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2012.01.31

アートに乾杯! 芦雪と国芳がみせる大小対比の妙

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3484_2     長澤芦雪の‘白象黒牛図屏風’(1789~99年)

3486_2     歌川国芳の‘宮本武蔵と巨鯨’(1848~54年)

3485_2     歌川国芳の‘朝比奈小人嶋遊’(1847~52年)

画家の才能についてよくいわれることがある。‘デッサン力は鍛錬をつめばそこそこ腕はあがるが、色彩感覚と構図はもって生まれた才能、努力して上手くなるものではない’ やはり天はごく限られた人間にしか芸術の才能は授けない。

現在、森アーツセンターで行われている‘歌川国芳展’(2/12まで)は後期も大勢の人を集めているようだ。国芳(1797~1861)の展覧会が楽しいのはいろんなタイプの絵がみられるから。人物画は密度の濃い武者絵があり、役者絵や美人画も揃っている。そして北斎や広重とは違った魅力のある風景画。さらに楽しいのは戯画の数々。

大半の浮世絵はそれほど大きくない画面に描かれたものだが、なかには3枚続のワイドスクリーンがある。国芳のワイド画面が見ごたえがあるのは3枚全部を使って対象がドーンと描かれているから。大きな生き物の代表格、鯨が現れ、巨大な鯉や骸骨が画面を占領する。

こうした圧倒的な迫力をもつ構図を生み出しているのが国芳の類希な想像力。‘宮本武蔵と鯨’のように大きな鯨をより大きくみせるために小さな存在である宮本武蔵を背中に描くという発想は並みの絵師の頭からはでてこない。

国芳以外でこの大小の対比の妙をみせてくれるのは長澤芦雪(1754~1799)の‘白象黒牛図’(プライスコレクション)しかない。時期的には芦雪のほうが早い。白象も黒牛も背中の一部が屏風をはみ出しており、黒カラスと可愛い子犬はその大きさを印象づけている。芦雪と国芳の頭のなかでは視線は同じような動き方をしていたのだろう。

そして究極の大小対比は国芳のガリバー画、‘朝比奈小人嶋遊’。頬杖をつき横たわる巨人朝比奈の前を小人の大名行列が珍しいものをみるような顔をして進んでいる。貪欲に西洋画の技法を吸収した国芳は皆があっと驚くような日本版ガリバーを創作してみせた。まったくスケールの大きな絵師である。

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2012.01.30

西洋画・日本画比較シリーズ! フェルメール VS 喜多川歌麿

3482_3       フェルメールの‘女主人と召使’(1667~68年 NYフリックコレクション)

3481_3             喜多川歌麿の‘青楼十二時 続 戌ノ刻’(1794年)

西洋画の風俗画というジャンルの絵で魅せられている画家は5人いる。ブリューゲルと晩年のルーベンス、そしてカラヴァッジョ、ラ・トゥール、フェルメール。

ブリューゲルの風俗画を心から愛しており全点制覇するのが夢。そのブリューゲルを敬愛していたのが同じフランドル出身のルーベンス。ここ数年で晩年に制作されたすばらしい風俗風景画を集中的にみた。二人の画家が描いた農村の風景やそこに逞しく生きる人々の姿をみると、本当に心が安まる。

一方、カラヴァッジョ、ラ・トゥール、フェルメールが描いたのは都市に生きる人々の遊興や日常生活の光景。フェルメール(1632~1675)の‘女主人と召使’は大変気に入っている作品。

この絵はNYのフリック・コレクションにある(拙ブログ08/5/22)。ここはもう2点所蔵しており、メトロポリタンの5点をくわえるとNYではフェルメールをなんと8点もみることができる。だから、頭のてっぺんから足の先までフェルメールが好きな人にはNYはたまらない街ではなかろうか。

8点のうち200%好きなのは‘女主人と召使’と‘兵士と笑う女’(フリック)と‘水差しを持つ女’(MET)、ほかの絵はあまり惹かれていない。‘水差しを持つ女’はちょっと宗教画に描かれた天使のような感じがする。風俗画であって風俗画ではないような崇高な雰囲気が漂っているので、絵の中に安直には入っていけない。

これに対して、フリック蔵の2点は生感覚でみれる作品。‘女主人と召使’はまるで芝居の一シーンをみているよう。フェルメールの目は映画監督や演出家の目と変わらない。二人の女のまわりに小道具はあまりないので、召使の差し出す手紙に見る者の関心が集中する。部屋のすぐ近くに自分がいるような気持ちにさせる絵はやはり心をとらえて離さない。

喜多川歌麿(1753~1806)の‘青楼十二時’も手紙に関わる絵だが、こちらでは遊女はせっせとパトロンの旦那に手紙を書いており、くつろいだ気分につつまれている。側にいる禿(かむろ)に‘今、日本橋の旦那に遊びに来てよと書いているところだからネ、あとで持っていっておくれ、お前さんあの旦那知っているだろう、ちょっと顔の赤い人だよ’とでも話かけているのだろうか。

この禿は元気で愛嬌がある。顔をちょっと傾け手を太股のところにおくしぐさはなんとも可愛い。人気の子役、芦田愛菜ちゃんがダブってみえた。

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2012.01.29

大阪国際女子マラソン 天満屋の重友が好記録で優勝!

3480今日は昼からロンドン五輪の代表選考会を兼ねた大阪国際女子マラソンを釘付けになってみていた。

優勝したのは天満屋所属の重友。記録も2時間23分23秒の好タイム。

実質初マラソンをこんないい記録で勝つのだからたいしたもの。拍手々!これで五輪出場は間違いないだろう。

天満屋は広島に住んでいたから馴染みの百貨店。

広島では会社があったビルの近くに三越と並んで建っている。また、岡山の本店にも2,3度行ったことがある。中国地方では天満屋は福屋とともに誰でも知っている有名な百貨店。地元の人々にとって百貨店というのはやはり特別な場所であり、ここで買い物をするのを楽しみにしている人は大勢いる。

その老舗の天満屋に務めるマラソン選手が過去3大会連続で五輪に出場し、ロンドン大会でも重友が代表の切符を手に入れようとしている。新星の出現で天満屋のブランドイメージはまた上がった。岡山は大騒ぎだろう。

レースは27キロあたりで優勝が有力とみられていたトラックのスピードランナー福士が急にペースダウンし、重友の独走になった。二人は最後の最後まで併走していくことを予想していたから、これには拍子抜け。福士はマラソンを何度も走ってないから42キロを走れるトータルの力がそなわってない。4年前と同じことを繰り返したのはまったく残念。

今大会の直前になって復活を期待されていた野口が怪我で出場を取り消した。3月11日に行われる名古屋でのレースが五輪出場へのラストチャンス。アテネでの野口のすばらしい走りが目に焼きついているので、もう一度五輪に出場し、メダルを獲得することを強く願っている。はたして代表入りなるか?

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2012.01.28

アートに乾杯! THE 祭りと遊興の絵

3478_2     岩佐又兵衛の‘豊国祭礼図屏風’(重文 17世紀前半 徳川美)

3476_2    岩佐又兵衛の‘洛中洛外図屏風(舟木本)’(重文 17世紀前半 東博)


3479_2     ‘相応寺屏風(遊楽図屏風)’(重文 17世紀前半 徳川美)

3477_2     ‘江戸名所図屏風’(17世紀前半 出光美)

日本の風俗画の追っかけは08年に一段落したので、今は美術本や図録と顔をつきあわせることも少なくなった。が、再会を願っている屏風のことはずっと胸のなかにある。それは名古屋の徳川美が所蔵する‘豊国祭礼図屏風’と‘相応寺屏風’。

徳川美のHPを最近はチェックしてないが、この二つの屏風は08年にあった‘桃山・江戸絵画の美’展(拙ブログ08/5/15)以降は展示されてないはず。長い美術鑑賞の体験からいうと、美術館はいい作品ほど出したがらない。次お目にかかれるのは2,3年くらい先だろうが、そのときはまた出かけたい。

‘豊国祭礼図’のあのエネルギッシュな踊りの輪をみたら誰しもまたみたいと思うにちがいない。画面は踊り子でいっぱい、その数が半端ではない。体を自在に動かし左右に手をふリ、足は元気にステップを踏む。男女の生き生きとした踊りには祭りを楽しむ人々の喜びがこめられている。

東博にある‘洛中洛外図’で視線が向かうのが左隻に描かれた‘寺町通 祇園祭礼’、特に目立つのが3つある武者の母衣(ほろ)。このびっくりするような装飾をはじめみたときは‘これは一体何じゃい!’という感じだった。これくらい大きいと前へ進むにも相当な馬力がいりそう。

‘相応寺屏風’には様々な場面がでてくる。屋外の宴会に興じる男女、猿廻しの芸を見物する人々、蕎麦を食べる人、すごろく遊びやカルタ遊びを楽しむ男女などなど、遊びの楽しさは尽きることがないからいつまでもこの屏風をみていたくなる。本当に再会したい。

出光美がもっている‘江戸名所図’もお気に入りの屏風。一度時間をかけて画面の隅から隅までじっくりみた。大勢の人物がびっしり描かれているのが歌舞伎と並んで人気の娯楽だった人形浄瑠璃を楽しんでいる場面。人形の舞台そっちのけでお酒を呑んでいる者もいる。大相撲をます席でこういう風に飲食をしながら見たことがあるが、じつに楽しかった。

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2012.01.27

アートに乾杯! みてるとはじき返される群像描写

3472_2     マグリットの‘ゴルコンダ’(1953年 ヒューストン メニル・コレクション)

3474_2         アンソールの‘仮面の中の自画像’(1899年 小牧 メナード美)

3473_2     ゴヤの‘魔女の夜宴’(1821~23年 マドリード プラド美)

3475_2  ベックマンの‘夜’(1918年 デュッセルドルフ ノルトライン=ヴェストファーレン美)

人物が沢山描かれた絵には絵の中に目が吸い込まれていく作品とそれとは反対に絵に入っていけずはじき返されるような気持ちになるものがある。今日は後者の絵をいくつか。

マグリット(1898~1967)の絵は画集でながめているだけで本物にはまだ縁がない。所蔵しているのはアメリカ ヒューストンにあるメニル・コレクション。山高帽を被ったコート姿の男性は一体何人いるのだろう?それにしても沢山いる。しかも皆同じ格好。

彼らが浮かんでいる空間はごくありふれた建物のまわりと屋根の上に広がる空。空に人物がいる光景でイメージするのは宇宙遊泳の飛行士とかパラシュートをつけて降下する兵士。マグリットはひょっとしてパラシュート部隊からヒントを得てこれを描いたのかもしれない。

