すばらしい‘ワシントンナショナル・ギャラリー展’! マネ・モネ
国立新美で開催中の‘ワシントンナショナル・ギャラリー展’(6/8~9/5)を存分に楽しんだ。ここ数年、国立新美で開かれる展覧会はとても充実している。西洋絵画に関していえば、ここで得られる感動の総量が一番大きいような気がする。
昨年は大きなイベントを体験するような感覚だった‘オルセー美ポスト印象派展’があったし、今年はポンピドーセンター蔵の‘シュルレアリスム展’をみせてくれ、そしてワシントンナショナルギャラリーからまたまた印象派&ポスト印象派の名画をごそっともってきてくれた。一回ではもったいないので数回にわけて名画の数々を紹介したい。
作品数は油彩が56点、これに版画や素描、パステルなどが27点。数的にはこのくらいがゆっくりみれてちょうどいい。アベレージの絵で60点弱だったら‘これでもう終わり?’と拍子抜けするが、思わず立ち尽くしてしまうような絵がここにもあそこにあるからとてもいい気持ちになる。まずはマネ・モネから。
マネ(1832~1883)は入ってすぐの部屋に5点ある。この美術館がマネの油彩を何点所蔵しているかわからないが、08年に訪問したときは7点展示されていた(拙ブログ08/4/15、12/30)。そのなかから最も好きな‘鉄道’と‘プラム’がやってきた。チラシに使われている‘鉄道’との再会を待ちわびていたが、現地ですごく感激した‘プラム’がひょいと現れたのでびっくり仰天。これまで展示してくれるの!
‘鉄道’の左でこちらをみている女性は‘草上の昼食’や‘オランピア’と同じくヴィクトリーヌ・ムーランがモデルをつとめている。ヴィクトリーヌの肖像画は昨年の‘ボストン美展’(10/4/28)にやってきた。
‘鉄道’のヴィクトリーヌは‘オランピア’とはどうしても結びつかない。前から‘オランピア’は惹かれないので、この絵をみるときはなるべくオランピアを思いださないようにしている。‘鉄道’は数多くある女性画のベスト5に入れているほど思い込みの強い絵。だから、しばらくうっとりしてながめていた。
風俗画の‘オペラ座の仮面舞踏会’で惹きつけられるのは背景の白い柱や床と男性の黒の燕尾服の鮮やかなコントラスト。上部におもしろいものがみえる。赤いブーツ!マネはここでは女性の足と靴だけをみせ、左端では赤の派手な衣装をつけた大股開きの道化は体半分しか描いてない。じっくりみているといろいろな人間模様が浮かんでくる。
モネ(1840~1926)も豪華なラインナップ。6点あるがなんと3点は昨年パリのグランパレであった大回顧展(10/12/3)に出品されたもの。大好きな‘日傘の女’、明るい日差しと美しい花々に魅了される‘ヴェトゥイユの画家の庭’、そして構図がとてもいい‘アルジャントゥイユ’。
絵の前に長くいたのは‘太鼓橋’。これまでみた太鼓橋シリーズで、水面に浮かぶ睡蓮の花のピンクがこれほど多く描かれいるものはほかに無い。睡蓮はやわらかく優雅に配置されており、太鼓橋の前後に広い奥行きができているのも心を揺すぶる。じつはこの絵は美術館の図録の表・裏表紙に使われている。
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コメント
こんばんは。
これは素晴らしい展覧会で今年のベスト3には入りますね。
大震災のなか、良く貸し出してくださいました!
おっしゃるように展示数がちょうどいい。
一点一点前でたちどまってうっとりします。
これだけの質の展覧会はなかなか見られないのではー。
いづつやさんは海外に行かれてご覧になられてるですが、僕みたいに日本だけだとめったにないという思いを強くします。
図録も表紙三種類からえらべますね、僕はゴッホにしました。
投稿: oki | 2011.06.24 21:42
to okiさん
ナショナルギャラリーの印象派コレクションは
ボストン、シカゴ、メトロポリタン、バーンズ同様に
一級品が揃ってます。
今回、いい絵が沢山やってきました。昨年が
オルセーのポスト印象派で今年はワシントンの
印象派の傑作がみれましたから、現地へ出かけ
なくてもマネやモネ、セザンヌ、ゴッホ、ゴー
ギャンの美術本に載っている傑作がみれるので
すから、日本は印象派の作品に関しては恵まれて
ます。
昨日の記事でも触れましたが、10年くらいの
スパンで考えれば、日本で大きな展覧会を見逃さ
ずに出かけていれば、相当数の名画をみること
ができるのではないでしょうか。
こう印象派のいい展覧会がつづくと来年はどこか
なと期待します。次はシカゴ、メトロポリタンの
傑作をもってきてほしいですね。
投稿: いづつや | 2011.06.25 14:01
こんにちは。京都にもやって来ました「ワシントンナショナルギャラリー展」京都市美では、フェルメールも只今同時開催ですので大変です。ワシントンの方は始まったばかりでまだまだ余裕で観る事が出来ました。モネは、新国美でも観たのですが、「日傘の女性」下から見上げた空の白と女性のスカートの後ろに後ろに入れたハイライトの白が綺麗で眼がそこに惹きつけられました。マネの「オペラ座の仮面舞踏会」の鮮やかなコントラストと画面を横に区切った上の真ん中の足はフォリー=ベルジェール劇場のバーの女性の足の様な気がしてしまいました。
投稿: licolusie | 2011.10.01 12:10
to licolusieさん
こちらのコメントがなぜかスパム入りして
ました。
今年の京都市美は大ホームラン2本ですね。
モネの‘日傘の女性’はいつも心打たれます。
白が輝いてます。そして、マネの黒。この
展覧会は色々楽しめます。
仮面舞踏会やフォリーをみてますと、マネは
構成に時間をかけたことがよくわかりますね。
投稿: いづつや | 2011.10.04 10:46