アートに乾杯! 微笑みの美学 Ⅳ
木喰の‘地蔵菩薩像’(日本民藝館)
村田陶えんの陶彫‘喜悦鬼’
日本民藝館へ出かけると木喰(1718~1810)の‘地蔵菩薩像’と‘自刻像’に度々お目にかかる。この‘微笑仏’の頬がぷくっとふくれた笑顔をみるたびに、笑いを心のエンジンにして生きていかなくてはいけないなと思う。
木喰仏は民藝館以外の展覧会では3回体験した。06年東博であった‘仏像展’(拙ブログ06/10/12)、08年横浜そごうの回顧展(08/7/3)、そして東博で開催された‘対決 巨匠たちの日本美術ー円空vs木喰’。お陰で沢山の‘微笑仏’とお友達になった。木喰の仏像は丸くてその笑いがとても親しみやすいのでつい友達感覚になってしまう。
円空(1632~1695)の‘十一面観音菩薩’と対面したのは5年前横浜そごうであった回顧展(05/6/7)。この観音菩薩の微笑みに心が洗われた。糸目の微笑みがここにもあそこにもあったが、この菩薩の笑みが格別によかった。木喰の仏像は男性の笑いだが、円空仏は女性の笑いそのものでやさしさに溢れている。
木喰の‘微笑仏’はとてもあたたかい感じ。だから、それまでかかえていた重い気持ちが会ったとたん吹っ飛んでなくなる。これに対し、円空の仏は形が粗削りで角々しており、顔の彫りは浅くその微笑みは消えてなくなりそうな感じ。この小さな笑みが心を揺すぶる。声をかけてくれはしないが、その顔は‘元気出しなさいね!’と無言で励ましてくれているよう。ありがたい仏像である。
七福神の一人、布袋さんの置物はいろいろみたが、三の丸尚蔵館であった‘福やござれ’展(07年)にあったものが忘れられない。これは備前焼のつくりものだが、これほど笑顔がはじける布袋さんはこれまでみたことがない。家に持ち帰りたくなる。やはり皇室にあるものは見慣れた布袋像とは一味も二味もちがう。これだから、尚蔵館通いはやめられない。
京焼陶工の村田陶えん(1905~2002)の回顧展が04年10月日本橋の高島屋であった。思い出に残るとてもいい陶器が沢山あったのだが、立ち尽くしてみていたのが陶彫の‘喜悦鬼’。鬼が前に置かれた財宝をみながら大笑いしている。夢でもいいから、大金を手に入れてこの鬼のように腹をかかえて笑ってみたい!
‘微笑みの美学’はこれで終り。
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