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2010.05.16

大盛況のカラヴァッジョ展 サプライズの‘洗礼者ヨハネ’!

 1523_4        ‘洗礼者ヨハネ’(カンザス・シティ、ネルソン=アトキンズ美)

1524_2     ‘イサクの犠牲’(フィレンツェ、ウフィッツィ美)

1526_2     ‘エマオの晩餐’(ロンドン、ナショナル・ギャラリー)

1525_2     ‘エマオの晩餐’(ミラノ、ブレラ美)

カラヴァッジョ展の図録のお値段は32ユーロ。247頁使って出品作20数点の解説がたっぷりなされている。図版は見開き2頁にわたるものが多く、そしてカラヴァッジョ絵画の特徴である細部の写実描写をみせる部分図が2,3枚ある。ここには展示期間の終わった作品、‘エジプト逃避途上の休息’(ローマ、ドーリア・パンフィーリ美、拙ブログ
3/4)とこれから登場する?‘聖ルチアの埋葬’(シラクーザ、パラッツォ・ベッローモ州立美)も載っている。

不思議なのが展示されたという情報が伝わってこない‘アレクサンドリアの聖カタリナ’(マドリード、ティッセン=ボルミッサ・コレクション)の図版があること。この絵はいつかこの目でと思っているのだが、出品が決まっていたのに何らかの事情でキャンセルになったのかもしれない。逆に図録に載ってないのに展示されていた絵も1点あった。

3階の最後のコーナーに4/4まで‘ボルゲーゼ美展’(東京都美)に出ていた‘洗礼者ヨハネ’(2/15)がひょこっと現れたのである。で、今回ヨハネの絵が4点も揃いことになった。コルシーニ美にある絵は1月出かけた日が休館日で残念な思いをしたが、予想外に早くリカバリーが果たせた。だから嬉しいのだが、隣にあるネルソン=アトキンズのヨハネがサプライズ200%のすばらしい絵なので、コルシーニの絵がかすんでしまった。

これもカポディモンテの‘キリストの笞打ち’と同じく、図版では実感できない堂々たる人物画(縦1.73m、横1.32m)だった。ヨハネの左上から強い光が当たりわき腹のところに腕の暗い影ができている。肌の描写だけでなく腰のまわりにある毛皮の毛一本々はとげとげ感があり、赤い布の折れ曲がり具合もじつにリアル。そして、何よりもヨハネの端正な顔立ちがこの絵の魅力を高めている。米国にあるカラヴァッジョの傑作は‘いかさま師’だけと思っていたが、もう1点あった。

カラヴァッジョの絵でつくづく感心するのが豊かな感情表現。‘解放されたイサク’や‘勝ち誇るアモール’では少年はびっくりするほどの笑顔をみせている。宗教画一色の時代に笑う人物を描くこと自体が革新的なことである。こんなすばらいい笑顔を描く一方で、カラヴァッジョは人間の残虐性や恐怖心をも高い写実力で表現する。‘イサクの犠牲’に登場するイサクは父親のアブラハムに首根っこを押さえつけられて今にも泣き出さんばかりにおびえている。今時こんな行為をしたら少年虐待でアブラハムはすぐ市役所や警察行き。それほどこの絵は真に迫っている。

2点ある‘エマオの晩餐’が一緒にみれるなんて夢のよう。1601年ごろ描かれたロンドンのナショナルギャラリーにある絵は2年前(08/2/6)、その5年後に描かれた2作目は4年前ミラノのブレラ美(09/3/26)でみた。最初のほうが明暗対比がはっきりしていて、テーブルの白い布に静物の濃い影が映り、立っている男の影も後ろの壁にほかの絵よりくっきり描かれている。またキリストの手や右の男の両手を広げる大きな身振りが奥行きのある劇的な空間をつくり出している。

これに対し、ブレラの‘エマオの晩餐’は画面全体が暗く、手前の男の驚きの表情も抑制気味で視線はもっぱら青白い顔をしたキリストにむかう。この絵をブレラでみたときはその深い内面描写に心を打たれた。今回は照明の巧みな演出により、絵が神秘的な光につつまれているような気がした。また、右端の額にしわのある老女をみていたら、ふとジョルジョーネの描いた‘老婆’(4/16)が目の前をよぎった。ひょっとしたら、カラヴァッジョはこのジョルジョーネの風俗画の影響を受けたのかもしれない。

1月ヴァティカン博でみた‘キリストの埋葬’(3/13)や初見の‘聖パウロの回心’(ローマ、オデスカルキ=バルビ・コレクション)の前にも多くの人がいる。カラヴァッジョの宗教画は浮世絵師の鈴木春信が描く見立絵と同じ発想。同時代の人たちが生活そのものの身なりで描かれているから、聖書の一場面もローマで起こっている出来事のように思えてくる。

これでカラヴァッジョ展の感想は終り。この歴史的な大回顧展を体験できたのは生涯の喜び。ミューズに感謝々である。

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