スーパー浮世絵師 歌川国芳!
六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで行われている‘歌川国芳展’(12/17~2/12)は予想以上の賑わいだった。421点(前期と後期で大半入れ替え)もの作品が出品されていることはわかっていたが、府中市美(拙ブログ10/4/27)や太田記念美(11/6/3)でもいい回顧展に遭遇したから、1回でかければいいかなと思っていた。
ところが、はじめの20点くらいのなかに初見のものが結構ある。歌川国芳(1797~
1861)の大ファンとしては一点でも多く目のなかに入れたいので、後期(1/19~
2/12)をパスするわけにはいかなくなった。作品のくくり方はオーソドックス、武者絵、役者絵、美人画、戯画などが順番にでてくる。お気に入りの絵が多く4点をどの絵にするか迷うが、年の初めなので愉快で楽しいものを選んだ。
‘宮本武蔵の鯨退治’はタイトルとはちがって退治される鯨の目はいたって穏やか。シーワールドで子どもたちを楽しませるイルカのようにその大きな姿は愛らしい。鯨の背中に立ち剣を突き刺している宮本武蔵は小さく描かれ、巨大な鯨は3枚続のワイド画面をはみ出さんばかりに飛び跳ねている。並みの絵師からはこういうハットするような大小対比はでてこない。国芳の比類ない想像力にはただただ感心するばかり。
絵の前でニヤニヤしっぱなしだったのが達磨の絵と魚のげいづくし。達磨に目が入ると中から手や足がでてくる。窮屈さから解放されて嬉しいのか、右の達磨は蕎麦を口にかけこんでいる。その姿がじつにいい。‘人の心をつかむにはまず胃袋から’というが、好きなものを食べると元気が出る。
龍宮城でVIP待遇の浦島太郎の目を楽しませる魚たちの芸をしばらくみていた。左では亀の酒樽回し、蟹はその横で切り紙の真っ最中。浦島太郎の後ろに目をやると青い海老が腕相撲で力比べ。右で笑ってしまうのは河豚の腹鼓、ふてくされて腹を膨らましているのだろうか。後ろでは鰻がヨイショ、ヨイショと声を出して木登りを披露している。
国芳の日本版ガリーバー絵は巨人朝比奈義秀が頬杖をついて横たわる絵だけかと思っていたら、こんなヴァージョンもあった。まったく想定外だったので、夢中になってみた。体のいたるところで小人になった江戸の庶民たちがパフォーマンスをみせている。右の絵では朝比奈の指の上に立ち手にもった傘と扇子を広げてみせる軽業芸人がみえる。
後期には新発見の‘きん魚づくし ぼんぼん’など期待の絵がいくつも登場する。とても楽しみ。
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コメント
僕は元旦に初詣でついでに出かけました。
こりゃ春から縁起が良いってもんで、笑。
そしたら地震で揺れた、苦笑。
国芳は西洋画にも関心持っていて作品に取り入れたそうですね。
寄せ絵があんまり出てなかったですが、肉筆画がよかったです。
今は入場制限とかやっているのでしょうか?
投稿: oki | 2012.01.13 00:04
to okiさん
入場制限はありませんでしたが、混んでました。
国芳の武者絵や戯画は漫画世代の若い方には新鮮
でしょうね。今回の展覧会をみて色々なジャンル
で才能を発揮させた国芳は北斎、広重を人気の点
では抜くかもしれないなと思いました。
密度が濃くて、情報量も豊富、そしてギャグ漫画
のようなおもしろさにあふれているとなると、
みな関心を寄せるでしょうね。
投稿: いづつや | 2012.01.13 13:24
いづつやさま
歌川国芳を知らなかった私には大発見、大笑いです。見れば見るほど、おもしろくなる。
ちなみに、龍宮城で浦島太郎の右にいるは、鯛(らっぱを吹いているの?)ですか?その下の手ぬぐいをさわっているのは何?青い着物はなまず?何をしているの?
朝比奈義秀の周りに火消しがいっぱい集まっているのはどうして?左側の朝比奈が手に持っているのは何?
興味本位ですいませんが、お教えいただければ。
投稿: 黄色いカナリア | 2012.01.13 15:37
to 黄色いカナリアさん
龍宮城の芸づくしは笑えますね。
鯛はおっしゃる通りです。その下は赤エイが
芸というよりは針仕事の手技をみせてます。
青い着物を着ているのは鯰ですが、このひげ
渡りは?です。蛸の八人芸というのは8本の足
でそれぞれちがった鳴り物や芸を演じること
です。
左の朝比奈ですが、左手に持っているのは煙管
とすぐわかりますが右手は何でしょうね?
小人の火消しは得意のパフォーマンスで巨人の
朝比奈のご機嫌を伺っているところです。
投稿: いづつや | 2012.01.13 20:44