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2011.06.30

アートに乾杯! ゴッホ‘自画像’は弟テオの肖像画だった

2799_2        ‘弟テオの肖像’(1887年3~4月 パリ ゴッホ美)

2801_2        ‘自画像’(1887年夏 パリ デトロイト美)

2800_2        ‘自画像’(1887年春 パリ シカゴ美)

2798_2        ‘自画像’(1889年8月末 サン・レミ ワシントンナショナル・ギャラリー)

6/23の新聞記事に興味深いことが載っていた。アムステルダムにあるゴッホ美が所蔵するゴッホの‘自画像’の一枚がじつは弟のテオを描いたものだったというのである。

一番上の画像がその絵で同館の学芸員の調査によると、テオの肖像画はほかのゴッホの自画像に比べて耳が丸みを帯びていて、あごひげもゴッホが赤っぽいのに対し黄色がかっているとのこと。ヘェー、ゴッホはテオの肖像を描いていたの!というのが率直な思い。それにしても2人はよく似ている。これだと誰でもテオの肖像画を区別できない。

ゴッホは一体何枚自画像を描いたのか? 35点というのが一応頭のなかに入っている。これで1点マイナスになるが、ゴッホがパリにいた1887年に描いたほか自画像のなかにひょっとするとこれもテオ?というのがある。それは同じく麦わら帽子を被ったデトロイト美蔵のもの。テオより目つきが鋭いので、やはりゴッホのような気もするが、、この絵もメスを入れるのだろうか?

パリ時代に描かれた自画像で惹かれているのは08年シカゴ美を訪問したとき体験したもの。点描風に描かれた背景や衣服にわりかた穏やかな表情をした赤ひげの顔が浮かび上がっている感じだった。

この絵に比べると、現在国立新美に飾ってあるワシントンナショナル・ギャラリーのものは厳しい自画像でとてもではないが側には近寄れない。耳切り事件のあとサン・レミの療養所にいたゴッホはこのころがドン底、頬がこけ顔も青白い。この青白さは見る者にかなりの緊張感を強いる。だから、この絵の前には長くはいれない。

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2011.06.28

三菱一号館美ならではの‘もてなす悦び展’!

2797_2     ルイス・コンフォート・ティファニーの‘朝顔形コンポート’(1880年)

2796_2     ジークフリート・ビング編‘芸術の日本’(1888~91)

2795_2     マイセン王立磁器製作所‘花鳥文カップ&ソーサー’(19世紀末)

2794_2 ミントン社伝クリストファー・ドレッサー‘日本文物文カップ&ソーサー’(1878~80)

三菱一号館美では現在、邸宅美術館ならではの‘もてなし悦び展’(6/14~8/21)が行われている。副題が‘ジャポニスムのうつわで愉しむお茶会’とあるから、メインの部屋ではコーヒーでも飲んでくつろぎたくなる。どんなしつらえともてなしの演出がしてあるかはお出かけになってのお楽しみ!

作品はテーブルウエアを中心におよそ230点。入館するとまず夏の暑い時期にはもってこいのティファニーガラスが目にとびこんでくる。朝顔をモチーフにしたコンポートや鉢、ワイングラス。いつも夏はガレやドーム兄弟のガラス作品をみて涼しさをよびこんでいるが、今年はティファニーの朝顔だった。

ゆっくり進んでいると大変嬉しいものがあった。それはビングが編集した美術雑誌‘芸術の日本’。3年にわたって毎月発行された全36冊がずらっと並べてある。その表紙は浮世絵。図録にはその一部が収録されている。ビングはこの雑誌で日本では絵画や工芸意匠は独立した美術として存在しているのではなく、日常生活のなかに生かされていることを多岐にわたって紹介している。こうした媒体を通じてジャポニスムの心が装飾美術に携わるデザイナーや職人たちに影響を与えていったのかと思うと感慨深い。

沢山あるカップ&ソーサーのなかでとくに惹かれたのはマイセンのピンク色のものと青と金彩が施された模様が白の地に浮かび上がるミントン社のもの。また、イギリスのロイヤル・ウースター社の唐草文などの扁壺にも思わず足がとまる。やきもののほかにも精巧な技に釘づけになるジャポニスム銀器があったので時間をかけてじっくりみた。

今回の図録はすばらしい出来。値段も1500円と手ごろで、読みやすいレイアウト、編集になっているのがいい。このくらいの厚さだと女性客もファッション雑誌の感覚で購入するのでは。もてなしの心が現れており好感がもてる。

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2011.06.27

彫刻、工芸意匠にみる鳳凰と獅子!

2792_2      ‘鳳凰(旧金閣所在)’(室町時代)

2790_2     ‘色絵飛鳳文輪花鉢’(江戸時代 17世紀)

2791_2      ‘木造獅子’(鎌倉時代 12~13世紀)

2793_2     ‘牡丹扇面滝模様絞縫振袖’(江戸時代 18世紀末~19世紀半ば)

獅子は小さい頃から神社にお参りしたとき境内で彫刻をみることがあるから、美術品としては馴染み深い。これに対し、古代中国で生み出された空想の鳥、鳳凰への親和度はかなり弱くなる。普段の生活のなかではほとんど縁がなく、その優雅な姿をみようと思うとハレの気分に駆られて京都を訪れるしかない。

でも京都観光は人生のなかでそう何度も体験できるわけではない。ところが、展覧会というのは有難いもので東京にいながら金閣寺や宇治平等院へ行ったような気分になる。今回一番の収穫は旧金閣にあった鳳凰がみれたこと。これは昭和25年(1950)の火災を免れたのだという。

明治時代の金閣修理のとき、尾羽がかなり折れていたため屋根から降ろされていたのだそうだ。それで火災にあわなかったらしい。これが本物で、現在飾られているのはこれを模倣した四代目。また、宇治平等院にある鳳凰(模造)も目を楽しませてくれる。模造ではあっても間近でみられることは滅多にないから、最も美しくみえる横からの姿を息を呑んでみていた。

鳳凰をモチーフにした古九谷様式の色絵磁器2点は見ごたえがある。飛んでいる鳳凰と片足立ちしている鳳凰。東博所蔵の‘飛鳳文輪花鉢’は平常展でお目にかかっているがこの前は?だったので、あらためて鮮やかな緑、青、紫をしっかりみた。シルエット姿の鳳凰は一瞬石川県美にあるものかと思ったがよくみると別ヴァージョン、目を閉じている分目力が少し弱い感じ。余白を大きくとる見事な構成に見蕩れていた。

