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2012.03.31

黒田清輝の‘舞妓’と対面!

3689_2        黒田清輝の‘舞妓’(重文 1893年)

3691_2     ‘佐竹本三十六歌仙絵・藤原興風’(重文 鎌倉時代 13世紀)

3692_2        国宝‘太刀 銘助真’(鎌倉時代 13世紀)

3690_2     ‘色絵桜樹文皿’(江戸時代 18世紀)

東博本館のいつもは近代日本画が展示してある部屋で黒田清輝のミニ回顧展が開かれていたのでしばらくみていた(展示は4/1まで)。

‘湖畔’(拙ブログ07/7/29)の隣にあった‘舞妓’をみるのは2度目だが、はじめてお目にかかってから20年以上も時間が流れている。だからこれはサプライズの一枚。華やかな着物を身につつんだ端正な顔立ちの舞妓を食い入るように眺めていた。東博の平常展示にはもうかれこれ8年も足を運んでいるのに、この絵はなかなか姿をみせてくれなかった。平塚市美であった回顧展にも出品されなかったから、ようやくみれたという感じ。

‘舞妓’同様、嬉しい作品と2階で遭遇した。それは佐竹本三十六歌仙絵の‘藤原興風’と‘小野小町’(展示は4/22まで)。どちらも個人の所蔵。一緒にみるのは06年にあった佐竹本の特集陳列以来のこと。‘藤原興風’の赤い口びるをまた目に焼きつけた。

佐竹本の三十六歌仙絵を何点みたかというと、06年出光美で展示された9点プラス7点の16点。半分にも達してない。36点を一気にみせてくれる特別展はおそらくこれからもないだろうから、プラスアαはあまり期待できない。あったとしても1,2点かもしれない。

刀が飾ってある1階と2階の部屋は必ず行くことにしているが、嬉しいことに鎧兜などがある2階に日光の東照宮が所蔵している‘日光助真’が飾られていた。これは名刀中の名刀、‘大徳川展’(東博 07年)で出会い夢中でみた。2度の対面があるとは、これはラッキー! 華やかな丁子乱れの刃文にまたまた惹きこまれた。

もうすぐ鍋島の‘色絵桜樹文皿’のように桜が満開となる。春がそこまでやってきている。

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2012.03.30

ゆったり鑑賞!東博総合文化展 遊楽図・水墨画

3685_2     国宝‘花下遊楽図屏風’(江戸時代 17世紀)

3686_2     国宝‘渓陰小築図’(室町時代 15世紀 京都・金地院)

3687_2     雪舟の‘四季山水図・春、夏’(重文 室町時代 15世紀)

3688_2     雪舟の‘三聖図’(室町時代 15世紀中頃 ボストン美)

東博の総合文化展を見る機会は以前にくらべると随分少なくなったが、企画展をみたあとはいつも足を運び、一階と二階を時間をかけてみている。

現在、国宝展示室に飾られているのは‘花下遊楽図’。春の季節になるとこの絵が登場するので定番の絵としては馴染み深いもの。風流踊りを披露している人物の体がかなり傾いているのをいつも夢中になってみてしまう。刀を背負って踊っているのは男装をした女性。右隻の2扇がないのは関東大震災で消失したため。

この絵をみたあと次の部屋に移動すると、よくでてくる国宝の山水画があった。それは京都の金地院が所蔵している‘渓陰小築図’。禅僧が憧れた庵での隠遁生活が描かれている。山に囲まれた渓流沿いの庵で一日中自然と対話をしていれば、俗世の些事に煩わされることもなく心穏やかに過ごせることだろう。

雪舟(1420~1506)の‘四季山水図’は季節に合わせて二幅ずつ展示される。これは雪舟が中国に滞在している時に描いた作品だから、画風は明の山水画をイメージさせる。暗い画面なのでちょっとしんどいが、右の春の光景では左下に驢馬に乗った男と従者がみえる。

平成館で開かれている‘ボストン美 日本美術の至宝’展に雪舟が2点でている。‘寿老図’と蓮を左右に配した‘三聖図’。二つとも10年前京博で行われた‘雪舟展’に出品された。仏教、儒教、道教を象徴する3人の人物が体を寄せ合って座る姿に自然と足がとまる。

今年は出かける展覧会で毎回ビッグな作品に遭遇するので、例年以上に展覧会鑑賞が楽しい。4月のお目当ては雪舟の国宝‘山水長巻’。4/14からはじまるサントリー美での公開が待ち遠しい。

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2012.03.29

東博浮世絵エンターテイメント! 広重・北斎・歌麿

3684_2      歌川広重の‘名所江戸百景・隅田川水神の森真崎’(1856年)

3683_2         歌川広重の‘名所江戸百景・千駄木団子坂花屋敷’(1856年)

3682_2             葛飾北斎の‘桜花に鷹’(1834年頃)

3681_2     喜多川歌麿の‘太閤五妻洛東遊観之図’(1804年頃)

東博の浮世絵コーナーでは現在この時期の定番、桜の絵がずらっと展示してある
(3/20~4/15)。

出品作30点のうち花見の絵を沢山描いた広重が12点と半分近くを占める。‘名所江戸百景’からは手前に大きく桜を描く構図に大変惹かれる‘隅田川水神の森真崎’や人々の満開の桜に楽しむ様子を生き生きと描いた‘千駄木団子坂花屋敷’など5点。

北斎の‘桜に鷹’は久しぶりにみた。これは縦長の長大判に描かれた花鳥の一枚で他に‘滝に鯉’、‘遊亀’などがある。
北斎というと来月14日から三井記念美でホノルル美が所蔵する北斎コレクションが公開される。9年前にこの美術館所蔵の‘浮世絵風景画名品展’を体験したが、この度は北斎に絞った展示。プラスαに期待したい。

歌麿は三枚続の‘太閤五妻洛東遊観之図’を描いたばっかりに三日間牢に入れられ、手鎖50日の刑を食らった。この絵を見るたびに打ちひしがれた歌麿の姿を想像する。幕府は禁令をかいくぐって枕絵や美人画を描いていた歌麿をいつかガツンといわせてやろうとチャンスを狙っていたことは明白でこの秀吉の花見の絵はそのトリガーをひく格好の絵だった。この刑が歌麿の寿命を縮めたことはまちがいなく、数年後に歌麿はこの世を去った。

もうひとつの三枚続は勝川春潮の‘飛鳥山花見’。現在の北区にある飛鳥山は品川御殿山とともに江戸の桜の名所で多くの浮世絵に描かれている。こういうワイドスクリーンでみると花見の楽しさが倍増する感じ。

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2012.03.28

大リーグ 日本で開幕!

3680大リーグは日本で行われるマリナーズとアスレチックスの2連戦で開幕した。

今年のマリナーズにはイチローのほかにソフトバンクから移籍した川崎と楽天の岩隈が加わったが、そのプレーがみれるのはイチローと川崎のみ。

期待の岩隈はオープン戦の成績がぱっとせず、残念ながらこの2戦では出場せずアメリカで一斉にはじまるゲームから中継ぎとしての役目をはたすことになった。

ここでいい成績を残せば先発に復帰ということになるが、6月ころか。自分のピッチングスタイルを取り戻せば活躍はできるのだから、そうあせることはない。

川崎は開幕からマイナーの選手ではなく晴れて大リーガー、嬉しいだろう。師匠のイチローがそばにいるのだから、アメリカの野球に慣れれば準レギュラーとしてゲームにでることが多くなるにちがいない。守備機会としては、本来のポジションのショートは守りの要のライアンはいるから一番を打つフィギンズの調子が悪くなったときの3塁。

今日先制のホームランを打った2塁のアクリーを追い抜くのは無理だが、ライアンとフィギンズなら打撃で川崎が二人を上回る可能性は充分あるので期待がもてる。

3番イチローは初戦でいきなり4安打。チームの勝利に貢献した。今年は打点をあげることが求められる打順だから、思いっきりのいいバッティングで2塁打を量産して欲しい。そして、効果的なホームランを10本くらい。これくらいの期待値ならイチローのバッティング技術をもってすればわけないだろう。

3番を打つイチローとレンジャーズのダルビシュ、ヤンキースの黒田、オリオールズの和田との対戦を早くみてみたい。

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2012.03.27

ヒットが続く府中市美の‘三都画家くらべ’展!

