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2011.02.26

アートに乾杯! カラヴァッジョ vs ベラスケス

2417_3        カラヴァッジョの‘キリストの笞打ち’(1607年)

2415_2       ベラスケスの‘教皇インノケンティウス10世’(1649~50年)

2416_2     カラヴァッジョの‘エジプト逃避途上の休息’(1595年)

2414_2     ベラスケスの‘鏡を見るヴィーナス’(1649~51年)

ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノとバロック絵画を生み出したルーベンスの作品はプラドへ行くとドドーンとみることできるから、二人が好きな方にとってここは格別の美術館ということになるだろう。じゃあー、ティツィアーノ、ルーベンスはここでしか楽しめないかというとそうでもない。ルーヴル、ロンドンのナショナルギャラリーを訪問すると数々の名画が出迎えてくれる。

これにたいし、グレコ、ベラスケス、ゴヤの絵は代表作の大半がプラドにあるから、ここへ来ないと大きな満足は得られない。幸いにも4回体験したから、所蔵作はほとんどみたといえるくらいになった。でも、作品を多くみればそれですぐ画家に近づけるというものでもない。画家が生み出した芸術的な価値を本当に感じとるにはほかの画家の作品もあわせてみないとダメだということが、ベラスケス(1599~1660)の絵でよくわかった。

1年前、ローマのドーリア・パンフィーリ美で‘教皇インノケンティウス10世’(拙ブログ10/3/4)のすばらしい肖像をみて、ベラスケスに対する見方ががらっと変わった。この教皇の肖像にはフェリペ4世とは違い驚くような現実感がある。ベラスケスはスペイン王室の宮廷画家としてローマにやってきているが、この気難しそうな顔をした教皇を自分がつかえる国王のように理想化して描く必要はなく、道化を描いたときと同じ気分で筆を走らせたのかもしれない。このリアリズムをみたら、ベラスケスのすごさがいっぺんでわかる。教皇は絵をみて‘正直すぎる’と言ったそうだ。

この絵は5月にみたカラヴァッジョ(1571~1610)の‘キリストの笞打ち’(10/5/15、ナポリ・カポディモンテ美)と激しく響きあった。教皇のクセのある顔と画面左でキリストを笞打とうとする男の見るからに暴力的な表情がじつによく似ている。ベラスケスの筆触はカラヴァッジョに較べ少し粗いが、二人は生身の人間の姿と内面をともに比類ないリアルさで描いている。

ベラスケスはカラヴァッジョの生まれ変わりではないかと思わせる絵がもう1点ある。それは昨年11月久しぶりに対面した‘鏡を見るヴィーナス’(ロンドン・ナショナル・ギャラリー、09/2/10)。このまばゆいばかりの肌の輝きをもつヴィーナスの足のふくらはぎあたりを口あんぐりでみていたら、ドーリア・パンフィーリで会ったカラヴァッジョの‘エジプト逃避途上の休息’(10/3/4)が目の前をよぎった。この絵に登場するヴァイオリンを弾く天使のふくらはぎの描写がヴィーナスのそれとそっくりなのである。

2度のイタリア旅行によりベラスケスはヴェネツィア派から光と色彩効果を学ぶとともに、ローマではカラヴァッジョの絵も夢中になってみたにちがいない。そうした先行例を吸収したベラスケスは独自の画風を生み出し‘酔っぱらいたち’などの風俗神話画や肖像画、そして裸婦像を描いた。ベラスケスがカラヴァッジョ同様、特別な画家に思えてきた。

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