木造の獅子はとくに目新しいのものではないが、尾っぽをぴんと立て前方に厳しい視線を向ける雄々しい姿には思わず足がとまった。鳳凰や獅子は吉祥文様として着物に意匠化された。が、着物は女性の着るものだから獅子はそのままの姿では勇ましすぎる。そこで日本人の豊かな感性を表す見立ての手法が使われた。

‘牡丹扇面滝模様絞縫振袖’では獅子頭に見立てた‘扇獅子’(二枚の扇を重ねて牡丹をのせたもの)の模様が元気よくいくつも描かれている。こういう模様ははじめてなのでひとつ々食い入るようにみていた。

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2011.06.26

企画力をみせつけるサントリー美の‘鳳凰と獅子’展! 絵画

2786_2     狩野探幽の‘桐鳳凰図屏風’(江戸時代 17世紀)

2788_2     喜多川歌麿の‘青楼絵本年中行事・倡舗張付彩工図’(1804年)

2789_2     長沢芦雪の‘唐獅子図屏風’(18世紀末)

2787_2     竹内栖鳳の‘大獅子図’(1902年)

現在、サントリー美で行われている‘不滅のシンボル 鳳凰と獅子’展(6/8~7/24)をみてきた。これは開館50周年記念展‘美を結ぶ、美をひらく’の第2弾。1回目が所蔵の名品を全部みせます!タイプの豪華な内容だったのに対し、今度は他館のものや寺社にある普段は見る機会のないものなどを‘鳳凰と獅子’という吉祥のテーマのもとに目いっぱい集めてきている。

この展覧会のチラシを手に入れたとき、是非見にいこうと思ったのは竹内栖鳳のライオンの絵が載っていたから。絵の存在を知ったのは随分前のことなのに、なかなか縁がなかった。お目当ての作品はこれ1点だったが、もうひとつ期待したことがある。それは図録。サントリー美がつくる図録はよくできているので毎回これを購入するのが楽しみのひとつになっているが、今回はとりわけ欲しかった。

とりあげたテーマ、鳳凰と獅子がいいし、このモチーフが描かれた絵画やこれが意匠化されたやきものや蒔絵などにびっくりするほどすごいのが揃っている。質の高さからいうと東博で行なわれる特別展と遜色ない。三の丸尚蔵館からは若冲の‘旭日鳳凰図’拙ブログ09/10/10、展示は7/4まで)、狩野永徳の‘唐獅子図’(07/11/9、7/6~7/24)が展示されるし、国宝が‘文殊渡海図’(醍醐寺 09/4/23)など3点もある。

また、若冲の静岡県美にあるモザイク画‘樹花鳥獣図屏風’(展示は終了)も飾り、現在休館している五島美からは名品の‘青磁鳳凰耳花生’(重文)をしっかり借りてきている。だから、今回の図録は価値の高いお宝本を手に入れたようなもの。素直に嬉しい。今日はその優品のなかから絵画を、明日は彫刻、やきものなどを紹介したい。

日本画で鳳凰の絵というとすぐ思い浮かべるのは狩野探幽(1602~1674)の描いた‘桐鳳凰図屏風’(07/4/8)と若冲の‘旭日鳳凰図’。絵画で鳳凰がどんと見られるのは意外に少ない。歌麿(1753~1806)の鳳凰図(6/27までの展示)は羽根を大きくひろげ量感あふれる鳳凰なので見ごたえがあるが、この浮世絵を見る機会はなかなかない。これは平木浮世絵財団のものだが、大英博物館蔵との遭遇を夢見ている。

思わぬ収穫だったのが長沢芦雪(1754~99)の‘唐獅子図’。信楽で大芦雪展(4/24)を体験したばかりだから、このへんてこな獅子に敏感に反応した。これが獅子?八曲一双の左隻に描かれているのが横向きに走る獅子。まるで平家の落ち武者のよう。右隻でこれと対峙する獅子がこれまた獅子らしくなく、その顔は馬面の龍。絵の前ではニヤニヤしっぱなし(6/27)。

さてお目当ての竹内栖鳳(1864~1942)の‘大獅子図’(大阪・藤田美 6/27)である。これはまさにライオン。小さい頃動物園でみたライオンが目の前にいるような錯覚をおぼえる。魚や動物をリアルに描かせたら栖鳳の右にでるものはいない。動物園はもう何十年と縁がないから、隣の方の好きなNHKの動物番組に登場するライオンがアフリカの草原をのしのしと歩き回る姿をイメージしていた。

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2011.06.25

セザンヌの‘画家の父’と嬉しい再会!

2782_2              セザンヌの‘画家の父’(1866年)

2784_2     ゴッホの‘薔薇’(1890年)

2783_2     ゴーギャンの‘ブルターニュの踊る少女たち’(1888年)

2785_2     スーラの‘ポーラン=ベッサンの海景’(1888年)

ポスト印象派の画家で作品数の多いのがセザンヌ(1839~1906)。油彩6点のなかで足がとまるのは‘画家の父’。大作なのでどっしりした父親の姿に見入ってしまう。右から強い日差しが当たっており、椅子の背の輝く白と靴の濃い影が目に焼きつく。

08年現地でみた13点のうち感激したのはこの絵(拙ブログ08/12/30)と‘ペパーミント瓶のある静物’。ほかの作品はそれほど惹かれず、セザンヌ全体の作品からいうとアベレージクラスという印象だったが、今回のラインナップも同じ思い。で、‘画家の父’以外はさらさらとみて終わり。

‘赤いチョッキの少年’は現地で展示されてなかったので期待していたが、本物はそれほどでもなかった。いつかこの目でと思っているチューリッヒにある同名の絵と比べたら、正直言って心は半分しか動かない。その原因は背景。ゴチャゴチャした背景のため少年が画面のなかに埋没している。

ゴッホ(1853~1890)は3点。‘自画像’と‘プロヴァンスの農園’はグッとこず、びっくりするほど明るい‘薔薇’の前に長くいた。この美術館にあるゴッホはなんといっても‘ムスメ’(08/4/16)。この展覧会の情報を知ったときちょっぴり期待したが、その夢はすぐ消えた。ゴッホの人気ははアメリカでも高いから、画集に必ず載っているこの名画はまず貸し出さない。

