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2010.03.31

祝 把瑠都 大関に昇進!

1407_3夏場所、14勝1敗の好成績をあげた関脇把瑠都が大関に昇進した。拍手々!

白鵬が15戦全勝で完璧に勝ったから、把瑠都の14勝がかすんじゃったが、文句のつけようがない立派な成績。

大事な場所に力を全部だせるのだからたいしたもの。

三場所前の勝ち星が9勝なので、大関獲りがすんなり実現するとも思えなかった。が、場所に入ると突き押しで前にでる相撲が毎日みられ、強さが前面にでていた。高い潜在能力が今場所一気に花開いたという感じ。長いこと相撲をみているが、これまで相撲史に名を残した力士は一気に大関、横綱へ駆け上がっていく。把瑠都は?

先に大関になった琴欧州はブルガリアの出身で、把瑠都が生まれ育ったのはバルト海に面するエストニア。エストニアの人口は130万人らしい。ええーそんなに少ない!?人気のスポーツ、サッカーに較べればマイナーどころか、まったく知られてない相撲への関心は小さいだろうが、メディアには把瑠都が日本の国技、相撲のチャンピオンになったのがどれだけすごいことかをしっかり伝えてもらいたいものである。

来場所から横綱への挑戦がはじまるが、どういう相撲をめざすのだろうか。体が人一倍デカイからまわしをすばやくつかんで、ひきつけて寄っていけば、80%は勝てる。が、体の小さい力士は動きが早いから、かき回されるとその動きについていけず、コロッと負けるもろさがまだある。それに相撲の技もまだ体にしみこんでない。

ひとつ気になるのは右足につけている大きなサポーター。前に痛めた膝はもう大丈夫なのだろうか?琴欧州も同じように大きなサポーターをしている。さて、この二人はどちらが先に横綱になるか?今の勢いからすると、把瑠都だが、そう簡単にはいかない。

白鵬にまったく弱いのは印象が悪い。だから、まずは打倒、白鵬を一番に考えて精進することだろう。白鵬と互角に戦えるようになると横綱がみえてくる。有望な力士が力をたくわえ技を磨き、横綱へと駆け上がるまでをみとどけるのが相撲観戦の一番の楽しみ。把瑠都の綱獲りの夢はいつ現実のものとなるだろうか?

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2010.03.30

美術に魅せられて!イタリアの美術館で戸惑うこと & いいところ

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‘ビバ!イタリア’の美術館めぐりでは、心を奪われた傑作の紹介に終始し、美術館の展示室の雰囲気やサービスについてはふれなかった。日本の美術館とはいろいろな点で違っているので、そのあたりを少し述べてみたい。

★‘イタリアの美術館にはコインロッカーがない!’

イタリアに限らず、海外の美術館で日本の美術館のように100円を入れて後からそれが戻ってくるコインローカーを備えつけているところはない。クローク方式でバッグやコートを預かってくれる(無料)。ただし、バッグはファスナーのついたバッグだけ。

だから、横にすると中のものがでてくるビニール袋とか布製のエコバッグは預かってくれない。今回、‘禅’の字がデザインされたエコバッグがNGを食らったので、フィレンツェやローマでは最後に行った美術館は重たいバッグがしんどかった。

日本のコインロッカーは独自の方法かもしれない。人件費のかかるクロークに較べたらいいやり方だと思うが、自動販売機が普及してない欧米ではこのコインロッカーは考えつlかないだろう。ところで、雨の日の傘はどこに置くの?

★‘監視員はおしゃべりが大好き!’

監視員があそこでもここでも話し込んでいたのがローマのカピトリーニ美。各監視員の担当の持ち場は離れているのに、細長い展示室の真ん中あたりに集まっておしゃべりが続く。だから、入館者が大きな声でしゃべってもまったく問題ない。日本の美術館だとこんな光景は考えられないのだが、ここはイタリア。おしゃべり好きのイタリアらしくていい。

とにかく、イタリア人はしゃべりたくてしょうがないらしい。ある部屋でキョロキョロしていたら、英語で‘どの作品を探しているのか?’と聞いてきた。‘実は○○をみたいんだ!’というと‘それはルーム△△室にあるから、あのエレベータに乗れ’と教えてくれた。その親切心にグラッツィエなのだが、半分はこの男性はおしゃべりの虫がでたんだなと思った。日本の美術館でこんな問わず語りの監視員に出会ったことは一度もない。

★‘ミュージアムショップでクレジットカードが使える!’

美術館にあるミュージアムショップで売ってるものはイタリアでも日本でも同じようなもの。ガイドブック、絵葉書、キャラクターグッズ、手帳、ノート、ファイルシート、カレンダー。日本語のガイドブックがあるのはウフィツィ美とヴァテイカン博の大きな美術館だけ。どちらも中国語や韓国語版も売っている。

海外の美術館ではイタリアはもちろんのことどの国でも購入した本や絵葉書の代金はクレジットカードで払える。また、入館料だってクレジットOK。これは欧米では当たり前のことだから、すごく便利。

ところが、日本ではクレジット払いが遅々として進まない。可能なところでも5千円以上とか制限をつけている(出光美、東近美)。東京、神奈川にある美術館でカードが使えるのは東博、西洋美、サントリー美、三井記念美、根津美、横浜美など数えるほどしかない。

こうしたユーザー本位に欠ける運営がずっと続いているのは、日本の美術館の保守的で権威主義の体質が変わらないから。これは常識。だから、昔から日本の美術館には過大な期待はしておらず、ほどほどのつきあいを心がけている。企画展の質を上げることとかなんかよりカードが使えるようにするのが先だろうといつも思っている。

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2010.03.29

今年の日本人大リーガーは期待できる?

