642)が描いた‘勝ちほこるダヴィデ’はウフィッティとルーヴルでみた。石の台におかれたゴリアテの顔の大きいこと!ダヴィデは‘おいらもデカイことをやっちまったよ、どうだいこんな巨人を倒したんだぜ、今頃足が震えてきたよ’といっているかもしれない。

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2012.11.22

黒田 ヤンキースと再契約!イチロー、藤川、中島はどこへ?

4477今年16勝をあげた黒田がヤンキースと再契約した。

年俸は約12億3千万円、この金額は日本人選手ではイチローに次ぐものであり、大リーグにおけるトップクラスの投手の仲間入りを果たした。

黒田は今年37歳、普通ならその野球人生は下り坂になるところなのに、逆にさらに進化をとげ高い評価をかちとった。典型的な大器晩成物語である。

さて次はイチローの番、おそらくヤンキースに残留するのではなかろうか。移籍後3割の打率を残したことやポストシーズンでの走攻守の働きを勘案すれば、ヤンキース球団も年俸は6億、打順は1,2番、左投手のときも交代はなし、といった条件を提示するにちがいないし、イチローはこれを受け入れると思う。

あと残っているのは川崎(マリナーズ)と上原(レンジャーズ)、川崎は打撃の非力さが評価を下げているが、来春のキャンプではどこかのチームの招待選手としてお呼びがかかるだろうからそこでがんばればいい。打撃の感触も一年やってつかめているので、今年よりは打てるはず。そして、上原もそのうち新チームが決まるだろう。

来年新たに大リーグに挑戦する選手で注目の的は阪神のストッパー藤川と西武の中島。藤川は数球団が関心を示しているというから、いい条件で入団する可能性が出てきた。本命はドジャース?中島は期待の選手だが、どこに入るのだろうか?

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2012.11.21

音楽が誘う絵画の世界!サン・サーンス‘動物の謝肉祭 白鳥’

4472_2       チェロ                    サン・サーンス

4473_2            デルヴォーの‘レダ’(1938年 ロンドン テートモダン)

4476_2         ダリの‘レダ・アトミカ’(1949年 フィゲラス ダリ劇場美)

4474_3        ソドマ派の‘レダと白鳥’(1505年 ローマ ボルゲーゼ美)

4475_2     アセレインの‘威嚇する白鳥’(17世紀前半 アムステルダム国立美)

サン・サーンス(1835~1921)が作曲した組曲‘動物の謝肉祭’は知らなくても、チェロ独奏曲としても演奏される♪♪‘白鳥’といえば、ああーあの美しいメロディねと相槌ちを打つ人は多いかもしれない。チェロの曲としては最も愛されている音楽ではなかろうか。

心を静めて聴いていると広い湖の水面を一羽の白鳥がゆっくりと進んでいる景色が目に浮かんでくる。こういう珠玉のメロディが流れてくると脳から放出されるα波がじわーっとでてきていることはすぐ実感できるからいい気分になるのも速い。音楽療法でどんな曲が使われているのか詳しくないが、この‘白鳥’ほど心の安寧をもたらす曲はないかもしれない。

白鳥が描かれた絵ですぐ思いつくのはギリシャ神話の‘レダと白鳥’。ゼウスはお気に入りの女性を見つけると得意の変身術を使って動物になりすまし、美女に近づいていく。レダへのアプローチに使った手は美しい白鳥。白鳥だと警戒心をもちようがないからレダはすぐアウトになる。

最初にみた‘レダと白鳥’はダヴィンチの影響をうけた人物が描いたもの。これはローマのボルゲーゼ美に飾ってあった。何年か前この美術館の所蔵品が日本にやって来たときにも確か展示されたような気がするが?

デルヴォー(1897~1994)の‘レダ’はもう長いこと対面を願っているのにまだ縁がない。これまでテートギャラリーのとき1回、そしてテートモダンになってから2回と都合3回足を運んだのにまったく姿をみせてくれない。こういうときは心が折れる。

ダリ(1904~1989)が妻のガラをモデルにして描いた‘レダ・アトミカ’もとても気になる絵。フィゲラスにあるダリ劇場美を訪問する計画は一応あるのだが、当面のスケジュールのなかでは優先順位はあがってこない。

サプライズの絵はアムステルダム国立美にあるアセレイン(1610~1652)の‘威嚇する白鳥’。これは動物画としては異色の作品。画面のなかから興奮した白鳥がとびだしてきそうで思わずのけぞった。

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2012.11.20

美術に魅せられて! ‘目学問’のススメ

4470_2     ヴァイオリニスト 加藤知子

4471_2     ロンドン コートールド美

3ヶ月前、NHKの総合でコロンビアビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授が慶応ビジネススクールで行った講義を放送していた。講義のテーマは今年の2月にEテレ(拙ブログ2/13)でみたのと同じ‘選択の力’。そのなかに興味深い話がでてきたので今日はそのことを。

教授によると‘1万時間の法則’というのがあるそうだ。音楽家の練習時間と成功の達成度には相関関係があるという。
2000時間→優れたアマチュア
5000時間→音楽教師
10000時間→一流音楽家
これは実際に音楽家から統計をとって得られたことらしい。

ヴァイオリンでもピアノでもプロのレベルに到達するためには1万時間以上の練習を必要とし、一流の人たちは練習、練習に明け暮れるすさまじい日々をおくっているのである。

この話を絵画鑑賞に置き換えて考えてみた。絵画でも彫刻でもやきものでも美術品の美しさや味がわかるようになるためには、音楽家と同じように多くの作品をみることが欠かせない。とにかく豊富な視覚体験が作品をみるのに役立つのである。

美術関係の仕事についてない人間が美術品をみる力をつけるにはどうしたらいいか、それは限られた時間の使い方次第で決まる。仮に毎日仕事が終わって美術にとれる時間が1時間あるとする。そのうち美術本に載っている図版をながめるのに50分使う。そこに書いてある解説文を読むのはせいぜい10分までとする。

この方法を耳学問にならい勝手に‘目学問’(My造語)と呼んでいる。要するに知識を過剰に頭のなかに詰め込まないで自分の視覚体験をもとに美術のすばらしさの真髄に迫ろうという姿勢である。だから時間はかかる。解説なしで作品をながめるだけだから、西洋絵画の宗教画や歴史画、そしてシュルレアリズム、抽象画では一体何が描かれているのかわからないことが沢山でてくる。でもそれは気にしないで、画面構成、色使い、描写の精緻さ、画面の大きさ、絵肌の具合をしっかりみる。

