夢の美術館! ドイツ最北にあるノルデ美術館
祭壇画‘キリストの生涯・磔刑’(1912年 ゼービュル ノルデ美)
‘汝らも幼子のようになるべし’(1929年 エッセン フォルクヴァング美)
ゴッホの色彩表現に大きな影響をうけたドイツ表現主義のエミール・ノルデ(1867~
1956)にはキルヒナー同様、大きな関心を寄せている。でも、この画家の鮮やかな原色を使って描かれた宗教画や風景画に出会った回数は極めて少なく、昔から遠い存在の画家のイメージが続いている。
そんなノルデだが、情報はいろいろある。ノルデは晩年デンマーク国境にほど近い小さな村、ゼービュルで暮らした。ハンブルクから北へ200kmのところにあるこの村はノルデが生まれたノルデ村(現在はデンマーク)からはそう離れてない。ここに1957年に開館したノルデ美術館があり、油彩500点、水彩2500点が所蔵されている。
この美術館とベルリンの郊外にあるブリュッケ美術館に足を運べばノルデにだいぶ近づけそうだが、その実現は簡単ではない。ハンブルク美へ意を決して訪問するときはさらに頑張ってゼービュルまで行きなさい、とミューズがささやいているのだが、さてどうなるか。
ノルデ美で最も気になる絵はグリューネヴァルトの‘イーゼンハイムの祭壇画’に霊感をうけて制作された‘キリストの生涯’、中央の‘磔刑’は色彩は格段に鮮やかだがグリューネヴァルトのものと感じが似ている。ノルデの宗教画は宗教画くさくなく、人物表現がカリカチュア風なのですっと画面のなかに入っていける。
これまでみた作品で一番魅了されたのは1996年にあった‘フォルクヴァング美展’で公開された‘汝らも幼子のようになるべし’。これは宗教画で中央にいるのがキリスト、赤い衣裳をつけ髪は長く口びるは真っ赤だから一瞬女性かと思った。その明るい表情からは性格のよさがうかがわれ、教えをそのまま実行すれば幸せになれそうな気になる。でも、右にいる男たちはキリストや子供たちとは対照的に暗い面持ちで深い悩みを抱えている感じ。
仮面というとアンソールの専売特許かと思っていたらノルデの絵にも‘仮面とダリア’があった。‘海と黄色い太陽’は‘描かれざる絵画’の一枚。ノルデはナチス党員だったのに退廃芸術家の烙印を押され、1941年には秘密警察の監視下におかれすべての創作活動を禁止される。
その通告に70歳のノルデはショックをうけるが、密かに小さな和紙に水彩画を描き続けた。その数1300枚以上、ノルデはそれらを‘描かれざる絵画’と名づけた。老画家のドラマが秘められたこれらの風景画をいつかみてみたい。
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