1405_2今日は来週開幕する大リーグの話。

毎月購入している月間TVガイドでBS1の大リーグ中継をみたら、いきなり松井が所属するエンゼルスとツインズを4日連続で放送する

どうやら、今年の大リーグ中継は松井エンゼルスvsイチローマリナースを軸にまわりそうな気配である。


松井はオープン戦で守備についてプレーしているが、今のところひざは良好のようだ。ソーシャ監督は毎試合松井にレフトを守らせるのではなく、基本はDHで主軸を打たせ4試合に2回ないしは1回守備につかせる考えらしい。

本人もそのほうがリスクが少なくていいのではないか。スタートはあまり無理をしないで期待されている勝負強いバッティングでチームの勝利に貢献したほうがいい。

イチローのいるマリナースは戦力補強が進みチーム力が整備されたから、今年はなんとしてもエンゼルスを破り西地区で優勝したいだろう。その鍵を握っているのはやはりイチロー、新加入のエンゼルスから移籍してきたフィギンズとの1,2番コンビが機能すれば得点力はぐっと上がる。エンゼルスとの対戦にはシアトルでもLAでも日本のファンが大勢駆けつけるにちがいない。

イチロー自身にとっては10年連続200本安打という記録はあるが、記録との戦いはもうイチローの心のなかでは終わっており、これからはのびのびしたバッティングがみられそう。だから、200本安打は逆に容易に達成するような気がする。ファンとしては記録はもういいから、チームに活力を与えるような打席を期待したい。

今年新たに大リーグに挑戦するのはメッツに入団した元ヤクルトの中継ぎだった五十嵐(左の写真)と同じくメッツとマイナー契約を結んだ高橋(元巨人)。高橋は開幕メジャーの可能性が高いと報じられているが、果たしてどうか?

巨人で先発の実績があるといっても大リーグの打者に対して結果を出せなければ即マイナー行きとなる。高橋の強みは左ピッチャーだということ。厳しい条件には変わりないが、これまでの経験を生かせればマイナーからの昇格は十分ある。

レッドソックスの松坂はかつがつ10勝くらいではないか。急に力がなくなったような感じ。2年目の上原(オリオールズ)は先発ではなく、中継ぎだが、また故障したからお先真っ暗。このままだと惨めな成績に終り、日本へ帰ってくることになりそう。

ドジャースの黒田も故障が多いので10勝のハードルをなかなか超えられない。3年目で飛躍できるか。黒田は松井と同級生だから、刺激を受けてがんばるかもしれない。
13くらい勝てたら上々。

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2010.03.28

横浜美のポンペイ展にプラスαはあったか?!

1403_2   ‘アキレスとキローン’

1404_2    ‘三脚を飾るクピドたち’

1402_2        ‘ヘラクレス小像’

昨年9月、西洋美で‘古代ローマ帝国の遺産展’(拙ブログ09/9/21)があったのに、また横浜美で‘ポンペイ展’(3/20~6/13)を開催している。同じものが出てくるのだろうと展示品は察しがつくのだが、今、美術鑑賞の対象が古代ギリシア・ローマのフレスコ画や彫刻へぐっとシフトしているから、つい足が向かう。果たして、プラスαはあったか?

この展覧会はポンペイ遺跡展の第3弾。西洋美と基本的には同じものが並んでいる。では、質の高さは?ズバリいうと、西洋美を10とすると7か8くらい。5ということはないからご安心を。2、3割の減点はフレスコ画のトータルのインパクト度が負けるのと彫刻に目玉がないから。

西洋美ではフレスコ画‘庭園の風景’と‘モザイクの噴水’の2点が見ごたえがあり、点数を稼いだ。今回はこういうのがないのは残念だが、足がとまるのは結構ある。チラシに使われている‘アキレスとキローン’は惹きつけられる。竪琴をもったアキレスが諸芸の先生であるケンタウロスのキローンを見る目は真剣そのもの。背景の壁に描かれた絵にはしっかり陰影があり奥行きがつくられている。

目に焼きつく色は捧げものをする男女(2点)や仮面の背景に彩色されている土色。彫刻的な人物像がこの鮮やかな土色に浮かび上がっている。また、天使やマエナスの背景の赤も印象深い。ポンペイ遺跡の秘儀荘でみた血の赤を連想した。

とても賑やかなので思わず見入ってしまうのが‘三脚を飾るクピドたち’。これは収穫の一枚。クピドはなんと10人!中央のブロンズの三脚の上では装飾をチェック中で、右下では竪琴を手入れしている。忙しく担当の仕事をするクピドには動きがあり画面に活気を与えている。

大理石の彫像はローマで沢山みてきたばかりだから、それほど驚きはしないが、ブロンズは‘ヘラクレス小像’が気になる。これは前4世紀、ギリシアのリシュポスがつくった彫像を前1世紀にココピーしたもの。

また、興味深くみたのがブロンズの‘ボクシング用グローブをつけた前腕’。ローマ国立博にあった‘休息する拳闘士’(2/28)もこのグローブをつけていた。これと隣にある‘脛宛’はポンペイの‘剣闘士の宿営’から出土したもの。当時、人々の最大の娯楽は円形闘技場で行われた剣闘士の戦い。ここには2万人を収容する闘技場があったという。

なお、この展覧会は横浜のあと次の美術館を巡回する。
名古屋市博:6/24~8/29
新潟県近美:9/11~11/23
仙台市博:11/2/10~5/8

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2010.03.27

高島屋横浜店の大九州展にカステラの松翁軒が出店!

1401食べ物へのこだわりが人一倍あるということはないが、カステラだけは特別。

お気に入りは長崎の松翁軒のカステラ。

定期的に食べたい気持ちはあるが、800円の送料を払って注文するところまではいたってない。

だから、今はデパートで開催される全国物産展などへの出店が運良くわかったときだけ、このおいしいカステラにありつけるという次第。

日頃の願いを果たすチャンスは突然やってきた。現在、高島屋横浜店で開催されている‘大九州展’(3/17~29)に松翁軒が出店しているのである!