もちろん、これは美術品の間接体験で本物をみているのとは違う。でも、間接体験でも貴重な視覚体験なのであり、本物の前に立ったときに脳にインプットされた図版の数々がいろいろなシグナルを送ってくれる。本物を体験し、その時味わったイメージや感動を体内につつみこみ、そのあとは購入した図録やポストカードでその感動をリフレインし続ける。このサイクルを繰り返すことでその作品にまつわるお話は知らなくても名画のほうから語りかけてくれるようになる。

美術館へ出かけ本物に接するときでも解説文を読むのに時間を使わず、この‘目学問’に徹するほうがいい。気に入った作品があれば全神経を集中させ‘見るぞ!モード’を全開させ、一番惹きつけられたこと、例えば色とか構図とか、タッチの細やかさとかを目に焼きつける。

美術品とはこの方法で長年つきあっている。美術鑑賞はロングレンジの楽しみ。それまでわかんなかったことが何かの拍子で腹にストンと落ちることもある。この‘目学問’、長い目ではとても役立つ。

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2012.11.19

音楽が誘う絵画の世界! ムソルグスキー‘展覧会の絵’

4466_3   トランペットが奏でるプロムナード         ムソルグスキー

4467_2  ロベールの‘1796年のルーヴルの改造計画’(部分 1796年 ルーヴル美)

4469_2  テニールスの‘レオポルト・ヴィルヘルム大公の画廊’(1651年 ウィーン美術史美)

4468_2  パンニーニの‘現代ローマの景観図の画廊’(1759年 ルーヴル美)

ロシアの作曲家ムソルグスキー(1839~1881)がつくった組曲‘展覧会の絵’は好きなクラシックのひとつ、以前はショルティ指揮シカゴ響の演奏を収録ビデオで定期的に聴いていた。

耳に心地いい旋律がトランペットが奏でる♪♪‘プロムナード(散歩)’、この短い間奏曲が10の曲をつないでいく。小人からはじまって、古城、チュイレリー宮殿の花園、牛車、かえらぬ雛の舞踏、サムエル・ゴールデンベルクとシュミーレ、リモージュの市場、墓地、鶏の脚のついた小屋、そして最後が大迫力のキエフの大門。

タイトルがズバリ‘展覧会の絵’だから、音楽は絵画と完全にコラボしている。ムソルグスキーには親しくしていたハルトマンという建築家がいたが、その友人が39歳の若さで亡くなった。故人をしのぶために開かれた水彩画や設計図などの展覧に着想を得てつくられたのがこの組曲。

この曲を聴いていると美術館の内部やギャラリーを描いた作品が目の前をよぎる。その一つがルーヴルにあるロベールが描いた‘1796年のルーヴルの改造計画’。1793年に国民の美術館になったルーヴル、当時の館内の様子がうかがえる。

17世紀、フランドル絵画を愛好する人々の間で画廊を描いた作品が流行した。テニールスの‘レオポルト・ヴィルヘルム大公の画廊’もそうした絵の一枚。大公レオポルト・ヴヴィルヘルムはパプスブルク王朝では名の知れた絵画コレクターだった人物。部屋の壁には収集した作品がびっちり飾られている。これらの作品はほとんどがウィーン美術史美にあり美術ファンの目を楽しませている。

ローマの景観を描いたものが沢山壁に掛けられているパンニーニの絵は当時の絵画に対する需要が古代ローマ建築を賞賛する時代の空気を反映していることを示している。

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2012.11.18

光の画家 エル・グレコ!

4463_3  エル・グレコの‘燃え木で蝋燭を灯す少年’(1570~75年 カポディモンテ美)

4464_3         ラ・トゥールの‘大工ヨセフ’(1642年 ルーヴル美)

4465_2     ルーベンスの‘蝋燭をもつ老婆と少年’(1616~17年 マウリッツハイス美)

絵画の鑑賞を重ねていくとどういうわけか好きな画家でも相性のいい画家と悪い画家がでてくる。エル・グレコ(1541~1614)は前者のタイプ。

その相性の良さの一つの例が2年前西洋美で開催された‘カポディモンテ美展’。このナポリにある美術館からやって来た作品のなかにグレコの追っかけ画‘燃え木で蝋燭を灯す少年’が含まれていた。この絵は現地に出向かないと一生縁がないなと思っていたから、腹の底から嬉しさがこみあげてきた。

こういう幸運なことが複数回起きるとなるとこれはもうその画家とは相性の良さを通りこして固い絆で結ばれていることになる。じつはそれが来春の‘エル・グレコ展’で実現するのである。‘無原罪のお宿り’(トレド サンタ・クルス美)、‘フェリペ2世の栄光’(エル・エスコリアル修道院)、‘白貂の毛皮をまとう貴婦人’(グラスゴー美)の3点がまとめて日本にやって来るというのだから幸せ三段重ね。

エル・グレコが5年滞在していたローマで制作した‘燃え木で蝋燭を灯す少年’をみるたびにエル・グレコを光の画家と呼びたくなる。この絵はいつもラ・トゥール(1593~1652)の傑作‘大工ヨセフ’を思い起こさせる。言葉を失うほど感動するのが蝋燭の炎に透かされた幼子イエスの左手。これほど繊細な光の表現をする画家はほかにいない。

ラ・トゥールが幼子の顔やヨセフの額を蝋燭の炎が静かに照らすところを描いたのに対し、グレコの絵では蝋燭を灯す燃え木は少年の顔や衣服をぱあーっと照らし闇のなかに少年を浮かび上がらせている。燃え木に息を吹きかける口の動きがとてもリアル。

昨年11月に訪問したマウリッツハイツ美で衝撃的な体験があった。それはルーベンス(1577~1640)が描いた‘蝋燭をもつ老婆と少年’(拙ブログ11/12/13)。グレコの絵と較べてみると、グレコのほうは粗いタッチで描かれているが、二つの絵は画面に占める人物の大きさや顔を明るく照らす光の描写がよく似ている。

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2012.11.17

グレコの傑作が揃うメトロポリタン美!