さて、この絵のなかに入れるか?スペースが広く空いていていろんな人物、例えば男女、大人や子どもがいれば一緒に飛びまわるのもおもしろいだろうが、同じ姿をした男たちが密集するこの空間にはとても入れそうにない。それどころか、機械じかけのような男たちがこちらに迫ってくる感じなので、バッタの大群をみつけてあわてて逃げるのと同じような心理状態に陥る。

アンソール(1860~1949)の‘仮面の中の自画像’は自画像といっても、すこし大きく描かれたアンソールに目が釘付けになることはない。それよりずっと強烈な存在感を発揮しているのが画面いっぱいに沢山描かれた仮面たち。われわれはこの絵をみているのだが、同時にこちらも足の先から頭のてっぺんまでじっとみられているようでちょっと落ち着かない。だから、絵の前にあまり長くはいられない。

昨年1月プラド美を訪問したとき、腹にずしっとこたえた絵がゴヤ(1746~1828)の‘魔女の夜宴’(拙ブログ11/2/16)。黒い大牡山羊を多くの魔女たちが体を寄せ合うようにして眺めている様はお皿のうえにびっしり盛られた饅頭のようでもあり、その楕円形のフォルムはピザのようにもみえる。群像の形はこのようにまとまりがあるのに、魔女ひとり々の顔の表情はとてもグロテスクで不気味。

ゴヤの絵に通じる雰囲気をもっているのがドイツの表現主義者ベックマン(1884~
1950)が描いた‘夜’。この絵(09/2/27)を3年前Bunkamuraでみたときは大きな衝撃を受けた。腰は引き気味でこわいものみたさの感覚だった。こういう人間描写はインパクトがありすぎるからすこし離れてみるほうが冷静にみられるかもしれない。絵の真近まではとても寄れない。

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2012.01.26

アートに乾杯! この画面に一体何人描かれている?

3469_2     ボスの‘快楽の園’(1505~16年 プラド美)

3471_2     ブリューゲルの‘子どもの遊戯’(1560年 ウィーン美術史美)

3470_2     ブリューゲルの‘十字架を担うキリスト’(1564年 ウィーン美術史美)

3468_2 アルトドルファーの‘アレクサンドロス大王の戦い’(1529年 アルテ・ピナコテーク)

東博の‘北京故宮博物院200選’の超目玉、‘清明上河図’の展示が24日に終了した。作品をみるのにこれほど並んだのは02年京博であった雪舟展以来のこと。こうした仰天するほどの大混雑にもかかわらず、大勢の人が東博に足を運ぶのだから日本人はつくづく美術好きなのだなと思う。

人物が数多く登場し細かいところまで写実的に描かれている絵だから北宋の時代にタイムスリップした気分でじっくりみたいところだが、それをしていたら多くの人が楽しめない。だから、2度でかけて消化不良を解消した。

今回の‘清明上河図’のようにみている期間が短くて心残り状態になることは海外の美術館めぐりでもよくおこる。その理由は絵の前が混雑しているからではなく、ツアーの予定時間が限られているため。どの絵についてもじっくりみたいというわけではないが、大好きなボスやブリューゲルの場合、様々な人物や変てこな怪物が数多く登場し当時の風俗や寓意の情報がびっしり詰まっているから絵に最接近して心ゆくまでみたくなる。

その筆頭がボス(1459~1516)の‘快楽の園’、一度は単眼鏡を使い画面の隅から隅までとことんみてみたい。きっとこれまでみたとき以上のサプライズがあるにちがいない。プラドもウィーン美術史美も追っかけ画はほぼみたので次の機会ではこうした鑑賞ができるかもしれない。

ブリューゲル(1525~1569)の風俗画をみるのもじつに楽しい。描かれた場面をひとつ々みていくとどれだけ時間がかかるだろうと思わせるのが2点ある。‘子どもの遊戯’と‘十字架を担うキリスト’。好奇心を刺激し夢中にさせる絵とはこのこと。

ミュンヘンにあるアルナ・ピナコテークを訪問したのはずいぶん前なので大半の絵の記憶はなくなっている。が、アルトドルフィー(1480~1538)の戦いの絵は目にやきついている。

ここで戦っているマケドニア軍とペルシャ軍の兵士は一体何人描かれているのだろか?密集した兵士や馬の激突は臨場感にあふれ、そのミニアチュール技法による精緻な描写の前では言葉を失ってしまう。いつか再会したい。

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2012.01.25

次回のオランダ・ベルギー旅行でめざす美術館!

3464_2 ブリューゲルの‘バベルの塔’(ロッテルダム ボイマンス=ファン・ビューニンゲン美)

3465_2     ボスの‘放浪の旅人’(ボイマンス=ファン・ビューニンゲン美)

3466_2     ボスの‘十字架を担うキリスト’(ゲント市立美)

3467_2     ボスの‘砂漠の聖ヒエロニムス’(ゲント市立美)

海外の美術館は年に何回も行けるわけではないが、関心のある画家が描いた名画を追っかけていく道筋だけはおおよそのイメージができあがっている。夢が100%叶うことはないとわかっているのに、世界中の美術館をめぐるという夢をもっていることはこのうえなく楽しく元気のでることだから、プランのオプションはラフだがどんどんできていく。

オランダとベルギーへ次ぎ出かけるとき目指すことを決めている美術館は、
<アムステルダム>
★新しい国立美術館
★新しい市立美
<ロッテルダム>
★ボイマンス=ファン・ビューニンゲン美
<ハーグ>
★市立博物館
<ブリュッセル>
★ベルギー王立美
<ゲント>
★市立美
<アントワープ>
★王立美
★ルーベンスの家

このなかで行きたい度の最も強いのがロッテルダムにあるボイマンス=ファン・ビューニンゲン。みたい絵(拙ブログ11/5/8)はいくつもあるが、期待はブリューゲルとボス。この2人の画家については1点々鑑賞済みにしたいという思いが強く、昨年11月にはブリューゲルは念願の‘悪女フリート’など4点、ボスは1点を新たにみることができた。

ボイマンスでのお目当てはブリューゲルのもう一つの‘バベルの塔’、そしてボスの作品5点。ボスの絵はプラドに次ぐ多さを誇るので、ボスの全点制覇(10/7/27)をなしとげるためにはどうしてもこの美術館へ足を運ばなくてはならない。

ボスの絵はベルギーのブリュッセル、ブルージュ、ゲントにもある。ゲントは05年訪問し、ファン・エイクの有名な‘神秘の子羊’をみた。この絵と対面したのは一生の思い出だが、次にこの街へ寄るときは子羊との再会は果たした上でボスの絵2点を所蔵する市立美へも是非足をのばしたい。

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2012.01.24

アートに乾杯! 心に響く雪の絵

3462_2     加山又造の‘東京・雪’(1984年)

3463_2     岩澤重夫の‘雪の朝’(1993年 日田市)

3460_2     モネの‘かささぎ’(1869年 オルセー美)

3461_2     ワイエスの‘粉挽き小屋NO.2’(1962年 フィラデルフィア美)

首都圏はひさしぶりの雪。日本海側地域の豪雪にくらべれば4cmの積雪など雪のうちにはいらないかもしれないが、冬とはいえ雪には慣れない生活をしているから、クルマを運転するにも歩くにも小さなパニックはそこかしこで起きる。

凍結した歩道はとくに厄介。慎重に々歩いていてもなにかの拍子に滑ってバランスを崩し肘や腰を打ったりする。これは本当に痛い。こういうときはゆっくり歩くにかぎる。寒いからといってポケットに手をつっこんで歩くのは最も危険。

寒いのと暑いのとどっちが嫌かというと、寒いほう。真夏の暑いとき汗がだらだらでてもそう苦にならないのに、寒いのはまるっきりダメ。だから、部屋の暖房の温度をつい
26℃にしてしまう。しばらくすると隣の方からチェックがはいり24℃に下げさせられる。

冬に北海道とか東北を旅行することがないから雪景色というものにまったく縁がない。一度紅葉のころ知床半島を楽しんだとき添乗員さんが流氷をみるツアーもいいですよとPRしていたが、寒さに体がちじこまって感動するどころではないような気がした。でも、北海道はいつ行っても食べ物がおいしいので、着膨れ姿になって大好きな石狩鍋などを食べることを最大の楽しみに冬の北海道を体験するのもいいかなと思ったりする。

寒さには弱いが、絵に描かれた冬景色には心を打たれることが多い。加山又造
(1927~2004)に東京に降った雪を描いた絵がある。こういう都会の雪を描くのは珍しい。岩澤重夫(1927~)の絵は10年にあった回顧展でしばらく息を呑んでみていた作品。野原一面の雪景色が深く心に沁みた。

‘かささぎ’はモネ(1840~1926)の28歳のときの作品。いつもこの雪に反射する光の輝きに感動しっぱなし。そしてところどころに赤、紫、青を混じりこませ微妙な色合いの変化を表現することで白の美をより際立たせていることに気づく。

静謐な雪の世界に誘ってくれるワイエス(1917~2009)の絵も心に響く。ワイエスの比類ない写実描写にとことん魅せられているから、もう一度大きな回顧展に遭遇したい。

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2012.01.23

祝 把瑠都 初優勝!

3459大相撲初場所は大関把璃都が全勝はならなかったものの14勝1敗で初優勝をはたした。拍手々!