今年の1月、日本橋三越で‘竹久夢二展’をみたあとたまたま目にとまった物産展に松翁軒がでていたので喜び勇んで催会場へ立ち寄った。が、‘午前中で売り切れました、明日の朝また入ってきます’と販売員にいわれた。ガックリ!食べたかったのに。世の中にはわが家同様、ここのカステラが好きな人が大勢いるということだろう。

この苦い経験があるので、念のため横浜店に午後出かけても大丈夫か電話をしておいた。昨年5月、日本橋三越の地下の食品コーナーで買ったときは、量が一番少ないタイプ(0.5号、840円)しかなく物足りなかったので、今回は1号(1680円)と0.6号
(1050円)を買った。いつもはスイーツ制限があるから、こういう買い方はしないのだが、松翁軒のカステラは例外扱い。

このカステラはやわらかくてしっとりしているのが特徴。同じ長崎の福砂屋もおいしいが、松翁軒のようなしっとり感はない。これが一番の違いであり、松翁軒の魅力なのである。この店の創業は天和元年(1681)、長崎カステラの元祖である。パンフレットをみると、明治33年(1900)のパリの大博覧会や37年(1904)のセントルイスの万国博覧会に出品し、銀杯や金杯を受賞している。

昔からの伝統の味をずっと守り、多くの人の舌と心を満足させてきた。オリジンはポルトガルの菓子だったものが日本テイストのカステラに変わり、今も食べ続けられている。こういう食文化の国に生まれてよかったなとつくづく思う。


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2010.03.26

ホテルニューオータニの安田靫彦展 花を愛でる心!

1400_2        ‘女楽の人々’

1398_2   ‘菊慈童’

1399_2   ‘紅梅高麗扁壺瓶’

ホテルニューオータニのなかにある美術館で現在、‘安田靫彦展 花を愛でる心’
(3/13~4/18)が開かれている。作品数は歴史画、花鳥画31点と写生43点。

安田靫彦(1884~1978)の絵は昨年、茨城県美の回顧展(拙ブログ09/3/2)、千葉市美の‘大和し 美し 川端康成と安田靫彦’(09/4/27)と2回まとめてみる機会があったから、しばらくはないだろうと思っていたら、この時期ここと川崎市民ミュージアムのコラボにより再度登場してきた。

歴史画は2年前あった‘源氏物語の1000年展’(横浜美)ではじめて遭遇した‘紅葉賀’(08/9/11)がとても気に入っている。回顧展にも展示されたから、3年続けてみたことになる。この絵がその巧みな構図に魅了されるのに対し、‘女楽の人々’は衣装の美しい色合いに釘づけになる。

とくに真ん中の背をこちらむけている女の鮮やかな赤とうす紫、うす緑の組み合わせが心に響く。こういう濁りのない瑞々しい岩絵の具の色をみると、日本画の魅力はルネサンスのフレスコ画同様、色にあることを再認識させられる。また、伊勢物語(あまのかは)’や‘八橋’にでてくる男性貴族が着ている直衣(のうし)の青も目に心地いい。

五島美が所蔵する‘菊慈童’をみるのは15年ぶり。童子は700年も菊の葉から滴る露を不老不死の薬として飲んでいるのでかくも若々しい。手に持っている菊をわけてくれない?

靫彦が最も愛した梅の絵は5点ある。足がとまるのは‘紅梅高麗扁壺瓶’。形のいい中国陶磁の壺に活けられた紅梅の赤と優雅に曲がる枝ぶりがとても印象的。

今年国宝・重文指定になる美術品が先ごろ決まったが、明治以降の日本画では前田青邨の‘洞窟の頼朝’が選ばれ(3/20)、安田靫彦の代表作‘黄瀬川陣’は先を越されてしまった。小林古径はすでに‘髪’(永青文庫)が重文になっている。

安田、小林、前田は誰もが認める日本画の巨匠なのに、‘黄瀬川陣’の重文指定を遅らせる理由がわからない。毎年1点にとどめる必要もなく、名画はどんどん重文にすればいいと思っているのだが。さて、来年選ばれるのは?

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2010.03.25

美しい色がふわふわ気分にさせる小野竹喬展!

1397_2    ‘奥入瀬の渓流’

1396_2    ‘高原’

1395_2    奥の細道句抄絵‘あかあかと日は難面もあきの風’

1394_2    加山又造の‘天の川’

‘小野竹喬展’(東近美)の後期(3/24~4/11)がはじまったので、再度竹橋へ出かけた。前期(拙ブログ3/7)だけの作品と入れ替わりで登場するのは17点。後期のみを見られる方はこれプラス通期展示の85点、素描52点。

17点のうち2点を除いて鑑賞済みなので、リラックスした心持で再会を楽しんだ。足がとまるのは茜空と柿の絵‘夕空’(08/11/6、ウッドワン)と‘波濤’(笠岡市竹喬記念館)と‘一本の木’(06/3/12、岡山県美)。

‘夕空’は茜空シリーズの最初のころの作品で、目にドッととびこんでくる茜空とはちがって‘夕雲’(京都市美)タイプのうすい茜色。また、画面手前に描かれる細い木々もほかの作品にみられるように垂直にのびてなく、左の木は少し横に傾き、柿の木も右から斜め上にせり出している。

久しぶりの‘波濤’をしばらくみていた。川でも海でも水の流れや波を描くのは大変難しい。波の形は見た瞬間に消え、また次の波が現れるのだから、相当長いことその情景を観察しないと形はイメージできない。竹喬の絵をみていると波の音が聞こえてくるよう。穏やかな瀬戸内の海はまさにこんな感じ。

‘奥入瀬の渓流’(東現美)は大好きな絵。5年前現地を訪れたとき、この絵のすばらしさがよくわかった。速い水の流れや水しぶきを前にするとまた、奥入瀬へ行きたくなる。

竹喬の風景画をみていて、ふと抽象画をみているような気になるときがある。これは福田平八郎の絵でも同じ。通期に展示してある‘高原’はその印象が強い作品。むくむく感のある白い雲を背景に描かれた山の斜面にはすっきりカラーの緑と紫、白の色面が横に並んでいる。具象の雲を消せば、そのまま抽象画になる。

そうした抽象的な形がうまく融け合っているのが奥の細道句抄絵の一枚、‘あかあかと日は難面もあきの風’。真ん中を横にのびる茜色の色面はとてもインパクトがあり、上のうすピンクの細い帯が輝いている青い雲とは色、形ともにしっくりつながっている。

自然のなかのモティーフを見続けていると、具象を離れて瞬間的におもしろいフォルムを見出すことがあるが、こうした体験がきわめてシャープに表現されているという感じがする。

竹喬のこの絵によく似た絵がある。それは昨年の回顧展に出品された加山又造の‘天の川’。琳派の画風を思わせる装飾性の強い又造の絵に対し、竹喬の絵はススキや太陽や茜空を抽象的とも思えるフォルムに還元し象徴的に描いている。87歳でこんな現代の感性にも通じる絵を描くのだから、竹喬は真にすごい画家だなと思う。

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2010.03.24

大ホームランの歌川国芳展!

