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2011.06.01

アートに乾杯! 芦雪の光の表現

2737_2                  長沢芦雪の‘山家寒月図’(18世紀)

2738_2             長沢芦雪の‘月に郭公図’(18世紀)

2736_2     歌川広重の‘東海道五十三次 三島’(1833年)

2735_2     歌川広重の‘木曾海道六十九次 宮ノ越’(1835~39年)

長沢芦雪(1754~1799)の作品を15年くらい前展覧会でみたとき、強く印象付けられたのが丹頂鶴が富士山を背にしてグライダーのように飛んでいく絵(拙ブログ5/22)と月と雲がぼやけている‘月に郭公図’(展示は終了 京都・高津古文文化会館)。

芦雪というと‘富士越鶴図’のようなトリッキーな構図を生み出す前衛的なアーティストをすぐイメージするが、一方でこの奇才は光の表現にも関心をよせ、日本人の琴線にふれる輪郭のぼやけた叙情性あふれる山水画も描き出した。

初見の‘山家寒月図’(6/5まで展示、神戸・香雪美)に大変魅了された。視線は下の茅葺屋根の家から次は後ろの道、そしてV字の形をなす二つの山にみえる梅の木や松とだんだん上にあがっていく。墨の濃淡表現が心地よく、大きなもやっとした月に映しだされる松のシルエットと梅の細い枝は深い情趣につつまれている。

‘月に郭公図’でおもしろいのは月や雲の輪郭がもやっとしているのに対し、郭公は下からの視線で羽や口ばしがはっきり描かれているところ。こういう風に焦点がはっきり合っている対象と焦点のずれているものを画面のなかで構成するやり方はとても革新的。この写真のような描き方はコローの‘モルトフォンテーヌの思い出’(1864年 08/4/2)の木にもみられるが、芦雪はこれより60年くらい前に行っていた。

影とシルエットがでてくる浮世絵ですぐ思いつくのは歌川広重(1797~1858)の東海道の‘三島’と木曾海道の‘宮ノ越’。‘三島’は青と墨2色の見事なグラデーションにより奥行きのある空間が生まれており、絵にすっと入っていける感じ。朝霧のなか手前に向かってくる駕籠や馬はこれから江戸を目指すところ。

‘宮ノ越’は遠景にみえる人物のシルエットと手前の黒い木や家路につく父母と娘を対比させる描き方がなんともいい。木曾街道にはもうひとつシルエット表現の傑作がある。それは橋を渡る旅人がシルエットになった‘長久保’。芦雪と広重の温もりのある詩心にはいつも感服させられる。

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