4459_2     ‘トレド風景’(1597~99年)

4461_2           ‘枢機卿の肖像’(1600年)

4460_4        ‘十字架を担うキリスト’(1580年代)

4462_2     ‘黙示録第5の封印’(1608~14年)

エル・グレコ(1541~1614)の絵に大変魅せられているので、どの絵がどこの美術館にあるかはおおよそわかっている。全部みているわけではないが、幸いなことにコンプリートにもう少しというところまできた。

作品の数が多いのは当然のことながらマドリードにあるプラド美で35点所蔵している。その次がトレドの教会と美術館。スペイン以外の美術館では03年に訪問したブダペスト国立美のコレクションがつとに有名。作品の保存状態のいいものが7点ある。なかでも‘聖衣剥奪’がすばらしい。

そして、アメリカにもどうしてこんないいものがあるの!というくらい数多くの傑作がある。08年に美術館めぐりをしたときの経験や画集に載っているものを総合すると、メトロポリタンが8点、ワシントンナショナルギャラリー6点、ボストン3点、フリックコレクション2点、シカゴ1点

お気に入りの作品からいうとMETとワシントンにあるものに魅了される。METではグレコの絵はハベマイヤーなどのコレクションとロバート・レイマン・コレクションが別々に展示されている。そのなかでググッと惹きこまれるのが唯一の風景画の‘トレド風景’と息を呑むくらい見事に描かれた‘枢機卿の肖像’。この2点は館の大判の図録に収録されている。まさにMETの至宝のひとつ。

‘十字架を担うキリスト’にも思わず足がとまる。プラドにも同じ構成の絵はあるがMETのほうがいい。‘黙示録第5の封印’は左端で両手を上にあげている男のポーズがとても印象深く目に焼きついている。また、晩年の自画像もこの美術館でみることができる。

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2012.11.16

開幕が待ち遠しい‘エル・グレコ展’!

4458_2     ‘フェリペ2世の栄光’(1577~79年 エル・エスコリアル修道院)

先週の‘日曜美術館’はエル・グレコを特集していた。現在、大阪の国立国際美で‘エル・グレコ展’(10/16~12/24)が開催されているが、番組のなかでとても嬉しい作品がでてきた。もともと期待値の高い東京都美での展覧会(来年1/19~4/7)、開幕が待ち遠しい。

‘ビッグニュース!’で紹介したようにこの大規模な回顧展(拙ブログ7/8)における最大の見所はグレコ(1541~1614)晩年の傑作‘無原罪のお宿り’(トレド サンタ・クルス美)、こんな有名な作品が日本にやって来るなんて夢みたいな話だが、実際今大阪で多くの美術ファンを楽しませている。

この絵がみられだけでもスゴイことなのに、なんと追っかけ画の‘フェリペ2世の栄光’まで一緒にやって来ていた。出品が間違いないかチェックするため美術館のHPへアクセスしたのだが、残念なことに出品作のリストが掲載されてない。ちょっと心配だが、絵の横のプレートは日本語だったから東京都美にも展示されるだろう。

この回顧展を監修したマドリード自治大学のマリーアス教授が番組に登場し、グレコが人物の体を長く引きのばして描いたことに関して、興味深い話をしていた。当時トレドでは女性は高いヒールをはき背をより高く美しくみせていたという。グレコはこれを参考にしていた。

そして、もうひとつ重要なポイントを指摘。祭壇画は高い位置に飾られるため、これをよく知っているグレコは下からみたときマリアや天使が美しくみえるよう人体を長くひきのばして描いた。これを遠くからみると人物は異常に引きのばされてみえてしまう。へエー、そういうことだったのか!という感じ。

‘無原罪のお宿り’の前では真近に寄って下から見上げるようにしてみようと思う。いい話を聞いた。

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2012.11.15

音楽が誘う絵画の世界! ドヴォルザーク‘新世界’

4457_2     イングリッシュホルン            ドヴォルザーク

4456_2     ミレーの‘晩鐘’(1857~59年 オルセー美)

4454_2     ブリューゲルの‘干草の収穫’(1565年 プラハ国立美)

4455_2     ルーベンスの‘虹のある風景’(1636年 ロンドン ウォレス・コレクション)

わが家では今クラシック音楽やオペラを聴く時間はとても少ないのだが、昨年TVを地デジ対応に切り替えてからはゆっくりだがクラシックが復活しつつある。

これには理由がある。古いTVのときはN響アワーやBSのオペラ番組はビデオデッキで録画し再生していたが、新しく購入したTVでは内蔵されているハードディスクに録画されるので再生が大変簡単。リモコンのボタンをポンポンと押せばお気に入りの名曲がすぐ流れてくる。

このいう便利な状況が生まれたので昨年熱心に聴いたBSプレミアムの‘名曲探偵 アマデウス’をちょっとした軽作業、例えば、古い図録をばらばらにして画集に載っている絵とダブらないものを整理しているときなどに再生して楽しんでいる。

そして、おもしろいことを感じるようになった。それはお馴染みの名曲を聴いていると以前はそんなことはなかったのだが、その曲想と響きあう絵のことを思い浮かべるようになったこと。

心のなかでおこる音楽と絵画のコラボがどう展開していくのか、で、新シリーズ‘音楽が誘う絵画の世界!’を立ち上げることにした。一回目はドヴォルザーク(1841~1904)の‘交響曲第9番・新世界’。

誰もが郷愁をそそられる第2楽章の第1主題。中学校では下校のときこのイングリッシュホルンが奏でる美しい旋律が流れていた。これを聴くたびに音楽に国境はないなと思う。今でもこの曲が流れているのだろうか?

この音楽との親和性をとても感じるのがミレー(1814~1875)の‘晩鐘’。ドヴォルザークの故郷チェコのボヘミア地方とフランスのバルビゾン。祈りを捧げる農夫と妻の姿をみていると自然に新世界の旋律が聴こえてくる。

ブリューゲル(1525~1569)の‘干草の収穫’とルーベンス(1577~1640)の‘虹のある風景’も下校の音楽と重なる作品。仕事を終えて帰る女たちの楽しげな様子がじつにストレートに伝わってくる。‘干草の収穫’は幸運なことに日本でみる機会があった。そして、‘虹のある風景’も2年前ウォレス・コレクションを訪問し長年の思いの丈を叶えることができた。この2点に出会ったのは生涯の喜び。

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2012.11.14

いつか行きたい美術館! フィラデルフィア美(2)

4451_2     ルノワールの‘浴女たち’(1885~87年)

4450_2     セザンヌの‘サント・ヴィクトワール山’(1904~06年)

4453_2     ダリの‘茹でたインゲン豆のある柔らかい構造’(1936年)

4452_2          ポロックの‘男と女’(1942年)

アメリカにある美術館を回っていて最も心が踊るのは印象派やポスト印象派の作品、フィラデルフィア美が所蔵する作品も画集によく登場する。

そのなかで必見リストに◎をつけているのが3点ある。ルノワール(1841~1919)の‘浴女たち’とセザンヌ(1839~1906)の‘サント・ヴィクトワール山’、‘大水浴’。いずれも美術の本に必ず載っている有名な絵だから、もう長いこと慣れ親しんでいる。