千秋楽結びの一番はプレッシャーで体がちょっとかたくなっていた感じ。

白鵬には敗れたが今場所の把璃都は大関になったときのように体全体にパワーがみなぎっていた。

すごい圧力で前にでていくので、対戦相手はその攻めを防ぎきれずに吹っ飛ばされることが多かった。

大関にあがってからもこういう相撲をつづけるものと期待していたが、満足のいく成績が残せてなかった。相手もそう一方的に敗るわけにはいかないから、左右に動いたりいなしたりして把璃都の怪力をまともに受けないように戦う。相撲は力だけではダメで技量を向上させないと安定的に勝てない。

さて、来場所は綱とりの場所、二場所連続優勝したら横綱になれる。ところが、横綱審議委員のひとりは‘二場所連続優勝しても私は横綱昇進に賛成しない’といっている。

これは酷いいい方。この委員は一体何を考えているのかといいたい。そんなことを今いう必要がどこにあるのか。力士というのはあるひとつの勝負をきっけにして急に強くなることはよくあり、そして一気に横綱へかけのぼっていく。華のある力士はみなそうやってスターの座を射止めてきた。

把瑠都が来場所も今場所のようないい相撲をとって優勝をすれば、横綱に推挙されないほうがおかしい。勝ち方も判断の材料になる。確かに稀勢の里との対戦で立ち会いに変化して勝ったのは期待に反する。でも、そのことばかりいい把瑠都の強さをちゃんとみないのでは力士の気持ちをくじいてしまう。終盤にきて大きなプレッシャーがかかってくれば、そんな勝ち方がでてくることもある。だから、それは大目にみればいいのである。ほかは完璧に強かったのだから。

白鵬に勝てる力士は馬力のある把瑠都と稀勢の里。この二人が早く白鵬の対抗馬となり、3人で賜杯を争うようになれば大相撲は今よりもっと楽しくなる。そして、琴欧州、琴奨菊の琴々コンビ(コトコト敗るコンビともいう)が奮起してくれればなおいい。

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2012.01.22

ゆったり鑑賞!東博総合文化展 龍図

3457_2                 岩佐又兵衛の‘龍図’(江戸時代・17世紀)

3455_2               円山応挙の‘虎嘯生風図’(1786年)

3458_2             鳥居清倍の‘張良’(江戸時代・18世紀)

3456_2     葛飾北斎の‘富嶽三十六景・凱風快晴’(江戸時代・19世紀)

‘北京故宮博物院200選’展をみたあと、本館へ移動し龍の絵や浮世絵などをぶらぶら鑑賞。辰年にちなんだ龍をモチーフにした作品は1/6のときもみたが、曽我直庵の龍はどういうわけか見当たらなかった。

どうも展示室は2つあったようで、直庵の絵は見過ごした部屋に展示してあった。惹きこまれたのは直庵の龍より岩佐又兵衛(1578~1650)の龍。前回いつみたか思い出せないが、愛嬌のある目に親しみを覚える。

縦長の掛け軸に大きな生き物を描くにはちょっとした工夫がいる。その描き方で絵師の技量の程度がわかる。又兵衛の龍が大きく感じるのは髭の一部が画面の外にはみだしているから。並みの才能の絵師ではこのような絵は描けない。

岩佐又兵衛に関するグッドニュースをひとつ。長年待っていた代表作‘山中常盤物語絵巻’が熱海のMOAで公開される。全場面をみせるのは9年ぶりのこと。会期は3/3~4/4。楽しみにしていた絵巻なので、ドライブをかねて出かけたい。

龍と一緒に描かれる虎は獰猛タイプと猫タイプがあるが、円山応挙(1733~1795)の虎は猫タイプであまり怖くない。毛の一本々の描き方がじつに緻密。そのリアルな質感は手触りのよい敷物を連想させる。

鳥居清倍の‘張良’は長年浮世絵コーナーに通っているのにはじめてお目にかかった。龍の頭に乗っているのは観音様というのがお決まりの図像だが、この龍には人物が乗っている。龍のまわりがちょっとごちゃごちゃしているが、龍の豪快な動きは充分に伝わってくる。

浮世絵コーナーでは北斎(1760~1849)の傑作‘凱風快晴’をしばらくながめていた。国芳展の次に楽しみな浮世絵展は三井記念美で開催されるホノルル美蔵の‘北斎展’(4/14~6/17)。03年にもこの美術館の浮世絵の名品が公開されその質の高さがわかっているので、期待値は大きい。

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2012.01.21

二度目の‘清明上河図’鑑賞!

3453_3      ‘虹橋’

3451_3      ‘虹橋’(拡大図)

3452_3     ‘城門’

3454_2     ‘魚を見る人々’

昨日、東博の‘北京故宮博物院200選’展(1/2~2/19)に特別出品されている‘清明上河図’(北宋時代 12世紀はじめ)をみるためまた上野に足を運んだ。

1/6にでかけたとき(拙ブログ1/6)は9時に門の前に並んだが、これでは列に大勢の人が並んでいると思ったので、30分早め8時半に着くことにした。これが上手くいき絵をみはじめたのは前とほぼ同じ10時15分ころ。雪は降ってこなかったものの厳しい寒さのなか1時間も立っているのはキツかったが、開館して45分でみれたのだから上々。見終わった10時半の時点で待ち時間は240分になっていた。この絵の人気は本当にスゴイ。

風俗画をみるのが好きなので、これまで有名な‘洛中洛外図屏風’2点を徹底的にみた。永狩永徳の国宝‘上杉本’は米沢市の上杉博物館へ出向き2時間くらいかけて屏風の隅から隅までみた。東博にある‘舟木本’(重文)についても、3回でかけ奥平俊六著‘洛中洛外図舟木本’(小学館 01年)に解説されている場面をすべて確認。この作業はもう大変、単眼鏡を使い屏風をなめるようにみていった。

日本にある風俗画でも地獄絵でもこういうふうにじっくりみてきたので、情報のいっぱいつまった‘清明上河図’がわずか10分程度の短い鑑賞で終わってしまうのはとても心残り。1/6のときはせかされるなか興奮状態でみたから、こまかい人物描写の目への焼き付け方は半焼き。だから、今回は‘虹橋’のところに全神経を集中させてみた。

前回不覚にもしっかりみなかったのが手前の河岸にある家の屋根に立ち手を前にあげている男。で、まずこの男の動きのあるポーズを目に焼きつけた。そのつぎがマストをおろして虹橋にさしかかっている船のまわりにできている水流のうずまき模様。図録の拡大図のようにはいかなかったが、単眼鏡を使いがっとみた。最後が橋桁から身を乗り出し大声をだしたり、布を下に投げている男たち。水夫たちの必死の形相で舵を取る姿とそれを固唾をのんでみている人々、活気にあふれる見事な場面である。

思いの丈を果たしたが、そのあとの場面も気がぬけない。城門のところまでに占い師の話をじっと聞いている男たちがいた。そして、下の河にいる魚をみている人たちの場面。せかされて単眼鏡が使えなかったが、なにやら魚のような細い々線がみえた。

最後は城門を通りすぎる駱駝の一行に視線をあわせた。前回同様あっというまの鑑賞だったが、みたいところがしっかりみれたので満ち足りた気分。2回もこの絵に導いてくれたミューズに感謝!

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2012.01.20

歌川国芳展は後期もお楽しみ満載!

3449_2     ‘調布玉川景’(1832年ころ)

3447_2            ‘四代目坂東彦三郎の神田川の与吉’(1849年)

3448_2        ‘国芳もよう正札附現金男 野晒悟助’(1845年ころ)

3450_2     ‘きん魚づくし ぼんぼん’(1842年ころ)

森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ)で行われている‘歌川国芳展’(後期
1/19~2/12)へ再度足を運んだ。厳しい寒さにもかかわらず、前期(拙ブログ1/12)同様若い男女のカップルからシニア層まで大勢の人がつめかけていた。

後期の感想を書く前に国芳に関する情報をひとつ。横浜美でも11月3日から13年の
1月4日まで国芳展が開かれる。国芳人気はとどまるところをしらない。プラスαの作品に期待したい。

今回長いことみていたのが‘調布玉川景’。これは人気役者たちの遠足を描いたもの。何に感心したかというと、川遊びをしている人たちの描き方。手前にいる人物は大きく描かれ、それに続くうしろの列は横向きV字のように右端から左に折れ遠くにいくにつれて小さくなっていく。これにより奥行きのある空間ができ、見る者に賑やかな行楽風景を印象づけている。また、水中の足のまわりを泳ぎまわっている魚にも目が吸い寄せられる。

カッコいい男のブロマイドをみてるような‘神田川の与吉’と‘野晒悟助’にも魅了される。鯉つかみの絵は2年前みた国貞の‘大工六三’(10/1/6)が鮮烈なイメージとして残っているが、この国芳の鯉つかみもグッとくる。国芳は鯉を描かせたら天下一品、その姿は量感にあふれピチピチしている。見てのお楽しみは‘鬼若丸’! また3枚続の鰐の絵もお忘れなく。

‘野晒悟助’はイケメンの男に髑髏の図柄の着物を着せるところがとても粋。白の髑髏はよくみると猫の体が寄せ合わさってできている。そして、藍の袈裟にも髑髏が、でもこちらの髑髏ははっきりわかるのはひとつだから、うっかりすると見落とす。すすきと蓮の花と葉で髑髏を形づくっている。

今回嬉しいことに新発見の金魚シリーズ(9図目)が展示されている。08年にあったベルギーロイヤルコレクション展(太田記念美)で7点みられた方も多くおられると思うが、この回顧展に2点(前期・後期1点づつ)でている。後期がその新発見の‘ぼんぼん’、ぼんぼんは7月の盆のとき行われる女の子の遊び。金魚たちは手をつないで歌を歌っている。口を大きくあけた様がとても愛らしい。

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2012.01.19

ダルビッシュ レンジャーズヘ入団!

3446ダルビッシュのレンジャーズへの入団が決まった。

タフな交渉だったようで締め切り時間ギリギリのところで契約内容が固まったという。

6年契約で年俸総額は6000万ドル(約46億円)、松坂(レッドソックス)のときより800万ドルも多いビッグな契約。

ダルビッシュ側の希望は年俸11億5000万円なので、決着した約7.7億円はこれを4億ほど下回るが、最初の提示額(6.5億円)よりはだいぶ上乗せがあった。年俸額で大きな開きがあったから破談の可能性もあるなとみていたが、最後は入団で合意した。まずはめでたし、めでたし!

