ラファエロのマニエリスム様式とカラヴァッジョの関連性!
ラファエロの‘キリストの変容’(部分)
ラファエロの‘ボルゴの火災’(部分)
カラヴァッジョの‘キリストの埋葬’(部分)
カラヴァッジョの‘キリストの捕縛’(部分)
カラヴァッジョがミケランジェロの絵にかなり影響を受けていたことは代表作の‘聖マタイの召命’におけるキリストの手をみるとよく理解できるが、ミケランジェロ同様ローマでその才能を大きき花開かせたラファエロ(1483~1520)についてはどうだろうか。ラファエロが晩年に描いたとても気になる絵とカラヴァッジョの関連性に少しふれてみたい。
1月、ヴァティカン博の絵画館でラファエロの‘キリストの変容’(拙ブログ3/13)と再会した。以前からこの絵の右にいる少年の表情が頭から離れない。この子が悪魔に憑かれていることはその顔をみるとすぐわかる。落ち着きがなく視線が定まらない表情は気がふれている人間の典型的な特徴である。おもしろいことにこの子を後ろから支えている男も目をむいているから、同じ症状かと見まがう。
この絵はラファエロが亡くなる1,2年前の作。画面の下半分はマニエリスム様式そのものだから、あの聖母子像の画家、ラファエロは晩年、ここまで作風を変えたのか!と戸惑いすら覚える。
もう一点、同じくマニエリスム全開といった絵がある。それはヴァティカン宮殿の‘署名の間’の隣にある‘火災の間’に描かれた‘ボルゴの火災’(3/14)。部分図は右の場面で火を消すため、女たちは叫び声をあげ必死に水をリレーしているところ。女のそばにいる幼児の顔が火災の恐怖でひきつっているのがじつに印象的。
カラヴァッジョが描く人物の顔にはユディットに首を切られる‘ホロフェルネス’(5/15)や‘メドューサ’(2/25)のように思わず顔を背けたくなる強烈なものもあるが、この二つを除けば、普通の人たちの自然な感情表現をそのまま、あるいは抑制気味に描いている。また、男性でも女性でも美形の顔立ちも多い。ところが、全作品を見渡して2点だけ異様な表情をみせる人物がでてくる。
それは‘キリストの埋葬’(3/13)の両手をあげているクレオパのマリアと‘キリストの捕縛’(5/15)の左端で衣をおいて逃げ出す弟子のヨハネ。二人はほかの人物とはまったく異なる表情をみせている。普通の人の顔ではないのである。これはラファエロの‘キリストの変容’にでてくる男の子のように憑かれた顔。気がふれ、錯乱状態にある人間の顔といっていい。
‘キリストの笞打ち’(5/15)に登場する残虐な顔をした男に対しては憎たらしい感情がわきあがってくるものの、これはこれでリアルな人物描写としてちゃんとみれる。だが、こういう気がふれたような人物がいると、なにか落ち着かない。カラヴァッジョは自然主義の画家で反マニエリスムなのだが、一部マニエリスム様式がみえる。これはラファエロの影響のような気がする。
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