07年東京都美で行われたフィラデルフィア美展に1点でもやって来ないかと期待したが、やはりダメだった。どこの美術館でも所蔵作品にはランクがついており、館のお宝である1位や2位のものはまずでてこないのだから、はじめから高望みというもの。で、首尾よく現地でこの3点がみれたらルノワール、セザンヌには済みマークのシールがぺタッと貼れるのだが。

近・現代絵画の分野で対面を夢見ているのがダリ(1904~1988)の‘茹でたインゲン豆のある柔らかい構造:内乱の予感’。これはまだみてないダリの作品ではブリュッセルのベルギー王立美で2度もふられた‘聖アントニウスの誘惑’同様最も思い入れの強い絵。画面の上のほうに描かれている男の顔をみると、日本の戦国時代のころ戦いに敗れて首をはねられた武将の姿が重なってくる。

ほかの画家でリストに7点も載っているのがシャガール、そのなかの‘詩人’がお気に入り。現代作家は情報があまりないが、ポロック(1912~1956)の色の鮮やかな‘男と女’は見逃せない。また、ビッグネームのデュシャンの‘大ガラス’などがみれたら引き出しがまたひとつ増える。そして、ウォーホルとかステラ、リキテンスタインはあるのだろうか?

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2012.11.13

いつか行きたい美術館! フィラデルフィア美(1)

4448_2     ボスの‘この人を見よ’(15世紀)

4447_2     ターナーの‘国会議事堂の炎上’(1835年)

4449_2     ホーマーの‘ライフライン’(1884年)

4446_2       アンリ・ルソーの‘カーニヴァルの夕べ’(1886年)

世界は広いからまだ出かけていない美術館はいくつもある。そのなかで行きたい度の一番上にあるのがモスクワのプーシキン美とフィラデルフィア美。ともに質の高い作品が集まっているブランド美術館。

この二つ、現地は訪問してないが日本でそのすばらしいコレクションの一端をみる機会があった。プーシキン美は05年にマチスの‘金魚’や印象派のいい絵がやって来たし、来年には横浜美でルノワールの女性画などが復活展示される。そして、フィラデルフィア美ついても07年にマチスやクレーなど77点が公開された。

プーシキンは10年の間に2回も名品展があったので、フィラデルフィアにもつい期待したくなるがこちらのほうは可能性は低そう。シカゴ、クリーブランド、オルブライト=ノックスも一回こっきり。

フィラデルフィア美でみたい絵のリストはもうずいぶん前からできあがっており、その一部はこれまで‘もっとみたい画家の名画’シリーズでもとりあげた。この美術館にある古典絵画で画集に載っている作品は少ないが、とても気になるものがある。それはボス(1450~1516)の‘この人を見よ’と‘東方三博士の礼拝’。どういう経緯でボスの絵がここに入ったのか知らないが、ボスがあるだけでもフィラデルフィアはすごいと思ってしまう。

ターナー(1775~1851)の‘国会議事堂の炎上’は図版をみているだけでもテンションがあがってくる。現在東京都のメトロポリタン美展に出品されている‘ヴェネツィア サルーテ聖堂の前廊から望む’のようなサプライズは待ち受けているような気がする。

アメリカの美術館だからアメリカの画家の傑作への期待も高い。その筆頭がホーマー(1836~1910)の迫力満点の‘ライフライン’、この海洋画の存在を知ったのは26年前、以来対面を夢みている。また、作品情報がまったくないのだが、ワイエスもみたい画家。何年か前、ここで大ワイエス展があったというからいい作品があるにちがいない。

多くのアメリカのコレクターを魅了したのがアンリ・ルソー(1840~1910)、ここも‘カーニヴァルの夕べ’と‘ポピンクの服の少女’を所蔵している。‘カーニヴァル’の背景に描かれた木々の細い細い枝をじっくりみてみたい。

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2012.11.12

‘アイルワースのモナリザ’はダヴィンチの真作!?

4445_2          ‘アイルワースのモナリザ’(16世紀 個人)

4444_2             ‘モナリザ’(1503~05年 ルーヴル美)

昨日の朝日新聞に1ヶ月前から気になっていたダヴィンチ作品の話が掲載された。そのことについて少しばかり。

9月27日、‘アイルワースのモナリザ’はダヴィンチの真作!というニュースが入ってきたときはそれ本当?という気持ちのほうが強かった。こうした作品の真贋論争に関する話は有名な画家の作品が盗まれたとか、誰々の作品がオークションで史上最高の金額で落札されたとか、また新たな作品が発見されたといった話と同様に大いに好奇心を刺激する。

今回のニュースは特別関心が高い。というのも、この‘アイルワースのモナリザ’という作品は今年春にBunkamuraで開催された‘レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想’展(3/31~6/10)でお目にかかったからである。でも、この展覧会で関心があったのは‘ほつれ髪の女’だけだったので、この絵についてはどうせ誰かの模写ではないの?という印象がぬぐえず、ささっとみて終わりだった。

この絵の説明書きは‘レオナルドによる1503年の未完成作説あり’となっていたが、半年経ち絵を管理するモナリザ財団(チューリヒ)はダヴィンチの真作として発表した。財団によるとこの肖像画は若いモナリザを描いたもので、ルーヴルにある‘モナリザ’と顔の比率や隠れた技術が同じという。

だが、若いモナリザといっても二人が同一人物という感じがしない。一番の違いは目。‘アイルワース’のほうは目力がとても強い。年をとるとこの目がルーヴルの‘モナリザ’のような感じになるのだろうか。人物を描くとき最も大事なのは目であることは昔から変わらない、だから目の表現がこれだけ違うということはもし同じ人物をダヴィンチが描いたのなら、時間の経緯とともに画家の女性に対する感じ方がだいぶ変わったことになる。やはり真作説とするのはかなり無理がある。

この絵の真贋論争、これで終わりとはいかない。ルーヴルの‘モナリザ’のオリジナルの色を再現させたフランスの光学技師パスカル・スコット氏に解析を依頼すれば一気に解決するような気もするのだが、モナリザ財団の研究者は乗らないだろう。さて、この話どう展開するのか、ちょっと覚えておきたい。

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2012.11.11

ゆったり鑑賞! 東博総合文化展 青邨・応挙&工芸

4443_2     前田青邨の‘京名所八題’(1916年)

4442_2     円山応挙の‘芦雁図襖’(1784年)

4441_2     国宝‘片輪車蒔絵螺鈿手箱’(平安時代 12世紀)

4440_2     ‘青磁琮形水指’(重文 南宋時代 12~13世紀)

