ミケランジェロの天井画から霊感を受けたカラヴァッジョ!
ミケランジェロの‘アダムの創造’(システィーナ礼拝堂天井画)
カラヴァッジョの‘聖マタイの召命’(部分)
ミケランジェロの‘日と月と草木の創造’(システィーナ礼拝堂天井画)
カラヴァッジョの‘ロレートの聖母’(部分)
カラヴァッジョは初期に得意の静物や風俗画を画いたが、その後は聖書を題材にした宗教画の制作に専念し、画壇の寵児になっていく。真に迫るリアリズムと光と闇の強いコントラストを特徴とするその革新的な作風はそれまでの絵になかったものだが、この新機軸だけで高く評価されたのではない。
カラヴァッジョは先達の画家たちが描いた宗教画について人物描写や構成などをよく研究しており、これらを消化しつつ新しい絵画を生み出し、バロック美術の扉を開けたのである。誰の絵のどんなところを取り入れたかを代表作を例にとりみてみたい。まずは、ミケランジェロの影響から。
出世作となった‘聖マタイの召命’(拙ブログ5/17)の右にいるキリストのポーズをみると、ルネサンス絵画が好きな人ならすぐ‘ミケランジェロの絵のなかにこんなのがあったよな’と気づくだろう。そう、システィーナ礼拝堂の天井に画かれた‘天地創造’のなかで最も有名な‘アダムの創造’の場面である。マタイではこれが右手に変わっている。
ミケランジェロが描いたこの壮大な天井画をじっくりみていたら、‘カラヴァッジョはこのポーズを参考にしたのではないか?’と思われるのがいくつかあった。所詮勝手な妄想かもしれないが、、‘ロレートの聖母’(5/17)、昨日紹介した‘聖ペテロの磔刑’、‘ロザリオの聖母’(ウィーン美術史美)の3点に、カラヴァッジョは汚い足の裏をみせる男を描いているが、この姿は‘日と月と草木の創造’の左にいる神に霊感を得たのではないかと直感した。大きなお尻もよく似ている。
また、右で両手を広げて太陽と月を指先からつくりだしている神もなにか匂う。そうだ、‘エマオの晩餐’(ロンドン、ナショナル・ギャラリー、5/16)で右にいる男!短縮法で描かれた神の両手を時計回りに真横にするとこの男のポーズになる。前々からこの男の手は短縮法の名手、マンテーニャの影響かなと思っていたが、霊感源はカラヴァッジョにとっては身近なところ、システィーナ礼拝堂の天井や正面の‘最後の審判’にあったのである。
‘エマオの晩餐’のキリストのポーズが‘最後の審判’のキリストからとられていることは宮下氏が‘もっと知りたいカラヴァッジョ’(東京美術、お気に入り本を参照方)で指摘しておられる。この‘最後の審判’も隅から隅まで時間をかけてみると、カラヴァッジョの動きのある人物描写がイメージできてくる。例えば、‘聖マタイと天使’でマタイのところへ急降下してやってきたような天使の体の曲がり具合はリュネット(半円の区画)にいる垂直的な姿勢で宙を舞う天使の姿を彷彿とさせる。
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