重点鑑賞画にしていたヴァン・ダイク、プッサン、ラ・トゥール!
ラ・トゥールの‘ハーディガーディを弾く盲人’(1610~30年)
プラド用に準備したリカバリーリストのなかで期待値の高い絵には◎がつけてある。今日はその絵のことを。
プラドは西洋絵画の超ブランド美術館だから、ここの所蔵品は美術本や画集によくでてくる。ヴァン・ダイク(1599~1641)の宗教画、‘茨の冠のキリスト’は手元の週間‘グレート・アーティスト’(95年8月)にちゃんと載っているのに、4年前はティツィアーノやボスの絵に関心が集中していたため、不覚にも見逃した作品。だから、リカバリーの上位にあげていた。
これは過去みたヴァン・ダイクの宗教画のなかでは一番いいかもしれない。描かれたのは画家が20歳のころ。キリストと周りにいる人物の逞しい肉体表現はティツィアーノやルーベンスから強く影響をうけたことを伺わせる。そして、画面構成や明暗表現はカラヴァッジョの絵を彷彿とさせる。横に同じころ描かれた‘キリストの逮捕’があったが、これより‘茨の冠’のほうに断然魅せられた。一生の思い出になりそう。
プッサン(1594~1665)はリストに5点載せていた。そのうち、未見が2点、再会を果たしたいのが3点。成果はこれにプラスαが3点加わり、8点。幸運にもプッサンコレクション全部を一挙にみることができた。プッサンもじつはヴァン・ダイク同様、前回は気持ちが向かってなかった。
プッサンの作品にググッと近づいたのは08年のルーヴル訪問から。このあと、メトロポリタンで偶然‘プッサン展’(拙ブログ08/5/9)に遭遇し、完全に嵌ってしまった。この大回顧展でみた油彩44点にプラド蔵が3点あった。で、あのときの感動を再生産したくて‘廃墟のある風景’、‘建物のある風景’、‘聖ヒエロニムスのいる風景’と会うのを楽しみにしていた。
‘廃墟のある風景’をみていると古代ローマの田園にタイムスリップしたような気分になる。手前の左右に丁寧に描かれた木々は開けられた窓のカーテンのようにみえ、二人の人物の向こうに広がる荘重な風景をみせてくれる。青い空にたなびく白い雲の下、小高い丘に隠れるように建つ神殿風の建物は彫像のある石棺と安定と調和のハーモニーを奏でるかのよう。
お目当ての‘パルナッソス山’は期待通りのいい絵だった。文芸の聖地、パルナッソス山に集まってきた9人の詩人のなかで最も印象深いのが右の青い衣を着た人物。右手を前に出し頭を横にむける姿がカッコいい。心に沁みたのがそのやわらかい色彩と宙を舞うキューピッドの後ろにみえる夕焼けを思わせる雲の輝き。この絵をみたので、プッサンは一休みできる。
カラヴァッジョとともに全点鑑賞を夢見ているラ・トゥール(1593~1652)は2点あった。額のしわや楽器の木肌の豊かな質感描写に魅せられる‘ハーディガーディを弾く盲人’と赤の衣が目に焼きつく‘手紙を読む聖ヒエロニムス’。盲人の絵しか想定してなかったので聖ヒエロニムスのオマケはとても嬉しい。
| 固定リンク
コメント
西洋絵画なので、ヨーロッパの超一級の美術館が所蔵しているのは当然なのかもしれませんが、
毎日これでもかと名画とよばれる作品が紹介され、なんだかクラクラしてしまいます。
先のフランス、イギリスの時よりも、私には強烈なインパクトある作品の数々です。
投稿: licoluise | 2011.02.14 00:40
to licoluiseさん
プラドは魅力いっぱいの美術館です。
ボスの絵が沢山みれますし、ヴェネツィ
ア派、ルーベンス、プッサン、ロランが
充実し、そのうえここでしかみれない
グレコ、ベラスケス、ゴヤがたっぷりあ
るのですから、もう感動の袋ははちきれ
そうです。
投稿: いづつや | 2011.02.14 17:28