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2010.06.01

‘伊藤若冲アナザーワールド’に誘われて千葉へ!

1593     ‘花鳥版画・雪竹に錦鶏図’

1596     ‘蓮池図’

1594     ‘樹花鳥獣図屏風’(右隻)


1595     ‘樹花鳥獣図屏風’(左隻)

期待の‘伊藤若冲 アナザーワールド’(5/22~6/27)を千葉市美でみてきた。静岡県近美(拙ブログ5/17)からの巡回なので作品は同じもの(数点異なる)。で、静岡(後期)でみたものはどんどんパスして、このときみれなかったものを中心にみた。前期(5/22~6/6)のプラスαは15点、後期は(6/8~6/27)は19点。目に力をいれるのはこれだけだから、鑑賞時間は40分ほど。

まず、千葉で最もみたかった2点から。昨年滋賀のMIHO MUSEUMであった‘若冲ワンダーランド’(09/10/6)で縁がなかった‘花鳥版画・雪竹に錦鶏図’(平木浮世絵財団、06/8/19)を漸くみることができた。背景の黒地に浮かび上がる錦鶏の美しいこと。真に惚れ惚れする花鳥画である。胸の赤には金色の小さな点が無数にあり、5つくらいの模様で意匠化された羽に見入ってしまう。これは前期だけの展示。おそらく、この展覧会が終わったら4、5年は出てこないと思われるので、お見逃しなく!

モノクロで目を惹いたのはなんといっても‘蓮池図’(重文、大阪・西福寺)。これは千葉だけの展示で会期中出ずっぱり。図版のイメージとは違って、大きな屏風だった。右隻ではすっと立った蓮の花と大きな葉が描かれているのに対し、左隻では花の散った蓮が横にべたっとしている。土色の大きな画面のなかで視線があつまるのは虫に食われて穴の開いた葉だけで、あとはさらっとみてしまうような絵だが、それがかえって何の変哲もない蓮の変化にはふさわしい表現のように思える。

再会したモザイク画の‘樹花鳥獣図屏風’(静岡県美)をじっくり楽しんだ。右隻に登場する動物(23種)でお気に入りは月の輪熊、頭を天に垂直に向けている鹿、水辺にかかる木の枝でブランコ遊びをしている猿。左隻の鳥(35種)では中心にいる鳳凰に釘付けになる。茶色の尾っぽをリズミカルに動かし、白い羽を大きくひろげる鳳凰の姿はじつに優雅で神々しい。そして、水面を泳ぐ鴛鴦の群れにも癒される。

昨年、若冲ワンダーランドの感想記(09/10/8)で、プライス氏蔵の‘鳥獣花木図屏風’を若冲の回顧展に展示するのはふさわしくなく、これからはこの‘樹花鳥獣図’を定番にすべきだと書いたが、これが予想外に早く実現した。6/14から‘象と鯨図屏風’が展示されるから、‘樹花鳥獣図’と一緒にみれるのもありがたい。理想の形に一歩近づいた。

1ヶ月前、朝日新聞にモザイク画の論争に関する記事が載った。若冲が好きな人だったら10人いたら10人、‘鳥獣花木図’が若冲の卓越した技も絵心も全然伝わってこない単なるデザイン画であることはわかると思う。ところが、美術史家の山下氏はなぜか‘鳥獣花木図のほうが樹花鳥獣図より美しい’(ユリイカ09年11月号、若冲特集)と主張している。この人の審美眼はどこか狂っている。若冲がこれほど日本美術のメジャーになり、多くの人が若冲の絵に関心を寄せ、鑑賞しているのに専門家とはとても思えないようなことを言う。まったくあきれ果てる。

朝日の記事では専門家たちは‘全否定する側には与したくない’とか‘若冲がなんらかの形でかかわったと考えるのが自然だ’などと相変わらず煮え切らない議論を続けている。もういい加減、プライス氏に遠慮したような大人の会話はやめて‘鳥獣花木図’は‘伝若冲’とか‘若冲デザイン’にしたらどうか!

‘鳥獣花木図’を誰が描いたかはどうでもいいこと。素直に絵に向かい合って、これは若冲の心が伝わってこない絵だと多くの人が感じるのだから、展示は無しにすべきなのである。若冲は極楽浄土で‘俺は観る者が感動しないこんな下手糞な絵は描いてないぞ!’と顔をしかめているにちがいない。

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