ワシントンにはすばらしいゴーギャン(1859~1891)のコレクションがあるのだが、今回は1点だけ。これには事情がある。この展覧会がはじまる3日前まで、現地でゴーギャンの大回顧展(2/27~6/5)が開かれていた。ここに‘自画像’(08/12/30)や‘悪魔の言葉’など自慢の名画が7点でていたので、今は作品のお休み期間。‘踊る少女たち’はロンドンのテートモダン(10/12/13、今年1/16に終了)のみの展示だったから、日本に淋しく一人旅。でも、ブルターニュの純朴な少女たちは楽しく踊っている。

スーラ(1859~1891)の点描画はよく覚えている。というのも、絵の前で学芸員が大学生のグループに‘この絵には6色しか使われていない!’と熱く解説していたのがたまたま耳に入ったのである。隣にもう1点初見の作品もあったので少し離れてじっくりみた。スーラのヴァリエーションが増えたのでとても喜んでいる。

この展覧会はもう一度でかけるつもり。

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2011.06.24

カイユボットのカヌーの絵は期待値を上回る傑作だった!

2779     カイユボットの‘カヌー’(1877年)

2780     ルノワールの‘シャトゥーの漕ぎ手たち’(1879年)

2778           ピサロの‘麦わら帽子をかぶる農家の少女’(1881年)

2781     カサットの‘青いひじ掛け椅子の少女’(1878年)

今回の‘ワシントンナショナルギャラリー展’(6/8~9/5)は3ヶ月の大興行、東京が終わると京都市美(9/13~11/27)でも開催される。東京展は夏休みがまるまる会期に入っているので絵が好きな子どもたちや大学生にはもってこいの展覧会である。

日本は印象派やポスト印象派の展覧会については本当に天国。だから、印象派に目覚めたあるいは気になりだした中高生や学生、そして若年層にとって日本の展覧会シーンは理想的かもしれない。海外の美術館へ出かけなくても、とにかく日本で行われる大きな展覧会にまめに足を運んでおれば10年もたつと相当の‘通’になれるのである。My‘美術通’は知識を詰め込んでいる人のことではなく、本物を多くみている人のこと。場数をふめば皆いたって気楽な‘通’になれる。

昨年のオルセー展やこの展覧会のように質の高い作品がどさっとやってきたときは、会期中に何度も通い名画を集中的に味わうのも一つの方法。いい絵というのはどういうわけか一生懸命みると目に焼きつく。絵画の鑑賞で一番大事なことは解説文を読むことではなく、キャンバスを見尽くすこと。そうするとAクラスの‘通’への道が開ける。

会場で作品を一通り見終わるともう一度見ることにしている。そのとき、作品を少し離れたところからみる。すると輝いている絵とそうでない絵がよくわかる。今回最も光輝やいている絵はカイユボット(1848~1894)の‘カヌー’。画面が周りの作品とくらべると際立って明るい。キャンバスがまるで発光体のよう。

この絵は08年現地でどういうわけか展示してなかった。‘もっと見たい’シリーズでとりあげたが(拙ブログ10/9/14)、こんなに早く対面が実現するとは思ってもみなかった。しかも、期待値を上回る傑作だったので、テンションは一気にプラトー状態になった。

6点あるルノワール(1841~1919)のなかで‘モネ夫人とその息子’と‘ポン・ヌフ、パリ’が追っかけ画だったが、それほど引き込まれなかった。見入っていたのは現地での記憶がよく残っている‘シャトゥーの漕ぎ手たち’。画面全体に強い光を感じる絵でボートの赤と水面の青が印象深い。

女性画で心をとらえた絵がマネとモネのほかにもあった。それはピサロ(1830~
1903)が描いた農村の少女。被っている麦わら帽子に当たった日差しをみるとかなり眩しそう。ピサロの女性画をみる機会は多くないが、これほど惹きつけられたのははじめて。

アメリカの女流画家カサット(1844~1926)は08年美術館をまわったとき、ボストン美やシカゴ美で女の子や幼子を描いたものを体験したのですこしは馴染みがある。でもその数はせいぜい片手くらい。ワシントンではカサットの絵はなぜか1点もなかった。で、‘青いひじ掛け椅子の少女’は美術館の図録で知った。

気になる絵なので次回のリカバリーリストに入れていたが、嬉しいことに日本でみれることに。目の覚める青のカバーがかけられた4つの椅子がつくりだす空間はぐーらぐらする感じだが、落ち着きのないおてんば娘の姿がしっかり目になかに入ってくる。

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2011.06.23

すばらしい‘ワシントンナショナル・ギャラリー展’! マネ・モネ

2775_2     マネの‘鉄道’(1873年)

2776_2     マネの‘オペラ座の仮面舞踏会’(1873年)

2774_2          モネの‘日傘の女性’(1875年)

2777_2     モネの‘太鼓橋’(1899年)

国立新美で開催中の‘ワシントンナショナル・ギャラリー展’(6/8~9/5)を存分に楽しんだ。ここ数年、国立新美で開かれる展覧会はとても充実している。西洋絵画に関していえば、ここで得られる感動の総量が一番大きいような気がする。

昨年は大きなイベントを体験するような感覚だった‘オルセー美ポスト印象派展’があったし、今年はポンピドーセンター蔵の‘シュルレアリスム展’をみせてくれ、そしてワシントンナショナルギャラリーからまたまた印象派&ポスト印象派の名画をごそっともってきてくれた。一回ではもったいないので数回にわけて名画の数々を紹介したい。

作品数は油彩が56点、これに版画や素描、パステルなどが27点。数的にはこのくらいがゆっくりみれてちょうどいい。アベレージの絵で60点弱だったら‘これでもう終わり?’と拍子抜けするが、思わず立ち尽くしてしまうような絵がここにもあそこにあるからとてもいい気持ちになる。まずはマネ・モネから。

マネ(1832~1883)は入ってすぐの部屋に5点ある。この美術館がマネの油彩を何点所蔵しているかわからないが、08年に訪問したときは7点展示されていた(拙ブログ08/4/1512/30)。そのなかから最も好きな‘鉄道’と‘プラム’がやってきた。チラシに使われている‘鉄道’との再会を待ちわびていたが、現地ですごく感激した‘プラム’がひょいと現れたのでびっくり仰天。これまで展示してくれるの!