東博で特別展をみたときは本館の総合文化展もぐるっとみることにしている。以前は事前にHPで展示される作品と期間をチェックしていたが、今はここでみたい名品はおおよそ目のなかに入れたので情報なしでのんびり楽しんでいる。

東博のコレクションは絵画は仏画や水墨画から浮世絵、近代の日本画、洋画まで幅広く揃っており、また1階のジャンル別の展示室では土偶、仏像、そしてやきもの・蒔絵、刀剣などの工芸も数多くみることができる。そこには国宝がいつも片手くらいはでているから、毎度‘東博名品展’が開催されているようなもの。

近代日本画はいいのがでている。展示は10/30~12/9。久しぶりにみたのが前田青邨(1885~1977)の‘京名所八題’。画像は‘先斗町’(左)と‘清水寺’(右)、青邨の絵はヘリコプターに乗り込み地上すれすれのところを飛んで下の光景をみているような感じになる作品が多くある。ヘリには一度乗ったことがあるが、家の屋根が縦長の掛け軸の下から上へと続いていく‘先斗町’をみているとその感を強くする。

ほかの作品は同じく青邨の‘神興振’、下村観山の‘白狐’、速水御舟の‘京の舞妓’。いずれも傑作。狐の白、そして舞妓の衣裳の青に惹きこまれる。

2階の左奥の部屋に飾られているのが円山応挙の(1733~1795)の‘芦雁図襖’(10/16~11/25)。応挙は写生の達人だから、雁の飛ぶ姿をじつにリアルに描いている。目の前に本物の雁がいるよう。やはり応挙は別格の絵師。ハズレの作品がないところがすごいところ。

今回大変感心したことがある。それは1階ジャンル別展示の蒔絵の部屋、照明の方法がすばらしいので国宝の‘片輪車蒔絵螺鈿手箱’(10/10~12/16)をはじめ蒔絵の図柄がよりはっきり美しく浮き上がっている。螺鈿のピンクや緑がこんなに輝くのを見たのは東博でははじめてのこと。

‘広田不孤斎の茶道具’のコーナー(2階右奥)もいい気分にさせてくれる。一点々じっくりみたが、お馴染みの‘青磁琮形水指’はいつも表面に走る貫入に夢中になってしまう。展示は11/25まで

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2012.11.10

アゲイン 超絶技巧に驚愕する‘ZESHIN’展!

4437     ‘青海波塗貝尽蒔絵硯箱’

4438     ‘大橘蒔絵菓子器’(新潟・中野邸美)

4436     ‘籠秋草蒔絵菓子盆’

4439     ‘漆絵海辺旭図’(中野邸美)

現在根津美で開催中の‘ZESHIN’展(11/1~12/16)を楽しんだ。数年前アメリカのコレクターが蒐集した柴田是真(1807~1891)の蒔絵の名品がどっと公開されたが、それまで是真の蒔絵をみる機会は少なかったので、その高度な技に目が点になりっぱなしだった。

それからあまり時間が経ってないのにアゲイン是真展。根津美のチャレンジは国内にある名品、これほど多くの作品(120点)が集結するのは30年ぶりとのこと。流石根津美、サプライズの蒔絵がいくつも目の前に現れる。今回はもりあがった漆の線で波を描く青海波塗(せいがいはぬり)に注目してみた。

数は4点、単眼鏡を使ってしっかりみた粘り気がありてかてか光る細い波の線が心をとらえてはなさない。最も惹かれたのが‘貝尽蒔絵硯箱’。おそらく国内にある青海波塗ではこれがベストワンかもしれない。こういう名品が個人の手元にあるのは工芸ではよくあること。

ほかの蒔絵で思わず足がとまったのが‘大橘蒔絵菓子器’。柔らかい曲線がつくる分銅の形にまず惹きつけられ、そして青緑のきらきら輝く点々に目が釘付けになる。これを夜薄明かりのもとでみたらその美しさは倍増することだろう。

季節柄すぐ反応したのはススキなどの秋草を図案にした菓子盆。竹でつくられた籠の盛り上がりがとても印象深い。お盆、重箱、手箱などが自分の家にあったら夢気分になる。こういうもの以外で見ごたえがあったのが蒔絵額。全部で6点、果物や鳥などのモチーフが大きく描かれているので強く印象づけられる。そのなかに日本人の琴線にふれるとてもいいのがある。見てのお楽しみ!

漆絵で長くみていたのが‘海辺旭図’。この絵は大橘の図柄の菓子器同様、新潟の中野邸美が所蔵している。資産家の豪邸を美術館にして美術コレクションを公開しているのだろうか。一度調べてみたい。

是真の蒔絵の次のターゲットは昨年11月BSプレミアムの‘極上美の饗宴’で紹介されたハリリコレクション。どこかの美術館がこのコレクションを日本に里帰りさせてくれたら飛び上がるほど嬉しいのだが、番組を見られた方はきっと同じことを願っているにちがいない。果たして?

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2012.11.09

神話の世界へ誘われる東博の‘出雲展’!

4433_2     ‘宇豆柱’(鎌倉時代 1248年)

4432_2     古代の出雲大社のイメージ

4434_2     ‘銅鐸’(加茂岩倉遺跡出土 弥生時代 前2~前1世紀)

4435_2     ‘銅矛’(荒神谷遺跡出土 弥生時代 前2~前1世紀)

東博で行われている‘出雲展’(10/10~11/25)のお目当ては00年に出雲大社の境内で発見された‘宇豆柱’。このニュースがTVから流れてきたときは広島にいたのでいつか見に行こうと思っていた。が、現地でこれをみる機会をつくれなかった。それが今回東京でみれるのだからありがたい。

古代の出雲大社の本殿は高さが48メートルもある超高層神殿だった。これを支えていたのは9本の柱。柱は3本の丸太を組んで1本にしてあり、直径が3メートルもある巨大柱。その一つが‘宇豆柱’。出雲大社の境内の模型によりこの柱が出土した場所が確認できるが、現地を訪れたことがあるのでイメージしやすい。

会場には10世紀頃を想定した本殿の復元模型(1/10)が飾ってある。本殿へいたる階段の長さは100メートル、これだけ大きな建築物だとかなり離れたところからでもその壮大な姿とみることができたであろう。この階段を横からみていると古代メソポタミアの神殿‘ウルのジッグラト’(60メートル)が思い起こされた。