3677_3                伊藤若冲の‘垣豆群虫図’(1790年)

3679_3              曽我蕭白の‘虎図’(18世紀後半)

3676_3     狩野探幽の‘四季花鳥図’(1672年)

3678_3     宋紫石の‘柳汀双禽図’(18世紀後半)

府中市美の‘三都画家くらべ’展(3/17~5/6)を楽しんだ。この展覧会は1年前から開幕を心待ちにしていたので、どんな作品がでてくるのか事前にHPで調べた。そうすると期待をもたせる絵が2点あった。

伊藤若冲(1716~1800)の‘垣豆群虫図’(展示は前・後期)が展覧会に登場するのは82年ぶりだそうだ。こういう腹の底から嬉しくなる作品をみせてくれるのだから、ここの江戸絵画展はレベルが高い。この絵に描かれた虫や垣豆は‘菜虫譜’(拙ブログ06/4/7)とよく似ている。単眼鏡と使いながら虫を確認すると、クモ、モンシロチョウ、ナミアゲハ、キリギリス、クマバチ、バッタ、カマキリ、ショウジョウトンボ、ムカデ

若冲はほかに猿と鷹の絵がある(前期:3/17~4/15のみ)。後期(4/17~5/6)にはもう一点、定番の鶏がでてくる。若冲同様期待していたのは曽我蕭白(1730~1781)だったが、今回は‘虎図’一点。この虎は人間ぽい虎で年齢をずいぶん重ねた老虎という感じ。‘ご機嫌はどう?虎の世界でも仲間とのつきあいとかいろいろあるのだろうネ’とかなんとか声のひとつもかけたくなる。

HPをチェックをしたとき目を見張ったのが狩野探幽(1602~1674)の‘四季花鳥図’。これは6年前京博であった‘京焼展’のとき展示替えで見損なった絵。永平寺が所蔵しているので、もうみる機会はないかなと諦めていた。大きな絵で画像は春の梅、夏の柳。余白を充分とった画面に花や鳥を配する構成は目にやさしく気品のただよう描写が心を打つ。

今回の収穫のひとつは宋紫石(1715~1786)。4点あった。なかでも絵の前に長くいたのがキンケイを横から描いた‘柳汀双禽図’(前期)。また、広重の手前に大きく対象を描く絵を思い出させる‘蓮池水葵図’(前期)にも足がとまった。

後期も出動の予定。

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2012.03.26

スーパー展覧会!‘ボストン美 日本の至宝’ その四

3672_3     祥啓の‘山水図’(15世紀末~16世紀初)

3674_2          伊藤若冲の‘鸚鵡図’(18世紀後半)

3675_2     伊藤若冲の‘十六羅漢図’(18世紀後半)

3673_2        橋本雅邦の‘騎龍弁天’(1886年)

室町後期に関東で活躍した禅僧画家祥啓の描いたいい絵が根津美にあるが、この展覧会に出品されている‘山水図’も思わず足がとまる絵。横長の画面の中央に水面が大きく広がり、両サイドに描かれた岩組の間をぬけて視線は遠くの山々にすうーっと進んでいく。これほどみてて心地のいい山水画にそうはお目にかかれないので、じっくりみた。

伊藤若冲(1716~1800)の作品が何点やってくるか気になっていたが、ふたをあけてみると2点。手元の大きな若冲の画集に載っているのは4点、そのなかの‘鸚鵡図’と‘十六羅漢図’が公開されるのだから上々である。‘鸚鵡図’は日本にも一見すると同じ絵では?とみまがうのが和歌山県の草堂寺と千葉市美にある。

ボストンの鸚鵡と向きが同じなのは草堂寺のものだが、レースのような羽毛の輝きはボストンのほうがぐっといい。08年現地を訪問したとき、‘松に鸚鵡図’(拙ブログ08/4/20)と運良く対面することができた。いい鸚鵡の絵を2つともみれたから上機嫌。

4点飾られた‘十六羅漢図’は羅漢の着ている衣裳の墨の輪郭線がじつに印象的。若冲の水墨作品をみる楽しさのひとつがこの墨色。濁りのない濃い墨でのびやかに表現することで人物の強い個性が引き出されている。予想を大きく上回る羅漢図だった。

フェノロサのコレクションだった橋本雅邦(1835~1908)の‘騎龍弁天’をみるのは2度目。6年前東近美であった展覧会同様、弁天の乗った龍を吸い込まれるようにみていた。右上にみえる洞窟のようなところからでてきて、波打つ海面の上を堂々と飛んでいる感じ。弁天の後ろに座らせてもらいたくなった。

スーパー展覧会の感想記はこれで終わり。ボストン美の所蔵する日本美術の超一級品を存分に楽しめた喜びをかみしめている。

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2012.03.25

スーパー展覧会!‘ボストン美 日本美術の至宝’ その三

3669_2          ‘馬頭観音菩薩像’(平安時代 12世紀中頃)

3668_2        ‘普賢延命菩薩像’(平安時代 12世紀中頃)

3671_2        狩野元信の‘白衣観音図’(室町時代 16世紀前半)

3670_2     狩野永納の‘四季花鳥図屏風’(江戸時代 17世紀後半)

展覧会場へ入ると最初に出迎えてくれるのが仏画。全部で16点ある。このなかに以前確実にみたものが2点、展覧会の図録には載っているがみたという実感がないのが3点あった。

日本にあったら国宝に指定されると思われるのが‘馬頭観音菩薩像’と‘普賢延命菩薩像’。‘馬頭観音’は07年奈良博であった‘美麗 院政期の絵画展’(拙ブログ07/9/21)ではじめてお目にかかったときその忿怒の表情と臙脂(えんじ)色のような赤の肉体に圧倒された。描かれた当時は截金で装飾された着衣の部分が美しく輝き、重厚な仏画だったにちがいない。

大収穫なのが‘普賢延命菩薩像’。目が自然に向かうのは菩薩を食ってしまうほど存在感のある白象。頭が3つある白象の下にはさらに小さな白象が5体みえる。どの象も目は金色で彩色され強い目力をしている。その目に吸い寄せられしばらくながめていた。

狩野派の実質的な確立者である狩野元信(1477~1559)の描いた‘白衣観音’に心を打たれた。絵の存在は知っていたが、本物はこれほどの傑作だったとは!白衣の観音が正面向きで宙に浮くように描かれているのでじっと見入ってしまう。元信はほかに3点あるが、大きな‘韃靼人狩猟図’にも視線が釘付けになる。

狩野山雪の‘十雪図屏風’と狩野永納の‘四季花鳥図屏風’は20年くらい前銀座の松坂屋であった‘ボストン美展’に出品された。そのころは狩野派というと永徳と山楽の絵くらいしか関心がなかったから、この親子の作品にそれほど惹きこまれなかった。

ところが、今では山雪(1590~1651)に開眼したから、永納(1631~1697)の‘四季花鳥図’に描かれた雪の積もった梅の太い幹が山雪の絵とダブってみえてくる。京狩野の画風の魅力を再認識した。

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2012.03.24

スーパー展覧会!‘ボストン美 日本美術の至宝’ その二

3664_2     ‘平治物語絵巻 三条殿夜討巻 三条殿炎上’(13世紀後半)

3665_2  ‘平治物語絵巻 三条殿夜討巻 後白河上皇を拉致する信頼軍’(13世紀後半)

3666_2     ‘吉備大臣入唐絵巻 巻三’(12世紀後半)

3667_2     ‘吉備大臣入唐絵巻 巻三’(12世紀後半)

曽我蕭白の‘雲龍図’とともに鑑賞を楽しみにしていたのが‘平治物語絵巻 三条殿夜討巻’。この日本にあったら国宝間違いなしの絵巻は2000年にも里帰りしている。このときは広島に住んでいてみることができなかった。その絵巻とようやく対面でき今は満ち足りた気分。

顔を画面にくっつけるようにしてみたのが三条殿が炎上する場面。これまで美術本でこのシーンを何度みたことやら。紅蓮の炎の表現はじつにリアル。建物が勢いよく燃えるときはこんな感じ。こちらにまで熱い空気が流れてきて火の揺れ動く音や燃える木からでるパチパチという音が聞こえてくるよう。この炎上のシーンばかりみていると、そのすぐ下で二人の武士が男の首を切り落とすところを見逃す。

東博や静嘉堂文庫にある‘平治物語絵巻’と比べるとボストンが所蔵するものは迫力が一段とまし、騒然とし殺気に満ちた合戦の様子がストレートに伝わってくる。とくにスゴイのが動的描写。牛車が猛スピードで走り、激しく炎上する建物の横では血まなぐさい闘いがそこかしこで繰り広げられる。そして後白河上皇を乗せた牛車を取り囲む武士の数が圧倒的に多く、その菱形をした隊列は軍団のパワーを見せつける。

1週間くらい前NHKであったこの展覧会を紹介する番組(俳優の石坂浩二らが出演)に牛車のスピード感を表わすのに車輪を細い線のぐるぐる巻きにし漫画的に表現しているという話がでてきた。この描き方は以前静嘉堂文庫で絵巻をみたとき気づいていたが(拙ブログ09/6/29)、ボストン美蔵でもこの表現がでてくるとこがわかったので隣の方と4つの目でじっくりみた。車輪のむこうに犬の足まで描かれている。これはスゴイ!

