心に沁みる小野竹喬ワールド!
‘宿雪’(ベネッセコーポレーション)
待望の‘小野竹喬展’(3/2~4/11)を初日にみてきた。小野竹喬(1889~1979)は近代日本画家のなかで一生付き合っていこうと思っている画家のひとり。99年にあった回顧展のときも、当時住んでいた広島から岡山県の笠岡市にある竹喬美術館へわくわく気分で出かけた。
今回の図録をみると出品作は前回と8割方同じ。予想していたことだが、これが有難いのである。というのも、10年前のときは巡回先の京近美、東武美(現在はなし)だけに展示されたものがあるので、今回はそのリカバリーの絶好のチャンス。で、前期(3/2~22)、後期(3/24~4/11)に展示される119点は追っかけ作品を中心にみた。
最も対面を望んでいたのが‘宿雪’。竹喬が描く木は初期の‘郷土風景’でみられるように幹はだいたい細く、緩く曲がりながら上に長くのびる。この絵では画面を上に突き抜ける垂直性に加え、木を前後左右に何本も巧みに配置し奥行きをつくっている。
木の根元は雪が溶けて窪みになっているが、灰色の色を重ねその深さを表現しているのはとても印象的。じっとみていたら長谷川等伯の‘松林図’が目の前をよぎった。
カラリスト竹喬が描く風景画で心をとらえて離さないのは茜色の空。何時間でもみていたのがいくつもある。再会した‘夕茜’や‘夕雲’、‘沖の灯’、‘奥の細道句抄絵・あかあかと日は難面もあきの風’、やっとリカバリーした‘残照’。
竹喬の絵にぞっこん惚れているのは色がとても美しく感じられるから。日本画のなかで真性カラリストは竹喬と福田平八郎。色に遊びたいときはこの二人の作品を眺めている。前回、その色に震えたのは日本の四季シリーズ、なかでも‘京の灯’と‘鴨川夜景’の美しい青や黄色、赤が目に焼きついている。その絵が前にある。うっとりしてながめていた。
京近美が所蔵する‘奥の細道句抄絵’は嬉しいことに10点全部でている(通期)。前は半分しかみれなかった。お気に入りは水面の波の動きが広重の‘阿波鳴門之風景’を連想させる‘五月雨をあつめて早し最上川’、大きな太陽と青や緑の色面の帯が心を揺すぶる‘暑き日を海にいれたり最上川’、赤い太陽と薄ピンクの雲、風になびくススキが見事に融合した‘あかあかと日は難面もあきの風’。
後期はあらたに18点が登場する。もう一回竹喬ワールドを楽しみたい。
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