アートに乾杯! クプカのスペースファンタジー
‘線、平面、空間Ⅲ’(1923~27年 ポンピドーセンター)
‘垂直の面と斜めの面’(1913~23年 プラハ国立美)
抽象画というのは対象の形や色が消え、作家のイメージする世界が幾何学模様や不定形なフォルム、色面の組み合わせにより表現される。だから、作風のちがいが具象をやっている作家に比べるとハッキリしている。作家の個性の数ほどあるといってもいい抽象画のなかで、宇宙のイメージが色濃くでているものに惹かれている。今日とりあげるクプカ(1871~1957)もファンタジックなスペースワールドを沢山描いている。
クプカの作品に関心をもつようになったのは94年愛知県美で行われた回顧展を体験してから。そして、9年後の03年に訪れたチェコのプラハ国立美で再度多くのクプカ作品に出会い(拙ブログ04/12/6)、この画家への相性のよさは決定的になった。初期の象徴主義の作品もはっとさせるような刺激に富んでいるが、アドレナリンがドッとでてくるの広大な宇宙を思わせる作品。
‘おしべとめしべの物語’はプラハで再会した絵。きのこ雲のようなむくむく感がブラックホールとか小惑星の衝突をイメージさせる。青のグラデーションと白であらわされた曲面の複雑な重なりがとても神秘的にみえる‘線、平面、奥行Ⅱ’にも吸い込まれる。クプカはこのテーマで5点制作しており、オルブライト=ノックス美蔵のヴァージョンがほかの展覧会にやってきた。
ポンピドーにある絵もその1枚だが、これは国立新美の開館記念展で‘動きのある線’(07/2/10)と一緒に展示された。縦長の画面に描かれた楕円の重なりは宇宙にできたトンネルの中を宇宙船で疾走していく感じ。こういう美しい抽象画なら部屋に飾りたくなる。
プラハ美にある‘垂直の面と斜めの面’はMy‘抽象絵画ベスト10’にリストアップしている絵。これをみたとき瞬間的にイベントが行われるホテルとかファッションアーケードの天井から垂れ下がっている華麗な飾り物を連想した。現代でも通用するクプカの豊かな想像力と類まれな装飾感覚にはほとほと感服させられる。
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