2年前奈良博の‘大遣唐使展’にやってきた‘吉備大臣入唐絵巻’(10/4/22)は四巻全部が展示されている。まだ縁の無かった巻二と三をニヤニヤしながらみた。文選(もんぜん)の試験では吉備大臣は幽鬼(安倍仲麿の霊)の協力を得て出される問題を盗み聞きする。本当に楽しい絵巻、一生の思い出になる。

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2012.03.23

スーパー展覧会!‘ボストン美 日本美術の至宝’ その一

3662_2     曽我蕭白の‘雲龍図’(左隻 1763年)

3663_2        曽我蕭白の‘雲龍図’(右隻 1763年)

3659_2     曽我蕭白の‘風仙図屏風’(18世紀後半)

3660_2     曽我蕭白の‘商山四皓図屏風’(18世紀後半)

待望の‘ボストン美 日本美術の至宝’展(3/20~6/10)をみてきた。期待通りのスゴイ作品がずらっと揃っている。これほど豪華なラインナップを一回で終わりにするのはもったいないので、数回にわけて紹介したい。まずは曽我蕭白(1730~1781)の傑作から。

今回、アメリカから里帰りする日本美術の目玉の一つが蕭白コレクション。11点展示されている。このうち初公開は6点。美術本にはもう一点ボストン美蔵が載っているから所蔵しているのは全部で15点くらいだろうか。こんなすばらしい蕭白が日本で一挙にみれるのだから天にも昇る気持ち。

展覧会場の最後の最後にどーんと飾られているのが度迫力の‘雲龍図’。10m近くある。左が頭の部分で右が尾っぽ。この間には胴体も存在していたというから、描かれた当時はこれよりさら大きい巨大な龍が襖一面に躍動していた。右で視線が集中するのが愛嬌のある目、だから目だけをみると龍の凄みを甘くみてしまうが、口からでてい牙やその隣の馬鹿デカイ鋭い爪をみると、やはり軽々しくは対面できないなと思ってしまう。また、口元の髭や爪のまわりに激しく飛び散る墨の点々にも龍の神聖なエネルギーがみなぎっている。

画面に躍動感を感じるのは右のほう。波濤は生き物のように上下左右に荒れ狂い、龍がそのあいだを尻尾をくねくねさせながら進んでいく。波濤のフォルムがじつにダイナミック。右では上から覆いかぶさるように丸い円が複雑に絡みあい、左端では奥行きのある波濤になっている。

‘雲龍図’よりもっと激しい音が聞こえてくるのが‘風仙図’。あまりの風の強さに右では二人の男がひっくり返っている。この漫画チックな人物描写と存在感いっぱい黒の渦巻き(龍の化身)をはじめてみたとき、いっぺんに蕭白の虜になった。

今回期待していたのは‘商山四皓図’(六曲一双)。この絵が日本にやってくるのははじめてではないが、これまで縁がなく7年前京博で開催された回顧展にも出品されなかった。これは右隻で3人の老高士の描き方に目が吸い寄せられる。

眉毛を切れ目のない太い横線で表現し、着ている衣裳の輪郭線がもっと太い線で一気に引かれている。人物をこのようにざざっと表現するのは簡単のようだが、これは並みの絵師にはまねができない。天才蕭白の技が冴える一枚である。

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2012.03.22

ビッグニュース! 2013年 エル・グレコ展 山楽・山雪展

3658     グレコの‘ラオコーン’(1610~14年 ワシントン ナショナル・ギャラリー)

3656     狩野山楽の‘龍図屏風’(17世紀初め 重文 京都 妙心寺)

3657     狩野山雪の‘梅に遊禽図襖’(1631年 重文 京都 天球院)

美術館のHPなどで定期的にチェックしている展覧会情報にとびあがるほど嬉しいものがあったので早速お知らせしたい。

★‘エル・グレコ展’:2013年1/19~3/31 東京都美
★‘狩野山楽・山雪展’:2013年3/30~5/12 京博
★‘台北故宮博物院展’:2014年夏 東博

6月30日に新装開館する東京都美ではビッグな展覧会が3回続く。第1弾がフェルメールの‘真珠の耳飾りの少女’やレンブラントの‘自画像’などがやってくる‘マウリッツハイス美展’(6/30~9/17)、その次が‘メトロポリタン美展’(10/6~1/4)。

そして、‘エル・グレコ展’。情報は今のところこれだけ、作品の内容はわからない。日本でのグレコ展は1986年西洋美で行われて以来のこと。じつに27年ぶり。西洋美の回顧展はグレコ(1541~1614)にのめりこむきっかけとなった思い出の展覧会、日本でよくもこんな質の高い回顧展が実施されたものだと会場では驚きの連続だった。

東京都美はどのくらいのグレコ作品を集めてくるだろうか?これまでここの企画展は実績があるから期待できそうな気がする。勝手に妄想するオプションの一つはプラド美のグレココレクションをコアにするもの、もうひとつ考えられるのは2弾の続きでメトロポリタンにあるグレコ作品を中心にして、これにワシントンにある‘ラオコーン’やシカゴ美が所蔵するものなどを加えるラインナップ。もちろん西洋美のように世界中から名画を揃えてくれるのがベストだが、これは無理。果たして?

4,5年前京博へよく出かけていたとき、アンケート用紙に毎度‘山楽・山雪展’を実施して欲しい’と書いていた。それが来年実現する。腹の底から嬉しい!‘狩野永徳展’
(07年)、‘長谷川等伯展’(10年)ときて‘山楽・山雪展’(13年)。京博は皆の期待に応えてくれる本当にいい美術館、惚れ直した!山楽(1559~1635)、山雪(1590~1651)の画集に載っている代表作は鑑賞済みのものが多いが海外を含めてみたい絵はまだあるから、それらがいくつみられるか。開幕がとても楽しみ。

昨年の10月にとびこんできた‘台北故宮博物院展’(拙ブログ11/10/28)については、20日の新聞報道によると2014年の夏に東博で開催されることが決まった。これも20日からはじまった‘ボストン美 日本の至宝展’のように30年に一度クラスの豪華な展覧会。2年後はスゴイことになりそう。

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2012.03.21

花の静物画はゴッホが描いたものだった!

3652_2     ゴッホの‘花の静物’(クレラー=ミュラー美)

3655_2       ゴッホの‘グラジオラスとエゾギクを生けた花瓶’(1886年 ゴッホ美)

3653_2         ゴッホの‘青い花瓶の花束’(1887年 クレラー=ミュラー美)

3654_2     ゴッホの‘種のできた4つのひまわり’(1887年 クレラー=ミュラー美)

今日の朝日新聞にゴッホの花の絵のことが報じられていた。最新のX線調査によりこれまで作者が特定できなかったこの絵はやはりゴッホが描いたものであることがわかったという。

一番上の画像がその絵。この花の静物画はどこかでみたな!?という感じがしたので、これまで日本で開かれた回顧展の図録をぱらぱらめくってみると、ありました、ありました!05年、東近美の回顧展に出品されていた。図録の説明書きにはゴッホに?マークがつけられ制作年も不明となっている。

この絵がゴッホ作と確定されたのは下に描かれていた格闘する二人の男の筆使いや使われた絵の具がゴッホがパリに移り住む前にいたアントワープで描いた作品の特徴と一致したから。また、これまで静物画のキャンバスとしては大きすぎるとされた点も、ゴッホが通っていた美術学校では人物画は縦100cm、横80cmのものが標準形となっており、ゴッホはこれに花の絵を描いていたことで解決。

ゴッホがパリ時代に描いた‘グラジオラスとエゾギク’はこの絵と一緒に展示されたし、03年にも損保ジャパン美であった‘ゴッホと花’展にもやって来た。厚く塗りこまれた絵の具が今でも目に焼きついている。

同じくパリで描かれた点描風の‘青い花瓶の花束’は色彩の明るさがぐっと増し色彩に開眼する寸前といった感じ。この絵も横浜美で開かれた回顧展(95年)に登場したから、楽しまれた方も多いはず。お気に入りの一枚。

ゴッホの花の絵というと誰でも思い浮かべるのがひまわり。アルルで描いたひまわりがイエローパワー全開で生き生きとしている対し、パリにいるときに描かれたひまわりには野性的な力強さがある。これから枯れていくのだろうが、花の生気はまだ萎えておらずしゃんとしている。

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2012.03.20

いつか行きたい美術館! コルマール ウンターリンゼン美

3648_3

3649_2     グリューネヴァルトの‘イーゼンハイム祭壇画・磔刑’(1512~15年)

3651_2     ‘イーゼンハイム祭壇画・キリストの復活’(1512~15年)

3650_2             ‘聖アントニウスの誘惑’(1512~15年)

西洋の宗教画のなかには強烈な印象をもった絵があるが、08年ワシントンのナショナル・ギャラリーでみたグリューネヴァルトの‘磔刑図’(拙ブログ08/4/11)もそんな絵の一枚。

謎につつまれているドイツの画家グリューネヴァルト(1475~1528)の絵はこれまでほとんど縁がなく、ワシントンにある絵しかみたという実感がない。美術本には一度訪れたことのあるミュンヘンのアルテ・ピナコテーク蔵のものが載っているが、記憶はまったく消えている。