1393_2           ‘本朝水滸伝豪傑八百人一個 早川鮎之介’

1390_2    ‘讃岐院眷属をして為朝をすくふ図’

1392_2    ‘新板子供遊び之内 雪あそび’

1391_2    ‘二十四孝童子鑑 孟宗’
  
府中市美で開催中の‘歌川国芳展’(3/20~5/9)を楽しんだ。作品は225点あり、前期(3/20~4/18)と後期(4/20~5/9)で半分ずつでてくる(通期展示は12点)。

国芳の回顧展が開かれるのは生誕200年を記念し95年から97年にかけて全国を巡回した2つの展覧会(大丸各店と名古屋市博&千葉市美&サントリー美、拙ブログ09/6/16)以来。幸いにもこの回顧展を体験したので、今回はプラスαに期待してアクセスのあまりよくない府中市美まで出かけた。

今日はJRにしろ地下鉄にしろ乗り継ぐタイミングがすごくいい。不思議なことなのだが、こういう日はときどきある。果たして、京王線東府中駅には美術館へ向かうバスが出発する時間の5分前に着いた。で、あまり雨に濡れることもなく入館することができた。

国芳の武者絵は6点。好きなのは鮎が飛び跳ねている‘早川鮎之介’。怪力が自慢のこの男は川を板で堰き止め鮎をとっているのである。奥行きのある画面からは今にも鮎がこちらに飛びだしてくるよう。

国芳の人物や生き物の動感描写はダイナミックで臨場感にあふれているが、大画面になると迫力が一段とます。今回お楽しみが4点ある。‘相馬の古内裏’(前期)、‘鬼若丸と大緋鯉’(後期)、‘宮本武蔵と巨鯨’(通期)、‘讃岐院眷属をして為朝をすくふ図’(通期)。

骸骨がでてくる‘相馬の古内裏’以外の3点はいずれも大きな魚が画面いっぱいに描かれている。そのなかでゾクゾクとするようなおもしろさがあるのが‘讃岐院’。上部にいるのは鋭い歯をした鰐鮫。体の表面のきらきら光る渦巻き模様の鱗が妙にリアル。こういうグロテスクな鮫だから、ぱっとみると悪のイメージ。だが、そうではなく、この鰐鮫は海難にあった男と子供(為朝の嫡男)を救っているのである。

大波に揺れる舟にいる武士(為朝)は何をしているの?まわりにいる灰色のうごめく物体は?この色彩的に違和感のあるのは烏天狗で讃岐院(崇徳上皇)の家来、為朝が自害しようとするのを旧約聖書の‘イサクの犠牲’ではないが、‘ちょっと待った!’と止めているところ。国芳の豊かな想像力と構成力は本当にすごい!

初見で足がとまったのが子供たちの雪遊びを描いた絵と雪道を進む男を真横からとらえた構図に魅せられる‘孟宗’。どちちも人物描写に動きがあり、じっと見入ってしまう。

後期もバスをあまり待たないタイミングで東府中に到着するといいのだが。

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2010.03.23

板橋区美の‘浮世絵の死角’はミニ国貞展!

1387_2          鈴木春信の‘見立東下り’

1389_2             三代目歌川豊国の‘男達 弁慶太左衛門’

1388_2   歌川広重の‘東都名所 両国花火之図’

板橋区美では3/28までイタリア、ボローニャの2人のコレクターが所蔵する浮世絵コレクションを公開している。タイトルは‘浮世絵の死角’。

展覧会の楽しみは回顧展を体験することにあり、テーマ型の企画展にはあまり興味がない。これは昔からのスタイル。で、死角にとらわれることなく、摺りのよい浮世絵とはっとする絵柄にどのくらい遭遇するか、期待半分でみてまわった。

結論からいうと、こんなものかなという感じ。摺りのいいのがあるという印象ではないし、一際輝いている目玉があるわけでもないから、一般受けする浮世絵展とはいいがたい。どちらかというと、通好みのマニアックな浮世絵の類。こんなおもしろい浮世絵があったの?と思わず笑みがこぼれるのがあるから、いろんな浮世絵を体験したい人には受けるはず。見てのお楽しみ!

海外のコレクションで期待したくなるのが春信や歌麿と純ビッグネーム絵師の絵。歌麿はハズレ、‘女織蚕手業草 弐’の1点のみ。春信も初見の‘見立東下り’1点しかないが、これは収穫の一枚。手前に大きく描かれた馬に乗った女と男は三保の松原越しに富士山を眺めている。

今日の夕刊に定例の‘日本一’アンケートが載っていた。今回のテーマは‘富士山がきれいに見えるスポットは?’。これによると1位河口湖(2342人)、2位三保の松原
(2122人)、3位山中湖(2014人)、ベスト3はあまり差がない。この3箇所からだと富士山はすばらしくみえるということだろう。

今回展示されている201点のうち数がとびぬけて多いのが国貞、全部で36点ある。色の鮮やかさでとくに惹きつけられたのは‘男達’シリーズ3点のひとつ‘弁慶太左衛門’。腕を組み、きっと前をみすえるこの男はいかにも侠客風情。国貞の人物画はときどき思わず立ち止まってしまういい絵に出くわす。

広重の賑やかな花火の絵もなかなかいい。これははじめてみた。大勢の人がいる橋と川沿いの道が画面の中央でちょうどV字を平たくしたような形をとり、川に浮かぶ舟々を囲むようにみせる構成にとても魅了された。

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2010.03.22

プロ野球パリーグ開幕、今年優勝するのはどこ?

