奈良博の大遣唐使展に‘吉備大臣入唐絵巻’が里帰り!
平城遷都1300年を記念して開催される‘大遣唐使展’(奈良博、4/3~6/20)は10年に一度クラスの大展覧会。会期中、絵画、書、彫刻、やきもの、工芸などが全部で
261点展示される。その内容がすごい!わが国の国宝41点だけでなく、中国、米国からやってきた一級の文物も沢山ある。こんな機会は滅多にないから目に力をいれてしっかりみた。
この特別展のお目当てはボストン美から10年ぶりに里帰りする‘吉備大臣入唐絵巻’(一巻、四巻)。2000年、東博であった国宝展に出品されたのを見逃したから、今回はなんとしても見なくてはという気持ちが強い。
この絵巻は吉備真備(きびのまきび)の説話を絵画化したもの。制作の時期は平安時代、12世紀の後半とみられている。遣唐使として中国に行った吉備大臣は唐の皇帝によって楼にとじこめられ、難題をいろいろふっかけられる。だが、これを鬼となっていた安倍仲麻呂のアシストを得て難なく解決し、‘文選’‘囲碁’などの宝物をもって無事日本に帰還する。
一巻は吉備大臣の乗った船が唐に到着する場面。紙のかすれがあり体全部はみえないが、右にいるのが吉備大臣。岸には武官たちが待ち受ける。人物の顔をみると、伴大納言絵巻に登場する人たちの顔とよく似ている。四巻に描かれているのは囲碁の勝負。異時同図法が用いられ、右から左へ3つの場面が展開する。
一番右では唐の名人と真剣勝負の真っ最中。なかなか勝負がつかない。で、吉備大臣はズルをする。黒石をひとつ飲み込むのである。これが占いでバレたので強力な下剤を飲まされる。だが、吉備大臣は気合をいれてこれを腹に残して、勝負を決着させる。真ん中は衣服を脱がされてチェックされてるところ、左では臭いのを我慢してみるが黒石は発見できないでいる。
この絵巻の全体がどうなっているかは第2会場へ向かう途中に設けられた大型画面にデジタル画像による解説があるのでしばらくいるとおおよそわかるし、人物表現のおもしろさ、動きのある描写を楽しむことができる。
びっくりする絵画があった。08年、メトロポリタン美でみた‘照夜白図’が展示されている!この白馬は玄宗皇帝の愛馬。たて髪の細かい描写と顔をぐっと上げて立ち止まる躍動感あふれる姿を釘付けになってみた。また、隣にある同じくMET蔵の周文の‘琉璃堂人物図’にも足がとまる。
皇帝の王子の墓に描かれた壁画、‘仕女図’(陝西省考古研究院)をみるのは2度目。4,5年前あった‘中国国宝展’に出品された。とくにひ惹きつけられるのは右の女。ふっくらした顔をとらえた線描と口紅の赤を再度目に焼き付けた。
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