この画家の有名な絵‘イーゼンハイム祭壇画’が飾ってあるのはフランス、アルザス地方の町コルマールのウンターリンゼン美。コルマールはジュネーブにいるころ使っていた大きな地図でみてみるとバーゼルからおよそ70kmくらいのところ、ストラスブールとミュルーズのちょうど中間あたり。

4年前、イバラの鞭のとげがキリストの体全身に針のように刺さった‘磔刑図’をみたときは‘イーゼンハイム祭壇画’は同じような絵でしかもフランスの遠いところにあるので、みなくてもいいかなと思っていた。だが、今はその思いが変わってなんとか頑張って絵の前に立とうという気になっている。

それはスイスでの美術館めぐりを実現しようと決めているから。チューリッヒに何日間か滞在してバーゼル美とかベルン美、サンモリッツにあるセガンティー二美などめぼしい美術館をぐるっとまわる予定だが、折角だからバーゼルから近いコルマールにも足をのばしたい。

‘イーゼンハイム祭壇画’は10枚のパネルで構成されている。痛々しいキリストの死の姿を写実的に描いた‘磔刑’同様怖いものみたさ気分なのがグロテスクな怪物がうごめく‘聖アントニウスの誘惑’。この祭壇画は古典絵画で数点残っているビッグな絵。早くみれるようミューズに祈っている。

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2012.03.19

もっと見たいホルバインの名画!

3647_2     ‘商人ゲオルク・ギーゼ’(1532年 ベルリン美絵画館)

3645_2     ‘クロムウェルの肖像’(1533年 ロンドン ポートレイト・ギャラリー)

3646_2     ‘市長マイヤー家の聖母子’(1528年 ドイツ ダルムシュタット宮廷美)

3644_2       ‘家族の肖像’(1528年 バーゼル美)

肖像画というと女性を描いたものが関心の8割をしめており、男性の肖像は軽くみることが多い。だが、ホルバインとレンブラントとゴヤの3人は例外でしっかりみている。

ひとりの画家の作品を7割くらいみると、追っかけのエネルギーはまだ体験のすくないほかの画家に自然と移っていく。今、大きな関心を寄せているのはホルバイン(1497~1543)。これまでみた作品は少なく、昨年11月マウリッツハイス美でお目にかかった‘ロバート・チェースマンの肖像’(拙ブログ11/12/13)や‘ジェーン・シーモアの肖像’など4点をふくめても15点ほど。

当面のターゲットはベルリンにある‘商人ゲオルク・ギーゼ’とロンドンのポートレイト・ギャラリーが所蔵する‘クロムウェルの肖像’。どちらもじっとみていると人物の個性がよく伝わってくる。商人が座っているテーブルの上にあるガラスの花瓶や後ろの壁の棚にある本などの驚くほど細密な描写をじっくりみてみたい。

ロンドンはナショナルギャラリーは何度も訪問しているのにポートレイト・ギャラリーにはまだ足を踏み入れてない。2年前手に入れた美術本でこのクロムウェルの肖像画があることを知ったので次は是非出かけようと思っている。この絵の前では言葉を失ってみているような気がする。

ホルバインはロンドンへ渡る前はバーゼルで絵を描いていたから、スイスで一番の美術館といわれているバーゼル美にはホルバインの作品が100点もある。だから、ここへはなんとしても訪問したい。とくにみたいのが‘墓の中の死せるキリスト’や‘家族の肖像’、そしてホルバインのパトロンだったボニファチウス・アマーバッハの肖像画。

また、バーゼル市長ヤコブ・マイヤーを描いた聖母子の祭壇画にも魅せられる。ヴェネツィアにあるベリーニやティツィアーノの描いた聖母子を彷彿とさせるのだから、ホルバインの技は卓越している。この画家に一歩づつ近づいていきたい。

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2012.03.18

マリナーズ岩隈が心配!

3643_2大リーグのキャンプは終盤に入り、シーズン開幕にむけて日本人選手の動向がだんだん気になりだしてきた。

ここにきて心配な選手がいる、マリナーズの岩隈。調子がなかなかあがらずアスレチックスとのオープン戦では4回を7安打5失点とぴりっとしない。

マリナーズの今シーズンは28日(水)、29(木)日本で行うアスレチックスとの2連戦ではじまるから、キャンプはあと2、3日で打ち上げ。23日頃には日本へ出発だろう。

岩隈は日本へ帰ってこないことは当初からきまっていることかもしれないが、3戦か4戦の先発に備えて現地での調整にピッチをあげないと厳しい状況になる。うまくスタートをきれる可能性は今のままだと30%くらい。昨シーズン楽天で投げていて、一時期体調を崩したがそのあたりが尾を引いているのだろうか。

岩隈の真骨頂は低めにボールを集めるコントロールの良さ。これが今できてない。打者を力でねじ伏せる投手ではないから、狙ったコースへうまくボールを決めていかないと簡単に打ち返される。体調を整え早く本来のピッチングスタイルをとりもどしてもらいたい。

同じマリナーズでマイナー契約でキャンプに参加している川崎はベンチ入りメンバー25人のなかに入りそう。東京ドームの試合では先発はないだろうが、途中から守備につくことはあるだろう。師匠のイチローからいろいろ学び、これまでのオープン戦でいい結果を出しているから大リーガーとして大いに期待できる。

岩隈も川崎も頑張れ!

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2012.03.17

いつか行きたい美術館! ルーアン美術館

3642_2         モネの‘ルーアン大聖堂’(1892~93年 オルセー美)

3640_2     シスレーの‘モレの教会’(1893年)

3639_2         モネの‘サン=ドニ街 1878年6月30日の祭日’(1878年)

3641_2         カイユボットの‘カフェにて’(1880年)

国内の京都や仙台へでかけるような感覚でパリを起点にしてフランスの地方都市へ行ってみようという気に少しづつなっている。よその国での旅だからそう簡単にはいかないがこれも一つのチャレンジ。

ノルマンディ地方の中心地、ルーアンはパリから列車で約1時間半で着くという。セーヌ河沿いにある街でどうしても行ってみたいのがモネが半生を過ごしたジヴェルニーと大聖堂の連作の舞台ルーアン。

ルーアンを訪問したときどこを回るかというのはアバウトには決めている。まず、モネ
(1840~1926)が壁にあたる光の変化を描いたノートルダム大聖堂をみて、そのあとはモネが絵を描いた聖堂の前の建物へ行きそこからの光景をモネになったつもりで体験する。名所観光ではずせないのはジャンヌダルクが処刑された場所。そこには1979年完成の教会が建っているようだ。

そして次にめざすのはルーアン美術館。作品の情報は片手くらいしかないが、ここは2000点以上所蔵。シスレー(1839~1899)はモネの大聖堂の連作に刺激をうけて
1893年から94年にかけて教会をテーマに14点描いており、その一枚がルーアン美にある。教会が反射する光の感じがモネの絵とよく似ている。2年前のヴィンタートゥール美展(世田谷美)で同じような絵に大変魅せられたからこの絵も期待がもてそう。

モネが1878年6月30日の祭日の様子を描いた作品は2点ある。オルセー蔵のものは‘モントルギュイユ街’でルーアンにあるのが‘サンドニ街’、どちらも街路がカラフルな旗や人々で埋め尽くされているが、ルーアンのほうは三色旗の赤のインパクトが強く目にとびこんでくる。この絵はなんとしてもみたい。

カイユボット(1848~1894)の絵は人物の後ろに描かれた鏡に興味深々。マネの最晩年の傑作‘フォリー・ベルジュールの酒場’はカイユボットのこの絵を参考にしている。シカゴ美でカイユボットの大作‘パリ、雨の日’をみたときの感動は今でも忘れられない。それ以来この画家の絵を一点でも多くみたくなった。‘カフェにて’にもいつかお目にかかりたい。

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2012.03.16

オルセーにクールベの気になる絵が!

3635_2     クールベの‘追い詰められた雄鹿’(1867年)

3636_2     クールベの‘オルナンの埋葬’(1849~50年)

3637_2     クールベの‘負傷者’(1844年)

3638_2     クールベの‘雷雨のあとのエトルタの断崖’(1870年)

この1ヶ月、テレビ東京の‘美の巨人たち’やBS各局の美術番組は昨年10月に新装オープンしたオルセーをとりあげそのすばらしい展示空間とそれによってさらに輝きをました名画の数々を紹介してくれた。印象派狂いだけでなく多くの美術愛好家が興味深くみられたにちがいない。

オルセーには年間300万人が訪づれるという。まったくスゴイ人数だが、今回の全面リニューアルでさらに多くの人が押し寄せているようだ。番組でみると壁の色の変更や自然光のとりこみ方の改良などにより作品が確かに驚くほど鮮やかにみえる。印象派の鑑賞がライフワークだから、ひゅーと展示室にまで飛んでいきたい気持ちになる。

関心の的はもちろんマネやモネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンなどの名画だが、今日はその話ではなくつい数日前放送されたBSジャパンの‘美の浪漫紀行 ミレーの晩鐘’にでてきたとても気になる絵のこと。

その絵はクールベ(1819~1877)の狩猟画‘追い詰められた雄鹿’。これは08年グランパレで開催された大回顧展(拙ブログ08/2/23)に出品された。びっくりするほど大きな絵(縦3.55m、横5.05m)だから、目に焼きついている。問題はこの絵の所蔵先。

展覧会のときはブザンソン美術考古学博物館蔵となっており、出品された3点の1点だった。これが今新オルセーで‘オルナンの埋葬’と‘画家のアトリエ’の大作2点の横に展示してある。一見すると常設展示だから、この絵はオルセーの所蔵作品。ということはオルセーはこの鹿を射止めた絵をブザンソンから買ったことになる。それとも、新オルセーに華をそえるために特別展示されているのだろうか?

