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2011.12.31

11年感動の展覧会 ベスト10!

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今年は3月11日に起きた東日本大震災とそれにともなう福島原発事故のため、当初予定されていた展覧会のいくつかが中止あるいは延期になった。大変なことが起きた年なので、今年でかけた展覧会はこれから後ほかの年に楽しんだ展覧会より深く心に刻まれることになるかもしれない。

海外の美術館での体験をふくめ今年みた展覧会は全部で87、昨年の200の半分以下になった。これはここ数年足を運ぶ展覧会を絞っているため。いつも書いているように、追っかけ画をみるための展覧会鑑賞だから、お目当ての作品が鑑賞済みになりその数が減っていくと必然的に展覧会へのインセンティブがうすれていく。

だが、展覧会の数が少なくなっても美術品に接して生まれてくる感動の総量が減るわけではなく、むしろどんどん大きくなっている。それは国内であれ海外であれ、心を奪われる傑作やお宝はまだいっぱいあるから。東博の通常展示に登場する国宝や海外の美術館が所蔵する必見の絵画や彫刻、工芸と対面して深い感動を覚えるのは度々のこと。

また、展覧会だけが美術を楽しむ機会ではない。最近はNHKをはじめ各局がBSで質の高い美術番組を制作しているのでこちらをじっくりみるほうが、クセ球が好きな天邪鬼タイプの館長や美術評論家がさもこれが新しい美術のトレンドかのように吹聴する展覧会へ出かけるよりはるかに楽しく、良質の情報が得られる。

拙ブログの感動の展覧会・ベスト10は順位はつけない。西洋美術、日本美術を仲良く5つずつ選んだ。開催された時期の順に並んでいる。画像に使った写楽展が一番よかったというのではない。

★ ‘歴代沈壽官展’             1/19~1/31    日本橋三越

★ ‘長澤芦雪展’              3/12~6/6     MIHO MUSEUM

★ ‘レンブラント展’             3/26~6/12    西洋美

★ ‘写楽展’                 5/1~6/12      東博

★ ‘ワシントン・ナショナル・ギャラリー展’  6/8~9/5    国立新美

★ ‘空海と密教美術展’          7/20~9/25    東博

★ ‘酒井抱一と江戸琳派の全貌展’   10/10~11/13  千葉市美    

★ ‘ロートレック展’             10/13~12/25  三菱一号館美

★ ‘ゴヤ展’                 10/22~1/29    西洋美

★ ‘セガンティーニ展’           11/23~12/27   損保ジャパン美


今年も拙ブログにおつきあいいただきありがとうございました。
皆様よいお年をお迎え下さい。

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2011.12.30

ゴッホ美ではプラスαが見逃せない!

3378_3     ゴーギャンの‘ひまわりを描くゴッホ’(1888年)

3379_3     ロートレックの‘テーブルのそばの若い女性’(1887年)

3381_3       ルドンの‘閉じた目’(1894年)

3380_3       ドンゲンの‘画家の妻の肖像’(1911年)

ゴッホ美のお楽しみパート2は4階にあるゴーギャンやロートレック、モネ、ルドンらの絵。そのなかのお気に入りの絵をいくつか。

ここのゴーギャンコレクションは何点あるか正確には知らないが、今回は初見の2点を含めて4点展示されていた。ゴーギャン(1848~1903)がアルルで描いた‘ひまわりを描くゴッホ’はなぜかこれまで縁がなかった。貸し出しの時期にぶちあたったか、ローテーションが合わなかったかどちらかだろう。

理由がわからないのだが、この絵だけガラスケースに入っている。花瓶のひまわりとそのむこうのキャンバスとゴッホの体がちょうどV字となっており、絵筆を持った右腕の背景は下からうす青、黄色、緑の色面で構成されている。奥行きのないこの平面的な画面構成がゴーギャンの絵の特徴。ほかの絵にみられる赤がないので、色彩的にはおとなしい。そして、ゴッホの表情はどこかどろんとした感じ、この絵をみたゴッホは激昂し‘これはたしかに私だ、しかし気が狂った私だ’といったという。

ゴッホより10歳年下のロートレック(1863~1935)は2点。ゴッホを横向きに描いたものと22歳のころつきあっていたヴァラドンがモデルの‘テーブルのそばの若い女性’。ロートレックの油彩人物画に魅せられているが、娼婦たちを描いたものだけでなくカルメンやこのヴァラドンを描いたものもなかなかいい。

クレラー=ミュラー美もゴッホ美もどういうわけかルドン(1840~1916)の絵をいくつも所蔵している。展示してあったのは‘目を閉じて’や‘仏陀’など6点。必見リストに載せていたのは前回みれなかった‘輪光の聖母’だったが、運悪く姿をみせてくれなかった。

ルドンは50歳のころそれまでの黒色の怪奇な世界と決別し、目を閉じた女性というモチーフをくりかえし描き静けさのあふれる瞑想的な世界を表現するようになる。モデルは妻のカミーユ。

04年、ここを訪れたときサプライズの絵に遭遇した。それがドンゲン(1877~1968)の‘画家の妻の肖像’、以来この画家の作品をみるのが楽しみになった。ドンゲンがゴッホの色彩に大きな影響を受けたことはこの絵をみればよくわかる。背景の目の覚めるような赤と衣服の青の鮮烈な対比が目に焼きつく。

この絵の隣にも初見のいい女性画があった。これは大収穫。その感動を記憶にとどめるためミュージアムショップで絵葉書を買い求めようとしたが、用意されてなかった。
残念!手に入ったら紹介できたのに。

クレラー=ミュラー美とアムステルダム国立美については、1/2から書きます。

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2011.12.29

ゴヤの‘着衣のマハ’が40年ぶりにやって来た!

3374_2     ‘着衣のマハ’(1805年)
  
3375_2     ‘レイカディア・ソリーリャ’(1812~14年)

3377_2        ‘自画像’(1815年)

3376_2     ‘戦争の惨禍 37番これはもっとひどい’(1810~14年 1863年初版)

年初、スペインを旅行しマドリードにあるプラド美へ行った時、おもしろいことがあった。館内の休憩コーナーにいた別の旅行会社のツアーに参加された方が‘さっきゴヤの‘着衣のマハ’のところで、ガイドさんがこの絵は秋に日本へ貸し出されるといってましたが、すごいですネ’という。

その情報は昨年どこからとなく入ってきていたが、日本ではまだ公には発表されてない。ところが、現地の日本人ガイドさんはちゃんと知っていて、絵の前で‘裸のマハはダメですが、この絵はまた日本でみれますよ’としゃべっている。西洋美のゴヤ展のチラシやポスターがでてきたのはこれからだいぶ後のことだった。

‘ゴヤ展’(10/22~1/29)は西洋美の実力をみせつける一級の展覧会、流石というほかない。40年ぶりにやってきた‘着衣のマハ’のほかにもいい肖像画がずらずらと揃っている。1月鑑賞したとき大変魅せられた‘ホベリャーノスの肖像’(拙ブログ2/17)をはじめとして、‘自画像’、‘レオカディア・ソリーリャ’、‘赤い礼服の国王カルロス4世’、‘初代フロリダブランカ伯爵ホセ・モニーノ・イ・レドンド’。日本にいてゴヤの肖像画の傑作がこれほど多くみられるのはこの先20年はないだろう。

天才画家に共通してみられる特徴は画風がいろいろ変わること。ゴヤ(1746~
1826)もその例にもれない。カラヴァッジョが裸足で逃げるのではないかと思うほど美しいキリスト磔刑も描けるし、‘木登りをする少年’や今人気の佐々木希のような愛くるしい女の子を描いた‘日傘’といった風俗画で見る者の心を和ましてくれる。

その一方で、画業の後半でゴヤは人間の心の闇や悪魔的気分、そして戦争という悲劇のさなかに容赦なく発揮される人間の狂気や残虐さを黒い絵シリーズや版画で強く激しく表現する。4つある版画シリーズのなかで、緊張感を強いられるのが‘戦争の惨禍’。

‘37番これはもっとひどい’はまさにタイトルの通り。侵略してきたフランス兵は仲間の兵士が殺されればその何十倍の数のスペイン人を虐殺する。そうすればまたスペイン人の怒りは沸騰し、その仕返しにフラン兵の首を刎ね、腕や足をぶったぎる。残虐行為の連鎖はとめようがなくはてしなく続く。

現代なら写真家や映像作家が戦争の悲惨さを生のままとらえて世界に発信するが、当時はまだ写真がないからゴヤの絵画制作が写真の役割を果たした。こうした版画をみていると、芸術作品というものをこえて人間の本質を深くみつめたゴヤの魂の叫びが聞こえてくるような気がする。

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一生離れられないゴッホ!

