‘写楽展’のビッグなオマケ! 歌川豊国
歌川豊国の‘役者舞台之姿絵 とらや’(大英博)
歌川豊国の‘役者舞台之姿絵 かうらいや’(東博)
東洲斎写楽の‘楠正成が女房(左)&相模次郎(右)’(ベルギー王立美)
‘写楽展’に公開されている作品287点のうち写楽作品はおよそ170点。この中には絵としては同じものだが、摺りの状態の違うものがあるから絵自体の数としては140点ほど。
寛政6年(1794年)5月に28枚の革新的な役者大首絵でデビューした写楽が浮世絵界から姿を消すまでの10ヶ月の間に制作した役者絵は145点。今回東博の優秀な学芸員がおおいに汗を流してくれたお陰で、皆写楽通になれる。
心を奪われるのは写楽の絵だけではない。もう2人の絵師についてもすばらしい絵が目を楽しませてくれる。それは歌川豊国と喜多川歌麿。豊国の絵は28点ある。北斎や春信などビッグな浮世絵師の回顧展をいくつも体験したが、まだ残っているのが豊国と歌麿。歌麿については、まとまった回顧展には遭遇しないが海外の美術館の里帰り展などで追っかけ画を含め名品に会う機会があるので、達成感はそこそこのところまできている。
これに対し、豊国は期待値の3割くらい。だから、今回のようにドドっとでてくると夢中になってしまう。一番の収穫は大首絵で写楽に奪われた人気を奪い返した‘役者舞台之姿絵シリーズ’が18点もみれたこと。そのなかでお気に入りは‘とらや’(大英博)と‘かうらいや’(東博)。‘とらや’は日本にあるものはみたが、この大英博のものは摺りの状態がとてもいいので、思わず足がとまった。カッコいい姿に胸がスカッとする。当時の江戸の人々も同じように惹きこまれたにちがいない。
写楽のデビュー作以降の作品でグッとくるのは少なく、好みはやはり豊国のほう。ベルギーからやってきた2点は太田記念美の展覧会にも登場した。これはともに世界に1点しかない。写楽が最後のころに描いた相撲絵は95年あった回顧展ではじめてみていっぺんに好きになった。この大童山をみるたびに元横綱の若乃花のお兄ちゃんを思い出す。
写楽のもうひとりのライバルである勝川春英は‘男山御江戸盤石’の三立目の暫に登場する2人を画面いっぱいに描いたもの(平木浮世絵美)と‘大童山の豆まき’(相撲博物館)が印象深い。
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