次回オルセーへ足を運んだとき所蔵先がわかるだろうが、もし常時展示されているのならオルセーはスゴイ絵を手にいれたものである。印象派のほかに大きな楽しみが加わった。

オルセーはクールベの油彩画を17点所蔵している。件の大作2点をはじめてとして風景画の傑作‘エトルタの断崖’や人物画、動物画、静物画などのコレクションは世界一。また再会したい。

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2012.03.15

もっと見たいウェイデン・メムリンクの名画!

3634_2

3632_2     ウェイデンの‘最後の審判’(15世紀中頃 ボーヌ施療院)

3631_2     メムリンクの‘最後の審判’(1467年 ポーランド グダニスク ボモルスキ美)

3633_2              メムリンクの‘バテシバの水浴’(1485年 シュツットガルト美)

絵画の鑑賞体験はできるだけバラエティに富んだものにしたいと常々思っているが、最近は細密描写が特徴の北方絵画に惹きこまれることが多くなった。

関心を寄せていたのはちょっと前まではファン・エイクとウェイデンの二人だけだった。ところが、昨年11月ブルージュでメムリンクの‘聖ウルスラの殉教’(拙ブログ11/12/23)や‘聖カタリナの神秘の結婚’(1/13)に遭遇し、この画家に一気に開眼した。

ウェイデン(1399~1464)は一度みてみたい絵がある。それはフランス ブルゴーニュ地方のボーヌニにある施療院に飾られてる祭壇画‘最後の審判’。この絵はだいぶ前に知ったが、そのころはまだウェイデンに開眼してなかったから、宗教画の一枚というくらいの感覚しかなかったが、今ではこの絵の前に立ったらさぞかし心が揺すぶられるだろうなとイメージするようになった。

メムリンク(1440~1494)も‘最後の審判’を描いている。でも、この祭壇画は簡単にはみられない。これを所蔵しているのはポーランドのグダニスクの美術館。グダニスクはポーランドの北部、バルト海に面する港湾都市。ブルージュで‘聖カタリナの神秘の結婚’に200%KOされたから、この‘最後の審判’にも大変魅せられる。ウェイデン同様一生の思い出になりそうな絵だから見たい度は強いが、グダニスクの街はいかんせん不安になるくらい遠い。

シュツットガルトにある‘バテシバの水浴’は心理的には以前よりすごく近くなった。レンブラントの絵ではバテシバは豊満な体で描かれているが、メムリンクのバテシバは細身で品のいい顔をしている。いつかお目にかかりたい。

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2012.03.14

いつか行きたい美術館! モンペリエ ファーブル美

3630_2

3629_2     クールベの‘こんにちはクールベさん’(1854年)

3628_2          バジールの‘村の眺望’(1868年)

3627_2     ドラクロアの‘アラブの騎兵隊の侵攻’(1832年)

南フランスは昔スイスのジュネーヴに住んでいたころクルマで行ったことがある。今から30年前のこと。訪れた街はモナコ、ニース、カンヌ、そしてアヴィニョン、そのあとスペインのバルセロナをめざした。

当時は美術鑑賞に今ほどほどのめりこんでいなかったが、ニースではシャガール美に入館した。聖書を題材にした大きな絵がいくつもあり、鮮やかな赤や黄色、青の輝きが今も目にやきついている。そして、マチス美へもクルマを走らせたのだが、生憎閉館だった。

ファーブル美があるモンペリエはバルセロナへ向かう途中、高速道路の行き先表示にその名前はでてきたのだろうが、そこに有名な美術館があったことなど知るよしもない。ファーブル美が頭のなかに入ったのは7年前損保ジャパン美にやってきたクールベ(1819~1877)の傑作‘こんにちはクールベさん’(拙ブログ05/7/13)をみてから。

そして、08年パリのグランパレで開催されたクールベの大回顧展に展示された作品と遭遇し、ファーブル美がオルセーに次ぐクールベコレクションを所蔵していることがわかった。‘こんにちはクールベさん’のほか‘パラヴァスの海岸’、‘眠る糸紡ぎ女’などいい風景画や肖像画に魅了されっぱなし。

これらの作品はモンペリエの銀行家でクールベのパトロンだったブリュイヤス(1821~1877)が所蔵していたもの。ブリュイヤスは同世代のクールベと仲がよかったらしく、肖像画を数点描いてもらっている。

クールベの作品はかなりみたから関心はほかの画家にあるが、気になっている絵が数点ある。その一つがもう何年も前から画集で惹かれているバジールの‘村の眺望’。ルノワールの盟友だったバジール(1841~1870)はモンペリエでワインを製造する裕福な家庭に生まれた。画面の手前に描かれた目力のあるこの女性といつか会いたい。

ドラクロア(1798~1863)の描く躍動感のある馬の姿にもぐっと引きこまれる。この美術館にはサプライズがまだまだありそうな予感がするので訪問リストに入れている。

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2012.03.13

もっと見たいブリューゲルの名画!

3624_2     ‘ネーデルランドの諺’(1559年 ベルリン美絵画館)

3623_2     ‘農民の婚礼の踊り’(1566年 デトロイト美)

3625_2     ‘ベツレヘムの嬰児虐殺’(1565~67年 ウィーン美術史美)

3626_2     ‘雪中の東方三博士の礼拝’(1567年 オスカー・ラインハルト・コレクション)

2週間前に放送されたBSプレミアム‘極上美の饗宴 バベルの塔’をみて、ブリューゲル(1526~1569)の絵がまた頭のなかを占めるようになった。

‘極上美の饗宴’は毎回興味深くみているが、いつも収穫が多い。この番組でおもしろかったのは実物の10倍の450インチの大画面に映し出された‘バベルの塔’。画集では塔の建設現場で働いている人物たちは細かすぎてよくみえないのにここでは画面の密度を落とさずみせてくれる。これがTVの醍醐味。

また、ジオラマ作家のつくった模型がとてもよくできていた。この作家のことはまったく知らなかったが、この世界では一番有名なのだろう。できあがった立体の‘バベルの塔’を公開することがあるのならみてみたい。

ブリューゲル作品の情報でひとつ加わったのがプラドが所蔵することになった新発見の‘聖マルティン祭のワイン’。昨年のベルギー旅行で念願の‘悪女フリート’(拙ブログ11/12/24)や‘サウルの自殺’(11/12/22)、‘鳥罠のある冬景色’(11/12/16)をみたあとにこの絵が登場したということは‘次はこの絵をみなさい’というミューズのお告げかもしれない。

これを含めて今、ブリューゲルの作品で関心が高いのは5点。見たい度の筆頭はベルリン美にある‘ネーデルランドの諺’、各場面をひとつ々目にやきつけたい。アメリカのデトロイトにある‘農民の婚礼の踊り’も一度みてみたいが、これは夢のままにおわる可能性が強い。ブリューゲルのこんないい絵がどうしてデトロイトにあるのか?、その経緯を敬愛する森洋子女史に伺ってみたいが、目利きの富豪コレクターがいたにちがいない。

ブリューゲルの油彩画は50点前後といわれているが、ウィーン美術史美はそのうち14点を所蔵している。これまで運良く12点みることができた。残るは‘ベツレヘムの嬰児虐殺’と‘嵐の海’、‘嬰児虐殺’については情報が二つあり、ロンドンの王室コレクションにも同名の絵がある。

まったく同じようにもみえるが、画面を仔細にみると一部がわずかながらちがっている。だとすると二つは別ヴァージョン。それとも、どちらかの記述がまちがっている?ウィーンで確かめたいが、この絵がいつも展示してあるかわからないのでちょっと厄介。

スイスのヴィンタートゥールにあるオスカー・ラインハルト・コレクションはBS番組のおかげでいろいろ情報が入り今では憧れの美術館。ゴッホやルノワールの絵とともにブリューゲルの‘雪中の東方三博士の礼拝’との対面を心待ちにしている。

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2012.03.12

ロンドン五輪マラソン代表 決定!

3622_25ヶ月後に迫ったロンドン五輪のマラソンに出場する代表が決定した。

男子は藤原(東京陸連)、山本(佐川急便)、中本(安川電機)、
女子は重友(天満屋)、木崎(ダイハツ)、尾崎(第一生命)。拍手々!