大リーガーダルビッシュの誕生を心待ちにしていたから、ちょっと興奮している。ダルビッシュの大リーグ入りで今年の大リーグは人気が沸騰するにちがいない。各チームの日本人選手をざっとまとめてみると、

<アメリカンリーグ>
★レンジャーズ(西地区):ダルビッシュ、上原、建山
★マリナーズ(西地区):イチロー、岩隈、川崎(マイナー契約)
★エンゼルス(西地区):高橋

★ツインズ(中地区):西岡

★ヤンキース(東地区):黒田
★レッドソックス(東地区):松坂
★オリオールズ(東地区):和田

<ナショナルリーグ>
★ダイヤモンドバックス(西地区):斉藤
★ブルワーズ(中地区):青木

新入団:ダルビッシュ、岩隈、川崎、和田、青木
所属チーム未定:松井、福留

アメリカンリーグにWBCに出場したピッチャーがずらっと揃った、これは壮観。東地区は復活を期す松坂、NYに登場する黒田、左の技巧派和田、そして西地区は期待のダルビッシュとマリナーズで日本人トリオを結成する岩隈。

対戦カードへの興味もつきない。例えば、松坂vsダルビッシュの大物対決、ヤンキーススタジアムでの黒田vsダルビッシュ、そしてパリーグのときのような岩隈vsダルビッシュの投げ合い。また、バッターとの対戦で楽しみなのは、イチローvsダルビッシュ、イチローvs黒田。

開幕が待ち遠しい。

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2012.01.18

村上隆の‘五百羅漢図’は日本で公開されない?そりゃーないよ

3445_2

昨日の朝日新聞の‘オピニオン’に現代アーティスト村上隆のインタビュー記事が載っていた。興味深い内容だったので今日はそのことを少し。

村上隆は今、東日本大震災後の日本をテーマにした全長100mの‘五百羅漢図’を制作しており、これをカタールの首都ドーハで2月9日に開かれる個展に展示するという。カタール政府が日本との国交樹立40周年の記念イベントとして村上隆の大規模な個展をやってくれるとのこと、それは作家にとってはいい話にちがいない。

注目したいのはそのあとの予定、この‘五百羅漢図’は日本で公開されるのだろうか?村上隆は‘観光立国を目指すカタールには、世界中から人が集まる。3.11のメモリアルな作品として、一人でも多くの人に見てほしい’と語っているが、これが日本で展示されるかどうかについてはなにもふれてない。

日本での展示があると信じたいが、直感としてはこの作品の受け皿となる美術館や美術スタジオはこの度もないような気がする。インタビュー記事を読めば、日本の美術館と村上隆の相性が極めて悪いことはおおよそ察しがつく。

07年にLAなどで大回顧展(拙ブログ07/12/22)を開いた世界の村上隆は日本の例えば、東近美とか東京都現代美、国立新美の学芸員など鼻にもかけないという感じ。作品は日本にある村上隆の工房カイカイキキでせっせと制作され、その作品は日本の美術ファンの前には姿をみせず、皆海を渡っていく。村上隆のファンとしてはなんとも切ない話。

現代アーティストで惹かれているのは草間彌生、村上隆、奈良智美、束芋、そして若くして亡くなった石田徹也。今年は草間彌生の回顧展が埼玉県近美(4/14~5/20)で、そして奈良智美展が横浜美(7/14~10/14)で開催される。

‘世界でトップを取る’と意気込む芸術家、村上隆の‘五百羅漢図’を展示する場所として期待したいのが、会場の広い国立新美。この作品が大震災にあった当の日本でみれないとなるとコンテンポラリーアート界の見識が問われる。世界で名の売れているアーティストを日本にとりこまないでどうする。

志の高いアートディレクターや学芸員はいるはず、是非実現に向けて動いてもらいたい。

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2012.01.17

青木、ダルビッシュは交渉不成立では?松井はどこへ?

3444青木、ダルビッシュの大リーグ球団との交渉期限は迫っているが、ともにまだ契約にいたってない。

ブルワーズと交渉している青木(ヤクルト)はデッドラインまであと数時間、決定の情報が入ってこないのはダメだということだろう。

西武の中島に続いて今年もヤクルトでプレーをすることになるのではないか。ダルビッシュも交渉不成立のような気がする。

これまで決まったのは和田(ソフトバンク)のオリオールズ、岩隈のマリナーズの投手二人だけ。野手の川崎(ソフトバンク)はマリナーズとマイナー契約を結んだが、大リーグにあがれるかどうかはキャンプでのプレー次第。大リーガーとしてイチロー、岩隈と一緒に日本で行われるアスレチックスとの開幕戦にのぞんでもらいたいが、その可能性は50%くらいか。

黒田(ドジャース)が今シーズンはヤンキースでプレーすることになった。これはグッドニュース!ヤンキースの投手陣はエースのサバシア以外は駒が足りないから、GMは安定したピッチングで実績を残してきた黒田の獲得を強く望んだのだろう。強力な打撃陣だから、黒田の勝利数はぐっと増え15勝くらいみこめるかもしれない。これでNHKの大リーグ放送が昨年以上に楽しめそう。

気がかりなのは松井。アスレチックスでFAになったが、まだ所属先が決まらない。ヤンキースがよびもどす可能性があるとの情報が流れているが、それはないだろう。もしオファーがなければ、とりあえずアメリカで浪人していれば。そのうちどこかから声がかかるだろう。

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2012.01.16

美術に魅せられて! クレラー=ミュラー美は写真撮影OK

3440_2     クレラー=ミュラー美のモンドリアンの部屋

3442_2     アンソールの絵

3441_2     セベリーノの絵

3443_2     グルーニング美のメムリンク

海外の美術館に入るときはダメなことが多いが館内での写真撮影(NOフラッシュ)が可能かどうか一応係員に聞くことにしている。

11月に訪問したオランダ、ベルギーの美術館のうち写真OKだったのは、
★クレラー=ミュラー美(オッテルロー)
★グルーニング美(ブルージュ)
★メムリンク美(ブルージュ)
★MASミュージアム(アントワープ)

案の定NGだったのは、
★マウリッツハイス美(ハーグ)
★ベルギー王立美(ブリュッセル)
★マグリット美(ブリュッセル)
★マイヤー・ファン・デン・ベルフ美(アントワープ)
★ゴッホ美(アムステルダム)
★アムステルダム国立美

ゴッホ美は人気の美術館だから、入館する際はルーヴルのよう簡単な手荷物チェックがある。そして館内では写真は撮れない。これに対し、クレラー=ミュラーはどういうわけか規制はなく写真OK。これは想定外、だからお気に入りのゴッホの‘夜のカフェテラス’や‘アルルの跳ね橋’の前では観光名所と同じ気分で幸せショットを撮った。

作品をみたあとミュージアムショップで図録を買うことは決めているが、惹かれた作品がそこに載っているかはその時点ではわからないので、どんどん撮っていく。近・現代アートでは感想記でふれなかったがキュビスムのピカソ、ブラック、グリ、未来派のセベリーノ、象徴派のアンソール、そしてキーファーなどもある。

ブルージュの2館とアントワープのMASミュージアムでも写真撮影は問題なかったので、図録を補完する作品情報を手元に残すことができた。拙ブログで作品を紹介するときデジカメで撮ったものは原則として画像に使うことはないが、My世界の美術館ブックには貴重な情報としておさまっている。

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2012.01.15

一度みたらくせになるアンソールの仮面絵画!

3438_2     ‘陰謀’(部分 1890年 アントワープ王立美)

3437_2     ‘奇妙な仮面’(1892年 ベルギー王立美)

3439_2       ‘衝撃の仮面’(1883年 ベルギー王立美)

3436_2       ‘愚かな跳びカエルの復讐’(1896年 クレラー=ミュラー美)

近代以降に活躍したベルギー出身の画家で関心を寄せているのはマグリット、デルヴォー、クノップフ、デルヴィル、アンソール。このうちマグリット、デルヴォーはだいぶ近づいてきたが、あとの3人はまだ遠い存在。

ベルギーの西端に位置する海峡の町オステンドに生まれたアンソール(1860~
1949)については、05年東京都庭園美で回顧展(拙ブログ05/6/5)を体験した。仮面を被った人物や骸骨が登場する作品は絵というよりは社会諷刺のカリカチュアの類。その表現はグロテスクと思えるほど過激で魔女的な怖さがどこか潜んでいるので、一度みたらくせになる。

ベルギー王立美とアントワープのMASミュージアムではアンソールの仮面との対面を楽しみにしていた。ところが、世の中思い通りにはいかないもの。期待していた‘陰謀’と‘奇妙な仮面’は姿をみせてくれなかった。アントワープ王立美の沢山あるアンソールコレクションのなかで最もいいのはたぶん‘陰謀’、ここは2017年まで休館することになっているから惜しいことをした。

ベルギー王立美を05年訪問したときみれたのは‘衝撃の仮面’と‘燻製ニシンをとりあう骸骨たち’、仮面モード全開の‘奇妙な仮面’が加わると3点セットが済みになったのだが、、この美術館ではアンソール、クノップフ、デルヴィル皆ダメだったが、アンソールはこの秋日本でいいことがある。

okiさんの情報によると、損保ジャパン美で9月からアンソール展が開かれるとのこと。どこのコレクションかわからないが、ひょっとすると長期休館に入ったアントワープ王立美のもの?それともベルギー王立美(ここも現在近代絵画の展示室は閉鎖中)?
見逃した作品のリカバリーが日本で実現したりして、そう甘くはないか。

今回鑑賞したアンソールの絵はクレラー=ミュラー美で2点(‘愚かな跳びカエルの復讐’ともう一点)、MASミュージアムで1点、そしてグルーニング美の素描コレクション。クノップフ、デルヴィルに比べたら少しは縁があった。

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2012.01.14

ベルギー王立美術館の忘れもの!

3435_2      ルーベンスの‘エレーヌ・フールマンの肖像’(1630年代)

3434_2     デルヴィルの‘悪魔の宝物’(1895年)

3433_2         クノップフの‘見捨てられた町’(1904年)

3432_2           クノップフの‘秘密・反映’(1902年 グルーニング美)

海外の美術館を訪問するときはお決まりのルーチンとして、画集や美術館本(例えば、図録や週間世界の美術館など)をもとに必見作品リストを入念につくることにしている。お目当ての美術館へそう何度も行けるわけではないから、あとでこんないい絵があったのか!ということがないようにするためである。

そしていざ現地へ出向くとこのリストに載っている作品が上手い具合に姿を現してくれることもあれば、部屋が工事でクローズ中とか他館へ貸し出されていて残念な思いをすることも多々ある。11月に訪問したオランダとベルギーの美術館でまったく予定が狂ったのがベルギー王立美。こんなはずではなかったという絵がいくつもある。

古典絵画で痛かったのはルーベンス(1577~1640)の‘エレーヌ・フールマンの肖像’。05年のときふられ、今回も展示室が工事中で会えなかった。そのショックを12月中ひきづっていたが、年が明けてルーベンスに関して嬉しいニュースがはいってきた。

国立新美でこの秋‘リヒテンシュタイン美展’(10/3~12/23)が開催されるというのである。公開されるコレクションのなかには‘いつか行きたい美術館’シリーズでとりあげたルーベンスの‘クララ・セレナの肖像’(拙ブログ10/7/23)が入っている!この美術館の一番のお宝であるルーベンスの作品を十数点展示するのだからスゴイ。国立新美は今年も快調、本当にすばらしい。

近代絵画でダリの‘聖アントニウスの誘惑’とともに◎をつけていたのがデルヴィル
(1867~1953)の‘悪魔の宝物’。これは息をひそめてみたくなる絵、クリムトの金魚の絵同様心がザワザワする。ダリの絵とこの絵はあきらめるわけにはいかない。いつかリカバリーしたい。

クノップフ(1858~1921)は‘見捨てられた町’と‘マルグリット・クノップフの肖像’に期待していたがダメだった。クノップフの静謐な画面は6歳まで住んでいたブルージュの寂れた光景が影響しているといわれているから、‘見捨てられた町’をみたかったのだが、でもブルージュのグルーニング美で救われる絵があった。それは‘秘密・反映’。下の部分にクノップフの心に死都として刻みこまれたブルージュが描かれている。

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2012.01.13

メムリンクの最高傑作‘聖カタリナの神秘の結婚’!