3372_2     ‘じゃがいもを食べる人たち’(1885年)

3370_2     ‘アニエールの公園’(1887年)

3373_2     ‘コップにいけた花咲くアーモンドの小枝’(1888年)

3371_2     ‘カラスの群れ飛ぶ麦畑’(1890年)

2004年、ゴッホ美を訪問したとき館長が選んだ‘名画100選’という図録(日本語版)を購入した。ここに載っているゴッホの作品75点のうちまだみてないのが8点残っている。だから、まずこれらが第一列の追っかけ画、そしてTASCHEN本にある絵が次の列。

一列で鑑賞できたのは上出来の6点。その2点が‘アニエールの公園’と‘コップにいけた花咲くアーモンドの小枝’。‘アニエールの公園’はゴッホがパリに2年いたときの絵。スーラから影響をうけた点描画法を用いて描かれている。ゴッホが色に目覚めつつある時期だから、明るい色がのびやかにでている感じではなくすこしおとなしい。

ゴッホは点描画が色の明るさをだすには一番いいことはわかったが、途中からスーラのように時間をかけて緻密に仕上げる点描画は自分には性格的に無理と思ったにちがいない。で、もっと明るく大胆な色彩で対象をとらえる独特のタッチを使い風景やひまわり、人物を描きはじめる。南フランスのアルルでそれが全開し、傑作を次々と生み出していく。

1888年2月、アルルに移って1ヶ月後に描いたのが‘アーモンドの小枝’。図版で見るイメージとはちがい小品だったが、枝ぶりがよくうすピンクのアーモンドの花に心が洗われる思いだった。そして、この絵のまわりにあった桃や梨が画面の中央にどーんと描かれた作品にも魅了された。

ゴッホが初期のころ沢山描いた農民の絵では‘じゃがいもを食べる人たち’が群をぬいていい。クレラー=ミュラー美でも構成が同じ別ヴァージョンをみたが、惹きつけられるのはこちらのほう。描かれた5人のなかで視線が向かうのは左の横向きの男性の隣にいる女性。ランプに照らされた大きな眼がとてもチャーミングで吸いこまれる。

2階の部屋を時計回りに回っていき最後に遭遇するのが‘カラスの群れ飛ぶ麦畑’。この絵を描いた3週間後、ゴッホは銃で胸を撃ち自殺を図る。嵐がきそうな暗い空や粗粗しいタッチで描かれた麦畑、そして空を舞う黒いカラス、これだけ見る者の心を揺すぶる描写をみせられるとどうしてもゴッホの悲劇的な結末とむつびつけてみてしまう。重たい絵である。

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2011.12.28

人気のゴッホ美術館を再び訪問!

3369_2     ゴッホ美術館の入り口

3368_2        ‘アルジェリア歩兵’(1888年)

3366_2        ‘ひまわり’(1889年)

3367_3     ‘黄色い家’(1888年)

アムステルダムの人気の美術スポット、ゴッホ美ではいつも入館を待つ人の長い列ができている。冬でもこれほど多くの人がくるのだから、春や夏の暖かい時期にはもっと混雑していることだろう。

ここでの鑑賞時間は1時間10分くらい。現地日本人ガイドさんは館内では解説できないので、チケットをもらってなかに入ったら自由にみることになっている。1階から4階まであり、上の階へは吹き抜けの階段をあがっていく。2階に展示されているのは全部ゴッホ(1853~1890)の作品。だからここに多くの時間を割くのだが、あまりゆったり気分でもよくない。というのは、1、3、4階にもゴッホのいい絵が飾ってあるから、こちらへも早足でまわるのが上策。

日本でもゴッホファンは多いので、大きな回顧展が何度も開催される。昨年は国立新美でゴッホ美&クレラー=ミュラー美が所蔵する傑作の数々が公開された。これらを皆勤し、ここゴッホ美を幸運にも3度訪れることができたから、館の図録に載っているものはかなりの数が目のなかに入った。

でも、TASCHENから出版された‘ゴッホ全油彩画’(2010年)にはまだお目にかかってないのが全部で72点ある。今回この追っかけリストを手にして忙しくまわった。みれたのは28点、39%のヒット率だから満足のレベル。そのなかで◎の絵はこれまでどういうわけか縁がなかった‘アルジェリア歩兵’。ようやく姿をみせてくれた。背景の深い緑と帽子の赤のコントラスト、そしてレンガ一枚々を表す太い白の線が強く印象に残る。画集で感じていたとおりのすばらしい肖像画だった。

イエローパワーが全開の‘ひまわり’は03年損保ジャパン美であったゴッホ展にやってきたから、ゴッホ好きの方は損保ジャパンがもっているひまわりとの共演を楽しまれたにちがいない。2点ともロンドンナショナルギャラリーにある原画を模写したレプリカだが、3点のなかではゴッホ美にあるひまわりが一番気に入っている。厚塗りの種の部分を久しぶりにじっくりみた。

Myカラーが緑&黄色なので、明るい青空にいっそう引き立つ‘黄色い家’にもぐっとのめりこむ。ゴッホにつきあってくれる画家仲間は性格のいいシニャックらほんの数人しかいなかったのに、ゴッホはアルルに芸術家共同体をつくることを真剣に考えていた。その拠点にと借りた黄色い家には椅子を13脚も揃えたというからゴッホの本気度がわかる。ところが、やって来たのはゴーギャン一人だった。

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2011.12.27

すばらしい‘セガンティーニ展’!

3362_2     ‘アルプスの真昼’(1891年)

3364_2       ‘水を飲む茶色い雌牛’(1892年)

3363_2     ‘森からの帰途’(1890年)

3365_2     ‘キノコ’(1886年)

損保ジャパン美で開催中の‘セガンティーニ展’(本日終了)をみて大変いい気持ちになった。これまで体験したセガンティーニ(1858~1899)の作品はほんの両手くらい、今回の回顧展で60点が加わったのでやっとこの画家の魅力の真髄に迫ることができた。損保ジャパン美に感謝!そして大きな拍手を送りたい。

この展覧会の目玉、‘アルプスの真昼’をみるのは幸運にも2度目。06年Bunkamuraの‘スイス・スピリッツ展’(拙ブログ06/3/4)に続いてまたこの傑作をみれたのだから幸せの極み。フェルメールの‘真珠の耳飾りの少女’と再会をはたしたのと同じような心の高揚感がある。画面の中央でまぶしい光をさえぎるように帽子のつばに手をやる少女の姿に限りなく魅せられる。そして、緑の草の匂いを感じ遠くにみえる山々に積もった雪の白と明るい青空が目にくっきりと焼きつく。

この絵と同じ筆触、色の調子、構成で描かれアルプスの雰囲気が200%漂う絵がほかに4点ある。大原美蔵の同名の作品、‘井戸のかたわらに女性のいるアルプスの風景’、そして牛が主役の‘水を飲む茶色い雌牛’と‘春の牧草地’。このなかで最もながくみていたのが大きな絵の‘春の牧草地’。これを所蔵するミラノのブレラ美を何年か前訪問したときみた覚えがないから、大収穫だった。

そりを引く農婦の後ろ姿を動きのある斜めの構図で描いた‘森からの帰還’もすばらしい作品。体が震えた。また、セガンティーニが静物画を描いているとは想像だにしてなかったから、クールベの絵を思い出させる‘キノコ’を息を呑んでみた。

風景のなかに象徴主義をもちこんで描いた‘虚栄’にはセガンティーヌの風景画家とは別の顔が現れている。アルプスの高いところで暮らしていると自然のもつ厳しさ美しさを体全体で感じ、そして同時に神秘的な天空に内なる精神がつつみこまれ想像力が刺激されるのだろうか。

この展覧会でますますセガンティーニの虜になった。サンモリッツにある美術館めぐりをなんとしても実現したい。

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オランダ 街角ウォッチング!

3359      昼でもライトをつけて走行するクルマ

3360      家の窓はいつもピカピカ

3361     トッピングがきのことハムのパンケーキ

★‘クルマは昼でもライトをつけて走っている!’

アムステルダムに直行便の飛行機が到着し入国手続きをすませた後、宿泊地のハーグへバスで移動した。現地時間で4時ころ。6年前もオランダの街をバスでいろいろ動いたからすこしは外の風景のイメージが戻ってきてもよさそうなのに、まったく忘れている。だから、車中から眺める景色は結構楽しい。オランダの土地は視界をさえぎるものは何もないという感じで、ずーっと遠くまでフラット。

驚くのは高速道路の広さ、ところによっては6車線くらいある。追い越し車線だけでなく真ん中のレーンにいるクルマもかなりのスピードで走っている。日本と違うのはまだ暗くないのに多くのクルマがライトをつけていること。添乗員Oさんの話だと、ヨーロッパの北のほうは昼でもうす暗いことが多いので安全上の理由から、新車はエンジンをかけるとライトがつくようになっているそうだ。これによって事故が減ったとか。

★‘オランダの家の窓はどうしてこんなにきれいなの?’

