クリーンヒット! サントリー美の‘蔦屋重三郎’展
サントリー美で昨日からはじまった‘蔦屋重三郎’展(11/3~12/19)をみてきた。副題は‘歌麿・写楽の仕掛け人’とある。浮世絵、とくに歌麿や写楽の絵に関心がいきだすと、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)というやり手出版プロデューサーにも興味がわいてくる。
2年前、太田記念美が‘蜀山人 大田南畝’展(拙ブログ08/6/8)をやり、今度はサントリー美が蔦屋重三郎(1750~97)に光を当ててくれた。美術館同士のとてもいいコラボレーションだと思う。来年は東博で大写楽展(4/5~5/15)があるから、この時期蔦屋重三郎の展覧会を体験できるのは有難い。
蔦重が版元としてどれだけいい仕事をしたかはずらっと揃った出版物をみるとすぐわかる。この男にはどの絵師がとびぬけた才能をもっているかを見抜く能力があり、絵師の才能を新機軸の絵や本にして売りだし、江戸の人々をおおいに楽しませた。TSUTAYAの創業者が‘今蔦重’になりたいと思ったのも無理はない。
蔦重に関することは展覧会をみて図録に目を通したり、‘お気に入り本’に載せている松木寛著‘蔦屋重三郎’(02年9月、講談社学術文庫)や野口武彦著‘蜀山残雨’(03年12月、新潮社)、沓掛良彦著‘大田南畝’(07年3月、ミネルヴァ書房)などを読むと理解が一層進むことは請け合い。
さて、お目当ての絵のことである。3年前栃木市で見つかった肉筆画‘女達磨図’を幸運にも東京でみることができた。赤い着物の太い墨の輪郭線が達磨をすぐイメージさせる。着せ替え人形ではないが達磨の顔を女の顔にとっかえた感じである。これがみれたので次は今年7月28日の朝日新聞に載った新発見の肉筆2点、‘三福神の相撲図’と‘鍾馗図’。これも栃木県内で発見されている。栃木市は年内にも一般公開するようだが、期待が高まる。
歌麿の狂歌絵本の大半は蔦重が版元になっているが、とくに‘画本虫撰’、‘潮干のつと’、‘百千鳥’がすばらしい。虫や花鳥、貝をみる歌麿の観察力と緻密な写生力にはほとほと感心させられる。この画力には北斎も敵わない。‘百千鳥’にみられる鳥の羽の質感描写を夢中になってみた。
蔦重が歌麿のあとタッグを組んだのが写楽。大首絵という斬新な役者絵でライバルの歌川豊国や勝川春英をねじふせた。期間中、写楽は大首絵15点を含む22点がでてくる。そのなかで‘山谷の肴屋五郎兵衛’と‘大童山土俵入り’に惹かれている。この大童山、誰かに似てない?そう若乃花のお兄ちゃん!これをはじめてみたとき、すぐお兄ちゃんが頭をよぎった。
展示替えがあるのでまた出動することになりそう。
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