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2010.07.14

これぞ浮世絵エンターテイメント!‘北斎とその時代展’

1728_2     ‘富嶽三十六景・神奈川沖浪裏’

1729_2     ‘富嶽三十六景・駿州江尻’

1731_2     ‘富嶽三十六景・隅田川関屋の里’

1730_2     ‘諸国名橋奇覧 飛越の堺つりはし’

太田記念美で行われている特別展‘生誕250年記念 北斎とその時代’の後期(7/1~7/25)をみてきた。前期(拙ブログ6/21)とは作品が全部替わるスッキリ展示。北斎は‘富嶽三十六景’(全50点)、‘諸国瀧廻り’(全8点)、‘諸国名橋奇覧’(全6点)、‘富嶽百景’(2点)、肉筆画(2点)の68点。ほかに広重や北斎派の作品がある。

‘富嶽三十六景’は浮世絵のクラシックだから、何度見ても感激する。魅了されるところはいろいろあるが、最もすごいなと思うのはその比類のない構想力と動感描写。今回はこれに焦点を当て傑作をピックアップしてみた。

‘神奈川沖浪裏’は浮世絵風景画の代名詞ともいうべき絵。小舟に襲いかかる波頭は海の怪物のようにみえ、荒れる海の怖さを思いっきり味合わされるような感じ。真ん中に描かれた富士の静かで美しい姿と文様化された波しぶきの荒々しいフォルムが破綻なく融け合い、この絵に高い芸術性を与えている。

びゅーびゅー吹く風を200%感じさせるのが‘駿州江尻’。広重も‘東海道五十三次之内・四日市’で風の情景をとらえた見事な絵を描いているが、菅笠を飛ばされた男はこちら向きになっているので、どこか親しみ覚え絵の中に入りその笠を一緒にとってやりたいような気持ちになる。

これに対し、北斎の‘江尻’に吹く強風に対してはそんな気にはならない。S字になった道にいる男たちが笠を飛ばされないように手で押さえ、腰を屈めているのをみるだけで心が萎え、体も緊張してしまう。それだけ北斎の風の描写には‘神奈川沖浪裏’同様、緊迫感があり、人の感情移入も阻むような激しさがある。

‘富嶽三十六景’には馬がでてくる絵が8点ある。そのなかで馬が走っているのは‘隅田川関屋の里’だけ。この絵はぱっと見ると馬がすごいスピードで疾走しているように感じる。一番先頭を走る馬は手前の2頭より小さく描いてあるから、もうあそこまで行ったのかと思う。

手前の2頭をみると頭の動きは違うが前足、後ろ足はまったく同じに描かれている。そして馬に乗っている男の体も着物も笠もほとんど同じ。これは映画のストップモーションのテクニック。北斎は道をS字にして奥行きをつくり、同じ馬と人物のフォルムをストップモーションで移動させ、観る者に人馬のスピードを感じさせているのである。

‘諸国名橋奇覧 飛越の堺つりはし’(05/6/11)はお気に入りの絵。このつりはしを渡っている男二人はさぞかし怖くて心細いだろうなと思うのは二人が向こう向きで描かれているから。こっちを向いているとそれほど怖さを感じないかもしれない。

自然の激しい動きを表現するとき、北斎は人の感情を絵からシャットアウトするのに、人物が馬で走ったり、こういう危険なつりはしをわたったりするときは観る者を絵の中に誘い込む。

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