ハーグでもアムステルダムでも、オランダはどこの街へ行っても普通の家や建物の窓がびっくりするほどきれい。住宅街をバスが通っていくとその感を強くする。月曜の午前中が窓ふきタイム。感心するくらいピカピカ。結婚をした女性の家庭内での一番大事な仕事がこの窓ふき。これがちゃんとやれないと×カードが出されるらしい。

そして、きれいな状態が保たれた窓の内側にはカーテンをしないで開放的にしている。だから、外から中が丸見え。日本ではカーテンをしない家はまずない。ところがオランダはプロテスタントの国。わたしたちは節制してつつましく生きています、派手で自堕落な暮らしをしているわけではないからカーテンは必要ありません!家を開放的にする習慣の根っこにあるのはプロテスタントの伝統的な精神だった。

★‘美味しいオランダ風パンケーキ!’

クレラー=ミュラー美を鑑賞したあとの昼食にきのことハムをいためたものをくるっとまいて食べるパンケーキがでてきた。厚めのクレープという感じで昼に食べる量としてちょうどよく美味しかった。

★‘大男、大女がいっぱい!’

オランダを訪問してちょっと困るのはトイレの便器の高さ、長身のオランダ人(平均身長182cm、世界一)のためにつくられているから、われわれの丈ではつま先立ちを余儀なくされる。次回は携帯用踏み台をもっていこうかな。レストランで働いている女性も大柄な人ばかり(170cm)。とにかくオランダ人はデカイ。

帰りの飛行機のなかで、頑丈な体をした若い男性が隣の席にいた。太股が女性の胴体くらいあるからてっきり日本で行われる柔道の国際大会に参加するアスリートだと思った。でも、話をしたら柔道選手ではなく普通のサラリーマン、すごい国である。休暇で日本観光らしい。東京はどこへ行きたいのかと尋ねると、秋葉原に興味があるという。日本をエンジョイしただろうか?

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2011.12.26

フーケの衝撃度マグニチュード7の絵に釘づけ!

3356_3       フーケの‘聖母子と天使たち’(1452年)

3355_2       ヤン・マセイスの‘ユディト’(16世紀中頃)

3357_3         メッシーナの‘十字架磔刑’(1475年)

3358_2     アンソールの‘東洋の品々のある静物’(1906~07年)

今回の美術館めぐりで新鮮な体験がふたつあった。それはこれまであまり馴染みのなかったフランドルの画家バウツとフランスのジャン・フーケの絵。

MASミュージアムでマグニチュード7くらいの衝撃的な出会いだったのがフーケ(1420~1481)の‘聖母子と天使たち’。この絵は15世紀の中頃に描かれたものだが、イメージ的には現代作家が手がけたグラフィカルな作品のようにみえる。そう感じさせるのは聖母と幼子イエスの後ろにいる天使たちの描き方。15世紀こんな色で描かれた天使はどこを捜してもいない。

天使たちは密度の濃い赤と青の油絵の具で満たされた溜め池のなかに頭からずぼっと漬かり、そのあと強い日差しのもとで乾かしてきた感じ。この深くて光沢のある赤と青に染まった天使には圧倒的な存在感がある。だから一人々じっとみてしまう。そして、天使たちの赤と青が白い肌のマリアとイエスを浮かび上がらせている。

聖母の左の乳房があらわになっているのは授乳のためとはいえ、これほど大きく丸いボールのような乳房がどーんと目の前にあると、どうしても心はザワザワする。聖母のモデルはフランス王シャルル7世の愛妾アニエス・ソレル。22歳のとき王に見初められた絶世の美女アニエスは豊かな乳房が自慢で、左の乳房をむき出しにした奇抜なファッションを考案した。で、聖母はこのようなドキッとする姿で描かれている。また顔を面長にみせるため剃りあげた前髪もアニエスお好みのヘアスタイル。

王冠や玉座に装飾された宝石の質感はファン・エイクやウェイデンばりに精緻に描かれているが、その輝きは押さえ気味なので、ここへは視線はながくとどまらない。‘週間 世界の美術館 ベルギー王立美とアントワープ王立美’(09年12月 講談社)を手に入れたときから、表紙に使われた‘聖母子と天使たち’がずっと気になっていた。運良くMASミュージアムでみれたのは一生の思い出になる。

ヤン・マセイス(1510~1575)はアントワープで活躍した画家。写実的な風俗画を得意とした父親のクエンティン・マセイスとはちがい、ヤンはイタリアのマニエリスムの影響を受け男を滅ぼす妖艶な女性を描いた。身体の理想的なバランスを崩して描くのがマニエリスム流だから、剣とホロフェルネスの首をもつ手が異様に長い。どうでもいいことだがこのユディトの顔をみていたら、モデル出身の女優りょうがふと頭に浮かんだ。

シチリア生まれの画家メッシーナ(?~1479)の絵に接する機会はとても少ないので、こういう画集に載っている絵と遭遇できたのは幸運この上ない。高い位置に描かれたキリスト磔刑の様子をさっとみてあとは、精緻に表現された中景、遠景に広がる風景をずっと先までゆっくり追っかけていった。

アンソール(1860~1949)で期待していたのは30歳のときの作品‘陰謀’だったが、これはダメだった。そううまくはいかない。展示してあったのは1988年に開催された‘ジャポニスム展’(西洋美)でみた‘東洋の品々のある静物’。黄色いお面がでてきたのですぐ思い出した。

アンソールの風来坊の父親はイギリス人。母親がオステンドでやっていた土産物屋には日本のお面や衣裳、団扇なども置いてあり、アンソールは小さいころから日本趣味に慣れ親しんでいた。

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2011.12.25

アントワープの新ランドマーク MASミュージアム!

3354_2          MASミュージアムの外観

3353_3           ファン・エイクの‘聖女バルバラ’(1437年)

3352_3           ファン・エイクの‘泉の聖母子’(1439年)

3351_2     ルーベンスの‘凍えるヴィーナス’(1614年)

今年の5月にオープンしたMASミュージアムがあるのはノートルダム大聖堂から北の方向へ約1.5kmの再開発地区エイランチェ、歩いて20分くらいで到着した。ここは今アントワープの新ランドマークとして多くの人を集めているという。

開放的な造形で現代感覚の香りが漂うこのMASミュージアムの情報は偶然入ってきた。BSジャパンに‘美の浪漫紀行’という美術&旅番組があるが、11月の放送にMASミュージアムが登場。館の展示の特徴を説明し、4階の平常展示や3階で行われているオープン記念の特別展(来年の12月30日まで)を紹介していた。

じつはアントワープ観光のとき、昨日紹介したマイヤー・ヴァン・デン・ベルフ美のあと街の中心から少し離れた王立美へも足をのばし大急ぎで目玉作品をみようともくろんでいた。番組のなかにその王立美自慢のコレクションがいくつかでてきた。王立美は改築工事のため今年の9月から2017年の秋までの長期の休館に入っており、その対応として16、17世紀の作品から現代アートまでの所蔵作品のなかから選りすぐりの傑作50点をMASミュージアムの特別展として展示しているのである。

これは時間が限られているわれわれにとっては願ったり叶ったりの鑑賞機会。館内には40分くらいしかおれなかったが、いい絵がいくつもみれたので2回にわたって紹介したい。

王立美でとくにみたかったファン・エイク(1390~1441)の2点が揃って展示されている。ともに小品で‘聖女バルバラ’は30×18cm、‘泉の聖母子’はさらに一回り小さく19×12.2cm。‘聖女バルバラ’は未完の下描き。でもその精緻な描写にはぐっと惹きこまれる。

視線がむかうのはバルバラの着ている大きく広がった衣裳と後ろで建築中のゴシック聖堂。とくに聖堂の幾本ものびる極細の垂直線に思わず目が寄っていく。聖堂のまわりや塔の上で忙しく働いている男たちの情景はブリューゲルの‘バベルの塔’を彷彿とさせる。

ファン・エイクが死ぬ2年前に描かれた‘泉の聖母子’はとても小さい絵。画面が小さくても一切手抜きなしの精緻な筆使い。目を惹くのが聖母子の背後に垂らされた黄金の刺繍入りの布を持っている天使のレインボー翼。ファン・エイクの絵をみる楽しみのひとつがこの虹を思わせる翼。これまで体験した‘受胎告知’(ワシントン・ナショナル・ギャラリー)や‘ドレスデンの三連画’(ドレスデン国立美)と同じようにうっとりながめていた。

3点あったルーベンス(1577~1640)は‘凍えるヴィーナス’に大変魅了された。ヴィーナスというと愛と豊饒さが代名詞なのに、ここに描かれたヴィーナスは寒さで心も体も冷え切った様子。また、小さなヴェールを掛けられたキュービッドの辛そうな表情にも心が痛む。

この絵は‘ケレスとバッコスがないとヴィーナスは凍えてしまう=食べ物と酒がなければ愛も冷めてしまう’という古代ローマの劇作家テレンティウスのよく知られた格言を絵画化したもの。暗闇のなかぶさいくな顔をしているのは好色のサテュロス。豊饒の角から果物を差出している。ヴィーナスが愛をきらさないように助けにきたのである。

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2011.12.24

アントワープの収穫 ブリューゲル作‘悪女フリート’!

