日本の美 サクラ満開! 心に響くサクラの絵(2)
歌川豊国の‘新吉原桜之景色’(マノスコレクション)
菊川英山の‘当流御庭桜’(マノスコレクション)
サクラの絵がブレイクするのは浮世絵の世界。絵師は美人群像画の背景や風景のモティーフとしてこぞってサクラを描いた。まずは美人画&サクラから。
満開のサクラが目を楽しませてくれるのは横長のワイド画面に描かれた美人群像画。これをはじめた鳥居清長の絵は3年前、千葉市美であった回顧展に内外の美術館から傑作が集結した。そのうち、サクラが背景に描かれたのは‘飛鳥山の花見’(東博)、‘仲の町の桜’(シカゴ美)、‘隅田川桜の景’など6点。ほかの紅葉や藤などの美人画にくらべると圧倒的に多い。
‘飛鳥山の花見’(大判3枚続)はぞっこん惚れている絵。サクラを対角線に配置し、空間の広がりと奥行き感をつくる構成がまったくすばらしい。この絵は2年に一度くらいのサイクルで平常展に登場する。昨年展示されたから、次は来年の春かもしれない。
歌麿の美人群像画を体験したのはまだ両手くらいしかない。その一つがサクラを楽しむ女たちを描いた‘大黒屋店先’(3枚続)。所蔵しているのはNYのブルックリン美。海外の美術館は本当にいい浮世絵を集めている。10何年か前、これと遭遇したときは羨ましかった。
昨年7月に鑑賞したマノスコレクションはサプライズの連続だったが、すばらしいサクラの絵が3点あった。とくに一生の思い出になるのは豊国の‘新吉原桜之景色’(5枚続)と‘やつし妹背山’(3枚続)。
‘新吉原’は5枚続の超ワイド画面に出会っただけでも大収穫なのに、満開のサクラが横にドドドっと並んでいる画面に200%KOされた。ここでの主役は圧倒的な存在感のあるサクラ、豪華な衣装を着た花魁や旦那衆、太鼓持ちには視線はチラッとしか向かわない。
もう一点目を楽しませてくれたのは菊川英山の‘当流御庭桜’(3枚続)。桜の下の宴会は普通のイメージとちょっと違っていて、右の色っぽい女たちは豆腐田楽をせっせとつくっている。
‘豆腐田楽美味しいでしょう。どんどんつくるから食べておくれ’と愛想のいいお姉さんが皆のご機嫌をうかがうと、‘うん、味噌がぴりっと効いてとてもおいしいわ、それにヘルシーなのがいいよね、あんがとさん、お千代姉さん!’と調子のいい返事。美しいサクラをみると心がひとつになる。日本の春はいいねえ。
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