3429_2     ‘聖カタリナの神秘の結婚’(祭壇中央 1479年)

3431_2                ‘洗礼者ヨハネの斬首’(左)

3430_2                ‘聖ヨハネの幻想’(右)

今日は先般綴った‘オランダ・ベルギー美術館めぐり 感想記’で積み残した絵について。

拙ブログで名画を紹介するときはできるだけ美術の本に載っている有名な作品を選ぶことにしている。それが決まるとその絵の実際の色が最もよくでている図版をさがす。ところが、図録とか画集に使われているものには満足できる水準を下回るものがときどきある。この場合はいい作品でも諦めてセカンドベストのものに入れ替えることにしている。

メムリンク美(11/12/23)で購入した図録は2010年につくられたものなのに、色がよくでてない。このため、1点のみ使いあとの2枚はフラッシュなしで撮影した‘ウルスラの殉教’と手元にある美術本の肖像画を採用した。最高傑作の‘聖カタリナの神秘の結婚’は取り上げたかったが、購入した図版のものでは絵のすばらしさを伝えることができないので諦めざるをえない。

二日前、今回の旅行で手に入れた美術館や観光地のガイドブックなどを整理していたら、以前訪問したとき買ったブルージュの町のコンパクト本が2冊もでてきた。これを旅行に出発する2週間くらい前にはパラパラみていたのにてっきり忘れていた。

この中にメムリンク美で感動したあの‘聖カタリナの神秘の結婚’の三連祭壇画が載っていた。色もよく再現している。これはメムリンク(1465~1494)の大きな積み残しだったので、エピローグとして登場させることをすぐ決めた。

中央の画面構成は声を失うくらいすばらしい。聖母子やまわりの人物はとても穏やかな表情をしており、着ている衣裳の襞の精緻な質感描写に惹きこまれる。幼子キリストから指輪をはめられているカタリナの顔はびっくりするほどきれい。それもそのはず、モデルはブルゴーニュ公国最後のお姫さまで絶世の美女とうたわれたマリー。

左はギクッとする場面、洗礼者ヨハネの斬られた首をみているとブリュッセルの王立美で会ったバウツの絵がダブってきた。右は単眼鏡を使い時間かけてじっくりみた‘聖ヨハネの幻想’。下で膝のところに本をおいている人物はエーゲ海のパトモス島で黙示録を書いたヨハネ。眼前にパノラマ的に描かれているのがヨハネがみた幻視。この光景はちょっとボスの絵をみる感じで夢中にさせる。

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2012.01.12

スーパー浮世絵師 歌川国芳!

3425_2     ‘宮本武蔵の鯨退治’(1847年頃)

3426_2     ‘流行達磨遊び・蕎麦・首引き’(1839~42年頃)

3428_2     ‘龍宮遊さかなげいづくし’(部分 1847年頃)

3427_2     ‘朝比奈義秀小人遊’(1842年頃)

六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで行われている‘歌川国芳展’(12/17~2/12)は予想以上の賑わいだった。421点(前期と後期で大半入れ替え)もの作品が出品されていることはわかっていたが、府中市美(拙ブログ10/4/27)や太田記念美(11/6/3)でもいい回顧展に遭遇したから、1回でかければいいかなと思っていた。

ところが、はじめの20点くらいのなかに初見のものが結構ある。歌川国芳(1797~
1861)の大ファンとしては一点でも多く目のなかに入れたいので、後期(1/19~
2/12)をパスするわけにはいかなくなった。作品のくくり方はオーソドックス、武者絵、役者絵、美人画、戯画などが順番にでてくる。お気に入りの絵が多く4点をどの絵にするか迷うが、年の初めなので愉快で楽しいものを選んだ。

‘宮本武蔵の鯨退治’はタイトルとはちがって退治される鯨の目はいたって穏やか。シーワールドで子どもたちを楽しませるイルカのようにその大きな姿は愛らしい。鯨の背中に立ち剣を突き刺している宮本武蔵は小さく描かれ、巨大な鯨は3枚続のワイド画面をはみ出さんばかりに飛び跳ねている。並みの絵師からはこういうハットするような大小対比はでてこない。国芳の比類ない想像力にはただただ感心するばかり。

絵の前でニヤニヤしっぱなしだったのが達磨の絵と魚のげいづくし。達磨に目が入ると中から手や足がでてくる。窮屈さから解放されて嬉しいのか、右の達磨は蕎麦を口にかけこんでいる。その姿がじつにいい。‘人の心をつかむにはまず胃袋から’というが、好きなものを食べると元気が出る。

龍宮城でVIP待遇の浦島太郎の目を楽しませる魚たちの芸をしばらくみていた。左では亀の酒樽回し、蟹はその横で切り紙の真っ最中。浦島太郎の後ろに目をやると青い海老が腕相撲で力比べ。右で笑ってしまうのは河豚の腹鼓、ふてくされて腹を膨らましているのだろうか。後ろでは鰻がヨイショ、ヨイショと声を出して木登りを披露している。

国芳の日本版ガリーバー絵は巨人朝比奈義秀が頬杖をついて横たわる絵だけかと思っていたら、こんなヴァージョンもあった。まったく想定外だったので、夢中になってみた。体のいたるところで小人になった江戸の庶民たちがパフォーマンスをみせている。右の絵では朝比奈の指の上に立ち手にもった傘と扇子を広げてみせる軽業芸人がみえる。

後期には新発見の‘きん魚づくし ぼんぼん’など期待の絵がいくつも登場する。とても楽しみ。

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2012.01.11

ゆったり鑑賞!東博140周年 新年特別公開

3423_2     国宝 雪舟の‘秋冬山水図’(室町時代・15世紀) 

3424_2      雪村の‘松鷹図’(重文 室町時代・16世紀) 

3421_2     尾形光琳の‘風神雷神図屏風’(重文 江戸時代・18世紀)

3422_2     国宝 池大雅の‘楼閣山水図’(江戸時代・18世紀)

東博は今年は開館140周年にあたるので、ビッグな特別展が続く。まず一弾が開幕した日から連日長蛇の列ができている‘清明上河図’が超目玉の‘北京故宮博物院200選’展(1/2~2/19)。そのあとが待望の‘ボストン美 日本美術の至宝’展(3/20~6/10)。7月以降についての情報がまだないが、期待できそうな気がする。

本館でも年初は景気づけのためいい作品を展示するのが常だが、今年は一段と豪華なラインナップ。国宝室(2階)には雪舟(1420~1506)の‘秋冬山水図’が登場。そして、隣の部屋では雪村の‘松鷹図’。展示期間はともに1/2~2/5。

‘秋冬山水図’は何度見ても魅了される。視線が長くとどまるのはやはり左の冬景のほう。水墨画というと山や岩の輪郭がはっきりせずもやっとしたものが多いが、この絵は白のところがとても明るく断崖や岩肌の輪郭線が強い調子でひかれているので、目の前に広がる風景を下から上までじっくりみることができる。

雪舟の国宝の絵は昨年行われた三井記念美の展覧会に‘天橋立図’(京博)がやってきてくれたが(拙ブログ11/7/15)、今年はなんとあの‘山水長巻’(山口県防府市毛利博物館)がサントリー美の‘毛利家の至宝’展(4/4~5/27)で公開される。広島にいたとき毛利博物館へでむき心ゆくまで堪能したが、またみれるのは嬉しい限り。東京でこの傑作がみれるとなると、大勢の美術ファンが六本木へ押しよせるのではなかろうか。

2階の左奥の部屋に飾ってあるのが尾形光琳(1658~1716)の‘風神雷神図屏風’(展示は1/2~1/15)と池大雅(1723~1776)の総金地屏風‘楼閣山水図’(1/2~2/12)。4月根津美でメトロポリタン美の‘八橋図屏風’を展示する‘KORIN展’(4/21~5/20)があるから、こういう光琳の絵を年初にみると心のなかの琳派モードがすこしづつ開いていく。

‘楼閣山水図’はお気に入りの絵。水墨画の山水とはちがって大画面が全部金箔貼りなので、絵に近づくとこの金色に体全体がつつまれる感じになる。そして目に焼きつくのが亭のテーブルや人物の衣裳を彩る濃い朱と群青。昨年11月ホテルニューオータニ美で‘洞庭赤壁図巻’と再会し、今度は‘楼閣山水図’、贔屓にしている大雅の流れとしては申し分ない。心を寄せているといいことがある。

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2012.01.10

今年の美術鑑賞は東博の‘天翔ける龍’でスタート!

3417_2           ‘龍濤螺鈿稜花盆’(重文 元時代・14世紀)

3419_2     俵屋宗雪の‘龍虎図屏風’(江戸時代・17世紀)

3420_2       ‘三彩龍耳瓶’(重文 唐時代・8世紀)

3418_2        ‘饕餮文瓿’(とうてつもんほう 商時代・前13~前11世紀)

今年の干支、辰・龍は絵画や彫り物、工芸品ではお馴染みのモチーフ。だから、東博の‘天翔ける龍’(1/2~1/29、本館特別室1・2室)は集まった美術品をみているとじつに楽しい。

お気に入りの一番はうすピンクや緑の螺鈿が美しく輝く‘龍濤螺鈿稜花盆’。これをはじめてみたとき、‘なんてカッコいい龍なんだ!’と思わずつぶやいた。盆の形に合わせるため、この龍は二つの五爪を大地につきたてて立っているのでその姿は馬と龍が合体したような感じ。ギリシャ神話にでてくるケンタウロスを連想した。

俵屋宗雪の龍の絵はこの部屋ではなく書画のコーナーに展示されている。この絵をみる機会に長いこと恵まれなかったが、10年10月にようやく対面した。荒れ狂う波頭のなか胴体を上のほうにくねらせた龍が左隻に描かれた虎を睨みつけている。龍の絵というとやはりスピード感あふれる龍がいい。こちらもつられて元気になる。

‘三彩龍耳瓶’はとても見ごたえのあるやきもの。こういう龍の頭と首が耳になったものはペルシャの双角瓶を手本にしている。瓶には口部に鳳凰の頭を飾ったお馴染みの‘鳳首瓶’があるが、これもペルシャの形を中国風にアレンジしたもの。

東博が所蔵する青銅器のなかではこの‘饕餮文瓿’の形が最も気に入っている。とくに真ん中の胴の部分のふくらみにわけもなく惹かれる。小さなレプリカを手元においておきたいのだが、まだ実現していない。蓋のつまみのところにいるのが角をもった龍。

龍の立体はコレクション欲をそそる。小さいころのお楽しみだった正月や祭には竹細工の龍を売っている出店があり、これを買ったときは宝物を手に入れたような気分だった。‘自在置物 龍’もおなじようなものだが、こんな職人のスゴイ手わざでできあがったものには縁がないから目だけで楽しむことにした。

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2012.01.09

二度目のミヤケマイの個展‘膜迷路’!

