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2011.09.19

テレビ朝日‘砂の器’ ショート考!

3093     浪速東区役所で話を聞く今西、吉村刑事と女性新聞記者山下

3092_2     和賀英良を取り調べる吉村刑事

9/10、11に放送されたテレビ朝日の‘砂の器’(拙ブログ9/12)の余韻がつづいている。最近は映画やTVのドラマをみることがほとんどないので、このTV映画が新鮮なのかもしれない。元々事件物の映画が好きで、しかもその極め付きの名作‘砂の器’とくればどうしてものめりこんでしまう。

で、ビデオをみなおし、さらには映画版(1974年)までひっぱりだし二つの作品の比較に時間をかける始末。好きだからしょうがないのだが、これにはちょっとした事情がある。

事件の手がかりとなったのが東北なまりの‘かめだ’。この‘かめだ’は島根県仁多町亀嵩(かめだけ)のことだった。じつは広島で仕事をしていたとき会社の若い社員にこの町の出身者がいた。だから、お酒を飲んだりするとこの映画の話になる、ロケがどこで行われたとか、ずーずー弁は実際どうなのか、じつに楽しかった。また、島根へ出張した際はよくクルマで亀嵩駅の前を感慨深く通りすぎた。

そんな思い入れのある映画だから、テレビ朝日版にも心は動く。にわか映画評論家になり、映画版との比較からみえてきたTV版‘砂の器’の特長とおもしろさについて少し述べてみたい。

★今西刑事はオールマイティではない!推理のヒントは第三者から

映画では丹波哲郎が演じる警視庁捜査一課の刑事、今西栄太郎は鋭い勘で事件解決の糸口を次々と思いつく。‘かめだ’は人の名前ではなく、秋田県の羽後亀田に気づくのも今西だし、ずーずー弁が使われている地域を調べに国語研究所を訪ねて行くのも今西。そして、今西は伊勢の映画館で和賀英良が写った写真を発見し、大阪の浪速東区役所で戸籍再製手続きのことを知り、本浦秀夫が戸籍を詐称して和賀英良になりすましたことも暴いてみせる。とまあ、こんな具合に今西は最強の刑事。

ところが、TV版だと今西(小林薫)が貢献したのはずーずー弁が使われる出雲地方にある‘かめだ’、すなわち亀嵩をつきとめただけ。羽後亀田も戸籍詐称のことも女性新聞記者山下洋子(中谷美紀)に教えてもらう。また、伊勢の映画館に飾ってあった写真は若い吉村刑事(玉木宏)に映画館の支配人が情報を提供してくれたおかげでたどりつく。

★事件の捜査に関わる刑事たちの人間模様がおもしろい

野村芳太郎監督が脚本家の橋本忍と組んで映画をつくった1974年のころと、今とでは事件の捜査にあたる刑事たちの描き方がかなりちがう。アメリカの映画の事件物では捜査にあたってFBIとNY市警が反目するのがお決まりとなっているが、こうした警察組織絡みの反発心や功名心にはやる刑事の個性をストレートにだし、犯人検挙の体制は一枚岩ではないことを示すほうが見ている者にはおもしろい。だから、日本の映画でも刑事たちをこういう風に描くことが多くなっている。

ニヤニヤしながらみていたのは威張り屋の田島刑事(西村雅彦)がバーの聞き込みに後からやってきた今西と吉村に‘今西ー、ここは俺たちがやるからいい!’と大声を張り上げる場面。合同捜査会議でも組織独自の思惑がでてくる。西成城署の刑事たちはもう一つ起きた殺人事件を管轄内という縄張り意識から参考人の事情聴取を単独で行い、それをこの会議で報告しない。そのことを山下から教えてもらった田島は烈火のごとく怒り、西成城署の連中をなじり状況を問いただす。

★主役吉村刑事の成長物語

この映画の主役はベテランの今西とコンビを組む吉村刑事。玉木宏の演じるこの若手刑事は性格がよくて仕事熱心。尊敬している今西に口癖のように‘勉強になります’と言う。お手柄は今西のモットー‘しつこくやる’を実行して和賀英良の愛人が汽車の窓からばら撒いた‘紙吹雪’(じつは和賀が三木謙一を殺害したときにあびた血痕のついたシャツを切り刻んだもの)を中央線の線路沿いで発見したこと。

吉村は逮捕状の出た和賀英良(佐々木蔵之介)を取り調べる。和賀はしぶとく三木謙一(橋爪功)を殺害したことをなかなか自供しない。が、和賀英良こと本浦秀夫の心をぐさっとえぐるものを吉村は最後に見せる。それは父、本浦千代吉(山本学)が病院で死ぬ間際に描いた風景画、そのなかにお遍路姿の千代吉、秀夫が描かれていた。そして、絵の裏には千代吉の秀夫へ宛てた言葉が書かれていた。それをみて秀夫は泣き崩れる。吉村はいい刑事になった。

★音楽がすばらしい!

和賀英良が作曲したのは‘寂滅’と‘永遠’、‘永遠’は琴線にふれる名曲。また、捜査の節目々でバックに流れる音楽がとてもいい。‘永遠’の発表会で吉村がこれを聴き自分の空襲体験を思い出し涙を流すシーンは映画の最後、合同捜査会議の席上で涙をぬぐう今西刑事の姿とダブってきた。演出家はこの丹波哲郎の名演技を意識したのではなかろうか。

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