‘鉄道’の左でこちらをみている女性は‘草上の昼食’や‘オランピア’と同じくヴィクトリーヌ・ムーランがモデルをつとめている。ヴィクトリーヌの肖像画は昨年の‘ボストン美展’(10/4/28)にやってきた。

‘鉄道’のヴィクトリーヌは‘オランピア’とはどうしても結びつかない。前から‘オランピア’は惹かれないので、この絵をみるときはなるべくオランピアを思いださないようにしている。‘鉄道’は数多くある女性画のベスト5に入れているほど思い込みの強い絵。だから、しばらくうっとりしてながめていた。

風俗画の‘オペラ座の仮面舞踏会’で惹きつけられるのは背景の白い柱や床と男性の黒の燕尾服の鮮やかなコントラスト。上部におもしろいものがみえる。赤いブーツ!マネはここでは女性の足と靴だけをみせ、左端では赤の派手な衣装をつけた大股開きの道化は体半分しか描いてない。じっくりみているといろいろな人間模様が浮かんでくる。

モネ(1840~1926)も豪華なラインナップ。6点あるがなんと3点は昨年パリのグランパレであった大回顧展(10/12/3)に出品されたもの。大好きな‘日傘の女’、明るい日差しと美しい花々に魅了される‘ヴェトゥイユの画家の庭’、そして構図がとてもいい‘アルジャントゥイユ’。

絵の前に長くいたのは‘太鼓橋’。これまでみた太鼓橋シリーズで、水面に浮かぶ睡蓮の花のピンクがこれほど多く描かれいるものはほかに無い。睡蓮はやわらかく優雅に配置されており、太鼓橋の前後に広い奥行きができているのも心を揺すぶる。じつはこの絵は美術館の図録の表・裏表紙に使われている。

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2011.06.22

日本のスーパーエース ダルビッシュは来年大リーグ?

2773パリーグの人気がここ数年のうちにグッとあがってきたのは優秀なピッチャーが数多くいることが大きく影響している。

そのなかでスーパー投手力を発揮しているのが日ハムのエース、ダルビッシュ。

阪神との試合で期待された4試合連続完封の新記録は残念ながら達成できなかったが、このところのダルビッシュのピッチングはもうあきれるくらいスゴイ。

連続イニング無失点を46回(パリーグ歴代2位)続け、三振の山を築き、その間与えた四死球はたったの3つとコントロールも抜群。このピッチャーは今多くのプロ野球ファンが注目する最強のスーパーエース。日ハムの試合は西武球場で一度体験したことがあるが、ダルビッシュの生のピッチングはまだみたことがない。いつか、観戦の機会をつくろうと思っている。

現在の成績は8勝2敗、防御率は1.39で3位。昨年離婚してふっきれたのか開幕からとばしまくっている感じ。それにつられて同僚の武田勝の調子がよく、勝ち星こそ打撃の巡り合わせが悪く4勝どまりだが、防御率はダルビッシュの上をいく1.30と立派な投球をみせている。ダルビッシュに刺激を受けている投手は他球団にもおり、田中マー君は防御率1位(1.19)にたち、ソフトバンクの和田や山田、そしてロッテの唐川も好調を維持している。

リーグにいいピッチャーがいるとバッター全体の技量が底上げされる。ダルビッシュが投げる球をどうやって打ち返すか、バッターは必死に研究する、が、簡単には打たせてもらえず三振をくらい凡フライに打ちとられる。そして、また悩み自分の技量をさらに磨く。

そうして打ったヒットなりホームランは並みの投手から打った一本とは価値が違うから、打った選手には大きな自信となり、成績もそれをきっかけに上向いたりする。緊張感のある勝負が繰り広げられると見ている者は大きな感動をもらい、元気が出る。まさに野球力が人々の生活に潤いと活力を与える。

日本のプロ野球にとって宝みたいな存在であるダルビッシュだが、さて来年は大リーグで投げているのだろうか?大リーグで活躍する日本人選手が少なくなっているので、大リーグファンとしてはダルビッシュに海を渡ってもらいたいという気持ちがあることはある。

が、今は日本でプレーして欲しいという思いのほうが強い。日本は東日本大震災で大きな被害を受け大変なときだから、パリーグでソフトバンクや西武などと一緒に日本のプロ野球を盛り上げてもらいたいのである。果たして?

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2011.06.21

セ・パ交流戦 強すぎるソフトバンク!

2772今年のセ・パ交流戦は圧倒的な強さをみせたソフトバンクの3度目の優勝で終了した。

24試合戦い、ソフトバンクは18勝する(勝率.818)のだからその強さは抜きん出ている。

上位5チームは2位がオリックスで、そのあと日本ハム、中日、西武が続く。交流戦全体の印象としては昨年同様、パリーグがセリーグをこてんぱんにやっつけたという感じ。

この結果をみたら、日本シリーズにおけるパリーグ覇者の勝ちは決まったも同然。試合をする価値が果たしてあるのだろうかと思ってしまう。

セパの戦力のちがいはこのように明々白々なのに、セリーグの球団経営者は老害ナベツネを頂点にして危機感を感じるどころかパリーグを見下し、権力主義丸出しでその場限りの興行収支ばかりに目がいっている。こんな連中が興行を仕切っているセリーグにはもう何年も前から愛想を尽かしており、プロ野球の関心は100%パリーグに移っている。

そのパリーグは1位ソフバンクと2位の日本ハムがほかの4チームを大きく引き離しているので、順位争いの興味はもう3位争いだけになっている。だから、クライマックスシリーズに出場するための残り一つの枠をめぐる戦いを4ヶ月も前倒しでやっているようなもの。

首位を走っているソフトバンクの打の戦力アップに大きく貢献しているのがFAで横浜から移籍した内川(写真)。打率は.363と立派な成績。内川はWBCで一躍ブレイクした選手だが、打撃力は確実にアップし、いまや野手ではチームの看板ともいえる存在になった。大分県の出身だから、九州のソフトバンクは格好の働き場所。球団の期待値にちゃんと応えるのだから内川はたいしたもの。ソフトバンクにとっては願っても無い戦力補強となった。

切れ目のない打線に加え投手力は杉内、和田の2本柱がしっかりしているのでチームの総合力は近年になく充実している。秋山監督の選手起用、采配もだいぶ上手くなってきた。ソフトバンクの強さはしばらく続きそう。

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2011.06.20

イチローの年間200本安打は黄信号!