3416_3     ミヤケマイの‘知恵の実’(2011年)  C 繁田諭

Bunkamura Galleryで開催されている現代アーティスト、ミヤケマイの個展‘膜迷路’(12/23~1/12)をみてきた。この作家の個展をみるのは二度目。08年横浜高島屋の美術画廊であった‘ココでないドコか’(拙ブログ08/6/26)のときと同様、楽しい気分になった。

ミヤケマイが08~09年パリ国立美術大学大学院に留学していたことは知っていたが、そこで吸収したものがこれからの作品にでてくるのだろう。この作家の掛軸にはだいぶ目が慣れてきた。10点くらいあったなかで興味深いものが2点あった。

ひとつはこれまでみたことのない雲中供養菩薩。顔には丸い菊の花がぺたっと貼られているから顔なし菩薩になっている。そして腹のあたりで清涼飲料水の瓶をかかえている。そのときは気がつかなかったが、帰りの電車のなかでこの顔の菊とマグリットの絵が重なった。

つい最近訪問したマグリット美でも山高帽子を被った男性の顔の前にパイプが描かれた絵をみたばかり。ミヤケマイは大胆にも菩薩さんの顔を菊の花で消しちゃった。この作家にこんなシュールな感覚があるとは思ってもみなかった。参りました!

もう一点長くみていたのは存在感のある菩薩の半身像がミヤケマイオリジナルの淡い太線と琳派的な文様で描かれ、銀の箔がその背景に、そして上部にぼかされた色面がみられるもの。人物の配置とか余白のとりかたがじつに上手いのでじっとみてしまう。

なかに置いてあった最新作品集‘膜迷路’(12年1月 羽鳥書店)をパラパラみていて、とてもいいなと思った作品がGalleryの外に展示されていた。‘知恵の実’、右上にイヴが食べてしまった禁断の実、リンゴが描かれその対角線上の左の隅っこにはおかっぱ頭の少女が顔を半分だけみせている。画面の中央に書かれているのは老子の言葉。知識が増えると明るくなるという意味。知識に対する西洋と東洋の考え方を絵のなかで融合している。

これからもミヤケマイの作品を追っかけたい。

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2012.01.08

フェルメールの傑作‘牛乳を注ぐ女’と再会!

3415_3      フェルメールの‘牛乳を注ぐ女’(1658~59年)

3414_2     アーフェルカンプの‘氷上遊びのある冬景色’(1608年)

3413_3        ホントホルストの‘愉快な音楽家’(1623年)

3412_2     ハルスの‘陽気な酒呑み’(1628~30年)

アムステルダム国立美のもう一つのお宝、フェルメール(1632~1675)は現在3点展示されている。‘牛乳を注ぐ女’、‘恋文’、‘小路’。‘手紙を読む青衣の女’もここの所蔵だが、今はご存知のようにBunkamuの‘フェルメールからのラブレター展’へ特別出張中。

‘牛乳を注ぐ女’をみるのは4年ぶり。国立新美の展覧会(拙ブログ07/10/6)のときは絵からすこし離れての鑑賞だったので、今回は最接近してみた。この絵は画面全体がフェルメールのほかの絵とくらべて格別に明るい。背景の白い壁は発光体のように輝いているので、遠くにいてもその強い磁力に引き込まれていく。

構図は完璧、なにより女性の右と後がすっきりしているのがいい。描かれているのは女性が容器から牛乳を注いでいる場面。日常の市民生活の一コマを描写したものだから、この時代よく描かれた風俗画の一枚。でも、ほかの画家が描く風俗画とはまったくイメージが違う。

風俗画なのにこの絵のなかには気軽に入っていけない。それはこの部屋があまりに静寂で豊かな詩情性につつまれているから。その詩的な雰囲気を一番感じるのが籠の中やテーブルの上にあるパン。光があたっているところが小さな白い点で表現され、近づくとキラキラ輝いている。

実際には人の目ではパンにあたる光はこのようにはみえない。フェルメールはカメラ・オブスキュラのレンズを通してみた光の世界に魅せられ、これを絵画で表現したのである。また陶器や瓶から注がれる牛乳のリアルな質感描写にも心を奪われる。フェルメールの光の輝きをとらえる技は比類がなく、こうした光にみちた静謐な世界は当時の画家は誰も描けなかった。

36点あるフェルメール作品をこれまで32点みてきたが、全部気に入っているわけではない。ここまできたから全点制覇を目標にしているが、カラヴァッジョのように万難を排して追っかけるという構えとはちがう。気に入っているのは10点くらいであとの絵はそれほど心は動かされてないのが正直なところ。熱い思いを寄せ、西洋絵画全体の中でも上位に位置づけているMyフェルメールベスト5(順位なし)は、

★‘牛乳を注ぐ女’
★‘真珠の耳飾りの少女’(マウリッツハイス美)
★‘デルフトの眺望’(マウリッツハイス美)
★‘絵画芸術’(ウィーン美術史美)
★‘真珠の首飾りの少女’(ベルリン国立美)

‘小路’で切り取られた家並みは平凡、家の描き方も子どもが大小の家のシールをぺたぺた貼ってできた感じ。フェルメールにとって風景画は好きなジャンルではなかったのだと思う。

‘恋文’もインパクトのない絵。ドアの両サイドの壁が画面の大半を占め、部屋の奥にいる二人がほかの絵に比べると小さく描かれているので見ごたえがない。

ブリューゲルの絵を彷彿とさせるアーフェルカンプ(1585~1635)の‘氷上遊びのある冬景色’をまたじっくりみた。この絵をみるタイミングでここへ来たから好みの度合いがまたアップした。

この絵は前回のときよく覚えているのに、ホントホルスト(1592~1656)の‘愉快な音楽家’はみたという実感がない。だから、レンブラントの‘パウロの自画像’とともにリカバリーをめざしていた。入ってすぐのところにあったので、すぐ向き合った。マウリッツハイスでみた‘ヴァイオリン奏者’(11/12/13)と同じように明るい絵でぐっと惹きこまれる。

ハルス(1580~1666)の‘陽気な酒呑み’の前ではこちらもついつい頬の筋肉がゆるむ。速い筆さばきで顔の赤い典型的なオランダ人を生き生きと描いている。ハルスの絵を1点でも増やしたいと思い、‘男の肖像’を捜したがこの度もダメだった。

これで‘オランダ・ベルギー美術館めぐり&名所観光の感想記’は終わりです。長らくお付き合いいただきありがとうございました。紹介した10の美術館を体験された方、そしてこれから訪問を計画されている方と名画の情報を共有できたことを心から喜んでいます。

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2012.01.07

アムステルダム国立美のお楽しみ レンブラント!

3411_2     アムステルダム国立美 南棟の入り口

3409_2     ‘夜警’(1642年)

3408_2     ‘使徒パウロに扮する自画像’(1661年)

3410_3     ‘マリア・トリップの肖像’(1639年)

アムステルダム国立美は05年訪問したとき工事中だったが、まだ続いている。美術館のパンフレットによると全面新装オープンするのは13年。予定通りに完成するのだろうか?ゴッホ美の隣にある市立美も‘るるぶ情報版 オランダ・ベルギー’には10年春の予定と書いてあるのに、実際はできてなかった。

アムステルダム国立美で現在みられるのは南棟に展示されている400点あまり。そのなかにはこの美術館のお宝であるレンブラント(1606~69年)の‘夜警’やフェルメールの‘牛乳を注ぐ女’はもちろん入っている。館内にいるのは1時間くらいだが、オランダ絵画が中心の限定展示だから時間内にしっかりみれる。

南棟に入っても、どういうわけか05年のときの展示会場の記憶が戻ってこない。別のところでみたのだろうか?だから、‘夜警’ははじめてみるような気分でとても新鮮だった。この大作はベラスケスの‘ラスメニーナス’同様(拙ブログ11/2/27)、絵と一体になるような錯覚を覚え、今まさにこの自警団の出発の場面に立ち会っているような気分。

隊長の姿より目立つのが右にいる副隊長。黄金のように光輝く絹の衣裳の刺繍模様や帽子の白い羽飾りの精緻な質感描写に目が吸い込まれる。これはびっくりするほどスゴイ。今回画面に最接近してみておどろくことがあった。それは左手に持っている矛。水平になった矛の鋭い先がこちらにとびだしてくるように感じられる。これはカラヴァッジョの絵でテーブルの端に置かれた果物籠が落下しそうにみえるのと似ている。レンブラントはカラヴァッジョの描き方を意識したのかもしれない。

そして、衣裳に映る隊長の左手の影も目に焼きつく。最前列にあたる光が強いことは右で太鼓を叩く男の服の青緑の煌きからもよくわかる。副隊長の静的な美しさに対し、躍動感あふれる姿で描かれているのが隊長の斜め後ろで銃に装填するポーズをとっている男。スポットライトのような光があたった金色の服を着た少女の前で力強く浮き上がっている。

レンブラントの絵は全部で12点、‘夜警’は特別扱いの部屋にあるが、ほかの作品は2つの部屋に展示されている。長いこと対面を待っていた‘使徒パウロに扮する自画像’にやっと会うことができた。数多くある自画像の中でケンウッドハウスにあるものとこのパウロの自画像が最もレンブラントの内面、感情を表現しているように思える。

まるで老人顔のレンブラントが目の前にいるよう。声をかけるとすこし戸惑いながら、‘なにか?’と力無く応じるという感じ。人のよさそうなお爺さんだが憂鬱さと諦めの境地がないまぜになったような表情をみせるので、寄りそってあげたいという気持ちが自然にわいてくる。

再会した集団肖像画の傑作‘綿物業組合の理事たち’(09/3/27)と‘ユダヤの花嫁’、そしてレースの精緻な描写が強く心に残る‘マリア・トリップの肖像’の前にも長くいた。美術館としては‘夜警’とこの3点は他館へ貸し出さないこと決めているにちがいない。出張要員の絵が‘使徒パウロの自画像’や日本にやってきたことのある‘エルサレムの街の崩壊を憂うエレミア’、‘修道士に扮するティトゥス’。

レンブラントは今回の美術館めぐりで追っかけ画2点が運良くみれたので、一段落できる。ミューズに感謝!

