スーパー展覧会!‘ボストン美 日本美術の至宝’ その二
‘平治物語絵巻 三条殿夜討巻 後白河上皇を拉致する信頼軍’(13世紀後半)
‘吉備大臣入唐絵巻 巻三’(12世紀後半)
曽我蕭白の‘雲龍図’とともに鑑賞を楽しみにしていたのが‘平治物語絵巻 三条殿夜討巻’。この日本にあったら国宝間違いなしの絵巻は2000年にも里帰りしている。このときは広島に住んでいてみることができなかった。その絵巻とようやく対面でき今は満ち足りた気分。
顔を画面にくっつけるようにしてみたのが三条殿が炎上する場面。これまで美術本でこのシーンを何度みたことやら。紅蓮の炎の表現はじつにリアル。建物が勢いよく燃えるときはこんな感じ。こちらにまで熱い空気が流れてきて火の揺れ動く音や燃える木からでるパチパチという音が聞こえてくるよう。この炎上のシーンばかりみていると、そのすぐ下で二人の武士が男の首を切り落とすところを見逃す。
東博や静嘉堂文庫にある‘平治物語絵巻’と比べるとボストンが所蔵するものは迫力が一段とまし、騒然とし殺気に満ちた合戦の様子がストレートに伝わってくる。とくにスゴイのが動的描写。牛車が猛スピードで走り、激しく炎上する建物の横では血まなぐさい闘いがそこかしこで繰り広げられる。そして後白河上皇を乗せた牛車を取り囲む武士の数が圧倒的に多く、その菱形をした隊列は軍団のパワーを見せつける。
1週間くらい前NHKであったこの展覧会を紹介する番組(俳優の石坂浩二らが出演)に牛車のスピード感を表わすのに車輪を細い線のぐるぐる巻きにし漫画的に表現しているという話がでてきた。この描き方は以前静嘉堂文庫で絵巻をみたとき気づいていたが(拙ブログ09/6/29)、ボストン美蔵でもこの表現がでてくるとこがわかったので隣の方と4つの目でじっくりみた。車輪のむこうに犬の足まで描かれている。これはスゴイ!
2年前奈良博の‘大遣唐使展’にやってきた‘吉備大臣入唐絵巻’(10/4/22)は四巻全部が展示されている。まだ縁の無かった巻二と三をニヤニヤしながらみた。文選(もんぜん)の試験では吉備大臣は幽鬼(安倍仲麿の霊)の協力を得て出される問題を盗み聞きする。本当に楽しい絵巻、一生の思い出になる。
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コメント
こんばんは。
車輪の表現、すごいですね!
確認したくなってきました。
あまりこういうものには興味がなかったのですが、こちらのブログを教えて頂いてから感動しっぱなしです。
…ところで、混んでいますか?
清明上河図以来、待ち時間の恐怖症になってます
投稿: 空心菜 | 2012.03.25 22:29
to 空心菜さん
こんばんは。牛車の車輪のぐるぐる巻き描写は
静嘉堂文庫にあるものよりもっとダイナミック
です。
炎上する三条殿へ駆けつける公家たちが乗った
牛車の猛スピードぶりがこの表現をみるといっ
ぺんでわかります。これは誇らしくなるくらい
すごい表現ですネ。是非お楽しみ下さい。
平日でしたからまだ混んでいません。二つの絵巻
をみるのに時間はかかりますが、清明上河図の
ようなことはありません。じっくりみながら清明
上河図もこういう感じでみれてたらなとつくづく
思いました。
この展覧会は30年に一度クラスの大展覧会です。
絵巻、仏画、蕭白、若冲、等伯、、本当にすばら
しいです。お見逃し無く。
投稿: いづつや | 2012.03.25 23:53
こんばんは、やっと行けました。
さすが絵巻のところだけは混雑してましたね。
係員が並ぶ必要ない、って言っているのに、順番を守れと怒るご老人。
吉備大臣絵巻とは遣唐使のお話だったのですね!
超能力を使ったりして面白いです。
ところで図録をみると、刀や能装束の展示は東京会場だけなのですね。
さすがトーハクという感じです。
投稿: oki | 2012.03.28 21:42
to okiさん
吉備大臣絵巻は伴大納言絵巻と人物描写が
よく似ており、コミカルですね。これと首が
ちょん切られる平治物語が一緒に展示して
あるのですから、もう最高の演出です。
ほんとうにすばらしいです。
美しい能装束ですね。絵画、彫刻、刀、着物
豪華で華やか、そして迫力一杯の日本美術に
酔いしれます。
投稿: いづつや | 2012.03.29 11:30