1386_3プロ野球はパリーグが開幕し、各チーム最初の3連戦を戦った。今週金曜日からはセリーグがはじまる。

左の画像は今日のゲームで楽天の永井がオリックスのラロッカに2ランホームランを食らったところ。

楽天の3連敗スタートは今年の結果を暗示しているかもしれない。

敗けた理由は岩隈、田中マー君はなんとか投げたのに打撃陣が振るわないのと押さえのピッチャーが機能しないから。ベテランの山崎などは野村監督あっての山崎で、外国人のブラウン監督のもとでは力は100%発揮できないと思う。

ズバリ、ブラウンを選んだ楽天のオーナー三木谷氏は人をみる目がない。経営感覚で外国人を監督にしたのだろうが、東北の人たちが応援する球団というのがわかってない。とんだミスキャスト!これで楽天はまた元の弱いチームに逆戻り。そのうちファンが怒り出し、‘ノムさんを復帰させろ!’の垂れ幕を外野席に掲げるだろう。

マスコミは昨年、試合後野村監督のぼやきをとりあげ球界の盛り上げに一役買っていたが、外人監督ではこれもなし。敗けが続けば、三木谷オーナーはイメージダウンを気にしてすぐブラウンを首にするだろう。この人は経営でも野球でも何か心が通わない人だから、別に驚かないが。

オリックスは岡田監督になり強くなった。今年はパリーグの台風になる予感がする。カブレラ、ラロッカの主砲に加え、大リーグから復帰した田口がチームを引っ張れば、クライマックスシリーズへの進出も現実味をおびてくる。投手力をいかに整備するかが勝利の鍵を握っている。

岡田はあのアホ星野にまだ頼っている阪神に愛想をつかし、オリックスの監督を引き受けることにしたのだろう。これはいい選択である。セリーグは今年も原巨人が強いから、阪神に優勝の可能性はほとんどない。城島が入団したからといってもそう変わらない。おそらく、Bクラスに低迷するから真弓はシーズン終了後辞任し、替わって待ってましたとばかりに星野がしゃしゃりでる。

星野は巨人の監督になる気でいたが、原が大監督の道を歩みだしたから諦めざるをえず、ナベツネ爺へのゴマすりもやめ本気で阪神への返り咲きを狙っている。これは野球が好きな人なら誰でも察しがつくこと。まだ、62歳で健康も回復したから監督がやりたくてしょうがないのである。

ところが、監督に復帰しても一度落ちた星野のイメージの悪さは回復せず、選手コーチとのコミュニケーションはうまくいかないから優勝なんてとても無理。せいぜい3位。1年やったところで何も変わらず、星野は球団と喧嘩別れ。泥まみれで追われることになる。そのあと、パリーグでオリックスを優勝させた岡田が三顧の礼をもって迎えられる。

原巨人 vs 岡田阪神の戦いが日本のプロ野球にとって一番おもしろいのに、阪神の古い体質が野球ファンの夢を壊している。巨人が球団改革を着実に進め強いチームに進化しているのに対し、阪神の球団経営は相変わらず甘く、変化がみえない。

阪神ファンには悪いが、岡田が監督に復帰するまで優勝はない。その間、巨人の天下が続くからペナントレースの興味は薄れ、ファンの関心はセリーグからどんどん離れダルビッシュや涌井、岩隈、マー君、杉内らスター選手が多くいるパリーグへシフトしていく。

話がセリーグに脱線したが、パリーグの優勝はどこ?ソフトバンクが本命。穴はオリックス。

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2010.03.21

静嘉堂文庫ではじめて‘唐物茄子茶入 付藻茄子’をみた!

 1384_2    ‘唐物茄子茶入 付藻茄子’

1383_2     国宝‘曜変天目’

1385_2               野々村仁清の‘色絵吉野山図茶壺’

静嘉堂文庫の珠玉の茶道具コレクションを心ゆくまで楽しんだ。アップするのが遅れてしまったが、‘茶道具名品展 国宝・曜変天目と付藻茄子’は明日が最終日。

ここの企画展は毎回図録を作らない。ここ数年、所蔵品の図録をリニューアルしており、3回に一度くらいのペースでニュー図録ができてくる。これがなかなかいい。やきものに限っていえば、本タイプの‘静嘉堂の茶道具’(08年2月)、‘静嘉堂蔵 古伊万里’(08年10月、ともに便利堂)は色がよくでており、頁をめくるのが楽しくなる。

今回の茶道具名品展は04年10月の‘三菱、岩崎家の茶道具 父子2代蒐集の至宝’、08年2月の‘茶碗の美 国宝曜変天目と名物茶碗’に続く第3弾。お目当てはまだお目にかかってない‘付藻茄子’。最初の名品展のとき買った図録にこの茶入は掲載されていたが、そのときも2年前も展示されなかった。だから、関心を持ちはじめて5年半後にようやく対面が叶った。

ここ数年、茶褐色の小さな茶入をみるのが大きな楽しみになっている。今回は目玉の‘付藻茄子’を含め、全部で12点でている。じつはこれを密に期待していたのである。この唐物茶入(南宋~元時代・13~14世紀)の形はたしかに茄子に似ている。もうひとつ、小さい頃のことを思い出した。おたふく風にかかった友達の顔はこんな風に膨れていた。

茶入の魅力は勝手に‘茶褐色の美!’と決めている。これになだれの景色がよければ最高。‘付藻茄子’は長く待った甲斐があった。すばらしい!また、隣にある‘松本茄子’にも魅了された。本当にいい茄子茶入に出会った。

国宝の‘曜変天目’をみるのは2年ぶり。毎度々斑文のまわりできる瑠璃色の光彩を夢中になってみてしまう。この茶碗は世界の宝だと思っているが、それが誕生した中国ではなくて日本にあるというのが嬉しい。お陰でこうやって定期的に鑑賞できる。

桜の季節にふさわしい野々村仁清の‘吉野山’(重文)を前みたのは5年前。ここであった‘京のやきもの展’と東博の‘伊万里、京焼展’に立て続けにでた。黒地に赤と金の縁取りで表現された満開の桜が浮かび上がる光景は幽玄的な雰囲気に包まれている。サイズはあまり大きくないが、強い磁力をもった茶壺である。

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2010.03.20

前田青邨の‘洞窟の頼朝’が重文指定!