3350_3     ブリューゲルの‘悪女フリート’(1562年)

3349_3     ‘悪女フリート’(部分)

3347_3        ノートルダム大聖堂を背にして立つルーベンス像

3348_3       ルーベンスの‘キリスト降架’(1612年)

ブリューゲルの3点あるボス風の絵を全部みるのが長年の夢。‘反逆天使の転落’(ベルギー王立美)、‘死の勝利’(プラド美)をこれまで鑑賞し、最後に残っていたのがアントワープのマイヤー・ファン・デン・ベルフ美にある‘悪女フリート’。

ボス、ブリューゲルの絵の全点鑑賞を夢見ているから、‘悪女フリート’は古典絵画ではファン・エイクの‘ファン・デル・パーレの聖母子’同様最も心を寄せていた絵。でも、アントワープにいるのは2時間、名所観光をパスして美術館へ向かったとしても予定の時間に皆さんがいる昼食のレストランに無事合流できるかどうか、一抹の不安はある。

それを優しいミューズがうまく段取りしてくれた。レストランは川沿いの駐車場からすぐのところにあったから、迷う心配がなくなった。で、早足でマイヤー・ファン・デン・ベルフ美をめざした。この美術館がある場所については‘るるぶ情報版 オランダ・ベルギー’(JTBパブリッシング 10年2月)に載っているが、名所案内とししては取り上げられてない。

ノートルダム大聖堂から東南方向に600mくらいのところだから、10分くらいで着いた。開館は10時からなので、すこし待って入館。ここは邸宅美術館、作品が展示されている4つ部屋をまわるとそれで終わり。ブリューゲル(1526~1569)と息子たちの絵がある部屋だけで充分といった感じ。

ブリューゲルの絵はお目当ての‘悪女フルート’と‘12の諺’の2点。‘悪女フリート’で最も目に焼きつくのは左の人間の顔からつくられている地獄の入り口(拡大図で)。眉毛はよくみると取っ手のついた壺、そして睫が板、これは笑える。額のほうへ目をやると城壁になっている。ブリューゲルの怪奇ワールドもボスに劣らずとても刺激的。

また、悪女フリートの斜め上のところにいる奇妙な組み合わせになっている横向きの人物にも目がすーっと寄っていく。足をのばして腰をおろし、背中に舟を乗せている。画像ではみえにくいが、卵のような形をしたお尻から大きなしゃもじで金をかき出している。

さて、画面中央を大またで横切る主役のフリートは一体何者?この老婆は亭主を亭主とも思わない強持て女房。口やかましい悪妻の象徴として描かれている。その格好がおもしろい。鉄兜をかぶり手には剣をもち、金銀の容器やありふれた日用品をもちじゃらじゃらさせている。時間があればもっとみていたいが、次は今年開館したMASミュージアムが待っているので、きりのいいところで館を後にした。

途中、フルン広場に立つルーベンス像の横を通りすぎ、今頃皆さんはノートルダム大聖堂のなかでルーベンス(1577~1640)の最高傑作‘キリスト降架’をながめておられるだろうなと思いながら、雨の中MASミュージアムへ急いだ。

今日はクリスマスイブ、‘フランダースの犬’の主人公ネロ少年もこの聖堂で月の光に照らし出された‘キリスト降架’を目に涙をいっぱいためてみた。そして、愛犬パトラッシュとともに天に召された。

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2011.12.23

ブルージュでメムリンクに開眼!

3343_2            メムリンク美の入り口

3345_2     ‘聖ウルスラ伝の聖遺物箱’(1489年以前)

3346_2      ‘聖ウルスラの殉教’

3344_2     ‘ニューウェンホーフェの二連画’(1487年)

グルーニング美のあとメムリンンク美にも寄った。二つの美術館は歩いて5分のところにあるから、移動に迷うことはない。

ブルージュは小さな街なのだが、ここでは特別な美術品を体験できるというイメージができあがっている。絵ではグルーニング美にあるファン・エイクの‘ファン・デル・パーレの聖母子’、そしてもうひとつ見逃してはならないのはミケランジェロの彫刻‘ブルージュの聖母’(拙ブログ09/5/19)。

ミケランジェロの彫刻でイタリア以外にあるのは3点しかなく、その1点がこの‘ブルージュの聖母’、メムリンク美の隣の聖母教会に行くとみられる。添乗員Oさんの話だと現在はこれを見るのにはお金がいるそうだ。2、3ユーロくらいだと思うが。この彫刻はすでにみているのでこの度はパス。

ファン・エイクに比べるとメムリンクへの思い入れはそう強くはない。だから、ルーブルなどのブランド美術館でメムリンクの絵をみる機会は度々あったのにこれまでは紹介することはなかった。絵にいまひとつ惹かれるものがなく、どうしてもメムリンクよりはファン・エイクやウェイデンを優先してしまうのである。

だが、オマケ感覚で入館したメムリンク美でこの思いが変わった。ドイツ生まれのメムリンク(1465~1494)が活躍したここブルージュでこの画家に開眼したのである。率直なところ、ここにメムリンクのいい絵が結集していたのか!という感じ。名前は美術館になっているがここは聖ヨハネ施療院を改装したものなので、教会にいるのと変わらない。明かりを落とした礼拝堂に三連祭壇画や肖像画など6点あった。1点々惹きこまれる。

ガイドブックに必見!と書かれているのが‘聖ウルスラ伝の聖遺物箱’。メムリンクが装飾したこの聖遺物箱はベルギー7大秘宝のひとつで、伝統なゴシック様式の聖堂を模した聖遺物箱の前後側面には聖ウルスラの殉教物語が描かれている。この話の内容はカルパッチオの絵(10/2/6 アカデミア美)で一応頭に入っているので、興味深くながめていた。

とくに最接近してみたのがローマ巡礼からの帰途の際ケルンでフン族の襲撃にあい、ウルスラが巡礼に同行した1万1000人の乙女とともに殺される場面。大半は静かな宗教画だから淡々とみていられるが、この悲惨な情景は人物の内面がリアルに表現されているので体が思わず緊張する。

‘ニューウェンホーフェ’はこれまで画集でお目にかかっていたが、本物はなかなかいい。単眼鏡を使ってしっかりみたのは左翼に描かれた果物を持つ聖母の後ろにみえる凸面鏡。ここに後ろ姿の聖母と横向きの寄進者ニューウェンホーフェの像が映っている。

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2011.12.22

ウィーン美術史美にあるはずの追っかけ画が突然あらわれた!

3341_2     ブリューゲルの‘サウルの自殺’(1562年)

3339_2        ファン・エイクの‘ヤン・ド・レーウの肖像’(1436年)

3342_2           ボスの‘十字架を担うキリスト’(1480~90年)

3340_2                ボスの‘最後の審判’

グルーニング美では念願のファン・エイクの‘ファン・デル・パーレの聖母子’がみれたので、あとは満ち足りた気分になってほかの部屋をまわっていた。すると、そこにサプライズの絵が飾られていた。

現在、ここでは‘ウィーン美術史美名品展’(10/5~1/15)が開催されており、その出品作54点のなかになんと追っかけ画としてリストアップしているブリューゲル(1526~1569)の‘サウルの自殺’があった。これは跳び上がるくらい嬉しいオマケ!道を歩いていて大金を拾ったような気分だから、かなり興奮した。

本物は図版でイメージしていた大きな絵とはちがって縦33.5cm、横55cmの小品。この画面にものすごい数の軍勢が細密描写でびっちり描き込まれているので(拡大図で)、その密度の高さと情報量の多さに目が吸い込まれていく。手前左、剣でのどを突き横たわっているのがイスラエル軍のサウル王。‘バベルの塔’のようにこの絵にも広大な風景がパノラマ的に描かれているがこちらには目がいかず、針の山のようにみえるペリシテ軍とイスラエル軍の兵士がもつ細い槍の描写ばかりをみていた。

この絵のほかにもう2点嬉しい絵があった。常設展示のファン・エイク(1390~1441)の2点とコラボする‘ヤン・ド・レーウの肖像’とボス(1450~1516)の初期の作品
‘十字架を担うキリスト’。

ファン・エイクの単独で描かれた肖像画は妻の肖像を除いて全部男性。この絵に描かれた男はとても強い目力をしている。視線はこの目のあと自然に右手にもっている指輪にむかう。そして、その下のオリジナルの額縁にみられる木に彫られたような文字もじっくりみてしまう。画面だけでなく額縁までファン・エイクの細密描写は徹底している。

今回の美術館めぐりでボスの絵はベルギー王立美にある‘キリスト磔刑’とグルーニング美の‘最後の審判’に期待していた。‘磔刑’のリカバリーはならなかったが、‘最後の審判’とはめでたく対面。ウィーン美術大学にある同名の絵にくらべると、怖い度がすこし緩くなっている。だから、寸詰まり体型の怪物が奇怪な雰囲気を漂わせてうごめいているものの、怖いものみたさに火がつきっぱなしという感じでもなかった。

‘磔刑’の埋め合わせになったのが、8年ぶりに再会した‘十字架を担うキリスト’。ボスは初期のころ聖書の場面を題材にしてこの絵や‘この人をみよ’(フランクフルト シュテーデル美)、‘東方三賢王の礼拝’(フィラデルフィア美)を描いている。

登場人物が横向きで表現されている‘十字架を担うキリスト’では、上のキリストと下にいる告白によって罪の許しを請う良い盗人(右)、悪態をつく悪い盗人(左)は三角形構図をなし、見る者の視線を惹きつけている。

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2011.12.21

グルーニング美でファン・エイクの傑作と対面!

