古代ローマを題材にした歴史画の傑作はこれ!
ルーベンスの‘ロムルスとレムス’(1615~16年 ローマ カピトリーニ美)
プッサンの‘サビニの女たちの略奪’(1637~38年 ルーヴル美)
ダヴィッドの‘サビニの女たちの介入’(1799年 ルーヴル美)
レンブラントの‘ルクレティアの自決’(1666年 ミネアポリス美)
西洋画には聖書やギリシャ神話にでてくる話を絵画化したものや古代史のエピソードを題材にして描かれたものが数多くある。今日は古代ローマの建国物語にまつわる絵をいくつか。
古代ローマの物語絵はヴァリエーションとしては多くない。コーマを建国した双子のロムルスとレムスはカピトリーニ美にあるブロンズ像‘カピトリーノの牝狼’をすぐ思い浮かべる人が多いかもしれない。ほかには貨幣のデザインに使われている?では絵は?これまでお目にかかったのはルーベンス(1577~1640)の絵のみ。
この‘ロムルスとレムス’もカピトリーニ美へ行くとみられる。彫刻との違いは狼の姿。狼も犬も似たようなものだからルーベンスの狼のほうがリアリティと伝えていると思うが、獰猛な狼という感じがでているブロンズのほうが芸術作品として強く印象に残る。
絵画や彫刻のテーマとして繰り返し表現されたのが‘サビニの女たちの略奪’。暴力的な物語なのでこれまで体験した絵の前では体が硬直した。プッサン(1594~1665)の作品はルーヴルとメトロポりタンにあるものをみた。画面の左の高いところで赤い上着を持ちあげて若い男たちに指示しているのがローマの支配者ロムルス。
サビニ族の人々はロムルスから祭礼に招待されてやってきたが、待っていたのは若い女が欲しくてしょうがない独身男たち。多くの女を略奪されサビニ人は黙っているわけにはいかない。で、ローマ人とサビニ人の間で激しい戦いがはじまる。3回衝突したがなかなか決着がつかない。
4回目の攻防のとき、略奪された女たちが両軍の間に割って入り、こう訴える。‘どちらが勝っても私たちは不幸になってしまいます。サビニ人が勝てば夫を失うことになり、ローマ人が勝てば親兄弟を失うことになってしまうのです’。この場面を描いたのがダヴィッドの絵。女に泣かれればいきり立つ男も冷静さをとりもどす。和平が成立し、以後両王の共同統治となった。
レンブラント(1606~1669)の‘ルクレティアの自決’は追っかけ画リストに入れている絵。最後のローマ王タルクィニウスには馬鹿息子がおり、人妻ルクレティアはこの男に犯されてしまう。そのため短剣を心臓に突き立て自決する。シュミーズに染みる真っ赤な血を実際にみたらフリーズしそうな感じ。この息子の破廉恥行為をきっかけに反乱がおき王政は終わりつげる。そして、BC509年ローマは共和制になる。
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コメント
こんばんは!
カピトリ―二美術館の『ロムルスとレムス』を特に興味深く拝見しました。
30年ほど前ローマを初めて訪れた時、カピトリ―二美術館に行ったのですが、このルーベンス作品を見た記憶がないのです。
カピトリーニ美術館のホームページを最近何度か見ていて、あらためて魅力的な美術館だなと思いました。『ロムルスとレムス』の彫刻も含め、彫刻のコレクションはすばらしいですがカラバッジョの作品もいいし、ぜひいつか再訪してみたいと思います。
ルーブルのプッサン、ダビッドの作品は名高いですがダビットの大作『サビニの女の略奪』はルーブルでも目立ちますね。
両方の作品とも芝居がかった人工的な画面が却って面白いです。特にダビッドの彫塑的な人物は私には古代ローマの彫刻のようで、魅力があります。
ミネアポリス美術館には行ったことがありませんが、レンブラントの作品はよく画集に出てきますね。
投稿: ケンスケ | 2012.09.18 22:43
to ケンスケさん
カピトリーニ美は2年前、二度足を運びました
ので、彫刻やカラヴァッジョの絵を存分に楽し
みました。そのときコルトーナの絵も重点鑑賞
の一枚でした。
ルーヴルのダヴィッドの絵は見ごたえのある歴史
画ですね。強く印象に残ります。レンブラントの
ルクレティアはワシントンナショナルギャラリー
にあるものは見ましたので、ミネアポリスのも
のも是非みたいです。
投稿: いづつや | 2012.09.19 00:35