2771_2大リーガー、イチローの5、6月の打撃不振は想定外だった。

松坂(レッドソックス)の肘の手術も暗いニュースだが、それ以上にイチローの不調は大リーグの楽しさを半減させる一大出来事である。

72ゲームが終わった時点での成績は打率.277で、ヒット数は82本。残りゲームは90。となると、年間200本に到達するためには1試合平均1.4本のヒットが必要。

これは相当厳しい!今年は無理かもしれないと思わせる要因はもう一つある。それはチームが強いこと。マリナーズの戦前予想はいつものように西地区最下位。が、開けてびっくり、今年はどういうわけか強い。勝率は5割をこえ、首位のレンジャーズに0.5ゲーム差の2位は大健闘。

これから首位を奪い、秋には地区優勝の美酒に酔えるか、それともシーズン後半の熾烈な上位争いに振り落とされるか?その結末如何はイチローの200本安打と大きく絡んでくる。というのも、マリナーズが強くなればなるほど対戦相手のピッチャーは一番バッター、イチローを警戒し、厳しい攻めをしてくることは目にみえているからである。また、歩かせたりまともに勝負してこないケースが増えてくる。

弱いマリーナーズだったら、イチローに打たれてもほかのバッターを打ちとればいいという心理が働くので、ピッチャーはイチローと勝負してくれる。でも、マリナーズも優勝争いに絡んでくると話はがらっと変わる。イチローのバッティング機会はかなり減ってくるので、ヒットの数をコンスタントに積み上げていく可能性は低下する。残り120本の達成は難しいような気がする。

イチローは頭がいいから、自分の200本安打より久しぶりに巡ってきたチームの優勝のチャンスに頭を切り替えるのではなかろうか。2年前、200本安打を9年続け大リーグ記録をつくったから、累計11回の新記録は来年以降にめざそうと思いはじめているかもしれない。

イチローを熱く応援するものとしては、チームが好調なのでこのまま地区優勝にむかって突き進んでもらいたい。そんな強いマリナーズの勝利にイチローのバット、盗塁、守備が貢献してくれたら、これにまさる喜びはない。がんばれ、イチロー、そしてマリナーズ!

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2011.06.10

お知らせ

拙ブログはしばらくお休みします。

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2011.06.09

個人コレクション 夢の傑作選!(9)

2769_3     菱川師宣の‘すねた女’(1673~81年)

2770_2        鈴木春信の‘風流江戸八景 上野の晩鐘’(1768~69年)

2768_2     喜多川歌麿の‘ぎやまんおしま’(1802~03年)

2767_2     葛飾北斎の‘雪中虎図’(1849年)

今年は例年以上に浮世絵の展覧会が充実している。ボストン美の浮世絵コレクション展のパートⅡ(山種美&千葉市美)、6/12で終了する東博の‘写楽展’、そして現在
太田で開かれている‘国芳展’(7/28まで)。

国芳展はふたつ進行しており、太田のものはこのあと佐川美(9/6~11/6)、郡山市美(11/12~12/25)と巡回する。いまひとつは日曜美術館でも紹介された大阪市美などで行われるもの。こちらは12月森アーツセンターにやってくる(12/17~2/12)。昨年の府中市美とあわせると3回の国芳展。これで国芳の図録は6冊になり、北斎を抜いて浮世絵のキングにおどりでる。しばらくは国芳の絵で楽しめる。

気が早いが、来年はどんな浮世絵展があるだろうか?菱川師宣(1630~1694)を東博か千葉市美でやってくれないかと密に期待している。ほかにも勝手な希望はある。例えば、MOAか出光美で‘勝川春章展’とか。師宣の回顧展があるとき是非入れて欲しいのが個人蔵の‘すねた女’。

鈴木春信(1725~1770)の追っかけ画は個人蔵や東博にあるものは対面が思うように進まないが、海外の美術館の里帰り展でいい絵をみる機会が多いから着実にヴァリエーションは増えている。ファン心理としては、好きな絵師の絵が多く体験できると満ち足りた気分になる。

そうした中、長らく待っている‘上野の晩鐘’はなかなか姿をみせてくれない。回顧展でもないかぎり展示されないだろうが、その回顧展も萩でみてからまだ9年。2度目の春信展はもう5年以上かかりそうだから、運が良ければの心境。

春信に比べれば期待がもてそうなのが喜多川歌麿(1753~1806)。勝手に回顧展がここ数年のうちにあると信じているが、肉筆画の‘きやまんおしま’が出品される可能性は低いかもしれない。でも一度みてみたい。

ここでとりあげた4点のなかで最もみたいのは北斎(1760~1849)が亡くなる3ヶ月前に描いたという‘雪中虎図’。この肉筆画の存在を知ったのは20年くらい前。随分待たされているがまだ縁がない。北斎の追っかけは残り数点、これがみれたら済みマークをつける気でいるのだが。幸運はやってくるか?

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2011.06.08

個人コレクション 夢の傑作選!(8)

2764_4     尾形光琳の‘維摩図’(重文 18世紀)

2765_3     尾形乾山の‘八橋図’(18世紀前半)

2766_3            伊藤若冲の‘蝦蟇・鉄拐図’(18世紀後半)

2763_4     雪村の‘竹雀図’(16世紀)

今年は前半に根津美で日本とアメリカにある尾形光琳(1658~1716)の燕子花が共演する夢のイベントが予定されていたが、東日本大震災の影響で来春に延期になった。楽しみはひとまずお預け。で、気持ちは秋に千葉市美で開催される‘酒井抱一展’(10/10~11/13)に向かっている。

千葉市美が実施する回顧展はいつも沢山の作品を集めてくるので、追っかけ画をあれもこれも展示してくれるのではないかとつい期待してしまう。美術館に対する好感度はこうした期待値に応えてくれるかどうかで決まる。いい印象が続くとその美術館へはまた出かけたくなる。いまのところ千葉市美は好感度ランキング上位グループに位置づけている。

光琳の絵は画集に載っているものはほぼ目のなかに入れ、残っているのは数点。そのひとつが重文に指定されている個人蔵の‘維摩図’。これまで琳派展をいくつも体験したがなかなか姿を現してくれない。とても存在感のある維摩だが、個人のコレクションなのでこの先も縁がないかもしれない。