3335_2      グルーニング美の入り口

3336_2     ファン・エイクの‘ファン・デル・パーレの聖母子’(1436年)

3337_2      ‘聖ゲオルギウスと寄進者部分’

3338_2        ファン・エイクの‘マルガレーテ・ファン・エイクの肖像’(1439年)

このツアーに参加する決め手となったのはブルージュで一泊することとオッテルローにあるクレラー=ミュラー美へ行くことだった。オランダ・ベルギーのツアーは旅行会社からいろいろでているが、ブルージュに泊まるものは本当に珍しい。

6年前ここへやって来たときは、半日の滞在で昼食をとったあとは次の目的地へ移動した。一泊すると時間的にすごくゆったりできるから、自由行動の時間もたっぷりある。まずは3ヶ月前から入館するのを心待ちにしていたグルーニング美へ急いだ。ヤン・ファン・エイク(1390~1441)の傑作‘ファン・デル・パーレの聖母子’をみるためである。

昨年ローマでカラヴァッジョの‘キリストの捕縛’(拙ブログ10/5/23)を体験し、次の追っかけはこの絵よりさらに細密に描かれている‘ファン・デル・パーレの聖母子’が心のなかにどっかり居座るようになった。その絵が目に前にある。絵のサイズはゲントにある‘神秘の子羊’に次ぐ大きさ(縦1.22m、横1.58m)。

この大きさの画面にこれほどリアルに衣裳の襞や宝石、そして甲冑の質感をだすとなると相当な制作日数を要するにちがいない。透明性のある油絵の具を何度も何度も塗り重ることによってこんなすばらしい傑作がうまれるのだろう。こういう絵をみると心底油絵の魅力にとりつかれる。

写実画はやはり時間をかけないと絵にならないが、これは大変な仕事。驚くほどの質感を実現し、明るくて輝くような色彩に彩られた画面をつくりだす技はごく限られたものにしか授けられていないが、こういう超写実性を好むファン・エイクのもって生まれた気質も大きな力になっているかもしれない。また、中世末期という時代がこういう絵を求めていた。

妻のマルガレーテの肖像はかなりふけてみえるが、このときマルガレーテは33歳。篠山紀信が登場したBSプレミアム‘極上美の饗宴 フェルメールの真珠の首飾りの少女’で、少女の瞳には白い点が描かれているのに対し、ファン・エイクは目にみえる通りに瞳に映った窓をそのまま描いていることを事前に知っていたから、それを単眼鏡でしっかりみた。

ファン・エイクの絵はもう2点あった。キリストの顔を描いた作品を17世紀に模写したものと工房作。ほかの画家ではメムリンクの3点とダヴィッドの三連祭壇画に足がとまった。

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2011.12.20

満足度200%のブルージュ観光!

3331_2

3333_2         マルクト広場の南側に建つ鐘楼(世界遺産)

3332_2     ゴシック様式の市庁舎     

3334_2     白鳥がいる愛の湖公園

今回楽しみにしていたのがブルージュ観光。ブリュッセルからは100kmくらいの距離だから、1時間半くらいで到着する。街の中心部へ入る前、ブルージュ駅の横を通ったが建物は現代感覚のデザインだった。まず、宿泊するホテルにチェックインしてそのあと名所観光がスタートした。

ガイドブックに載っているところをめぐっていく。はじめてこの街に来た時心を奪われたのがマルクト広場の美しい景観。南側に建っているのが街のシンボル、鐘楼。世界遺産に登録されている。高さは88m。自由行動のとき、366段の階段を5、6人の方ががんばって登られたようだ。

とんがり帽子のような屋根が連続する形と優雅な赤の窓が目を惹く州庁舎を過去2回みたときはそれはそれは感激した。が、この度は庁舎の前にブリュッセル同様クリスマス屋台が建ち並びスケートリンクもつくられていたから、その景観を広々と味わうことができなかった。

このマルクト広場のすぐ近くにある市庁舎もおとぎの城を思わせる造形と紫と朱、白という華やかな色の組み合わせが目を見張らせる。ヨーロッパの街をいろいろみてきたが、美しさの点ではブルージュのマルクト広場と市庁舎が一番という思いはずっと変わらない。

春から秋までは舟による運河めぐりが定番のお楽しみなのだが、今はシーズンオフ。で、その代わりに馬車での街並めぐりが用意されている。石畳に蹄鉄の音を響かせて進む姿はとてもロマンチックで貴族になったような気分かもしれない。でも、われわれは美術館へ行ったので縁がなかった。

街全体が中世の面影を残し静かな雰囲気につつまれているが、ペギン会修道院や白鳥が湖にいる愛の湖公園あたりはとりわけ静寂さが心に響く。ブルージュの美しさを再度目に焼きつけた。

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2011.12.19

詩的で不思議なマグリットワールドに魅せられて!

3330_3     ‘シェヘラザード’(1948年)

3327_3     ‘帰還’(1940年)

3328_4     ‘宝島’(1942年)

3329_3         ‘グラスの浴槽’(1949年)

シュルレアリストのなかで生涯つきあおうと思っているのはダリ、ミロ、マグリット、デルヴォー。とにかくこの4人の作品をみるのがこのうえない楽しみなのである。だから、09年にオープンしたマグリット美を体験したことは夢見気分。

マグリットはダリとは違って描いているものはどれも現実の日常生活でみかけるもの。背景には青い空とそこに浮かぶ白い雲がよくでてくる。‘シェヘラザード’では上から垂れ下がった朱色の大きな布の合間にお馴染みの空がみえる。これを背にして中央にガラスのコップ、左端には鈴。ここまでは心はザワザワしない。

マジックは二つの間に描かれた荒くれ王に千一夜の物語を話して聞かせる王妃シェヘラザード。宝飾品で飾られたその顔は目と口だけ。右の切られた太い木の幹に視線を移すと、王妃のイメージをより印象づける演出のためか小さな鳥を無数に宙に舞わせている。

‘帰還’は02年Bunkamuraで開催されたマグリットの回顧展にやって来た。この絵は‘光の帝国’と同様、気持ちよくみられる。確かに切り絵のような鳥をみていると空の中に鳥がいるのか、鳥の中に空があるのか、だまし絵をみている感覚になる。でも、この大きくはばたく鳥とその真下にある巣の中の卵の組み合わせは違和感を感じようがないから心地よくながめていられる。おもしろいもので真昼の空と夕刻の空が同居していることがかえって郷愁をそそる。

葉っぱと鳥の羽や胴体がダブルイメージになっているシリーズは3点あった。この‘宝島’は初見の作品。マグリットのダブルイメージはダリの描くものにくらべると骨太で濃密な感じがする。この絵の隣にフクロウが5羽描かれたものがあったが、強いイメージで迫ってきた。

足をとめてしばらくみていたのが‘グラスの浴槽’。誰しもどうしてあの大きなキリンがグラスの中に入って水を浴びているの?と感じるはず。キリンは川で水浴びをするものなのに、浴槽に入る。それも普通の浴槽ではなく、大きなグラス。キリンの足の長さを考えると縦長のグラスはいいアイデアだが、これは後知恵。普通の頭ではこんな組み合わせは思いつかない。

マグリットは‘私の絵には想像したものは何もありません。現実の世界以外の何ものでもないのです。つまり、ナゾのある世界、ナゾをつつみこんだ現実の世界です’という。マグリットにはなにかの拍子に現実世界の不思議な断面がみえるのだろう。それを豊かな詩心で表現した。不思議な絵だけれど、どこか心が安らぐ。マグリット美に誘ってくれたミューズに感謝!

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2011.12.18

心が踊るマグリット美術館!