加茂岩倉遺跡には一度出かけたので銅鐸は少し馴染みがある。今回は39個出土のうち19個が展示されている。35号の銅鐸に刻まれたトンボや鹿やうずまきの模様を再度楽しんだ。その隣にあるのは荒神谷遺跡からでてきた銅剣と銅鐸と銅矛。広島にいたときここは行かなかったので、ガラスに最接近してじっくりみた。銅剣と銅矛は造形的には銅矛のほうが好み。全部で16本あった。研ぎ分けの部分をとらえようとしたが、よくわからなかった。

今年は‘古事記’が編纂されて1300年にあたり、来年は出雲大社の大遷宮が60年ぶりに行われるという。神話の世界というとすぐ思い浮かぶ出雲、ここに東大寺の大仏殿よりも高い神殿が存在していた。大きなものというのは言葉ではいい尽くせない魅力がある。古代へのロマンが大きく膨らむ展覧会だった。

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2012.11.08

ビッグニュース! ‘ターナー展’&‘貴婦人と一角獣展’

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Bunkamuraの水彩画展を見終わって、さあ帰ろうかと一息ついていると出口のところでサプライズのチラシが目に入った。今回30点の水彩画が出品されていたターナーの大回顧展、ほんとかいな!?

時期については来年秋とある。どこの美術館?またまた東京都美。この美術館は本当にビッグな展覧会を連発してくれる。すばらしい。やって来るのはロンドンにあるテートブリテンのコレクションで油彩約40点と水彩画、これは大変なことになった。

テートは過去3回訪問した。ここではターナー(1775~1851)は別格扱いの画家、専用の展示室(クローギャラリー)が用意されている。現在油彩画300点以上と約2万点のデッサンやスケッチを所蔵している。実際に展示してあるのはどのくらいかというと、2年前のときは‘難破船’や‘カレーの桟橋’など20点ほどだった。

美術館が発行するターナーの画集に載っている油彩画61点を全点みることを目標にしているが、これまでお目にかかったのは20点。みたくてしょうがない‘吹雪’やチラシに使われている‘ヴェネツィア、嘆きの橋’にはまだ縁がない。公開される作品に未見のものがいくつ入っているか、楽しみである。

もうひとつ、ビッグな展覧会が来年春行われることがわかった。なんとパリのクリニュー美の至宝である連作タピスリー‘貴婦人と一角獣’が6点全部国立新美にやって来る!会期は4/24~7/15、そして、そのあと7/27~10/20に大阪の国立国際美でも展示されることになっている。

いつかこのタピスリーを見に行こうと思っていたが、幸運なことに日本に出張していただけることになった。国立新美も東京都美同様、期待の2倍も3倍も応えてくれる本当にいい美術館。

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2012.11.07

ブレイクの追っかけ画がやっとみれた!

4426            ブレイクの‘日の老いたる者’(1827年)

4427          ミレイの‘ブラック・ブランズウィッカー’(1867年)

4428     ターナーの‘コンウェイ城’(1801~02年)

4429     コンスタブルの‘デダム教会と渓谷、サフォーク’(1800年)

Bunkamuraで開催中の‘巨匠たちの英国水彩画展’(10/20~12/9)を少しばかり楽しんだ。なぜ少しかというと水彩画への関心が薄いため。普通ならパスするところだが、出品作のなかにどうしてもみたい絵が一枚あるので雨のなか渋谷をめざした。

思い入れの強い絵はブレイク(1757~1827)の‘日の老いたる者’。絵の存在を知ったのは21年前、白髪と口ひげが風で真横になびいているこの老人の姿は体を震撼させた。前に屈み込み左手を前に出している。その大きく広げた親指とほかの4本からは山の稜線をつくるかのように光が出ている。一体この老人は何をしているの?

その意味は横において、とにかくブレイクはハットさせる絵を描く。この絵はマンチェスター大学のウィットワース美にあるから、まず縁はないだろうと思っていた。ところが、日本にやってきた!長年の夢が叶ったのでミューズに特別の捧げ物をしなくてはならない。今回展示されている157点はすべてウィットワースが所蔵しているもの。水彩画の国イギリスで蒐集された最も有名なコレクションだから、水彩画が好きな人にはたまらないだろう。

チラシに気になる絵がもう1点あった。それはミレイ(1829~1896)の‘ブラック・ブランズウィッカー’。ブレイク同様とても色の濃い水彩画、この絵に注目していたのは油彩で全身像を描いた同名の作品が画集に載っていたから。

お目当ての2点をみたので、あとはさらさらとみた。足がとまるのはどうしてもターナー(1775~1851)、全部で30点ある。そのなかでとくに惹かれたのが‘コンウェイ城’、イギリス旅行の回数が少ないのでこの城のある場所がイメージできない。

ほかは大好きなコンスタブル(1776~1837)やパーマー、ハント、マーチンをしばらくみて、15分で引き上げた。

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2012.11.06

傑作が揃った‘ルオー展’!

4422_2            ‘踊り子’(1931~32年 ルオー財団)

4423_2            ‘貴族的なピエロ’(1941~42年 アサヒビール)

4424_2              ‘小さな家族’(1932年 出光美)

4425_2           ‘道化師’(1909年 パナソニック汐留ミュージアム)

現在、パナソニック汐留ミュージアムで開かれている‘ルオー展’(10/6~12/16)をみてきた。先月の美術館めぐり(10/10)のとき最後に寄った。ところが4階はとても静か、ここは水曜が休館だった!時々こういう間が抜けたことをしている。で、今日は仕切り直し。

数週間前、日曜美術館で取り上げられた作品のなかで最も気になったのが‘貴族的なピエロ’。これはアサヒビールの所蔵で京都の大山崎山荘美の図録にちゃんと載っている。でも、ここを訪問した時に飾ってなかったので図録ではこれほど魅力的な絵とはイメージできなかった。実際絵の前に立つといい気持ちになる。

だが、これよりもっと心を奪われたものがあった。ルオー(1871~1958)が1931年ころに制作した‘踊り子’。これまでみたルオーでベストワンはポンピドーにある‘傷ついた道化師’とこれと人物の構成がよく似ている‘小さな家族’(出光美 拙ブログ08/6/20)だったが、今回この‘踊り子’がトップの位置に躍り出た。

絵の存在は以前TVの美術番組でみて知っていたが、こんなに大きくて色の鮮やかな絵だったとは。横に飾ってある‘小さな家族’も大きな絵だがこれはこれより一回り大きい。そして色使いで目に焼きつくのが上のカーテンの赤。踊り子の横にいるのは二匹の犬? パリのルオー財団が所蔵するこの絵に日本で遭遇したのは一生の思い出になる。

出光とともにルオーのいい絵をもっているパナソニック汐留ミュージアム、ここで何度かルオー展を体験したからお気に入りの絵が定着してきた。今回展示の中心になっている道化師や踊り子を描いた作品のなかでどうしても足がとまるのが深い精神性を感じる‘道化師’と‘女曲芸師’。

小さ頃から道化師に心を寄せてきたルオー、道化師の絵にこめられたルオーのやさしい心が伝わってくるとてもいい回顧展だった。

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2012.11.05

NHKスペシャルにダルビッシュが登場!