全員五輪は初出場。アマチュアアスリートにとってオリンピックは夢の舞台だから、そこで走れるのは最高に嬉しいだろう。

今回は順当な人選。男子では東京マラソンで2位になり2時間7分台で走った藤原と一週間前に行われたびわ湖マラソンで最後の最後で中本をぬいて日本人トップになった山本の二人は代表に文句のつけようがない。意見が分かれるのは3人目。

陸連の選んだのは福岡国際に日本人トップになった市民ランナー川内(埼玉県庁)ではなく、びわ湖で2時間8分台をだした中本。心情的には川内が選ばれるのを望んでいたが、福岡の記録2時間9分57秒は素人がみてもおおいにマイナス。やはり、山本同様悪いコンディションのなか8分台で走った中本が選ばれるのが妥当なところ。

一方、女子は3人とも各選考レースの日本人トップだから一番わかりやすい。横浜国際は見逃したが、大阪と昨日の名古屋のレースはみた。天満屋に所属する重友(拙ブログ1/29)の記録がもっともよく、その次が尾崎。尾崎は選考レース3度目の挑戦で納得いく成績が出せたから、大喜びだろう。話が横にそれるがこの選手の足の長いこと。女子マラソンを長年みているが、こんな美脚のランナーはみたことがない。

さて本番のレースでいい結果がだせるだろうか、期待は女子、3人のうち誰かがメダルをとってくれたら楽しいが。期待して開幕を待ちたい。

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2012.03.11

3.11 東日本大震災から1年

3619_2     ‘平等院鳳凰堂 阿弥陀如来坐像’(平安時代後期・1053年)

3618_2     ‘広隆寺 弥勒菩薩半跏像’(7世紀)

3620_2     ‘当麻曼荼羅縁起’(鎌倉時代・13世紀 神奈川 光明寺)

3621_2        小林古径の‘観音’(1940年)

昨年3月11日に起きた東日本大震災から1年がたった。いつもは時間がすぎるのは早いなと思いながらすごしているのに、この1年はとても長く感じられた。想像を超えた大地震、そしてそれに伴う福島の原発事故、処理がなかなか進まない瓦礫の山、、

急がれるのは街の復興計画の具体案づくりと迅速な実行。復興庁には現地の自治体と緊密に協議を重ね一日でも早い街の復興にむけて全力で取り組んでもらいたい。

拙ブログでは大震災のあと‘癒しのアートにつつまれて!’を立ち上げたが、今日は1年経ったのでまた仏像や仏画が載っている美術本を広げて静かに手を合わせている。こういうとき長く拝んでいたくなるのはやはり平等院の‘阿弥陀如来坐像’(11/3/22)と広隆寺の‘弥勒菩薩半跏像’。

光明寺にある‘当麻曼荼羅縁起’は昨年東博であった‘法然と親鸞’展に出品された。来迎の場面が描かれたものとしては知恩院にある‘阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)’とこの‘当麻曼荼羅縁起’(ともに国宝)が双璧。

早来迎のほうはスピード感を感じるのに対し、‘当麻曼荼羅’では阿弥陀や菩薩は音楽が奏でられるなか黄金に色づく空をゆっくりと降りてくる感じ。この場面をみていると死の恐怖が消え有難い気持ちになる。

小林古径の横向きの十一面観音にも癒される。この絵をみたのはまだ一回しかないが、05年にあった回顧展の図録をときどきみて心をしずめている。

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2012.03.10

いつか行きたい美術館! ウィーン アルベルティーナ美

3616          ボスの‘樹木人間’

3615          ブリューゲルの‘画家と目利き’(1566~68年)

3617     ブリューゲルの‘大きな魚は小さな魚を食う’(1556年)

3614        デューラーの‘草の茂み’(1503年)

芸術の都ウィーンには関心の高い美術館やワーグナーの世紀末芸術を表す建築物など見所が多いからもう一度くらいは行ってみたい。そのとき足を運ぶところはラフには決めてある。そのひとつが素描や版画を集めたアルベルティーナ美。

この美術館が所蔵する作品の情報は少ない。ただ、これだけは結構見たかもしれないというのがある。それはシーレの素描作品。05年アムステルダムのゴッホ美を訪問したとき幸運にも別館で‘エゴン・シーレ展’が開かれており、アルベルテイーナ蔵の作品が90点も展示してあったからである。

出品作はTASCHEN本にも沢山載っているから、Bunkamuraでみたレオポルトコレクションとかベルヴェデーレ宮にあるものを合わせるとシーレの油彩、素描ともどもかなりの数をみたことになる。だから、アルベルティーナではほかの画家に鑑賞のエネルギーを割くことができそう。

とはいっても知っているのはボス、ブリューゲル、デューラーだけで片手くらいの数しかない。関心を寄せているレンブラントやゴヤの版画などもあるのだろうか?ここにあげたボス(1450~1516)とブリューゲル(1525~1569)の3点は昔から美術本で馴染み深いもの。ニヤッとしているようにみえる‘樹木人間’には興味深々。

‘画家と目利き’はブリューゲルの自画像だが、思想家のような顔をしている。今でもそうだと思うが画家は単なる絵描きではなく相当な知識人、だからこういう顔つきになるのだろう。本物の前では大人物ブリューゲルと会ってるような気持ちになるかもしれない。

デューラー(1471~1528)の精緻な描写に惹かれる‘野兎’や‘草の茂み’は長いこといつかこの目でと願っている作品。版画も沢山揃っていることを期待したい。

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2012.03.09

いつか行きたい美術館! ウィーン レオポルト美

3610_2     レオポルト美術館

3611_2            シーレの‘自分を見つめる人’(1911年)

3612_2     シーレの‘枢機卿と尼僧’(1912年)

3613_2     クリムトの‘死と生’(1911~15年)

2001年に開館したレオポルト美は地図(拙ブログ11/11/3)でみるとウィーン美術史美の近くにあるはずなのに03年この街を訪問したときはなぜか見つからず、行きそびれてしまった。だから、ウィーンへまたでかける機会があったら真っ先に足を運ぼうと思っている。

この美術館が建っている場所のイメージはぼやっとしているが、所蔵する作品の情報は結構ある。というのは、美術館がまだオープンしてなかった1991年にここの自慢のシーレコレクションがBunkamuraの主催した‘エゴン・シーレ展’でどどっと公開されたから。

このころレオポルト博士(眼科医 1925~2010)が収集したシーレ(1890~1918)やクリムト(1862~1918)の絵がよくやってきた。今から思えば美術館建設の費用の一部を捻出するためだったのかもしれない。このため、二人の画家のいい絵はおおげさにいえば、ほとんど展示されたような気がする。

シーレだと‘回顧展’に‘ほおずきの実のある自画像’(09/6/9)、‘ヴァリーの肖像’、‘枢機卿と尼僧’、‘隠者たち’、‘横たわる女’などの代表作が出品されたし、クリムトの黄金が消えた晩年の作品‘死と生’とか風景画の‘ポプラⅡ’、‘カンマー城の小さな湖’などもみることができた。

でも、手元にレオポルトコレクションのリストがあるわけではないから、現地ではサプライズのプラスアルファに遭遇するかもしれない。美術館は他館へ貸し出すときは思い入れの強い作品は出さないことはよくあるから、勝手に期待値を下げるのは早計。気になる絵はシーレの‘自分を見つめる人’。これを含めて片手くらいを期待して訪問してみたい。

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2012.03.08

ナショナル・ギャラリーのすぐれものガイドブック!

3606_2     ロンドンナショナル・ギャラリーのガイドブック(09年)

3607_2

3608_2

3609_2     ‘週間 世界の博物館 ルーヴル美術館Ⅰ’(11年8月 朝日新聞出版)

スペインを旅行したとき手に入れたすぐれもの観光ガイドブックを紹介したが(拙ブログ11/2/23)、今日はロンドンにあるナショナル・ギャラリーがつくったすばらしいガイドブックのことを。

この‘ビジターガイド’を10年の11月現地で購入したときは宝物をゲットしたような気分だった。これまで海外の美術館の図録を数多くコレクションしてきたが、これが最もすぐれている。この美術館は名画の数々を所蔵していることで世界に知られているだけでなく、絵画のすばらしさを伝えることにかけても卓越したノウハウをもっている。

本の内容で秀逸なのが10の切り口で名画50点をセレクションした‘鑑賞ツアー’、
1 傑作
2 子どもと観る
3 動物
4 印象主義と後期印象主義
5 色彩と技法
6 衣裳
7 神話と伝説
8 キリストの生涯
9 風景
10 額縁

50の絵画は全点鑑賞ポイントが画面に印をつけて解説されている。‘Art Book’でもこの方法をとっているが、とてもわかりやすい。これが日本の美術本でもよく使われるようになった。‘週間 世界の博物館’(11/8/4)では鑑賞ガイドとして作品から線を引いて説明文をつけている。