3325_2     マグリット美術館

3326_4          ‘光の帝国’(1954年)

3323_2     ‘収穫’(1943年)     

3324_2         ‘プレゼント’(1938~39年)

旅行は出かける前から楽しい。直前になると旅行会社から詳しい行程表が届き、気分がだんだん盛り上がってくる。この時点ではお目当ての観光地の情報はガイドブックで一通りインプット済み。本にはマーカーペンでしるしをつけ付箋も入れて準備万端。

このツアーを3ヶ月前に申し込んだとき、OAZOの丸善で‘るるぶ情報版 オランダ・ベルギー’(JTBパブリッシング 10年3月)を購入した。すると、そこに嬉しい情報が載っていた。ベルギー王立美の一部を大規模に改築してできたマグリット美が09年6月にオープンしたというのである。ええー、新美術館が出現していたの!

シュルレアリスム狂いだからこの情報に心が踊ったのはいうまでもないが、はたしてここへ入る時間があるかどうか。王立美の鑑賞時間は1時間。みたい絵として古典絵画部門にはブリューゲル、ボス、バウツの絵があり、近代絵画では一番のリカバリー作品、ダリの‘聖アントニウスの誘惑’(拙ブログ06/2/27)へダッシュしなければならない。また、前回展示されてなかったデルヴィルの‘悪魔の宝物’も見逃すわけにはいかない。

一方、マグリット、デルヴォーは前回しっかりみることができたので優先度は追っかけ画にくらべると低い。で、この度は時間があればマグリット美に寄るという作戦。ところが、ところがである。近代絵画の展示室は今年の春から閉鎖になっていた。るるぶの本に載っていた王立美のレイアウトは昨年までのもので、ブリューゲルの展示場所も違っていたし、ダリやデルヴィルらは全滅状態。ガックリ!またしても‘聖アントニウスの誘惑’がみれなかった。どうしてこんなに相性が悪いのだろう。

こうなると、心は複雑だがオプションのマグリット美へ急げである。写真の建物は出口オンリーで8ユーロの入場券は王立美のところで買うことになっている。地下2階に入り口があり、最上階の3階までエレベーターであがり2階1階と降りてくる。マグリット
(1898~1967)の画業を初期のころから晩年までこの順番でみられるように展示されている。

マグリット単独の美術館だから絵だけでなく、スケッチや写真、ポスター、オブジェなどもある。作品の数は200点くらい。お気に入りの絵を2回にわたって紹介したい。‘光の帝国’はマグリットの作品のなかで最も美しい作品。マグリットは50歳のころから10点以上描いている。

この絵は空は真昼で建物の部分は夜という一つの画面のなかに昼と夜が同居するという変な設定であるが、夕暮れどきはこういう光景をみないでもないから、ほかの絵とちがいすっと絵の中に入っていける。なんとも静謐な世界、そして夕闇に沈む家の池に映りこむ影がきらきら輝く様がとても美しい。

‘収穫’と‘プレゼント’はまさに収穫の絵。前回は展示されてなかった。‘収穫’ではモデルをつとめる妻のジョルジェットの裸体はその顔、手、胴体、足が赤、緑、紫、青、黄色で塗り分けられている。こういう配色もありか!という感じ。まったく意表をつかれた。

‘プレゼント’の茶色のジャケットを着た鷲の存在感に圧倒され、声を失ってみていた。鋭い爪の前に置かれたお馴染みの白い鈴がアクセントになっている。この絵は個人コレクターの寄託、ダブルイメージが使われた‘アルンハイムの領土’(09/6/18)同様、一生の思い出になりそう。

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2011.12.17

バウツの追っかけ画に釘づけ!

3322_3     ボスの‘聖アントニウスの誘惑’(1500~10年 中央パネル)

3319_2     バウツの‘オットー皇帝の裁判’(1470~75年)

3321_2         レンブラントの‘ニコラス・ファン・バンベーク’(1641年)

3320_2        ダヴィッドの‘暗殺されたマラー’(1793年)

ベルギー王立美の見学は1時間ちょっとなので1点々ゆっくりみる余裕はない。で、前回みたものはお気に入りだけに絞ってみた。2点あるボス(1450~1516)は‘キリスト磔刑’がリカバリーだったのにまたもや姿を現してくれなかった。どうも相性が悪い。

画像は三連祭壇画‘聖アントニウスの誘惑’の中央パネル。この絵はリスボン国立美が所蔵する原画のレプリカ。この絵は需要が多かったとみえてボスは12点レプリカ(工房作を含む)を制作している。中央でガウンの女性の傍らに跪きこちらに顔を向けているのが聖アントニウス。

その下の水のところにいる奇怪な様相をした魔物たちに自然に目が寄っていく(拡大図で)。最も惹きつけられるのがへんてこな舟。舟首が魚の頭で尻尾あたりが舟になっている。その右ではゴンドラのような魚の中に閉じ込められた男が手を側面から出している。そして、そこから上のほうに目を移動させると巨大な鼠の背中に赤ん坊を抱いた女がみえる。この女は枯木の幹が胴体と腕になっている。興味はつきないが、時間がないのでほどほどでひきあげた。

今回古典絵画のお目当てはバウツ(1410~1475)の絵。この絵を知ったのは2ヶ月前BS朝日で放送された‘世界の名画 ベルギー王立美’。鑑賞シミュレーションのつもりで注意深くみていたら、このショッキングな絵が登場した。前回はブリューゲルとボスに心が占領されていたから、名前の知らない画家の絵はまったく記憶に残ってない。

だから、この絵と現地でみる前に遭遇したのはミューズのお導きかもしれない。これは縦3mの大作で、誤審の物語が描かれている。誤審をしたのはオットー皇帝、その妃が悪る女。伯爵が不義を強要したと皇帝に告げるものだから、伯爵は即首を跳ねられた。ムムムーと怒りをこらえるのが伯爵の妻。この場面が左のパネル。時間の経過を表すため異時同図の手法が使われている。

右のパネルは‘火の試練’のタイトルがついている。目が点になるのが右手に夫の首をもち、左手で真っ赤に焼けた鉄の棒を握る伯爵の妻の姿。夫の無実を証明するためには鉄が熱いなんていっておれない。神はみておられる。‘皇帝さん、私の夫はあなたの妻に言い寄ってなんかいませんよ’と無言で圧力をかける。‘わかった、わかった、おい、すぐに妃を捕えて処刑しろ!’と皇帝は非を認める。画面上部では妃が火あぶりにされている。

レンブラント(1606~1669)が描いた豪商の肖像画に強く魅せられている。一緒に描かれた妻の肖像のほうは現在イギリスの王室コレクションとなっている。昨年、ロンドンのクイーンズギャラリーで対面できるかと期待したが、展示されてなかった。

画集に載っている絵で近代絵画を別にするとベルギー王立美の名前がインプットされているのはブリューゲルの絵とダヴィッド(1748~1825)の‘暗殺されたマラー’かもしれない。6年前はじめてこの美術館へ来たとき、このマラーの絵に大きな衝撃を受けた。悲惨な歴史的な事件を強烈なインパクトをもつ絵にして世に問うた画家というとドラクロアをすぐ思い浮かべるが、浴槽で王党派の女に刺殺されたマラーの姿にも息がつまり、緊張感が走る。

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2011.12.16

ベルギー王立美のお楽しみ ブリューゲル!

3315_2     ベルギー王立美の正面

3316_2     ‘反逆天使の転落’(1562年)

3318_2     ‘鳥罠のある冬景色’(1565年)

3317_2     ‘ベツレヘムの人口調査’(1566年)

ブリュッセルの観光はどのツアーでもグランプラスとベルギー王立美の入館が定番。
6年前、王立美へ入ったときはガイドさんの説明はなかったが、この度はユニークなガイドさんが見所の絵について解説をしてくれる。

われわれはここでリカバリーの絵をいくつもみなくてはいけないのでこの輪から離れお目当てのところに突進した。鑑賞時間は1時間とちょっとだから忙しい。前と作品の展示場所が大きく変わっている。事前に準備したレイアウトのコピーが役に立たないので、監視員にみたい絵のある部屋をフランス語で聞いた。 ウソです。

まずむかったのはブリューゲル(1526~1569)。リカバリーの絵は‘鳥罠のある冬景色’、それにプラス4点の全部で5点。このなかで‘イカロスの墜落の風景’(拙ブログ05/4/27)は現在は伝ブリューゲルとなっている。この絵については10月、TV東京の‘美の巨人たち’で取り上げられたのでみられた方もおられるだろうが、絵にこめられメッセージやブリューゲルの真筆でない理由を詳しく説明していた。

一番の楽しみはボス風の絵‘反逆天使の転落’。夢中になってみた。怖いものみたさで画面につい接近してしまうのが堕天使が地獄へ落ちていくなかで姿を変えた悪魔や悪霊。鳥、昆虫、ヒキガエル、ムール貝、魚などいろいろいる。その姿は合成生き物だから奇怪でグロテスク。だから、あまり長くみたら夢にでてきそう。でも、なかには河豚
(ふぐ)と鳥が合体したようなとてもユーモラスな怪物もでてくる(右上、拡大図で)。