4418     ダルビッシュ vs ロドリゲス(ヤンキース)

4419     ダリビッシュ vs トラウト(エンジェルス)

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昨日放送されたNHKスペシャル‘ダルビッシュ有 大リーグと闘った男’はとてもおもしろかった。今年の大リーグは開幕から終わりまでダルビッシュがずっと関心の的だったから、こういうシーズンを振り返るドキュメント番組はのめり込んでみてしまう。

再現されたダルビッシュの投球シーンはほとんど覚えている。シーズン序盤、ホームでヤンキースと対戦をしたときはすごくいいピッチングをみせた。ランナー一三塁において登場したロドリゲスをキレのいい変化球でダブルプレーに仕留めたのがとくに印象深い。強打のヤンキースを相手に勝ったので、これで20勝くらいいくかなと思った。

ところが、大リーグはそう易々とは勝たせてくれない。日ハムの大エースだったダルビッシュからは考えられないほどコントロールが悪い。原因はすべるボールと硬いマウンドだった。その悪い状態から脱出するきっかけとなったのはビデオルームでみたプライス(レイズ リーグ最多の20勝)のピッチングフォーム。

ダルビッシュの目を開かせたのはプライスの足のつき方だった。プライスは地面に5本の指で着地する、いわゆるべた足で投げていた。それに対しダルビッシュは小指側から着地するため重心が左に傾き、これがコントロールの乱れにつながっていた。

これに気づき、ダルビッシュは翌日のレイズとの試合では新しいフォームで投げた。この試合は実際みていたが、ストレートでも変化球でもいいところにズバズバ決まった。今から思うとこういう変化がダルビッシュに起こっていたのである。

大リーグのバッターを変化球を駆使した技術でなく真っ向からの力勝負でうちとりたいという思いをダルビッシュは持ち続けていた。コントロールが安定してきたので、150キロ台のストレートが威力を増してきた。エンジェルスの若きスター、トラウト(21歳、ホームラン30本、打率.326)をインハイのストレートで三振にとった場面はよく覚えている。これはすごいピッチングだった。

この番組をみてダルビッシュがじつに研究熱心な投手であることがよくわかった。どうやったらいい球が投げられるか、技術的にどこが悪いのかを自分で気づき自分自身にコーチングできるのだから、アスリートとしては相当に高い能力を身につけている。
来年は一気にNO.1投手にのぼりつめるかもしれない。

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2012.11.04

アメリカにあるゴッホの人物画で好きなのはこれ!

4416_2          ‘ルーラン夫人(揺り籠を揺する女’(1889年 シカゴ美)

4417_2          ‘郵便配達夫ルーラン’(1888年 ボストン美)

4415_2       ‘ムスメの肖像’(1888年 ワシントン ナショナル・ギャラリー)

4414_2       ‘坊主としての自画像’(1888年 ハーヴァード大 フォッグ美)

ゴッホの絵をみるのは絵画鑑賞の大きな楽しみのひとつ。だから、死ぬまでゴッホの名作を追っかけるつもりなのだが、今は昨年11月に念願のクレラー=ミュラー美(オッテルロー)を訪問したこともあり一段落している。

好きな画家で対面した作品の数がふえてくると、だんだんどの作品に自分が最も惹かれているのかが明確になってくる。ゴッホは10年の画家人生になかで2000枚以上描いた。これは2日に一枚という驚異的なペース、この集中力はほかに画家とくらべて群を抜いている。

そのなかで心が200%奪われているのがアルル時代に制作された作品。Myカラーが緑&黄色になったのはエル・グレコとゴッホの絵に魅せられたから。1年3ヶ月の間に‘アルルの跳ね橋’や‘夜のカフェテラス’(ともにクレラー=ミュラー)やイエローパワー全開の‘ひまわり’などの傑作が次々と生み出された。

風景や花の絵とともに大変魅せられているのが人物を描いたもの。その人物画はアメリカの美術館にいいのが集まっている。女性の描いたものでは先般取り上げた‘ジヌー夫人’(メトロポリタン美)、‘ルーラン夫人’(シカゴ美)、そして‘ムスメの肖像’(ワシントンナショナル・ギャラリー)がお気に入り。

ルーラン夫人の絵は5枚ある。最初に描かれたものがボストン美にあり、これをもとにゴッホはレプリカを4点制作した。シカゴにあるのはその一枚、ほかの3枚はMET、アムステルダム市美、そしてクレラー=ミュラーが所蔵している。幸い4点みたのだが、シカゴにあるものが最も気に入っている。これを03年損保ジャパン美で開かれた展覧会でみたときは綺麗な目にぐっときた。

ワシントンのナショナルギャラリーでお目にかかった‘ムスメの肖像’にもKOされた。このムスメは日本人のイメージ、読書家のゴッホはフランス海軍の軍人が書いた‘お菊さん’という小説を読んでおり、これに影響されて少女の口もとをとがらせている。

ボストン美にある‘郵便配達夫ルーラン’は本当にすばらしい絵。はじめてみたときは立ち尽くしてみていた。これが人物画の最高傑作だと思っている。ボストン美からは印象派やポスト印象派の名画がいくつも日本にやって来ているのに、これの公開はまだ。美術館の性としていい絵ほど出したがらない。

40点近くあるゴッホの自画像のなかでインパクトの強さでいうとフォッグ美にある自画像が一番強烈かもしれない。ゴッホは自分が日本の坊さんになったつもりで表現したから、目を狐目のようにつりあげて描いている。22年前、日本でみたときは背景の緑とこの狐目に体が完全にフリーズ、しばらく動けなかった。

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2012.11.03

ゴーギャンに夢中にさせるメトロポリタン!

