スーパー展覧会!‘ボストン美 日本の至宝’ その四
祥啓の‘山水図’(15世紀末~16世紀初)
室町後期に関東で活躍した禅僧画家祥啓の描いたいい絵が根津美にあるが、この展覧会に出品されている‘山水図’も思わず足がとまる絵。横長の画面の中央に水面が大きく広がり、両サイドに描かれた岩組の間をぬけて視線は遠くの山々にすうーっと進んでいく。これほどみてて心地のいい山水画にそうはお目にかかれないので、じっくりみた。
伊藤若冲(1716~1800)の作品が何点やってくるか気になっていたが、ふたをあけてみると2点。手元の大きな若冲の画集に載っているのは4点、そのなかの‘鸚鵡図’と‘十六羅漢図’が公開されるのだから上々である。‘鸚鵡図’は日本にも一見すると同じ絵では?とみまがうのが和歌山県の草堂寺と千葉市美にある。
ボストンの鸚鵡と向きが同じなのは草堂寺のものだが、レースのような羽毛の輝きはボストンのほうがぐっといい。08年現地を訪問したとき、‘松に鸚鵡図’(拙ブログ08/4/20)と運良く対面することができた。いい鸚鵡の絵を2つともみれたから上機嫌。
4点飾られた‘十六羅漢図’は羅漢の着ている衣裳の墨の輪郭線がじつに印象的。若冲の水墨作品をみる楽しさのひとつがこの墨色。濁りのない濃い墨でのびやかに表現することで人物の強い個性が引き出されている。予想を大きく上回る羅漢図だった。
フェノロサのコレクションだった橋本雅邦(1835~1908)の‘騎龍弁天’をみるのは2度目。6年前東近美であった展覧会同様、弁天の乗った龍を吸い込まれるようにみていた。右上にみえる洞窟のようなところからでてきて、波打つ海面の上を堂々と飛んでいる感じ。弁天の後ろに座らせてもらいたくなった。
スーパー展覧会の感想記はこれで終わり。ボストン美の所蔵する日本美術の超一級品を存分に楽しめた喜びをかみしめている。
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