雪景色を描いた風俗風景画2点に魅せられる。とくに前回貸し出し中だった‘鳥罠のある冬景色’に心が寄っていく。画面右の木のそばに仕掛けられた罠をみて小さいころを思い出した。こういう仕掛けをつくり地べたに米粒をまいて雀を獲ろうとしたが、成功したためしがない。

この絵は構図がとてもいい。家々の屋根には真っ白な雪がたっぷり積もり、中央から左に曲がる凍った道で人々がスケートを楽しんでいる。おもしろいのは手前の枝にいる2羽の鳥と右上にいる鳥が人間と同じくらいの大きさで描かれていること。これに目をつけて、この絵は単なる冬景色を描いたものではなく、鳥のまわりには罠があり危険が潜んでいるようにスケートを楽しむ者も足元が脆い氷面に気をつけろという教訓的な意味がこめられているという解釈もなされてきた。

氷の上で遊ぶ場面が‘ベツレヘムの人口調査’でもでてくる。画面の右端。前のほうでは女の子が籠のようなものに乗って両手にもった木の棒で氷をかいており、その後ろでは男の兄弟が手をつないでスケート中。向こうがわに目をやると椅子をソリにして引っ張る人物、その先では2人の子が氷上の駒まわしを楽しんでいる。

ところで、この絵のテーマは?ローマ皇帝によって住民登録が命じられたため、ヨセフとマリアがベツレヘムへ戻ってきたところ。でも、宗教画とはちがって、手前中央に描かれたヨセフと騾馬に乗った身重のマリアはとくに目立つ存在ではない。ここには冬の農村における日常生活の一こまが描かれている。

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2011.12.15

美食の都ブリュッセル ベルギービール ムール貝にご機嫌!

3314_2      グランプラスのシンボル 市庁舎

3313_2     アールヌーヴォー様式の内装が目をひくチョコレート店コルネ

3311_2      ベルギービールで乾杯!

3312_2    ベルギー名物のムール貝のワイン蒸し

ベルギーの首都、ブルュッセルの観光のハイライトはなんといってもグランプラス。今回はクリスマスシーズンに入っていたので勝手が違った。広場の中央にイベントの舞台があり、その横にはキリストの誕生した馬小屋などのつくりものが設営されているため、広場をぐるっと見渡しこの広い空間を体験するというわけにはいかなかった。

そのかわり、現地の男性日本人ガイドの話がおもしろかったのでブルュッセルの街がすこし近くなった感じ。海外ツアーに参加していると時々こういうユニークなガイドさんに遭遇する。その説明は‘皆さん、ゴシック建築の特徴知ってますか?私は知っているのですが、聞きたいですか?はい、ではお話します’とまあ、こんな調子。

こういうガイドらしからぬフレーズを入り混ぜて市庁舎の96mの尖塔、ギルドハウスに入っている職業のあれこれ、そしてグランプラス周辺の小便小僧、ヨーロッパ最古のアーケード、ギャルリー・サンチュベールなどの見所をきっちりしゃべってくれる。本職は音楽家らしいがガイドの腕も相当いいから万事才能があるのだろう。ほめすぎ?

ギャルリー・サンチュベールでお土産のチョコレートを買った。お店の名前はガイドさんの説明で知った王室御用達のMary。有名バックブランド、デルヴォーの向かい側にある。2,3年前に出店したそうだ。このアーケードにはチョコレート店はほかにもノイハウスや内装がアールヌーヴォー様式のコルネなどがある。日本のデパートでもお馴染みのゴディバはここではなくグランプラス。

ベルギーを旅行するのは3度目だが、はじめてのときこの国は食事が美味しいという印象を強く持った。6年前はこの街でツアーの皆さんと一緒にムール貝のワイン蒸しを味わった後、翌日の自由行動で再度チャレンジした。とにかくこのムール貝は病みつきになるくらいおいしい。だから、賑やかなイロ・サクレの横丁での夕食を楽しみにしていた。

そして、ベルギービールがとてもうまい。オランダはどこへ行ってもハイネケン、ハイネケンという感じだが、ベルギービールは種類が豊富。800くらいの銘柄があるという。おいしいベルギービールにムール貝、楽しいブリュッセルの夜だった。

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2011.12.14

デルフト観光 デルフト焼工房と旧市街の散策!

3310_2     デルフト焼の工房 デ・ポースレン・フレス

3309_2     陶板で再現された原寸大の‘レンブラントの夜警’

3308_3     フェルメールが幼年期を過ごした家(真ん中角っこの家)

3307_2                運河から望む旧教会

デルフト焼とフェルメールの故郷として知られるデルフトをはじめて訪れた。ハーグからはバスで30分くらいで到着した。まず、街の中心部からちょっと離れたところにあるデルフト焼の窯元ヘ行き、そのあとマルクト広場や運河沿いを散策した。

やきものが好きなのでデルフト焼の工房見学はじつに楽しい。現在、伝統のデルフトブルーの技を守り陶器をつくり続けている工房が2つあり、1653年創業のデ・ポースレン・フレスは皇室御用達の窯元。日本語解説のビデオを軽くみて、素焼き、絵付け、焼成などの工程をみていく流れ。そして最後はお決まりのショップでのお買い物ご案内となる。

大航海時代、中国の青の染付、青花磁器をアフリカ周りのルートで手に入れ大儲けしたのがオランダの商人。これによってヨーロッパに中国趣味の大ブームがまきおこる。ヨーロッパ人もこの磁器をつくりたいと願うが、その製法はナゾ。それでオランダでは磁器に似せたやきものがつくられた。デルフト陶器の誕生である。酸化コバルトと水の加減によりデルフトブルーに濃淡をつけ、風車や花柄、風景を美しく描いた。磁器のもつ薄さや軽さはないが、それでもデルフト陶器は爆発的に売れた。

目を見張らせるのが陶板を沢山組み合わせて再現した‘レンブラントの夜警’。もちろんフェルメールの‘真珠の首飾りの少女’も皿の絵柄になっている。造形的には口を多く持つ瓶がおもしろい。オランダでは17世紀にチューリップの栽培が盛んになり、この口にチューリップを飾った。

街の中心がマルクト広場、新教会と市庁舎が向かい合わせに建っている。この広場の北側にフェルメールが幼年期を過ごした家がある。この家については事前に情報をチェックしていたので感慨深く眺めていた。フェルメールのアトリエがあったところもおさえていたが、時間がなかったのでパス。

添乗員Oさんの後をついて運河沿いの道を進み、旧教会が望めるところで写真タイム。なかなか絵になる光景、でも塔がちょっとヘン。左のほうへ傾いている。43歳で亡くなったフェルメールはこの教会に埋葬された。ここで一旦自由行動、で、家並みをみながら土産物屋に入ったりぶーらぶーら散策。

フェルメールの家の横の道をつきあたったところにフェルメール記念館があったのだが、時間が中途はんぱなので入館はなし。今回はフェルメールが生涯をすごしたデルフトの街の雰囲気を味わうことでよしとした。

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2011.12.13

ルーベンスにもカラヴァッジョ風の絵があった!

3303_2        ルーベンスの‘ローソクをもつ老婆と少年’(1616~17年)

3304_2     ホルバインの‘ロバート・チェースマンの肖像’(1533年)

3305_2      ホントホルストの‘ヴァイオリン奏者’(1626年)

3306_2            ハルスの‘笑う少年’(1627年)

マウリッツハイスにある名画を存分に楽しむためには所蔵作品の事前チェックが欠かせない。前回図録を購入したので、ここに載っているいい作品を見落とさないことを目標にした。手に握りしめた必見リストには6点。

今回は出足好調でお目当ての作品は全部姿をみせてくれた。今日取り上げたのにその2点が入っている。予定の絵がみれたので満足度は即200%に達したが、嬉しいことにプラスαが数点あった。そのオマケに驚きの一枚が、それはルーベンス(1577~
1640)が40歳のころ描いた‘ローソクをもつ老婆と少年’。

ルーベンスの絵は今年の1月プラドで大きな回顧展(拙ブログ2/12)に遭遇するなどこれまでかなりの数をみてきた。ところが、こういうカラヴァッジョ風の強い明暗表現で描かれた作品は一度も体験したことがない。だから、ルーベンスは人物の内面までは入っていかない画家というイメージができあがっている。それがこの絵で覆された。

じつはルーベンスの内面性を描いた同じタイプの絵と2ヶ月くらい前TVで遭遇した。BS朝日の‘世界の名画 ドレスデン国立美’のなかにでてきたのである。その‘火鉢をもつ老婆’というタイトルのついた絵はこの美術館を以前訪問したときには展示してなかったから、一瞬目が点になった。ルーベンスがこんなカラヴァッジョやレンブラント、ラ・トゥールのような絵を描いていたとは!