朝日新聞出版はナショナルギャラリーのガイドブックを参考にしたかどうかわからないが、この‘世界の博物館’は特マルのすぐれもの。新機軸が2つある。ひとつは彫刻作品などをぐるっとみせる‘全アングル鑑賞’、もうひとつは作品の大きさをイメージさせるために長さ尺度をつけていること。

本好きなのでナショナルギャラリーの図録や週間美術本のような情報が豊富でビジュアルセンスのある本に出会うと本当に嬉しくなる。

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2012.03.07

アートに乾杯! 血がしたたり、飛び散る絵

3613     カラヴァッジョの‘ホロフェルネスの首を斬るユディット’(1599年)

3605     レーピンの‘息子イワンの遺体を抱くイワン雷帝’

3602     岩佐又兵衛の‘堀江物語絵巻’(部分 17世紀)

3603     絵金の‘浮世柄比翼稲妻 鈴が森’(18世紀)

普段みている絵画のなかで、画面に血が描かれているものというとキリスト磔刑図とか処刑の場面、そして戦争画。体から流れでる血は受難の象徴や悲劇を表すものだから、その量はどちらかというと少なめでそれほどリアルには描かれない。ところが、たまに身震いするほど生の血の匂いがただよっている作品に出会うことがある。

衝撃度の強い絵がカラヴァッジョ(1571~1610)の描いた‘ホロフェルネスの首を斬るユディット’。ホロフェルネスの首のまわりからは血がどびょーっとでている。敵将の髪の毛をつかみ眉間にしわをよせているユディットは勇気をふりしぼって右手にもった剣に力をこめている感じ。ユディットの側にいる老婆の落ちつき払った顔の表情は‘女を甘くみるとこういうことになるんだワ’と無言で語っているよう。

レーピン(1844~1930)の絵はまだお目にかかってないが、雷帝が抱きかかえる息子の頬にべたっとついた血のりの生々しさが心をザワザワさせる。これを所蔵するトレチャコフ国立美ヘは一度行ったことがあるが、ガイドさんはこういう絵がある部屋へは案内してくれなかった。ここへはもう一度訪問したいので、そのときは見逃さないようにしたい。

これまで体験した日本画でカラヴァッジョやレーピンの絵と似たような強いインパクトをもっているのは岩佐又兵衛(1607~1674)と土佐で活躍した絵金(1812~
1876)。‘堀江物語絵巻’は‘山中常盤’同様、復讐の話で岩瀬太郎は憎っくき悪国司の胴体や首、手足をばっさばっさ切り落としていく。血しぶきが飛び散るこれほど残虐なシーンはほかの闘いの絵にはでてこない。現在の劇画を先取りしている。

絵金の代表作、‘浮世柄比翼稲妻 鈴が森’もすごく緊張する絵。画面いっぱいに鮮血が飛び散り、左の白井権八にソーセージを調理するようにぶった切られた雲助の首や手首が無残に転がっている。土佐の人々はこの絵を祭りでみてアドレナリンがドッとでたにちがいない。

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2012.03.06

岩佐又兵衛の‘山中常盤物語絵巻’がやっとみれた!

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3600_3     ‘山中常盤物語絵巻・3巻 平泉へ旅立つ常盤と侍従’

3599_3    ‘4巻 山中宿で盗賊に襲われる常盤侍従’

3597_3     ‘5巻 宿の老夫婦に看取られる常盤’     

3598_3     ‘9巻 盗賊を討ち取る牛若丸’

久しぶりに熱海までクルマを走らせ、MOAではじまった念願の岩佐又兵衛の‘山中常盤物語絵巻 全巻公開’(3/3~4/4)をみてきた。

この絵巻は全12巻、長さにすると150m。展示室1から4を使いずらっとひろげられている。03年の秋以来の全巻公開だから、ワクワクしながらみた。これまで本物をみたのは04年10月千葉市美であった‘岩佐又兵衛展’に出品された3巻のみ。

絵巻自体はこれだけだが、全巻を撮影してつくられた映画‘山中常盤~牛若丸と常盤御前 母と子の物語~’(04年11月 監督羽田澄子 100分 製作 自由工房)を有楽町の朝日ホールでみたので(拙ブログ04/11/28)、物語がどういう風に展開していくかはおぼろげながら記憶されている。

常盤御前と侍従は春を待って牛若丸のいる平泉へ旅立つ。だが、美濃の国、山中の宿で悲劇が待ち受けていた。美しい着物に目がくらんだ盗賊にみぐるみはがされ、侍従ともども刺し殺されてしまう。胸に刀を突き刺され虫の息の常盤を宿の老夫婦が心配そうに看取っている。血のりが乳房のまわりや着物、床にべたっとついているこの場面には冷やっとするような怖さがあり体が一瞬フリーズする。

鮮血が画面に飛び散るもうひとつの残虐なシーンは牛若丸が盗賊たちを討ち取る場面。まず、最初に血祭りにあげられた男は首と足をちょん切られ、次は胴体輪切りの刑、さらに牛若丸はすごい切り方をする。ぱっとみてわからなかったが、体を頭から腰あたりまで縦に竹を鉋で割るようにずばっと切る。これはみてのお楽しみだが、心臓に持病がある方はパスされたほうがいい。

この絵巻を9年も待ったから、全巻鑑賞できたのは感慨深い。満ち足りた気分で館を後にした。

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2012.03.05

ブリューゲルの新発見絵画がプラドで公開中!

3595_3             プラド美術館(マドリード)

3594_2     ブリューゲルの‘聖マルティンのワイン祭り’(部分 1560年代中期)

3596_2     ブリューゲルの‘死の勝利’(1562年頃)

先週、2年くらい前から気になっていたブリューゲルの新発見絵画に関する情報が入ってきた。

BSプレミアム‘極上美の饗宴・バベルの塔’のなかでこの大きな絵‘聖マルティンのワイン祭り’が登場したのでちょっと興奮したが、本屋で手にしたポロック特集の‘芸術新潮3月号’にも森洋子女史の詳しい論文が掲載されていた。

‘聖マルティン’は現在プラド美で公開されているようだ(11/12/12~12/3/35)。この特別公開のあとは4月上旬から常設展示室に飾られるというから、次回プラドを訪問する機会があると確実にお目にかかれる。

この絵のことは10年10月の日曜美術館‘ブリューゲル10選’で知った。スペインの貴族の家に400年以上あったこの絵の鑑定を依頼されたプラドはブリューゲル(1525~1569)の真筆と判定し、これから修復作業に入るということだった。

その時点でプラドの所蔵になるのかは不明だったが、森女史によるとスペイン政府とプラドはこの絵を700万ユーロ(当時の約7億9千万円)で購入したようだ。

‘極上美の饗宴’でみると大変大きな絵。縦1.5m、横2.7mあるという。ブリューゲルの絵のなかでは最も大きい絵が発見されたことになる。制作時期としては1560年代の中期と推定されているから、ボスの影響を強く受けた‘死の勝利’や‘悪女フリート’などよりはあとの絵。

TVの映像でみる限りコンデションがちょっと悪いのかなという感じがするが、これは本物を真近でみないとわからない。画面中央に描かれている酒欲まるだしてワイン樽に殺到する人々の姿や左の喧嘩する男たちを是非ともみたくなった。

‘聖マルティン’はやはりボスの‘快楽の園’や‘死の勝利’のある部屋(1階56A)に展示されるのだろうか、‘快楽の園’とともに時間をかけじっくりみてみたい。

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2012.03.04

西洋絵画の愛蔵本は‘TASCHEN’と‘もっと知りたい’!

3592_2    ‘Taschen Basic Artシリーズ’(日本語版 TASCHEN)

3593_2     ‘Art Bookシリーズ’(英文 DORLING KINDERSLEY)

3591_2     ‘もっと知りたいシリーズ’(東京美術)

美術本は値の張る本から手ごろな価格の本までいろいろ買い揃えているが、その目的は作品の情報を得るため。書かれている文章はある時期までは熱心に読まない。

画家のモノグラフを読むのは画集に載っている作品を実際に7割みてからと決めている。これは本物の絵をみてないのに作品の解説や画家の創作活動の話を読んでも身に入らないから。で、沢山蔵書しているTASCHENの‘Basic Art’でも画家物語を横に置いている画家が何人かいる。

その一人がポロック。本はだいぶ前に買ったのについ最近までは絵をみているだけ。東近美の回顧展を体験したので、ようやく最初から読んでみる気になっている。また、ちょうどいいタイミングで‘芸術新潮3月号’にポロックが特集されているので、ポロックに最接近しようと思っている。

イギリスの出版社、DORLING KINDERSLEYからでている‘Art Book’は全部で12人の画家で構成されているが、持っているのはレンブラント、フェルメール、ゴッホだけ。05年オランダ旅行をしたとき、アムステルダムのスキポール空港の売店で手に入れた。

値段が安いうえ作品鑑賞のポイントを分割画面で解説するなど構成が秀逸。また取り上げている作品には日本の美術書ではみかけない作品がさらっと載っており、流石、本場の美術書という感じ。たしか、5、6冊日本語訳になっていたはず。これはお奨め!

