期待値を大きく上回る‘白洲正子 神と仏、自然への祈り’展!
‘女神坐像’(重文 平安時代 9世紀)
‘白洲正子 神と仏、自然への祈り’展(3/19~5/8)をみるため、世田谷美へ足を運んだ。当初この展覧会は鑑賞することにしていたのに、チラシに載った展示作品をみて気が変わり今回はパスでもいいかなと思っていた。
が、3.11の大地震のため美術館めぐりの計画が大きく狂ってきた。開催中だった展覧会や開催の決まっていたものの多くが休館になったり延期になったりしているのである。そのため、急遽開館中の世田谷美を訪問することになった。ここは到着するまで随分時間がかかる。用賀駅から出ているバスは30分に1本、タイミングが悪いと長く待つはめになる。今日はその悪い日。交番で地図をもらい歩くことにした。
この特別展は白洲正子の生誕100年を記念するもの。といっても、白洲正子の眼を通して日本美術を深くみようなんて考えははじめからなく、いつものスタイルで思いは追っかけ作品を一つでも二つでも眼のなかにおさめることだけ。だから、この大変な目利きが書いた紀行文を立ち止まって読むことはせず、気楽にみてまわった。
感心するのは作品の見せ方。この演出はこの展覧会に携わった人たちのセンスの良さを物語っており、白洲正子の美に対する豊かな感性と自然や神仏へむかう心情をよくくみとり、仏像、絵画、能面などを印象深く見せてくれる。いい展覧会を体験していると思わせるのはとにかく作品の内容がいいから。ズバリ、東博で行われる展覧会となんらかわらない一級の展覧会である。見てのお楽しみ!満載。
再会したかったのは大阪の金剛寺にある‘日月山水図屏風’。3,4年前あったサントリーの屏風展にも出品されていた。これは右隻のほう。じっくりみているうちに加山又造の絵(拙ブログ06/3/11、07/2/20)が重なってきた。又造はこの山水図を参考にしていることは知っていたが、よくみるとこの絵に描かれているモチーフをいくつもとりこんでいることがわかった。左上にみられる金箔や銀箔の小さな四角がそうだし、複雑な波濤フォルムをベースにしこれをさらに洗練させ立体的な波の形に昇華させたのは間違いない。
参詣曼荼羅図が数多くでていた。そのなかで色がよく残り、画面の隅から隅まで楽しめたのが‘長命寺参詣曼荼羅図’。右のほうには大勢の参拝客にまじって犬や鶏がみえ、左には蹴鞠に興じる人たちがいる。そして、眼が点になるのが連続して綿密に描かれている波の線。こういう曼荼羅図だと眼が疲れないし飽きない。
今回の追っかけ作品は‘女神坐像’(京都・松尾大社)と‘狗児’(高山寺)。量感があり存在感いっぱいの‘女神坐像’で釘付けになるのが長い髪。この黒髪パワーにたじたじといったところ。高山寺にある狗児の木彫は前々から気になっていたが、本物はやはりよかった。いっぺんに魅せられた。
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