この絵がここ数ヶ月頭にこびりついていたものだから、マウリッツハイスで老婆が現れたときはドレスデンのものが貸し出されているのかと思った。でも、これはこの美術館の所蔵。ルーベンスは2点描いていた。ルーベンス、恐るべし。

ここ数年関心を寄せているホルバイン(1497~1543)はリカバリーの‘チェースマンの肖像’を含めて4点展示してあった。これは嬉しい誤算。鷹匠チェースマンの鋭い目つきと精緻に描かれた鷹の羽を最接近してみた。

カラヴァッジョの画風に強い影響をうけたホントホルスト(1592~1656)の‘ヴァイオリン奏者’は前回みたという記憶がまったくない。天真爛漫な表情をしたこの女性は一見するとそうはみえないが娼婦。これまでホントホルストの絵というと、ローソクの光に人物の姿が照らしだされるまさにカラヴァッジョ的な絵ばかりをみてきたからちょっと面食らった。

ハルス(1580~1666)の‘笑う少年’はお気に入りの絵。赤いほっぺたと出っ歯の歯茎がとても印象的。来年6月30日に開幕する東京都美のマウリッツハイス美展にはフェルメールの‘真珠の耳飾りの少女’やレンブラントの‘自画像’とともにこの絵もやってくるという、なんとも豪勢なラインナップ。

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2011.12.12

レンブラントの自画像とようやく対面!

3301_3     ‘自画像’(1669年)

3300_4        ‘スザンナと長老’(1636年)

3299_3     ‘テュルプ博士の解剖学講義’(1632年)

3302_3       ‘二人のアフリカ人’(1661年)

レンブラント(1606~1669)は沢山いる西洋画家のなかで小さいころからその名前が長く心の中に居続けている画家のひとり。だから、海外の美術館でレンブラントの作品に出会うととてもいい気持ちになる。

マウリッツハイス美で今回みることができたのは11点。2階の二部屋に飾られている。そのなかで一番のお目当ては前回展示されてなかった最晩年の自画像。昨年4月の‘もっとみたいレンブラントの名画’(拙ブログ11/4/6)でもとりあげたが、ようやく思いの丈をはたすことができた。

この旅行の美術館めぐりでレンブラントは重点鑑賞画家、この美術館でのリカバリーは自画像をふくめて3点あったが、運良く全部ヒットした。先走っていってしまうと、アムステルダム国立美でも念願の‘使途パウロに扮した自画像’とめでたく対面できた。なんだか大仕事をしたような気分である。

レンブラントが死んだ年に描かれたこの最後の自画像はみるからにでっぷり爺さんという感じ。顔の色艶は悪くなく、大きな鼻と二重あごに親しみを覚える。昨年ケンウッドハウスでみた自画像はなにか不機嫌そうな顔をしていたが、この自画像はごく自然体。

レンブラントの晩年は16年間連れ添ったヘンドリッケに先立たれ、また愛する一人息子にも去られ、辛い思いをしたにちがいないが、この表情には運命の変遷を淡々と受けとめて生きるレンブラントの心情が現れているようにみえる。この絵は嬉しいことに来年の東京都美のマウリッツハイス美展(6/30~9/17)にやってくる!

‘スザンナと長老’(05/04/18)をはじめてみたのは03年西洋美であったレンブラント展。以来、この絵に描かれたスザンナのおびえた顔が胸に焼き付いている。内面の微妙な揺れをこれほど強く印象づけられるとレンブラントの人間に対する生感覚というのは本当にすごいなと思う。心の描写だけでなく女性の肉体の描き方もリアルそのもの。腰から太股にかけての肉付きはルーベンスの表現よりずっと生々しい。

‘テュルプ博士の解剖学講義’は26歳のレンブラントがはじめて描いた集団肖像画。これはまたたくまに評判をよび、レンブラントのもとには肖像画の依頼が殺到し、人気画家に駆け上がっていく。博士がピンセットで持ち上げている死体の左腕の皮が剥がれている筋肉をじっと息を呑んでみつめる人物の表情にはただならぬ緊張感が漂っている。まるでドラマの一場面をみるかのような迫真の臨場感。

自画像と同様、収穫だったのが初見の‘二人のアフリカ人’。これは本画のための下絵だが、本画は制作されなかった。ルーベンスの作品で黒人を描いた絵をこれまで2点みたことはあるが、レンブラントにも黒人が登場する絵があったとは!

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2011.12.11

マウリッツハイス美の至宝 フェルメール!

3295_2     マウリッツハイス美の正面  

3296_2       フェルメールの‘真珠の耳飾りの少女’(1665~66年)

3297_2     フェルメールの‘デルフトの眺望’(1659~60年)

3298_2     フェルメールの‘ダイアナとニンフたち’(1655~56年)

6年ぶりにオランダ、ベルギーを旅行してきました。美術館めぐりや観光名所の話がしばらく続きますが、お付き合いください。

今回参加したA社のこの団体ツアーは送られてくる案内パンフレットをみたとき即決した。その理由は行程のなかに美術館見学がいくつも入っており、われわれのように名所観光より美術館めぐりが旅の大きな楽しみになっているものにとっては願ってもないツアー内容だったから。おかげで自由行動のとき出かけた美術館を含めると全部で10の美術館を訪問することができた。

★マウリッツハイス美(ハーグ)
★ベルギー王立美(ブリュッセル)
★マグリット美(ブリュッセル)
★グルーニング美(ブルージュ)
★メムリンク美(ブルージュ)

★マイヤー・ヴァン・デン・ベルフ美(アントワープ)
★MASミュージアム(アントワープ)
★ゴッホ美(アムステルダム)
★クレラー=ミュラー美(オッテルロー)
★アムステルダム国立美

どこの美術館でも多くの収穫があり用意した感動袋がはちきれんばかりだったので、心打たれた名画を目いっぱい紹介したい。まずはハーグにあるマウリッツハイスから。

マウリッツハイスを訪問するのは2度目なので(拙ブログ05/4/17)、入館すると館内のレイアウトが蘇ってきた。この美術館の展示室は1階と2階だけだから、ルーヴルやプラドのように忙しく駈けずりまわることもなくゆったりした気分で名画を楽しめる。

ここで多くの美術ファンを夢中にさせるのがフェルメールとレンブラントのコレクション。フェルメール(1632~1675)は3点あり、レンブラント(1606~1669)は出世作の‘テュルプ博士の解剖学講義’などいい絵がずらっと揃っている。

追っかけリストに載せていたのは前回展示されていなかったレンブラント最晩年の自画像(明日紹介)だが、真っ先に足が向かうのはやはりフェルメールがある部屋。‘真珠の耳飾りの少女’をみるのは幸運にも3回目。この絵はMyお気に入り女性画の最上位にあげている絵で、家では毎日みているといっても過言でないほど魅せられている。

今回の対面には特別な思い入れがあった。みられた方がいるかもしれないが、8月BSプレミアムの美術番組‘極上美の饗宴’で写真家篠山紀信が日本人モデルを使い写真でこの絵を再現し、フェルメールの技をいろいろ解明していた。情報が多くとてもおもしろかったので、少女の瞳や唇、耳飾りの真珠に光が反射した白い点を前もって強く目に焼きつけていた。

3つの丸い白い点で最も輝いているのは真珠だった。当時こんな大きな真珠はなかったそうだから、これはフェルメールの少女を美しく見せるための演出。また艶やかな唇にうつる柔らかい光や何か言いたげな心のなかをみせているような魅惑的な目にも吸い込まれる。この絵は来年東京都美で開催される‘マウリッツハイス美展 オランダ・フランドル絵画の至宝’(6/30~9/17)でまた姿をみせてくれるので、ころあいをみて絵の前を離れた。

少女と向かい合う形で展示されているのが‘デルフトの眺望’、再びこの風景画の傑作の前に立てた幸せをかみしめながらみていた。前回の興奮状態にくらべるとすこしは心に余裕がある。名画というのはみるたびに発見があるというが、じっくりみていると絵のすばらしさがあれもこれもといった感じで心を揺すぶる。

視線を長くとどめるのは画面の大半を占める青い空と白い雲。その明るい日差しをあびてちょうど中央に位置する建物の赤い屋根がびっくりするほど輝いている。そこまではだいぶ距離がありそう。この風景画は河のむこうにある正面性が強調された建物群だけをみているとすごく平面的な絵。それが暗い雲に覆われた河面と建物を光が強く当たった遠くの建物や手前の土の部分ではさみこむようにして奥行きをつくっている。

フェルメールには宗教画が2点あり、そのひとつが‘ダイアナとニンフたち’。日本に一度やってきたカラヴァッジョ風の‘マルタとマリアの家のキリスト’(スコットランド国立美)への接近度を10とすると、この絵はその半分くらい。

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