1380_3   前田青邨の‘洞窟の頼朝’

1381_3    亜欧堂田善の‘浅間山図屏風’

1382_5                 快慶の‘地蔵菩薩立像’

今年新たに国宝、重文に指定された美術品が本日の朝刊に載っていた。国宝は伊能忠敬の地図など2件、重文は絵画、彫刻、工芸品など38件。

絵画(7点)でみたことがあるのは‘聖徳太子絵伝’(東博)、亜欧堂田善の‘浅間山図屏風’(東博、拙ブログ06/4/11)、前田青邨の‘洞窟の頼朝’(大倉集古館)。また、大阪の藤田美が所蔵する快慶作、‘地蔵菩薩立像’(木造)も今回重文に指定されることになった。40点はいずれ東博の平常展に展示されるだろうから、そのときじっくり鑑賞したい。

明治以降に活躍した日本画家の作品で現在重文の指定を受けているのは次の22点。
・狩野芳崖の‘悲母観音像’、‘不動明王’(ともに東芸大美)
・橋本雅邦の‘白雲紅樹’(東芸大美)、‘龍虎図’(静嘉堂文庫)
・竹内栖鳳の‘斑猫’(山種美)
・横山大観の‘生々流転’(東近美)、‘瀟湘八景’(東博)
・菱田春草の‘落葉’、‘黒き猫’(ともに永青文庫)、‘王昭君’(善寶寺)、
        ‘賢首菩薩’(東近美)
・下村観山の‘弱法師’(東博)

・川合玉堂の‘行く春’(東近美)
・上村松園の‘序の舞’(東芸大美)
・鏑木清方の‘三遊亭円朝像’(東近美)
・今村紫紅の‘近江八景’、‘熱国之巻’(ともに東博)
・小林古径の‘髪’(永青文庫)
・土田麦僊の‘湯女’(東近美)
・村上華岳の‘日高河清姫図’(東近美)
・速水御舟の‘炎舞’、‘名樹散椿’(ともに山種美)

日本画家の系譜でいうと、大観、春草の次の世代で画壇をリードしたのが安田靫彦、小林古径、前田青邨の3人。今回、青邨の‘洞窟の頼朝’が重文になったので、来年あたりは靫彦の代表作‘黄瀬川陣’(東近美)が続くかもしれない。

個人的に今すぐにでも重文になってもらいたいと思っているのは、
・小野竹喬の‘宿雪’(ベネッセ)、‘奥の細道句抄絵’(京近美)
・福田平八郎の‘雨’(東近美)
・東山魁夷の‘年暮る’(山種美)
・加山又造の‘春秋波濤’、‘千羽鶴’(ともに東近美)

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2010.03.19

レンピッカ展は傑作揃いのすごい展覧会!

1376          ‘緑の服の女’

1379            ‘マジョリー・フェリーの肖像’

1378    ‘エリストフ公の肖像’

1377              ‘タデウシュ・ド・レンピッキの肖像’

Bunkamuraの‘レンピッカ展’(3/6~5/9)は関心がすごくあったことは確かだが、期待値が高い展覧会というわけではなかった。というのも、美貌の女性画家レンピッカ
(1898~1980)の絵はこれまでたった2点しかみたことがないのである。だから、この画家は一体どんな絵を描いたのか?それを知りたくて出かけた。

作品の数は油彩69点と関連の素描。会場に入ってまもなくインパクトのある肖像画が続々登場する。レンピッカが最も輝いていた1925年から1935年の10年間に描かれた作品は傑作揃い。そのなかで心をとらえて離さないのが‘緑の服の女’(1930)。

チラシでみてから気になってしょうがなかった。この女性からすぐ連想したのが最近、女優復帰を宣言した沢尻エリカ。白い帽子のつばに手をかけ顔を傾き加減に前方をじっとみる姿が心をかきむしる。My好きな女性画に早速登録した。

1932年に描かれた‘マジョリー・フェリーの肖像’は5年前、東京都美であった‘アール・デコ展’でみた。レンピッカの存在を知ったのは娘のキゼットを描いた‘腕組みをする女’(メトロポリタン美)だが、これはアメリカへ移住した1939年ころの作品。だから、衣服の襞の表現や白の使い方には惹きつけられるところはあるが、絶頂期の作品に較べると印象が弱いことは否めない。

ファッショナブルな衣装をまとい、滑らかな肌をみせるマジョリー・フェリーを強い陰影と輝く白で描いたこの絵は20世紀モダンを象徴するアールデコの香りに満ち満ちている。今となってはこういう時代はノスタルジックな感覚でしか蘇ってこないのだが、映像を観るよりは一枚の絵画のほうが大きな力をもっている。

今回の収穫は女性画のほかにいくつかある男性の肖像画。息を呑んでみたのが‘エリストフ公’(1925)。青紫の服と背景の緑のカーテンがとても印象的。そして、胸のポケットの白いハンカチが強いアクセントになっている。この絵には200%KOされた。レンピッカの最初の夫だったタデウシュの肖像(1928)は目にすごい力がある。左手は完成してないが、仕立てのいいコートの質感描写と目力がそんなことを忘れさせる。

女性は目が大きくその姿態は多くが角張ったヴォリューム感のある形態で描かれている。だから、肌の露出が多い場合、アングルの‘トルコ風呂’に描かれた裸婦とか東郷青児の女性が頭をよぎる。取り上げた女性の絵2点はそのあたりはそれほど印象つけられないが、例えば、パンケーキを乗せたみたいにみえる頭の髪やオッパイがじょうろのような形をした‘シュジー・ソリドールの肖像’などは好き嫌いがわかれるかもしれない。

Bunkamuraの企画展を高く評価しているのは、TASCHEN本などに載っている画家の代表作をドッと集めてくれるところ。作品の質を高いところにおき、‘一級の回顧展あるいはテーマ展にするんだ!’という意気込みが展示内容に現れている。

たまにロートレック・コネクションのような目玉のないのもあるが、年間を通してみれば拍手をしたくなるものが多い。昨年のだまし絵展ではアンチンボルドの‘ルドルフ2世’を展示してくれたり、今回もレンピッカの代表作を沢山集めてくれた。これからも大いに期待したい。

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2010.03.18

ベルナール・ビュフェ展にサプライズの絵があった!

