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2010.04.14

フラ・アンジェリコの手 vs シュルレアリストの手!

1462_2    フラ・アンジェリコの‘キリストへの嘲笑’

1461_2   マグリットの‘エリプス’

1459_3              クレーの‘頭も手も足もハートもある’

1460_2   レンピッカの‘手と花’

絵画を鑑賞するときは目の前の作品に集中するように心がけている。解説文はタイトルと所蔵先をちらっとみるだけなので、絵がいつごろ、どういう状況で描かれ、何を表現しているかという情報が抜けていることが多く、作品は自分の印象だけで記憶されている。

こういう鑑賞だと絵のなかにでてくる気になる描き方とかモティーフが強く体に残り、なにかの拍子で不思議に思っていたことが一気に解決することがある。1月のイタリア美術めぐりで大きな体験があったので、そのことをすこし。

その絵は感想記でもふれたフラ・アンジェリコ(1395~1455)が僧房に飾る絵として描いた‘キリストの嘲笑’(拙ブログ2/19)。キリストの上腕部のまわりに描かれた4つの手をみた瞬間、ベルギー王立美で遭遇したマグリット(1898~1967)の‘エリプス’の手を思い出した(05/4/25)。当時、この絵が強烈なイメージで迫ってきて、マグリットの比類ないシュール感覚に脱帽という感じだった。

だが、アンジェリコの手をみてしまったのである。‘エリプス’はマグリットの頭のなかから生まれたものではなかった!西洋絵画におけるビッグネーム画家は皆小さい頃からルネサンスやバロック絵画をいろいろみており、古典の名画をよく研究している。マグリットも例外ではない。マグリットはおそらく中世のころから嘲笑を表す図像としてこういう手があったことを知っており、アンジェリコの絵もみていたのだろう。そして、これを霊感源にして自分流のシュールな作品に仕上げたものと思われる。

これでマグリットの作品の価値が下がることには勿論ならない。作品の創作にあたって先行例からヒントを得るのはよくあることで、まったくのオリジナルというのは絵画ではありえない。どんな傑作でもいろんな形で過去の絵から影響を受けていることはいうまでもない。

クレー(1879~1940)の絵もマグリットと発想が似ている(06/7/4)。こちらは手だけでなく足も体から分離されて宙に浮遊している。こういうドキッとする形を初期ルネサンスの時代に生きたアンジェリコは中世からのお馴染みの図像から思いついたのだが、シュルレアリスム絵画を体験したわれわれの目からすると‘なんて豊かなシュール感覚なんだ!’と戸惑い半分驚き半分でみてしまう。

イタリアから帰って出かけたBunkamuraの‘レンピッカ展’(5/9まで開催、3/19)でまたシュールな手に遭遇した。レンピッカ(1898~1980)はこの‘手と花’を描いた
1949年ころはイタリアに滞在していたから、彼女もアンジェリコの絵をサンマルコ寺院でみたのかもしれない。

マグリットの‘エリプス’は1948年ころの作品、期せずして手が重なる同じ構成の絵が誕生したことになる。それとも、レンピッカは‘エリプス’に刺激を受けた?

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