西洋画・日本画比較シリーズ! レンブラント vs 喜多川歌麿
レンブラントの‘ガニュメデスの誘拐’(1635年 ドレスデン国立美)
喜多川歌麿の‘夢にうなされる子どもと母’(1800~01年)
西洋美の‘古代ギリシャ展’(7/5~9/25)でギリシャ神話の世界をたっぷり楽しませてもらったので、今日は巨匠たちが描いたギリシャ神話の絵のなかから日頃日本画と見比べながらみている絵をとりあげることにした。
レンブラント(1609~1669)が26歳のとき描いた‘ガニュメデスの誘拐’に大変魅せられている。6年前、西洋美であった展覧会(拙ブログ05/7/18)にやってきたから、頬をゆるめてご覧になった方も多いのではなかろうか。絵を所蔵するドレスデン国立美へ03年行ったとき生憎展示されてなく、いい絵を見損なったなという思いが強くしていた。それが幸運にも日本でリカバリーが実現。
ゼウスは得意の変身術を使って鷲になりすまし、ガニュメデスをかっさらっていく。ご承知のようにガニュメデスはギリシャ神話では美少年となっている。なのにレンブラントの描くガニュメデスは赤ん坊。恐怖のあまりお漏らしている。こんな怖い鷲に襲われたら無理もない。その泣きじゃくる顔の表情がじつにいい。汽車のなかとか、スーパー、病院のなかとか赤ん坊が泣く光景は日常生活のなかのひとこま。これは世界共通、レンブラントはこの可愛そうな赤ん坊の姿を生感覚で描いている。
レンブラントは人間の感情表現がとても上手い。200%惹きつけられた絵がもう2枚ある。そのおびえた表情が目にやきついている‘スザンナ’(05/4/18)とびっくり眼でベルシャザルをみつめる女の表情がそれこそ唖然とするほどリアルな‘ベルシャザルの饗宴’(08/2/6)。
日本の浮世絵のなかにお漏らしガニュメデスの泣き顔を連想させる絵がある。それは喜多川歌麿(1753~1806)が描いた幼児が化け物の夢にうなされる絵。男の子は口をまげて苦しそうな表情をしている。レンブラントと歌麿は時空をこえてリアルな風俗画の世界で響きあっている。
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