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2012.01.06

一生の思い出 ‘清明上河図’!

3405_2     ‘清明上河図’(部分 北宋時代・12世紀)

3404_2     ‘水村図巻’(元時代 1302年)

3406_2            ‘出水芙蓉図冊’(南宋・13世紀)

3407_2     ‘乾隆帝大閲像軸’(清時代・18世紀)

東博で1/2からはじまった‘北京故宮博物院 200選’展(1/2~2/19)をみてきた。お目当ては誰しも心がはやる中国美術の至宝中の至宝、‘清明上河図’(せいめいじょうかず 展示は1/24まで)。

昨日、みどりがめさんからとても有難い情報が入ってきた。10:15の時点でこの‘清明上河図’の待ち時間が210分とのこと、開館直後の9:35では70分だったそうだから、40分の出足の差がこんな長い待ち時間になっている。今日出かけることは決めていたが、東博に着くのはみどりがめさんと同じくらいの時間をアバウト考えていた。

いい情報をもらったので9時東博着で出動した。ほぼ予定通り9:05に門の前、まあこれくらいの列だったら上出来という人数、それから10分経ち同じくらいの数のチケットを持っている人の列ができた。当日のチケットを買う人は発売所が9:30でないと開かないから、この列に入れない。

9:25に門が開き、誘導係りに先導されてゆっくり進む。平成館は9:30にオープン。
10分くらい待って入館できた。そして、早足で前の人に続いて‘清明上河図’が展示されているところへ。ここからは2列になって5mの図巻との対面を待つ。1列になり巻のはじめにたどりついたのは10:15ころ。

ざっと待ち時間を整理すると、
9:05着→45分(館がオープンしてから)
9:15着→90分
9:25着→135分

これは平日の話だが、開館の時間あたりで入っても2時間待ちというまったくスゴイことになっている。明日からは9日が休みだから連休。8日の日曜美術館でこの絵が取り上げられるとさらに大勢の人が押し寄せるだろう。待ち時間をすこしでも少なくするためにはやはり、朝早く開館前にチケットを握り締めて並ぶしかないかもしれない。

絵の前ではどんどん進んでくれといわれるので細部を単眼鏡で頻繁にみるというわけにはいかない。画面はところどころ木々の緑が残っているところはあるが、全体としては土褐色で細部はみずらい。しかも、時間があまりないからあそこもここも集中してみれないので、どこをしっかり見るかを事前に決めておくほうが後で記憶によく残る。

2列で待っているとき、右の壁に図巻がどういう構成になっているのかを解説した同じ大きさのコピーがある。だから、まずこれを頭に入れておく。そして左の4つある映像モニターから流れてくる図巻の具体的な場面を目にやきつける。しかし、モニターの画像は拡大されているので、絵の前にくるとひとつかふたつが目にとまればいいほう。

‘清明上河図’の有名な場面は真ん中あたりの‘虹橋’。橋にいる大勢の人をみて浮世絵に描かれた‘両国橋の花火見物’を思い出した。橋にさしかかる船の上で水夫たちが大声で叫んでいるのが聞こえてくるよう。動きのある構図で人々の喧騒ぶりを見事にとらえている。この絵をみれたのは一生の思い出になる。

ほかの絵画で魅せられたのは静寂さが漂う情景が日本人の心情に合う‘水村図巻’、最後にでてくる波頭の描写が光琳や抱一の絵を思い出させる‘長江万里図巻’、精緻な筆使いが心を打つ図冊の‘出水芙蓉’、‘蛛網擒猿’、そして‘乾隆帝大閲図軸’。‘乾隆帝’の肖像画は1992年東京都美でみたのだが、絵の大きさはすっかり忘れていた。見てのお楽しみ!

この度はすべての美術品をしっかりみるのには相当なエネルギーがいる。絵画のほかにも書、陶磁器、彫刻、工芸など盛り沢山。でも、30年に一度の大展覧会だから目に気合をいれてがんばった。中国美術のすばらしさを再認識したので、いつか北京の故宮博物院を訪問してみたい。

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心をとらえて離さないモンドリアン、レジェの抽象美!

3402_2     モンドリアンの‘赤と黄色と青のコンポジション’(1927年)

3401_2     モンドリアンの‘黒と白のコンポジション’(1917年)

3403_2     レジェの‘森の中の裸婦’(部分 1909~10年)

3400_2    デ・キリコの‘2頭の馬’(1926~27年)

クレラー=ミュラー美のモダンアートコレクションはゴッホ同様一級品が揃っている。とくに目を見張らされるのがヘレーネ・クレラー=ミュラーがパトロンになっていたモンドリアン(1872~1944)、7点あった。そして、レジョ(1881~1955)も画集に載っている名画が3点姿をみせてくれた。

モンドリアンというとすぐこの‘赤と黄色と青のコンポジション’シリーズが頭に浮かぶ。水平線と垂直線が交わることでできる区画に赤、青、黄色、白の均一な色が整然と配されている。非常にすっきりした色模様なので服飾デザイナーとかグラフィックアーティストなど様々なクリアエーターに大きな影響を与えた。モンドリアンはオランダが生んだ近代絵画以降の画家ではゴッホに次ぐビッグネーム。

モンドリアンは初期のころ、印象派風の砂丘とか木を描いている。それが‘黒と白のポジション’のような線と十字で表された絵に変化していく。この多数の十字は海や空、星を表現している。その次は土色やうす青で彩色された小さな長方形や半円などがモザイク画のように組み合わさったもの。

この後は線は水平と垂直のみ、色は純粋色の三原色と補足の黒と白、灰色という目に心地いい抽象美の世界へ突き進んでいく。クレラー=ミュラーではモダンアート全開のモンドリアンがたっぷり楽しめるので、テンションはぐっとあがる。次のオランダではモンドリアンが沢山あるハーグ市美を訪問してみたい。

レジェの‘森の中に裸婦’はすぐには裸婦がどこにいるのかわからない。が、目が画面に慣れてくると左のほうにそれらしき彫刻っぽい形をした女がとらえられるようになる。女が樵になって木を切り出しているようだ。まわりの輝く白や青緑の円筒や円錐は伐採された木。隣に展示してあった‘トランプ遊びをする人々’も傑作。パリのポンピドーにいるような気がしてきた。

‘週間 ラ・ミューズ 世界の美術館’を手に入れたときから魅せられていたのがデ・キリコ(1888~1978)の‘2頭の馬’。躍動感にあふれる馬の姿をみているだけでも惹きつけられるが、左上のギリシャ神殿が目に入ったとたんデ・キリコはどんな形而上のイメージを仕組んでいるのかとつい思ってしまう。

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2012.01.05

ルドンの追っかけ画と対面!

3396_2     ルドンの‘勝ち誇るペガサス’(1905~07年)

3397_2       ルドンの‘キュクロプス’(1914年)

3399_2        ルノワールの‘道化師’(1868年)

3398_2     モネの‘水上のアトリエ’(1874年)

手元の画集を総動員してつくった必見リストのなかで数の多いのがスーラ(3点)とルドン(6点)。ルドン(1840~1916)はゴッホ美で6点みたが、ここでもリストアップしていたうちの3点とNO情報の1点の4点が姿をみせてくれた。

‘勝ち誇るペガサス’は火事の現場に居あわせたような背景の赤とペガサスの緑の翼の対比が目に焼きつく。描かれているのは善玉(ペガサス)が悪玉(竜)をやっつけるギリシャ神話の場面。ペガサスというと天空を駆け巡る優雅な姿をイメージするが、このペガサスは目が鋭く硬いひずめで竜をボコボコにしている感じ。

‘キュクロプス’も長いこと対面を待っていた絵。目は二つあるのが普通だから、こういう一つ目というのはドキッとする。巨大な目は黒の時代に繰り返し描かれた。切り落とされた首を運ぶ気球になり空を飛んでみたり、子どもがみたらひきつけをおこしそうな一つ目人間に姿をかえてぬっと現れる。これはルドンの神秘的な怪奇ワールドに欠かせないモチーフ。

ルドンは結婚を契機に画風をがらっと変え、花や神話を題材にした色彩の世界にいどんでいく。誰もが一つ目はもう無いと思っていたら、死ぬ2年前にまたでてきた。でも、今度は怪奇モードは漂ってなく、ちょっとおつむの足りない坊やという感じ。美しいガラテアに恋するのはまだ早いというのに、一度恋心に火がつくともうダメ。彼女が好きなアキスを嫉妬のあまり殺してしまう。気持ちはわかるが、人を殺めてはいけない。

ここ数年ルノワール(1841~1919)の追っかけ画との出会いがよくある。ここで思いの丈をはたすことができたのはルノワールが27歳のときに描いた‘道化師’。図版のイメージとはちがって大きな絵。堂に入った立ち姿なので思わず背筋をのばしてみた。ルノワールはもう1点小品がある。

モネ(1840~1926)は‘水上のアトリエ’の1点のみ。パリの北東10kmにあるアルジャントゥイユへ妻子とともに移ったモネは幅の広いボートをアトリエに改装し、舟上から川岸の風景を描いた。マネの絵にモネのその様子を描いたものがある。

ほかの印象派、ポスト印象派の画家では、マネ(1点)、ピサロ(2点)、ゴーギャン(3点)、ロートレック(2点)、セザンヌ(1点)があった。

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2012.01.04

ゴッホ以外のコレクションも一級品揃い!

