個人コレクション 夢の傑作選!(14)
スーラの‘グランキャンの舟’(1885年)
セザンヌ(1839~1906)の作品を好きな順番からならべると、まず静物画、次がカード遊びをする男たち、そのあとにサント=ヴィクトワール山、人物画、風景画、水浴画が続く。追っかけ画に対するのめり込み度もこの順番で濃淡がついている。
個人蔵の‘収穫’は人物が登場する珍しい風景画。もとはゴーギャンがもっていた。両サイドの垂直の木々と収穫物を手前から奥にむかって平行線を引くように置いていく構成が画面に安定感を与えている。目の前に広々とした空間があり、視線は眠っている農夫から鎌をいれる男、そして遠方の丘の上の建物に移っていく。
点描画家、スーラ(1859~1891)の全点制覇を夢見ている。最も有名な絵はもちろんシカゴ美にある‘グランド・ジャット島の日曜日の午後’。これを3年前みたので、なんだか大仕事をしたような気分。思い入れの深い絵との対面を果たすと誰しもこんな気持ちになるかもしれない
でも、未見の作品がまだ残っているからここで気を抜くわけにはいかない。美しい点描画のヴァリエーションが1点でもふえることをミューズに祈るばかり。ヨットが何隻も浮かぶ静かな海の風景を描いた‘グランキャンの舟’はNYのコレクターの所蔵。
モリゾ(1841~95)の絵もロートレック(1864~1901)の絵もNYの個人がもっている。4,5年前損保ジャパンで美貌の女流画家モリゾの回顧展があったが、この浮世絵の構図を思い起こさせる‘かくれんぼ’は展示されなかった。モリゾの画集をもってなく、その作品情報は回顧展の図録だけだが、この絵は完成度からすると上位に位置づけられる名画ではなかろうか。
ロートレックの画面の大部分を使って描かれたこの横向きの娼婦にとても惹かれている。ロートレックの追っかけ画はこの絵を含めてあと5点くらい。これからは1点々に長い時間を要しついには見れずじまいになるかもしれないが、希望の火だけは絶やさないようにしたい。
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