1373_2   ‘キリストの十字架降下’

1374_2   ‘赤い鳥’

1375_2   ‘サーカス’

目黒区美では現在、‘ベルナール・ビュフェ展’(2/11~4/11)が行われている。
ビュフェ(1928~1999)は好きな画家なのだが、昨年8月横浜そごうで回顧展(拙ブログ09/8/4)があり、今回出品される作品もまたビュフェ美蔵だというからちょっと迷っていた。でも、連チャンする展覧会の流れとぐるっとパス券が使える気安さもあって足を運んでみた。

作品は50点の油彩と版画21点。このうち油彩2点だけがギャルリーためなが蔵でほかは皆ビュフェ美からやってきた。これを企画した人のこころは1953年、ビュフェが文学者ジャン・ジオノの‘純粋の探究’のために描いた21点の挿画に焦点を当てることにある。

油彩は1945年から1955年までに描かれた初期の人物画や風景画や静物画。色は大半が白黒のモノトーンである。予想した通り、作品はこれまでみたものがかなりある。ビュフェの絵に惹かれる大きな理由は画面がデカイから。初期の作品でお気に入りは大作の‘キリストの十字架降下’(1948)。

イタリアでキリストの磔刑図の傑作をみてきたばかりなので、この現代見立ての磔刑にもすぐ反応する。さらっとみると平板な絵だが、人物の巧みな配置によって十字架に磔にされたキリストのまわりに広がりができている。男でも女でもジャコメッティの彫刻のように体は異様に細長い。人体の形はルネサンスの宗教画とは似ても似つかないが、磔刑の悲しみは十分に伝わってくる。

サプライズの絵は大作‘赤い鳥’(1959)と‘サーカス’(1955)。ともにギャルリーためながの所蔵。とくに‘赤い鳥’にびっくりした。この大きな赤い鳥と片目を隠してこちらをじっとみている裸婦の組み合わせは一体何なの?という感じ。衝撃度はマグニチュード7クラス。息を呑んでみていた。

‘サーカス’(1955)も見栄えのする絵。そごうでは横4.85mの同じ題名の絵にすっかり参ったが、これも魅力いっぱい。日本にあるビュフェのいい絵はビュフェ美に集結していると思っていたが、ギャルリーためながに驚愕する絵が2点もあった。ところで、ためながはどこにあるの?有名な画廊?

この企画展の図録(2800円)は通常のものとは違い、全作品の絵葉書をまとめたもの。絵葉書の単品売りはなしというので、ためなが蔵の2点のために購入した。ほかの絵は手元にあるビュフェ美の図録に載っているのだが、、まあ仕方がない。こんないい絵をみせられて手ぶらで帰るわけにはいかない。で、いつもなら100円の絵葉書が1枚1400円の特別価格になってしまった。

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2010.03.17

ビバ!イタリア ローマ観光のハイライト サン・ピエトロ大聖堂!

1372_2    サン・ピエトロ大聖堂

1369_2   ミケランジェロの‘ピエタ’

1371_3      ベルニーニの‘ブロンズの天蓋’

1370_2            ベルニーニの‘アレクサンデル7世の墓’

ローマ観光のハイライト、サン・ピエトロ大聖堂の中へ入るのは10年ぶり。テヴェレ河畔にあるファルネジーナ荘からはタクシーを使わず、歩いて行った。15分くらいで広場がみえてきた。

左右に延びる柱廊の柱は284本ある。上には140もの聖人像が立つ。中央のオリベスクは単独だったらこれに視線は集中するだろうが、大聖堂から両腕がでているような柱廊の存在感が強いため、目の動きは遠心的になる。

聖堂へ入ると右側にいきなりミケランジェロ(1475~1564)の‘ピエタ’があった。近づくと彫像はガラスケースに囲まれている。徐々に記憶が戻ってきた。ミケランジェロがこの静謐なピエタをつくったのは20代の前半。この若さでこんな傑作をつくるのだから、ミケランジェロはまさにスーパー天才。

これを依頼したフランス人枢機卿が制作現場にやってきて、‘どうしてマリアさまの顔はこんなに若いのかね?息子よりも若いようだが’と尋ねた。すると、ミケランジェロは‘枢機卿さま、わたしにとって、マリアさまは年をとられないように思われるのです。聖母さまはけがれのないお方でした。だから、老いることのない若さを保っておいでなのです’と答えた。

内陣にある‘ブロンズの天蓋’のねじれた柱をはじめてみたときはアドレナリンがドッと出た。誰がこれをつくったの?このとき彫刻家ベルニーニ(1598~1680)の名前を覚えた。人を驚愕させるのがバロック芸術の真骨頂。時代がこういうインパクトのある華美な装飾を求めたのである。上の巨大なクーポラはミケランジェロの設計。ここにいるとこの聖堂のスケールの大きさを実感する。

聖堂内にはベルニーニの彫像の傑作がいくつもある。‘聖ペテロの司教座’、‘ウルバヌス8世の墓’、‘アレクサンデル7世の墓’、手を大きく広げた‘聖ロンギヌス’。いつも興味深くみているのが‘アレクサンデレ7世の墓’。これが完成したのはベルニーニが80歳のころ。

ここにギョッとするものが彫られている。赤茶っぽい色大理石で表した布の下にいるのは金メッキされたブロンズの骸骨。右手に砂時計をかかげている。砂時計ははかなさの象徴。前はすぐ近くでみれたのだが、今はそれがダメで少し離れたところからみるようになっていた。

イタリア感想記に長らくお付き合い下さいましてありがとうございます。大好きなルネサンス美術やカラヴァッジョの絵が楽しみの中心でしたから、画像はいつもより1点増やして4点にしました。今回の美術めぐりで遭遇した絵画、彫刻の傑作を皆さまと共有できたことを心から喜んでいます。

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2010.03.16

ビバ!イタリア  ヴァティカン博(5) さあ ミケランジェロ!