東京美術の‘もっと知りたい’シリーズは大変気に入っている。‘Art Book’の日本版的なところがあるが、本のサイズがひとまわり大きく、週間美術本のようにコンパクトにまとめられた情報がスムーズに頭のなかに入ってくる編集スタイルは知識欲をくすぐり好感がもてる。

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2012.03.03

日本美術のバイブルは週間美術本!

3588_2     週間朝日百科‘日本の国宝’(全100巻 98年 朝日新聞社)

3590_2     週間朝日百科‘国宝の美’(全50巻 09年 朝日新聞出版)

3589_2     週間‘日本の美をめぐる’(全50巻 03年 小学館)

本屋へ出かけたときは‘週間○○’本のコーナーのところで時間をつぶすことが多い。いろいろなシリーズが並んでいるが、今関心の高いのは‘週間 世界の博物館’(全50号 11年~ 朝日新聞出版)。2週間前は‘ニューデリー国立博物館’と‘陝西歴史博物館’(580円)を手に入れた。

もう何年も前からこの週間美術本を愛蔵しており、日本美術に関する情報はこれがベースになっている。これまで全巻揃えたのは‘日本の国宝’と‘日本の美をめぐる’の二つ。朝日の‘日本の国宝’のリメイク版‘国宝の美’は好きな分野のものがでたときに買うつまみぐいコレクションで10冊ほど。

この3つを定期的にパラパラみて鑑賞済みとなった作品に黄色のマーキングをするのがルーティン。これを長く続けているので、どこにある絵巻、仏画、仏像、水墨画、花鳥画をまだみてないかはおおよそインプットされている。だから、展覧会でこうした作品に遭遇すると目がかっと開く。

今追っかけリストの上位に載せているのは、
★‘桃鳩図’(国宝 個人)
★‘孔雀明王’(国宝 仁和寺)
★‘駒競行幸絵巻’(重文 久保惣記念美)
★‘西行物語絵巻’(重文 文化庁)
★‘維摩居士図’(重文 大和文華館)

★‘如意輪観音坐像’(国宝 観心寺)
★‘十一面観音立像’(国宝 法華寺)
★‘阿弥陀如来坐像’(国宝 浄瑠璃寺)

★海北友松の‘網干図屏風’(三の丸尚蔵館)
★雪村の‘花鳥 柳・鷺’(東芸大美)
★狩野元信の‘釈迦堂縁起絵巻’(重文 清涼寺)
★‘花下遊楽図屏風’(重文 相国寺)
★岩佐又兵衛の‘耕作図屏風’(出光美)

★尾形乾山の‘八橋図’(重文 個人)
★尾形光琳の‘大黒図’(MIHO MUSEUM)
★酒井抱一の‘山桜に帰雁図’(林原美)
★池大雅の‘百羅漢図’(重文 万福寺)
★与謝蕪村の‘四季山水図・夏’(重文 文化庁)

★円山応挙の‘双鶴図’(八雲本陣記念財団)
★長澤芦雪の‘降雪狗児図’(逸翁美)
★曽我蕭白の‘龍図’(石山寺)
★伊藤若冲の‘蝦蟇・鉄拐図’(個人)
★英一蝶の‘僧正遍昭落馬図’(大和文華館)

週間美術本は作品情報がコンパクトにまとめられているうえ読みやすいレイアウトが特徴。日本美術の手軽なバイブルとしてこれからもお世話になりそう。

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2012.03.02

‘昭和の日本画100選’は近代日本画鑑賞の鑑!

3587     ‘昭和の日本画100選’(朝日新聞 1989年)

3585_2     堂本印象の‘婦女’(1948年 京都市美)

3586_2              寺島紫明の‘彼岸’(1946年 京近美)

3584_2     麻田鷹司の‘天橋雪後図’(1972年 何必館・京都現代美)

明治以降に描かれた日本画に対し全般的に関心をもちはじめたのは西洋画よりすこし遅く、1989年に朝日新聞から出版された‘昭和の日本画100選’を手に入れたころから。これとペアになっている‘昭和の洋画100選 版画15選’も一緒に購入したが、こちらのほうは引越しの際どこかへ消えてしまい今は手元にない。

これは朝日の企画で、60余年の昭和の時代に制作された日本画、洋画、版画のなかから美術、文学、評論などの分野で活躍する200人に推薦投票をしてもらい100点を選び出したもの。選ばれる作品は1点とは限らず、人気の画家だと3点推薦されている。

どんな絵に票が集まり、どの画家が高く評価されていたのか。今から20数年前の話だが‘ベスト10’は次のようになっている。
<作品>
1 夜桜         横山大観     大倉集古館
2 築地明石町     鏑木清方     個人
3 名樹散椿      速水御舟     山種美
4 大原女       土田麦僊     京近美
〃 鳴門        奥村土牛     山種美
6 原爆の図      丸木位里・俊   丸木美
〃 髪          小林古径     永青文庫
8 雨          福田平八郎    東近美
9 清姫         小林古径     山種美
10 漣(さざなみ)   福田平八郎    大阪市近美準備室

<画家> 
1 前田青邨 (1885~1977)
2 小林古径 (1883~1957)
〃 安田靫彦 (1884~1978)
4 横山大観 (1868~1958)
〃 福田平八郎 (1892~1974) 
6 奥村土牛 (1889~1990)
7 速水御舟 (1894~1935)
8 村上華岳 (1888~1939)
9 上村松園 (1875~1949)
10 鏑木清方 (1878~1972)

さて、100選をこれまでどのくらいみてきたか。現時点で85点。そして、まだみてないものも含めて拙ブログでは半分の50点を取り上げた。好きな画家の絵は鏑木清方の‘築地明石町’を除いて全部みたので今はリラックスモード。残っている作品で是非ともというのはここにあげた3点をいれて5点くらい。

京都市美は2度訪問したが、堂本印象の‘婦女’となかなか会えない。また、この美術館の前に建つ京近美にある寺島紫明の‘彼岸’も平常展へ何度も出かけているのにまったく縁がない。麻田鷹司の作品をみる機会はほとんどないのでこの画家については知らないのと同然だが、‘天橋雪後図’は一度みてみたい。

これから先は幸運がやってくれば楽しもうという感じ。   

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2012.03.01

追っかけ名画の情報源となっている美術本!

3580_2     ‘世界 名画の旅’(朝日新聞社 1~5巻 1986~87年)

3581_2     ポロックの‘青い柱’(1952年 キャンベラ オーストラリア国立美)

3582_2     クレーの‘オペラ「船乗り」から 闘いのシーン’(1923年 バーゼル 個人)

3583_2     ウェイデンの‘聖カテリーナ像’(リスボン グルベンキアン美)

本が三度の飯より好きな人でも読書がまあ好きな人でも、いつもそばに置いておきたい本や参考にしている本があるはず。こういう本のなかでも長続きするものとある期間が経つとお役ご免となるものがあるが、美術本は息の長い部類に入る。

今から四半世紀前、‘世界 名画の旅’という本が出版された。これは1984年の秋から朝日新聞の日曜版で連載されたシリーズを本にしたもの。この美術読みものは毎週楽しく読んでいたから、5冊全部とりそろえた。朝日の記者たちが世界をかけずりまわって取材した名画は125点、内訳は西洋絵画が116点、東洋絵画が9点。

この本を手にしたときから、名画の追っかけがはじまった。ほかの画集や美術本で知った作品に対する思い入れも強いのはもちろんだが、この‘世界 名画の旅’で取り上げられている絵との対面が叶うと嬉しさもひとしお。これまで幸運にも82点(66%)を鑑賞することができた。

最近では昨年から今年の2月までの間に幸せ3連チャンがあった。その絵とは、
★モーゼスおばあさんの‘冬のフージック・フォールズ’:国立新美の‘ワシントンフィリップスコレクション展’
★レンブラントの‘自画像’:ハーグ マウリッツハイス美訪問
★‘清明上河図’:東博の‘北京故宮博物院200選’展

この秋にはまた楽しい出会いが待っている。国立新美が開催する‘リヒテンシュタイン美展’(10/3~12/23)にやってくるルーベンスの‘クララの肖像’。そのあとはどんな名画との出会いがあるか?これはミューズのお心次第ということになる。

帆を高くあげて風が吹くのをひたすら待ちたい絵をいくつかあげてみると、
★ポロックの‘青い柱’(オーストラリア国立美)
★クレーの‘闘いのシーン’(個人)
★ウェイデンの‘聖カテリーナ像’(グルベンキアン美)
★アンソールの‘キリストのブリュッセル入城’(LA J.ポール・ゲティ美)
★バルテュスの‘コメルス・サンタドレス小路’(個人)

名画への道ははてしなく続くがそこを歩けるだけ運に恵まれているといい聞かせている。

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