3394_2        スーラの‘シャユ踊り’(1889~90年)

3393_2     ‘ポール・タン・ベッサンの日曜日’(1888年)

3392_2     シニャックの‘朝食’(1886~87年)

3395_2     トーロップの‘ティマーマン博士’(1900年)

週間美術本、‘ラ・ミューズ 世界の美術館 クレラー=ミュラー美’(講談社)が発行されたのは1993年。これによりここにはゴッホ以外にもみてみたい絵が沢山あることがわかった。それから18年の時が流れ、ようやくお目当ての絵を見る機会が巡ってきた。

必見リストの◎はスーラ(1859~1891)の絵。全部で5点あった。みたい度筆頭は‘シャユ踊り’、図版で馴染みの絵だが、本物は大きな絵だった。絵画鑑賞で体験するサプライズは絵のサイズからうまれることが多い。画集をみるときはそこに記されているサイズまでみてないから、思った以上に大きかったりするとその絵が強く印象づけられる。

この絵に描かれているフレンチカンカンは誰もが知っている踊り。体が柔らかくないとこれだけ高く足はあがらないだろうし、これほど激しく踊りまくれば相当な体力がいるにちがいない。おもしろいことに足が上にあがるだけでなく、踊り子のくちびるや目、髭もつりあがり、靴のリボンから肩の飾り物までぴんと立っている。

スーラは凝り性の性格だから、興味のあることを理論的に考える。ある科学者が‘水平線は穏やかさ、下降線は悲しみ、上昇線は陽気さを表す’という理論を発表すると、これにとびつきバカ騒ぎのシャユ踊りを上昇線を多用して描いてしまう。確かにどれもこれもが逆重力現象に見舞われたように斜めの角度で描かれていると、つい浮かれた気分になる。

‘ポール・タン・ベッサンの日曜日’は‘シャユ踊り’とは対照的にスーラらしい静寂さにつつまれた点描画。スーラはこのノルマンディー地方の漁港の光景を4点描いているが、この絵だけは人物が登場する。真夏の昼下がりという感じで明るい画面なのだが、ここからは音は聞こえてこない。

大収穫だったのはシニャック(1863~1935)の‘朝食’。点描で描かれているのに人物の丸さや量感がしっかりとらえられている。そして、じっとみてしまうのが奥から入ってくる光でできる右の老人の鼻やテーブルにおいている手の影。これまでみたシニャックの絵ではこれが一番いいかもしれない。隣の方も気に入ったらしく、二人でしばらく息を呑んでみていた。

ジャワ生まれのヤン・トーロップ(1858~1928)は以前日本へやってきた‘3人の花嫁’と再会する予定だった。だが、これはなく展示されていたのは点描画6点。目のなかにあるトーロップの絵は2点、どちらも象徴主義の画風のものだから、この点描画には面食らった。でも、どれもいい絵。なかでも人物画‘ティマーマン博士’に魅了された。

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2012.01.03

まだあるゴッホの名画!

3391_2     ‘ヌエネンの古い教会の塔’(1884年)

3390_2         ‘ピンクの桃の木’(1888年)

3388_2           ‘二人の女性がいる糸杉’(1889~1890年)

3389_2          ‘ジヌー夫人’(1890年)

ゴッホには一度描いた作品のレプリカがいくつもある。‘ジヌー夫人’もそのひとつで、クレラー=ミュラーが所蔵するこの絵が原画。以前ローマの近代美にあるレプリカをみたことがあるが、絵の魅力はこの絵の半分くらいだった。図版で感じていたとうりこの目鼻の大きな女性は存在感のある賢夫人というイメージがピッタリの女性だった。


日本にやって来たことのある緑の色調が目に焼きつく‘ルーラン夫人’と再会した。この絵は4点あるレプリカの一枚。‘ルーラン夫人’についてはシカゴ美にある作品(レプリカ)に最も魅了されており、ここにあるものはどうも心が寄っていかない。

‘二人の女性がいる糸杉’は‘ジヌー夫人’同様、必見リストに◎をつけていた絵。もう一つある糸杉の絵‘星月夜と糸杉のある道’とくらべると、こちらのほうが好み。糸杉はどの絵でも厚塗りでうねるようなタッチで描かれており、じっとみているとがその糸杉のダイナミックな造形により体と心のバランスが崩される感じになってくる。

ところが、この‘女性のいる糸杉’は心が過度に荒ぶることもなく、逆に糸杉に宿っている力強い生命力に引き込まれていく。これは糸杉の数が多く、垂直にどーんと立っているからかもしれない。また、背景の太い白の線で表現された雲の明るさが心を晴れやかにする。はじめ絵に近づきすぎたため女性の姿が雑にみえたが、すこし離れると白の衣服が画面全体をひきしめていた。

ゴッホはアルルへ移ってから、‘ピンクの桃の木’のように真ん中に木を大きく描く作品をいくつも制作している。ぱっとみると浮世絵の画面構成と似ている。ゴッホの頭のなかには広重の‘名所江戸百景’に登場する‘亀戸梅屋敷’がどっかり居座っていたにちがいない。

また、オランダのヌエネンにいたころ古い教会を描いた風景画やパリのムーラン・ド・ラ・ギャレットにある風車を描いた絵にも足がとまった。

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2012.01.02

クレラー=ミュラー美でゴッホの傑作を200%楽しんだ!

3387_3     クレラー=ミュラー美の正面入り口

3384_3     ‘アルルのはね橋’(1888年)

3385_3        ‘夜のカフェテラス’(1888年)

3386_3     ‘プロヴァンスの麦積み’(1888年)


今回の美術館めぐりで一番のお楽しみクレラー=ミュラー美はとても大きな国立公園の中にあった。入り口の前の芝生には赤色の巨大なオブジェが設置してあるので、何も情報をもたないでここへ立ったら館内ではモダンアートの作品が待ち受けているのかと思うかも知れない。

ここでの鑑賞時間は2時間。お目当てはゴッホ(1853~1890)だが、プラスαの必見作品もリストにはいくつも載せている。おおいに魅了された傑作の数々を5回にわたって紹介したい。最初の2回はゴッホ。

この美術館が所蔵するゴッホコレクションは油彩90点、デッサン110点。TASCHEN本をもとに事前にまだみていない油彩のリストをつくっておいた。その数36点、めでたく対面できたのは16点。みたい度の強かった作品はほぼあったので満ち足りた気分。

日本でクレラー=ミュラー美蔵によるゴッホ展は3回体験した。昨年は国立新美でゴッホ美とのジョイント回顧展があった。でも、‘アルルのはね橋’と‘プロヴァンスの麦積み’はやってこなかった。だから、この2点と‘ジヌー夫人’はリストのなかでは◎がついている。

小さいころゴッホの絵として目に焼き付けられたのはひまわりとはね橋の絵。ひまわりは日本の損保ジャパン美にもあるから、みたくなったときは新宿へ出かければいい。ところが、はね橋の絵で最も有名なものはアムステルダムから90km離れたところのクレラー=ミュラー美とケルン ワルラフ・リヒャルツ美が所蔵している。どちらもルーブルやロンドンナショナルギャラリーのように気軽には行けないところ。だから、はね橋はムンクの‘叫び’(オスロ国立美)のように西洋画のなかでは目に馴染んでいるのにじつは縁遠い絵。

その絵の前にやっと立つことができた。目ははじめ馬車が中央にいる形のいいはね橋にむかうが、そのあとは女性たちが腰をかがめて河で洗濯ものを洗っている光景に釘づけになる。水面に幾重にもできた丸い波文は洗濯のリズミカルな動きにあわせてゆらめく。そして、空と河の青とはね橋と土手のオレンジの鮮やな色合いが働く人々の逞しさ、力強さいっそう印象づけている。本当にいい絵をみた。

‘プロヴァンスの麦積み’はまん中にある2つのもっこりした黄金色の麦わらが強い存在感で迫ってくる。左奥に農婦やそのむこうの家が積みわらとは対照的に小さく描かれているので、余計に麦わらの大きさを感じてしまう。

‘夜のカフェテラス’を運良くまたみることができた。05年に東近美であった回顧展(拙ブログ05/3/26)のときと同様、大変感激した。この絵はゴッホの全作品のなかでものめり込み度では最上位にくる作品。しばらくいい気分でながめていた。

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2012.01.01

謹賀新年 12年前半展覧会プレビュー!

3383

今年も拙ブログをよろしくお願いします。まずは今年前半に行われる展覧会の情報から、今わかる範囲でまとめてみました。

★西洋美術
1/17~3/4    ルドン展               三菱一号館美
2/10~5/6    ポロック展              東近美
3/28~6/11   セザンヌ展              国立新美
3/31~6/10   ダ・ヴィンチ展            Bunkamura
4/7~6/24    エルンスト展             横浜美

4/14~5/20   草間彌生展             埼玉県近美
4/25~7/16   大エルミタージュ美展        国立新美
4/28~6/24   高橋由一展             東芸大美
6/13~9/17   ベルリン国立美展         西洋美
6/23~8/19   バーン=ジョーンズ展       三菱一号館美
6/30~9/17   マウリッツハイス美展       東京都美

★日本美術
1/2~2/14    北京故宮博物院200選      東博
1/2~2/5     平清盛展               江戸東博
3/17~5/6    三都市画家くらべ          府中市美
3/20~6/10   ボストン美 日本美術の至宝   東博
3/29~5/8    地上の天宮 北京故宮博展    東京冨士美

4/10~5/20   曽我蕭白展             千葉市美
4/14~6/17   ホノルル美蔵 北斎展       三井記念美
4/14~5/27   雪舟展                サントリー美
4/21~5/20   KORIN展              根津美
5/26~7/16   日本橋展               江戸東博
6/13~7/22   紅型展                サントリー美

(注目の展覧会)
西洋美術で開幕が待ち遠しいのはポロック展、ベルリン国立美、バーン=ジョーンズ展。ポロック展は日曜美術館で出品作の一部を知ることができたが、いい作品が結集している様子。三菱一号館で行われるバーン=ジョーンズ展への期待値も高い。ながらく待っていた画家の回顧展なので、とても楽しみ。追っかけ画がいくつ入っているだろうか。

ベルリン国立美展にはとびあがるほど嬉しい絵がやってくる。フェルメールの‘真珠の首飾りの女’である。この絵との対面をずっと夢見ているが、やっと実現する。そして、
6/30からは新東京都美の開館記念展、マウリッツハイス美展に‘真珠の耳飾りの少女’が登場、ということはこの時期上野へ足を運べばフェルメール作品のなかで最も人気のある2点が楽しめることになる。2人の少女にぞっこん参っているから、このコラボは夢のよう。

日本美術のお楽しみはなんといっても明日からはじまる‘北京故宮博物院200選’と‘ボストン美 日本美術の至宝’。ともに30年に一度の大展覧会であることは間違いない。故宮展に特別出品される‘清明上河図’の存在を知ったのは25年前、いつかみてみたいと思っていたがまさかそれが実現するとは。

ボストン美の至宝展はわくわくするような作品がどどっとやってくる。今年の干支は辰なので、曽我蕭白の龍に最も心がむかうかもしれない。どんなサプライズが待っているか、1点々じっくり味わいたい。

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