尾形乾山(1663~1743)の‘八橋図’は5年前京博であった‘京焼展’に出品されたのだが、生憎展示替えで見逃した。昨年五島美で念願だった乾山の絵2点と対面したので、あとは‘八橋図’と根津美にある絵。辛抱強く鑑賞の機会を待ちたい。

大きな回顧展がここ2年続いた伊藤若冲(1716~1800)は今はゆったり鑑賞モード。プラスαで期待度一番の絵はみるからにおもしろい‘蝦蟇・鉄拐図’。右の鉄拐の顔は顔にみえる?こんなユニークな顔はみたことがない。はじめに左の蝦蟇の河童頭を思いつき、それから連想して口が富士山のようにつきでた顔になったのだろうか。

雀を描いた絵師ですぐ思いつくのは長沢芦雪と雪村、そして近代の日本画家菱田春草。雪村の‘竹雀図’は構図がとてもいい。画面の真ん中で太い竹が天地をつらぬき、枝にとまる3つ雀のかたまりが横にならんでいる。いつか本物と対面したい。

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2011.06.07

個人コレクション 夢の傑作選!(7)

2761     池大雅の‘富士白糸滝図’(1762年)

2762                与謝蕪村の‘寒林孤亭図’(1776年)

2759     円山応挙の‘四季草花図屏風’(部分 1787年)

2760     英一蝶の‘松風村雨図’(17世紀末)

日本美術史のなかで江戸時代中期、18世紀に描かれた絵をみる機会がここ10年くらいの間に非常に増えてきた。毎年のようにこの時期に活躍した絵師たちの回顧展が開かれる。今年はMIHO MUSEUMで長沢芦雪が登場した。

皆が知っている有名な絵師の回顧展を2回みるのを目標としている。展示の規模が大きいとそう何回も開けない。主催するほうは大変だが、鑑賞する側からいうと10年に一度くらいみたいところ。例えば03年の‘円山応挙展’(大阪市立美)、05年の‘曽我蕭白展’(京博)のパートⅡを4,5年のうちにみれれば嬉しいが。

美術館へ出向くのは追っかけ画の鑑賞が目的だから、どうしても回顧展の動向に関心が向かっていく。複数の回顧展を体験したいのは好きな絵師の作品を一点でも多くというファン気質以外なのものでもないが、このなかには普段は鑑賞することが叶わない個人が所蔵する名画も当然入っている。個人コレクションは特定のテーマで作品を集めてくる企画展にはまずでてこないので、回顧展は夢の傑作をみる奇蹟の場かもしれない。

そんな夢の作品がまだ何点も残っている。池大雅(1723~1776)の回顧展がここ数年のうちにあると勝手に信じている。構図がとてもいい‘富士白糸滝図’と島根の八雲本陣記念財団蔵の屏風‘夏雲峰図’はそこにもちろん入っている。セットで対面するのが理想だが、一点でもあれば幸せ気分。

与謝蕪村(1716~1783)の追っかけは淡い色調のかすれた風景が心を揺すぶる‘寒林孤亭図’のほか数点になった。でも、これからは出会う可能性は段々小さくなっていく感じ。‘寒林亭図’は08年の回顧展(MIHO MUSEUM)に出品されなかったから、難しいかも。

円山応挙(1733~1795)の‘四季草花図’も是非みてみたいが、大阪市美にはでてこなかったから遠い存在に思えてくる。応挙は18世紀京都画壇の中心人物なので、やはり10年に一度は回顧展を開催してもらいたい。

池大雅とともに回顧展を強く望んでいるのが英一蝶(1652~1724)。京博あるいは東博には、ワシントンのフリーア美にある‘田園風俗図屏風’を里帰りさせ‘松風村雨図’などを揃えた大規模な回顧展を熱く期待している。

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2011.06.06

ゆったり鑑賞!東博総合文化展  応挙・正宗

2757_2               円山応挙の‘龍唫起雲図’(1794年)

2756_2            田能村竹田の‘松巒古寺図’(重文 1833年)

2755_2     英一蝶の‘雨宿図屏風’(18世紀はじめ)

2758_2      刀‘相州正宗(名物観世正宗)’(鎌倉時代 14世紀)

東博の平常展は今年から‘総合文化展’になった。といっても展示内容とか方法は前と同じ。平常展がいつも同じものを展示しているというイメージを変えたかったようだ。その気持ちはわかるが、‘総合文化展’はいかにも文科省管轄の美術館らしいネーミング。

東博の今の回り方は浮世絵コーナー以外はゆったり鑑賞モード。ここの追っかけ作品はほとんど見終わったので、気楽にみている。事前のHPチェックもしたりしなかったり。この度はNO情報。2階向かって左の書画の部屋(展示は7/10まで)に思わず足がとまった絵があった。

円山応挙(1733~1795)の龍。じつはこの絵ははじめてではない。8年前大阪市美であった応挙の大回顧展でみた。そのあと、平常展でこれをみたという記憶がない。この間ずっと倉庫のなかにあったということもないだろうが、久しぶりに応挙のいい龍に会ったという感じ。釘付けになるのが目と上の稲妻、胡粉の白が一際輝いている。

視線がどんどんあがっていくのがやたら長い田能村竹田(1777~1835)の山水画。渓流にそって立つ形のいい木々は理想郷への道しるべ、こういう縦長の画面では穏やかな自然のなか時間はゆったり流れており、心も体も深く安まる。

英一蝶(1652~1725)のお気に入りの絵‘雨宿図屏風’(7/10まで展示)は左奥の角っこのところにある。‘一蝶リターンズ’(09年 板橋区美)以来だから2年ぶり。急に雨に遭遇し武士も町人も農夫もみなあわてて雨宿り。ありふれた光景を一蝶は温かい眼差しで描いている。

今回想定外の収穫は1階の刀や鍔の部屋に展示してあった刀‘相州正宗(観世正宗)’。やっとみれた。見事な沸(にえ)の煌きに息を呑んでみていた。展示は6/5で終了。

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2011.06.05

東博浮世絵エンターテイメント! 清長・歌麿・北斎・広重

2751_2     鳥居清長の‘美南見十二候 六月’(江戸時代 18世紀)

2754_2           喜多川歌麿の‘娘日時計・巳ノ刻’(18世紀)

