レンピッカ展は傑作揃いのすごい展覧会!
‘緑の服の女’
Bunkamuraの‘レンピッカ展’(3/6~5/9)は関心がすごくあったことは確かだが、期待値が高い展覧会というわけではなかった。というのも、美貌の女性画家レンピッカ
(1898~1980)の絵はこれまでたった2点しかみたことがないのである。だから、この画家は一体どんな絵を描いたのか?それを知りたくて出かけた。
作品の数は油彩69点と関連の素描。会場に入ってまもなくインパクトのある肖像画が続々登場する。レンピッカが最も輝いていた1925年から1935年の10年間に描かれた作品は傑作揃い。そのなかで心をとらえて離さないのが‘緑の服の女’(1930)。
チラシでみてから気になってしょうがなかった。この女性からすぐ連想したのが最近、女優復帰を宣言した沢尻エリカ。白い帽子のつばに手をかけ顔を傾き加減に前方をじっとみる姿が心をかきむしる。My好きな女性画に早速登録した。
1932年に描かれた‘マジョリー・フェリーの肖像’は5年前、東京都美であった‘アール・デコ展’でみた。レンピッカの存在を知ったのは娘のキゼットを描いた‘腕組みをする女’(メトロポリタン美)だが、これはアメリカへ移住した1939年ころの作品。だから、衣服の襞の表現や白の使い方には惹きつけられるところはあるが、絶頂期の作品に較べると印象が弱いことは否めない。
ファッショナブルな衣装をまとい、滑らかな肌をみせるマジョリー・フェリーを強い陰影と輝く白で描いたこの絵は20世紀モダンを象徴するアールデコの香りに満ち満ちている。今となってはこういう時代はノスタルジックな感覚でしか蘇ってこないのだが、映像を観るよりは一枚の絵画のほうが大きな力をもっている。
今回の収穫は女性画のほかにいくつかある男性の肖像画。息を呑んでみたのが‘エリストフ公’(1925)。青紫の服と背景の緑のカーテンがとても印象的。そして、胸のポケットの白いハンカチが強いアクセントになっている。この絵には200%KOされた。レンピッカの最初の夫だったタデウシュの肖像(1928)は目にすごい力がある。左手は完成してないが、仕立てのいいコートの質感描写と目力がそんなことを忘れさせる。
女性は目が大きくその姿態は多くが角張ったヴォリューム感のある形態で描かれている。だから、肌の露出が多い場合、アングルの‘トルコ風呂’に描かれた裸婦とか東郷青児の女性が頭をよぎる。取り上げた女性の絵2点はそのあたりはそれほど印象つけられないが、例えば、パンケーキを乗せたみたいにみえる頭の髪やオッパイがじょうろのような形をした‘シュジー・ソリドールの肖像’などは好き嫌いがわかれるかもしれない。
Bunkamuraの企画展を高く評価しているのは、TASCHEN本などに載っている画家の代表作をドッと集めてくれるところ。作品の質を高いところにおき、‘一級の回顧展あるいはテーマ展にするんだ!’という意気込みが展示内容に現れている。
たまにロートレック・コネクションのような目玉のないのもあるが、年間を通してみれば拍手をしたくなるものが多い。昨年のだまし絵展ではアンチンボルドの‘ルドルフ2世’を展示してくれたり、今回もレンピッカの代表作を沢山集めてくれた。これからも大いに期待したい。
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コメント
いつも今日はどんな画像が見られるのか、いづつやさんのブログを拝見するのが楽しみの一つになっています。ありがとうございます。
今回のレンピッカの作品は初めてですが、最初に受けた印象は陰影が強く、堅固で力強く、女性画家とは思いませんでした。
僕の好きな画風です。
次回も楽しみにしております。
ありがとうございました。
投稿: アキラ@ | 2010.03.20 17:45
to アキラ@さん
レンピッカのくっきりした線や色彩がこれほど
心を揺すぶるとは思ってもみませんでした。
会場に入って‘これは大変な回顧展だ!’と
興奮モードにスイッチオン。夢中になってみま
した。是非お楽しみください。
投稿: いづつや | 2010.03.20 23:00