ビバ!イタリア ベラスケスの肖像画の傑作に感激!
カンピドーリオ広場から歩いて10分くらいのところにドーリア・パンフィーリ美がある。ここのお目当てはカラヴァッジョの二つの絵‘エジプト逃避途上の休息’&‘悔悛のマグダラのマリア’とベラスケスの肖像画‘教皇イノンケンティウス10世’。
ここはローマの名門パンフィーリ家(ウンブリア地方の出身)の宮殿。その一部が美術品の展示に使われている。2階が展示室になっており、廊下の両サイドの壁にびっしり絵画が掛けられている。1時間もいればだいたい見終わる。
カラヴァッジョ(1571~1610)は残念ながら‘マグダラのマリア’がいなかった。ボルゲーゼ美からお呼びがかかっているとのこと。‘エジプト逃避’はヨセフの持つ譜面をみながらバイオリンを弾いている天使の肌がカピトリーニ美の‘洗礼者ヨハネ’の少年の肌同様、びっくりするくらいリアルに描かれている。ふくらはぎのまるみとか顔や手や足が赤くなっているところは生身の女性そのもの。
左からの光は天使の上半身と眠るキリストを抱いてうつむきかげんの聖母を明るく照らしている。天使の羽の質感に気をとられていると、ヨセフの後ろにいるロバを見落とす。それにしてもこの黒い羽は本物そっくり。カラバッジョの対象の質感描写にはほとほと感心する。
ここのサプライズはベラスケス(1599~1660)が描いた‘教皇インノケンティウス10世’。ウルバヌス8世の次の教皇はパンフィーリ家から選出された。1644年、71歳のジャン・バティスタ・パンフィーリがインノケンティウス10世として即位する。この絵は専用の部屋に飾られており、まさにこの美術館の至宝。
図版ではこの肖像画のすばらしさは伝わってこない。政治家のような鋭い目でこちらをみつめる教皇の性格を見事にとらえている。200%脱帽。教皇はこの絵をみて‘あまりに真実すぎる’と言ったとか。ベラスケスに惚れ直した!
贅沢なことにベルニーニ作のこの教皇の胸像が絵の前に展示してある。彫刻では教皇の人間的な生臭さは消え、教皇の権威、精神性の描写に重きが置かれている。ベルニーニ(1598~1680)はこの教皇からあまり仕事がもらえなかったから、それほど熱が入らなかったのかもしれない。
想定外の収穫が1点あった。ブリューゲル(1525~1569)がナポリを旅行したときに描いた‘ナポリの眺望’。日本に帰ってTASCHEN本をチェックしたらちゃんと載っていた。これは嬉しい出会い。パノラマ的にとらえられたナポリ湾に風をいっぱい受けた帆船が何隻も航行している。丁寧に描かれた白波から風が相当強く吹いていることがわかる。
画廊を進んでいるとBunkamuraの‘ヴェネツィア絵画のきらめき展’(07年)でみたティツィアーノの‘サロメ’(拙ブログ07/9/13)に遭遇した。‘そうか、この絵はここにあったんだよね’という感じ。好きな絵なのでまた熱心にみた。
| 固定リンク
コメント