煌く色彩が心を虜にさせる‘三代徳田八十吉展’!
‘耀彩花器’(2003年)
横浜そごう美で期待の‘三代徳田八十吉展’(1/2~2/13)をみてきた。今年の展覧会鑑賞はこのやきもの展からスタート。
徳田八十吉(1933~2009)が2年前亡くなったときは、‘まだ75歳なのになぜまた、、、’という感じでちょっと信じられなかった。図録を読んで07年末、脳梗塞で倒れて左半身麻痺になっていたことがわかった。これからもっともっと活躍する陶芸界の中心人物と思っていたから残念でならなかった。
が、作品には大変魅せられていたものの、体験したのは20数点しかないのでこの陶芸家との距離はだいぶあった。だから、ここ5年くらい回顧展に遭遇することを願い続けてきた。追悼展は想定外だが、やっと実現したのでとても嬉しい。
感想を書く前に案内しておくと、この展覧会はこのあと次の美術館に巡回する。
・兵庫陶芸美(3/12~5/29)
・高松市美(6/4~7/10)
・MOA美(7/16~9/19)
・茨城県陶芸美(9/23~11/27)
・小松市博ほか(12/3~1/29)
展示されているのは三代徳田八十吉の作品72点、プラス初代&二代8点、古九谷10点&吉田屋3点。八十吉の初期の作品から並んでいるので、作風の変遷がよくわかる。入ってすぐのところに展示してあるのが‘耀彩花器’。いきなり、これぞ徳田八十吉!の煌く色彩グラデーション!縦にのびる色の帯は真ん中がうす青で右にむかって紫がかり、深い青に諧調を変えていく。左へは薄緑、橙黄色、そして明るい黄色に変わる。透明感と深みのある見事なグラデーションに目が釘付けになる。
鉢の場合、器面がフラットなので、花器や壺より抽象絵画をみている感じが強くなる。そのイメージは壮大な宇宙。‘黎明’はいくつもヴァリエーションがあり、これは09年の作。隣には91年につくられたほぼ同じ色彩模様のものがあるが、最新作のほうが色調がすこし暗く日の出をより強く感じさせる色釉になっている。
色の組み合わせは古九谷5彩のうち、ガラス成分のない赤をのぞいた紺、紫、緑、黄の4彩。大半の作品はこの4色の輝きだが、紺と紫のグラデーションにもすごく惹かれる。とくに痺れたのは‘連菱’。鉢の中央に太い濃紺の線が横にのび、そのまわりを底から湧き出てくるように菱文が広がる様はとても神秘的。
こうした絵画的な色彩感覚は‘十八稜壺’では少し弱まり、表面に凹凸ができた壺のフォルムのよさと紺のグラデーションの色彩美が渾然一体となって見る者の心を揺すぶる。また、波状のしのぎがみられる‘碧明耀彩曲文壺’(2004年)や‘九谷三彩壺’
(2006年)のゆらぎイメージもなかなかいい。
長年の思いの丈が叶い、言うことなし。満足度200%の展覧会だった。
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