2752_2     葛飾北斎の‘牡丹に蝶’(19世紀)

2753_2            歌川広重の‘名所江戸百景・王子不動之瀧’(1857年)

現在、東博の本館浮世絵コーナーでみられる作品は6/26までの展示。数はいつものように30点くらい。この平常展に通いつめてもう7年になる。展示期間は約1ヶ月だから年間で10回程度。すると一年に300点。累計すると2000点近くの浮世絵版画や肉筆画をみたことになる。でも、このコーナーはもういいやという気にならない。

HPで展示期間と作品を定点観測しているのは、ここのコレクションが底なし沼だから。ずっと追っかけている喜多川歌麿(1753~1806)の作品でもまだ済みマークがつかないし、新規の絵でもサプライズが度々ある。今は照明の当て方に工夫がなされているから以前とちがって細部までよくみえ、浮世絵がすごく身近になった感じ。

鳥居清長(1752~1815)の‘美南見十二候 六月’のなかに一人はっとする女がいる。右から二人目はこちらに顔をみせない。浮世絵に登場する女で全く後ろ向きというのは極めて珍しい。マネの‘鉄道’に描かれた列車をみている少女が目の前をよぎった。

平成館で行われている‘写楽展’で絶品の歌麿をみて、またここで顔や鼻筋の輪郭線を消した‘娘日時計’の‘巳の刻’と‘申の刻’がみれるのだから、歌麿好きにとってはたまらない一日となった。髪の毛一本々を緻密に描き分ける技量をみると歌麿は本当にすごい絵師だなと思う。

葛飾北斎(1760~1849)は花鳥画が2点、蛙がどこにいるのか見つけるのに苦労する‘朝顔に蛙’と蝶の羽と花びらが風になびく光景が画面に生命力を与えている‘牡丹と蝶’。4点ある歌川広重(1797~1858)の‘名所江戸百景’の前では、芦雪の瀧の絵をみたばかりなので深い青が目にしみる‘王子不動之瀧’に敏感に反応した。

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2011.06.04

超一級の‘写楽展’も残り一週間!

2747_2             東洲斎写楽の‘不破が下部浮世又兵’(1794年)

2748_2           東洲斎写楽の‘天王寺屋里虹’(1794年)

2749_2           歌川豊国の‘役者舞台之姿絵 なにわや’(1795年)

2750_2            歌川豊国の‘毛谷村六助’(1799年)

東博で開催中の‘写楽展’(5/1~6/12)はあっというまに1ヶ月がすぎ会期は残り一週間となった。後期(5/24~6/12)に新規の作品が22点でてくるので再度足を運び、これらをまずチェックしそのあと今回奇跡的に揃った大首絵のベスト28点(拙ブログ5/12)や二期以降の作品、そして豊国の役者絵をもう一度目に焼きつけた。

写楽が大首絵のあとに描いた全身像の役者絵で惹かれているのはあまりなく、片手ほど。その一つが二代目嵐龍蔵が演じる‘不破が下部浮世又兵’(東博)。口をきりっとむすび足を大きくあけて立つ姿が決まっている。視線が向かうのが腰のあたりでひろげる大きな手。鬼次の奴江戸兵衛のあのヤモリみたいな手とよく似ている。

‘天王寺屋里虹’の題がついた‘二代目山下金作の大内屋仲居おかね’(大英博物館)は95年にあった回顧展でも出品されたが、またまた魅了された。なにか心配事があるのか憂鬱そうな顔をしているので一度みたら忘れない。2回目に描いた大首絵のなかではこれと3年前にもベルギー王立美からやってきた‘とら屋虎丸’が最も印象深い。

歌川豊国(5/13)をまたじっくり楽しんだ。豊国の男の役者絵の特徴は目がとてもキツイこと。だからいつもドキッとする。クセがありすぎる目なのでみるからに性格が悪そうな感じ。豊国は高慢な男だったといわれているが、つい自分の気持ちがでてしまうのかもしれない。

写楽の奴江戸兵衛はいかにも悪党風情だが、豊国の描く‘なにわや’(ベルリン国立アジア美)や‘毛谷村六助’(東博)は根性が曲がっていて人から嫌がられるタイプの人間。今でも、こういう不機嫌さを全面にだした人物とたまに会うことがある。とくに‘毛谷村六助’には強い存在感を感じる。

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2011.06.03

アドレナリンがどばっとでる‘歌川国芳展’!

2744_2     ‘源頼朝富士牧狩之図’(1839~41年)

2745_2     ‘弁慶梵鐘引き上げ’(1844~48年)

2746_2     ‘酒田公時らと妖怪’(1861年)

2743_2     ‘源頼光公館土蜘蛛作妖怪図’(1845年)

太田記念美の特別展‘破天荒の浮世絵師 歌川国芳’(6/1~7/28)を存分に楽しんだ。今年は歌川国芳(1797~1861)の没後150年にあたる。昨年あった府中市美の回顧展もよかったが、この記念展第二弾も浮世絵専門館のブランド力をみせつけるすばらしい内容。開幕2日目で雨が降っているのに開館と同時にどんどん人が入ってくる。

感想を書く前にちょっと注意事項を。ここは10時30分の開館。10時に着いたのに、開いてない!? パニクったが以前も同じ失敗をしたことを思い出し、隣の方をなだめて近くのコーヒー店で時間をつぶすはめに。

この回顧展は前期(6/1~6/26)と後期(7/1~7/28)で作品はがらっと入れ替わる。後期の料金(1000円)は半券をみせると100円引き。前半の作品は武者絵や妖怪画でおよそ110点、そして後半は戯画・洋風画が150点。国芳は好きな浮世絵師なので初見の絵に出会うとアドレナリンがどっとでてくる。だから、見終わったあとは興奮状態がしばらくおさまらなかった。

長いことみていたのが‘源頼朝富士牧狩之図’。富士山をバックに広々とした山野で行われる猪狩りの場面を巧みな構図と生き生きとした動感描写でみせてくれる。左の坂から必死の形相をした大きな猪が突進してくる。上をみると猪に跳ね飛ばされた男が宙に舞う。この戯画チックな描写を夢中になってみた。

弁慶が琵琶湖から梵鐘を引き上げる絵は対象の大小対比に目が点になる。長沢芦雪の絵よりもっと大小のコントラストを効かせている。画面の左に琵琶湖が描かれているが、遠くに小さな小さな帆がみえる(拡大で)。これをわざわざ描き込むところが国芳のすごいところ。是非ご自分の目で。

