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2010.07.28

‘ブリューゲル版画の世界’は寓意と怪奇の二重奏!

1782    ‘冥府へ下るキリスト’

1781    ‘聖アントニウスの誘惑’

1780    ‘忍耐’

1779    ‘大きな魚は小さな魚を食う’

Bunkamuraで開催中の‘ブリューゲル版画の世界’(7/17~8/29)を200%楽しんだ。会期は44日(開催中は無休)。こういう短期間の展覧会は西洋美術の展覧会としては珍しい。作品は全部で150点、3点を除きすべてベルギー王立図書館の所蔵。
40日ちょっとしか貸し出してもらえなかったのはこのコレクションがとても価値のあるものでお宝扱いになっているからだろう。

ブリューゲル(1525/30~1569)が若いころ制作した版画は画集で数点知っていたが、本物を体験するのははじめて。とにかく貴重な鑑賞機会である。画題は風景、聖書の話や宗教的な寓意、7つの罪、7つの徳目、航行する船、道徳教訓、諺、農民の日々の仕事と生活風景、ブリューゲルの作域はとても広い。

モノクロの版画だから、これだけの作品を見続けるのは視覚的にはかなりシンドイ。最初のコーナーにある大風景画では描かれた人物がどこにいるかは画面を上下左右にスキャンしていかないと気づかない。そのうち対象を大きく描いた宗教画がでてくるから、目に落ち着きがでてくる。

でも、ここからは変てこな人間、昆虫、鳥、魚、樹木のお化け、悪魔、怪物がぞくぞく登場してくるから、その形に面食らう。そして、異様な怪奇の世界へ入りたいようなしり込みしたいような二つの気持ちがない交ぜ状態に陥る。でも、ここまできたらボス風の怪奇ワールドにどっぷりつかるしかない。

この展覧会をみる下準備としてボスの絵やブリューゲル自身のボス風の絵をレビューしていた。それを記事にしたのが‘もっと見たいブリューゲル&ボスの名画’。その甲斐があり‘悪女フリート’(拙ブログ7/21)に描かれた口を大きく開けた怪物(地獄の口)が出てくる‘冥府へ下るキリスト’や‘最後の審判’にはすぐ反応した。

チラシに使われている‘聖アントニウスの誘惑’は同じ画題で描いたダリの絵とはまったく違うイメージ。右の樹木のお化けのところにいる聖アントニウスはとても後ろを振り返れないだろう。小舟に顔をのせた怪物のグロテスクさといったらない。大きく開けた口から炎のようにでているのは舌?鼻ピアスをしているのだから、べろピアスもすればよかったのに。右目がチェス盤みたいなのもギョッとする。目につきささった棒の先にある瓶からは煙がもくもく。これ、一体何を表しているの?なんとも幻覚的な絵である。

‘7つの罪’と‘7つの徳目’を描いたシリーズ、そして‘忍耐’が展示されているコーナーが一番目に力が入る。これに色がついていたらかなり変な気持ちになりそう。あまり熱心にみると夢でうなされるかも。長くみていたのが‘7つの罪・大食’と‘忍耐’。‘大食’では‘聖アントニウス’の怪物男が風車人間に変身している。‘忍耐’はボスが描くモティーフが重なってくる。右の樹木人間、左の穴の開いた卵と帽子を被る横向きの男、そして左上の炎につつまれる家々。

‘諺’シリーズにも愉快でおもしろい絵が沢山あった。画集によく載っているのが‘大きな魚は小さい魚を食う’。水面から顔をだしている魚の口をみているとロシアの人形、マトリョーシカを連想した。ほかにも‘盲人が盲人を導けば2人とも穴に落ちる’、‘燃えてる家で自分の体を暖めるエゴイスト’など、‘なるほどね’と思わず立ち止まってみてしまうのもあった。

森女史が監修された図録は充実した内容なので、ブリューゲルやボスを楽しむのにはもってこいの副読本となる。作品といい図録といいすばらしい展覧会だった。Bunkamuraの企画力に拍手!

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コメント

イタリアも大好きですが、北方ルネサンスも本当にいいですね。ボッシュ、ブリューゲル、フアンアイク、デユーラなどなど・・・。こうして書いてるだけでわくわくです。すてきなお写真しっかり拝見してます。

投稿: Baroque | 2010.07.30 23:19

to Baroqueさん
コメントがどういうわけかスパムに入りこんで
おり、返事が遅れてすみません。

北方ルネサンスのボス、ブリューゲルの絵に魅了
されますね。ブリューゲルは風景画にぞっこん
ですが、ボスの影響が強くみられる怪奇的な絵
にも夢中になります。

北のほうは法王のいるローマからだいぶ離れて
いるから、キリスト教の縛りが強くない感じです
ね。表現が奔放でギョッとする形態があちこちに
みられます。こういう絵だと、怖いもの見たさ気分
をどこまで広げたらいいのかと戸惑いさえ覚えま
すね。

投稿: いづつや | 2010.08.04 14:54

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