話題のチューリヒ歌劇場の‘トスカ’を観た!
16日(金曜)のNHK芸術劇場はチューリヒ歌劇場の‘トスカ’(プッチーニ、全3幕)をやっていた。昨年4月の公演。最近は美術のほうへエネルギーを注いでいるため、TVでオペラを聴くことがめっきり少なくなった。だから、たまに観る人気の演目がすごく新鮮。
昨年の11月か12月に放送されたミラノ・スカラ座の‘アイーダ’(バレンボエム指揮)はアイーダ役のヴィオレッタ・ウルマーナ(ソプラノ)の美しい歌声にとても感激したが、この‘トスカ’にもすばらしいテノール歌手が出演していた。
画家カヴァラドッシを演じているのはミュンヘン生まれのヨナス・カウフマン(上の画像)。今、ウィーン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場などで引っ張りだこのテノールだそうだ。イタリア語、フランス語、スペイン語がしゃべれ、ドニゼッティ、ヴェルディ、プッチーニと幅広いレパートリーをもっているという。はじめてその歌声を聴いたが、なかなかいい。しかも、すごいイケ面。人気が出て当たり前だなと思った。
警視総監スカルピアのトーマス・ハンプソンはしばらくみないうちに、髪には白いものがみえ恰幅のいい中年男になっていた。バリトンというとホアン・ポンスをすぐ思い浮かべるが、ハンプソンのスカルピアのほうがポンスより凄みがあり残忍な性格がよくでている。
嫉妬深いトスカ役のエミリー・マギーははじめてみた。瞬間的に脂肪のついた松坂慶子を連想した。ワルのスカルピアと美貌の歌姫トスカの裏切り合いについてはゲーム理論との関連で拙ブログ07/7/10でふれた。
この公演では二人のやりとりが観客の心にぐさっとくるような演出になっている。琴線にふれる‘歌に生き、恋に生き’をトスカが悲しみのはてに歌うのをスカルピアは壁にもたれかかり聴いている。上半身には強く光が当たり、その迫真的な明暗描写はまるでカラヴァッジョの絵をみているよう。
残念だったのがカウフマンが歌う名アリア‘星はきらめき’(05/1/2)。マイクの設置がうまくいかなかったのか声をよくひろってなく、音量が落ちていた。このオペラ一番の聴かせどころを楽しみにしていたのに、ちょっと拍子抜け。でも、これはご愛嬌。
こういうすばらしいオペラをみると、ヨーロッパに住んでいる人が羨ましくなる。魅力のテノール、カウフマンと話題の演出で注目をあつめるチューリヒ歌劇場がしっかりインプットされた。オペラ戻りに拍車がかかりそう。
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