初期に描かれた武者絵はぐっと惹きこまれるのがいくつもでている。長くみていたのは鯉をしとめる鬼若丸。複数の人物が画面いっぱいに大きく描かれたものでお気に入りは酒田公時ら3人が囲碁をしている絵。右の酒田公時は左手で茶くみ小姓の口を大きくあけて遊んでいる。‘い、痛い!や、やめてくださいよ、公時さま’。対局者の源次綱もこれまたろくろっ首をおもちゃ扱い。

‘源頼光公館土蜘蛛作妖怪図’は元祖政治諷刺漫画。庶民の元気を奪う過度の奢侈品禁止策を推し進める‘天保の改革’をこういう戯画で痛烈に諷刺している。首謀者の水野忠邦は右から二番目の卜部季武。それにしても国芳は度胸がある。

後期ももちろん出動する。鑑賞のあと購入した図録がスグレもの。図版の色の出方、構成、論考、どれもいい。お宝の図録になりそう。

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2011.06.02

期待値半分の‘パウル・クレー展’!

2740_2     ‘花ひらいて’(1934年)

2739_2     ‘なおしている&マネキン’(1940年)

2742_2         ‘E.附近の風景(バイエルンにて)’(1921年)

2741_2         ‘人形劇場’(1923年) 

5/31から東近美で開幕した‘パウル・クレー展’(7/31まで)は期待値の半分だった。ズバリ!06年川村記念美であった回顧展(拙ブログ06/7/4)より満足度は下回る。東近美のことだから、ベルンのパウル・クレー・センターからいい作品をドドッともってきてくれるものと期待していたが、あてがはずれた。

パウル・クレー・センターは未訪問なのでここのコレクションの全貌はつかめてないが、手元にある本に載っているものや1993年愛知県美で体験した‘クレー展’の出品作をみると、こんなものではないだろう。

展覧会の切り口である‘クレー(1879~1940)の作品がどのように作られたか’なんてことは専門家の美術研究会でやればいいことで、普通の美術ファンにみせる回顧展だったら魅力ある作品をもっと集めてきてよと大きな声でいいたい。伝統と格式のある美術館なのだから、西洋美やこのところホームランを連発している国立新美に見劣りするような展覧会をやってはファンの気持ちは離れる。

今回の収穫は‘花ひらいて’。これはすばらしい。昨年世田谷美でコレクション展が開催されたスイスのヴィンタートゥーア美の所蔵だが、なにかの本に載っていたことを思い出し夢中になってみた。隣に展示してある東近美蔵の‘花ひらく木’と同じタイプの絵だが、ふた回りくらい大きくそのチェス盤を連想させる赤や青などカラフルな色面の集まりはリズミカルな音楽を届けてくれる。

大きい絵はやはり見ごたえがあるのに今回はこのクラスのものはほかに2点しかなく、大半は小さな作品。クレーの絵は小さいものが多いことはわかっているが、もう少し大きな絵がみたい。チラシに使われている‘なおしている&マネキン’はこのなかでは大きいほう。もとは一枚の絵だったものが二つにカットされ別の作品になっている。角っぽい色面で平板な画面を構成する作品ではもうひとつ、太い黒の線で縁どられた赤の色面が輝いている‘教会’に足がとまった。

クレーの作品ではっとするのは画面にキュビストのコラージュ作品のようにアルファベットの文字や矢印などの記号が登場すること。‘E.附近の風景’では木のシルエットに囲まれてEが黒く刻まれている。基調色の緑と青、赤と色数は少ないがその色には動きがあり、生き生きとした風景をみているよう。また、背景が黒の絵が好きなので細長いピンクや紫の線が美しく浮き上がる‘人形劇場’の前に長くいた。

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2011.06.01

アートに乾杯! 芦雪の光の表現

2737_2                  長沢芦雪の‘山家寒月図’(18世紀)

2738_2             長沢芦雪の‘月に郭公図’(18世紀)

2736_2     歌川広重の‘東海道五十三次 三島’(1833年)

2735_2     歌川広重の‘木曾海道六十九次 宮ノ越’(1835~39年)

長沢芦雪(1754~1799)の作品を15年くらい前展覧会でみたとき、強く印象付けられたのが丹頂鶴が富士山を背にしてグライダーのように飛んでいく絵(拙ブログ5/22)と月と雲がぼやけている‘月に郭公図’(展示は終了 京都・高津古文文化会館)。

芦雪というと‘富士越鶴図’のようなトリッキーな構図を生み出す前衛的なアーティストをすぐイメージするが、一方でこの奇才は光の表現にも関心をよせ、日本人の琴線にふれる輪郭のぼやけた叙情性あふれる山水画も描き出した。

初見の‘山家寒月図’(6/5まで展示、神戸・香雪美)に大変魅了された。視線は下の茅葺屋根の家から次は後ろの道、そしてV字の形をなす二つの山にみえる梅の木や松とだんだん上にあがっていく。墨の濃淡表現が心地よく、大きなもやっとした月に映しだされる松のシルエットと梅の細い枝は深い情趣につつまれている。

‘月に郭公図’でおもしろいのは月や雲の輪郭がもやっとしているのに対し、郭公は下からの視線で羽や口ばしがはっきり描かれているところ。こういう風に焦点がはっきり合っている対象と焦点のずれているものを画面のなかで構成するやり方はとても革新的。この写真のような描き方はコローの‘モルトフォンテーヌの思い出’(1864年 08/4/2)の木にもみられるが、芦雪はこれより60年くらい前に行っていた。

影とシルエットがでてくる浮世絵ですぐ思いつくのは歌川広重(1797~1858)の東海道の‘三島’と木曾海道の‘宮ノ越’。‘三島’は青と墨2色の見事なグラデーションにより奥行きのある空間が生まれており、絵にすっと入っていける感じ。朝霧のなか手前に向かってくる駕籠や馬はこれから江戸を目指すところ。

‘宮ノ越’は遠景にみえる人物のシルエットと手前の黒い木や家路につく父母と娘を対比させる描き方がなんともいい。木曾街道にはもうひとつシルエット表現の傑作がある。それは橋を渡る旅人がシルエットになった‘長久保’。芦雪と広重の温もりのある詩心にはいつも感服させられる。

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