4412_2          ‘アベ・マリア(イア・オラナ・マリア)’(1891年)

4413_2     ‘昼寝’(1891~92年)

4411_2        ‘赤い花と乳房’(1899年)

アメリカのブランド美術館はどこも印象派およびポスト印象派の名作を数多く所蔵している。そして、いい絵はこうした大きな美術館に集まっているだけでなく、‘夢の美術館シリーズ’でとりあげたような中規模クラスの美術館にも画集に載っているものがしっかりおさまっている。このあたりがアメリカのすごいところで、多くのコレクターが蒐集した質の高い美術資産が公共のものとして一般市民に公開されているのは羨ましいかぎり。

以前NHKでMETを紹介する美術番組があり、アメリカのコレクター群像の一端を知ることができた。今は誰がどの印象派の作品を集中的に集めていたかは記憶がうすれているが、08年に行なった美術館めぐりではコレクターたちが熱い思いで集めた作品の数々を楽しませてもらった。

そのときはシカゴ美が最初の美術館で最後がMETだった。だから、シカゴ、ワシントンナショナルギャラリー、ボストンに比べてMETのコレクションでどの画家の作品がベストかがおおよそわかった。マネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホはどこにもいい作品が揃っているが、ゴーギャンについてはワシントンとMETが充実している。

ではこの二つでどちらに惹かれているかといえば、ズバリMET!その最大の理由はここにはゴーギャン(1848~1903)の全作品のなかで最も好きな‘アベ・マリア’があるから。それだけではない。もう2点、強力なのが控えている。‘昼寝’と‘赤い花と乳房’。そして、今年はさらに現在東京都美に展示されている‘水浴するタヒチの女たち’(拙ブログ10/13)がお好み画に加わった。

‘アベ・マリア’はイタリアルネサンスでお馴染みの聖母子画をみているよう。子どもを肩の上に載せている背の高い女性のやさしい顔が心をとらえてはなさない。一見すると平板な画面構成だが、じっとみていると広重の‘名所江戸百景’のように空間が奥に広がっていく。

4年前最も感激したのが‘昼寝’。顔のみえない女性が横座りのポーズでつくる対角線の動きにハットしたが、それ以上にびっくりしたのが横向きで寝そべっている女の赤い服。こんなに鮮やかな赤はこれまで見たことがない。200%震えた。

ファッション雑誌でもみているような気になるのが‘赤い花と乳房’。画面いっぱいに大きく描かれた二人のタヒチ女にはカリスマモデルの雰囲気があり、原始的で素朴なイメージという感じではなく冷たさのまじったエレガントさを漂わせている。

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2012.11.02

アメリカのコレクターに愛されたスーラ!

4409_2     ‘グランド・ジャット島の日曜日の午後’(1886年 シカゴ美)

4408_2  ‘ポーズする女性たち’(1886~88年 フィラデルフィア バーンズ・コレクション)

4410_2     ‘サーカスの客寄せ’(1887~88年 メトロポリタン美)

絵画鑑賞を長年続けていると時々エポック的な作品に出くわすことがある。点描画という新機軸で世に出たスーラ(1859~1891)の代表作‘グランド・ジャット島の日曜日の午後’もそんな絵の一枚。4年前幸運なことにシカゴ美でみることができた。

この大作をなんとしてもみたいと思うようになったきっかけは1994年に開催された‘バーンズ・コレクション展’(西洋美)。今から18年前のことだがビッグな展覧会だったから、西洋絵画の好きな方は足を運ばれたにちがいない。このときの目玉のひとつが‘ポーズする女性たち’。

この絵も縦2メートル、横2.48メートルの大きな絵。点描画はとにかくいつもとはちがう感動が湧き上がってくる。目をグッと絵に近づけてびっくりするのが整然と敷きつめられている赤や青や黄色などの細かい斑点。この斑点を確認したあと絵から少しずつ離れていくと、大きな画面からは静かだがとても明るくて鮮やかな色彩と光に満ちた世界が感じられてくる。まさにスッキリ気分全開!

スーラの良質の点描画を手に入れたのはアメリカのコレクターたち。‘グランド・ジャット島’はバートレット夫妻で、‘ポーズする女性たち’はアルバート・バーンズ。そして、もう一枚いいのがメトロポリタン美にある。それはシュテファン・クラークが所有していた‘サーカスの客寄せ’。

3点のなかで一番最初にみたのは‘サーカスの客寄せ’。今から22年前のこと。この絵は奥行きがなく浮世絵のように平板な画面構成だが、前述した2点とは違い画面にはトランペットやトロンボーンの音が鳴り響き陽気な雰囲気につつまれている。

スーラはフランスの画家なのにその傑作の多くはアメリカの美術館にある。傑作3点がみれたので、次のターゲットはデトロイト美やミネアポリス美などが所蔵する海景画。スーラの追っかけはまだ終わらない。

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2012.11.01

システィーナ礼拝堂の天井画 お披露目から500年!

4404   システィーナ礼拝堂の天井画


4405     ミケランジェロの‘アダムの創造’(1512年)

4406     ‘デルフォイの巫女’

4407     ‘リビアの巫女’

今日のお昼のニュースでシスティーナ礼拝堂の天井画がお披露目されてから500年となるのを記念してローマ法王が祈りの儀式を行ったことが報じられていた。ミケランジェロがユリウス2世に依頼されてこの天井画を完成させたのは1512年の秋、完成には4年の歳月が流れた。見る者に大きな衝撃を与えたにちがいないこの壮大な天井画が公開されたのは500年前の10月31日だったのか!という感じ。

ここは2年前に訪れたが観光客でいっぱいだった(拙ブログ10/3/16)。天井の高さは20メートルくらいあるから、TVの美術番組がみせてくれる大映しの画像のようには描かれている旧約聖書の創世記物語は目に入ってこない。350の人体が描かれているが、強く印象づけられるのは多くても50人ほど。

ながめている時間が最も長いのは‘アダムの創造’、映画‘E.T’にも採用された有名な場面である。そして、お尻をみせている‘天体の創造’も目に焼きつく。また、ノアの物語の‘大洪水’も関心の高い場面だが、これは最初に描かれたこともあって人間の数が多すぎ下からは画面全体がよくつかめない。

天井の下の部分に描かれている預言者や巫女では目がくりくりっとしている‘デルフォイの巫女’と両肩をひねったポーズが印象深い‘リビアの巫女’がとくに気に入っている。短縮法で描かれれているため体は縮こまり、太い足や腕はこちらに飛び出してくるようで立体的にみえる。これはまさに彫刻家ミケランジェロは仕組んだ壮大なイリュージョン。

今この天井画や正面の壁画‘最後の審判’は湿気やほこりによる絵の劣化という大きな課題に直面している(10/10/10)。ここは誰もが一度は見たい人気のスポットであり、夏は一日2万人の観光客がやって来るという。美術品の保存と観光をどうやってバランスさせるか、入場者制限をするというのもひとつの方策ではあるがこれはなかなか難しい。なにか妙案がでてくるといいのだが。

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