 1366    ‘最後の審判’

1368    ‘太陽と月の創造’

1367    ‘アダムの創造’

1365           ‘デルフォイの巫女’

システィーナ礼拝堂のなかに入ってまず、驚くのが人の多さ。ミケランジェロ(1475~1564)が描いた壮大な天井画と祭壇後ろの壁画を見るため、世界中からやってきている感じ。皆、壁の前にある長椅子が空くのをすばやくみつけて座る。今は観光客が少ないから席とりにあまり時間がかからないが、大混雑の夏あたりだと大変。

天井に描かれた旧約聖書にもとづいた9場面からなる‘天地創造’(1512年)と正面の‘最後の審判’(1541年)をみる順番は人それぞれだが、首が疲れない‘最後の審判’のほうに先に目がいく。縦13.7m、横12.2mの大スケール壁画なので、双眼鏡があると人物の表情や動きがよくとらえられる。

彫刻家の描くキリストだから、その肉体は胴まわりが太くマッチョ筋肉質。右手を頭のあたりに上げ、左手を胸の前におくポーズは躍動感に満ちている。まわりでキリストをながめる人たちもこれに呼応して体を水平にしたり、横に大きくひねったりしているので画面全体に強いムーブメントが生まれている。

人々の密集度の高い上部に比べ、下半分のほうが動きにスピードがある。左側の天国に昇る人々は海中のイルカが勢いよく上昇するのを連想させる。‘ああー、良かった。早く上へ行こう’といったところ。が、右の地獄へ落ちる者は落とされまいと必死に抵抗している。

右下の隅をみると、蛇に体にまきつかれ男根を噛まれている男がいる。地獄の番人ミノスである。そのモデルになっているのが儀典長チョゼーナ。この男はミケランジェロが裸の人間を描いたとして批判したものだから、これがミケランジェロをいたく怒らせ、こんなぶざまな姿にされてしまった。

天井までは約18m、6階建てのビルくらいの高さ。だいぶ高いところに描かれた壁画をみている感じなのだが、各場面とも人物が大きく描かれているので、双眼鏡がなくても大丈夫。‘最後の審判’の側から天地創造の物語がはじまる。‘太陽と月の創造’では、右にいる老人の姿をした創造主は右手で太陽を、左手で月を造る。左は体の向きを変えたところ。尻をこちらに向け、植物をつくるため進んでいる。

このお尻をみせる老人をみて、瞬間的に‘そうか、ティントレットが描く宙を舞う人物(拙ブログ2/5)はミケランジェロのこの絵が霊感源だったのか!’と思った。これまで二人のつながりに気がつかなかったが、ティントレットがミケランジェロの素描とティツィアーノの色彩を追い求めていたことを考えると当たっているかもしれない。

9場面のなかで最も惹かれているのが‘アダムの創造’。神が最初の人間アダムを創り、指先から魂を吹き込もうとしている瞬間が描かれている。映画‘E.T’でこの場面をイメージさせるシーンをみたときは感激した。聖書に書かれていることをこういう風に視覚化するのだから、ミケランジェロの才能はまさに神がかっている。

大好きな‘デルフォイの巫女’と10年ぶりに会った。なんと魅力的な巫女だろう。大きな目、みずみずしい肌の色、うっとりするような若々しい色香。もうダウン寸前!じつはMy好きな女性画ベスト3はこの巫女とフェルメールの‘青いターバンの少女’、竹久夢二の‘黒船屋’(同率一位)なのである。だから、放心状態でながめていた。

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2010.03.15

ビバ!イタリア  ヴァティカン博(4)システイーナのもう一つの壁画!

1363_2   ボッティチェリの‘モーゼの生涯のできごと’

1364_2   ロセッリの‘紅海を渡るモーゼ’

1361_2   ギルランダイオの‘聖ペテロと聖アンドレのお召し’

1362_2   ペルジーノの‘鍵を手渡すキリスト’

ヴァティカン博鑑賞の目玉はなんといってもシスティーナ礼拝堂にある圧倒的な迫力をもつミケランジェロの壁画。だから、中に入るともう興奮状態で祭壇の‘最後の審判’と天井の‘天地創造’をひとつ々追っかけていく。そのうち首が疲れてくるが限界まで夢中でみる。

最初の観光ではだいたいこれで終り。二度目からはすこし余裕があるので祭壇に向かって両側の壁に描かれた絵が目にとまるようになる。でも、壁画はだいぶ高いところにあり、ラファエロの間の絵のようにはっきりみえないので、双眼鏡を使わないとこの左右6枚づつある絵は楽しめない。

これらが描かれたのは1482年頃。時の教皇シクストゥス4世からお呼びがかかったのはフィレンツェで活躍するポッティチェリ(1445~1510)、ギルランダイオ(1149~
1494)、コジモ・ロセッリ(1439~1507)、そしてペルージア出身のペルジーノ
(1448~1523)。

左側に‘モーゼ伝’、右側に‘キリストの生涯’が描かれている。ボッティチェリが手がけたのは‘モーゼ伝’の2番目‘モーゼの生涯のできごと’と3番目‘モーゼの戒律に対する反抗’、‘キリストの生涯’の2番目‘ユダヤの犠牲とキリストの試練’。

‘モーゼの生涯’は異時同図法によりモーゼが若いころの逸話が一つの画面に時間をずらして描かれている。中央ではエテロの娘たちの羊にモーゼ(橙色と緑の衣服を着ている)が水を飲ませている。やがて、この娘の一人がモーゼの妻になる。ボッティチェリらしい美しい線描にグッと惹きこまれた。

ロセッリは‘紅海を渡るモーゼ’を描いた。この話になるとすぐチャールトン・ヘストンが主演した映画‘十戒’を思い出す。海が割れてそこにできた道をモーゼを先頭にイスラエルびとたちが渡っていくシーンは何度見ても感激する。で、この絵にもすっと入っていける。左には紅海を渡り終えたモーゼたちがおり、右では追撃するエジプト軍が波に呑みこまれている。

‘キリストの生涯’で長いこと双眼鏡をのぞいていたのはギルランダイオとペルジーノの絵。ミケランジェロの壁画の陰にかすみがちだが、本当に見ごたえのある絵である。二度目だから絵の完成度の高さがわかってきた。

館の図録の表紙に使われているギルランダイオの絵はガリレア湖のほとりで漁夫のペテロとアンデレがキリストに弟子入りする場面が描かれている。手前中央のキリストと跪く二人に見る者の視線をひきつけ、そのまわりや背景にV字を大きく広げるように人々や左右の山を配置する構成にとても魅了される。

ギルランダイオは宗教画に当時の風俗を描きこんでおり、この画風はサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の壁画(拙ブログ2/22)で頂点を極める。

ペルジーノの‘鍵を手渡すキリスト’も傑作。ラファエロが21歳の頃描いた‘聖母の結婚’(ミラノ・ブレラ美、07/4/29)は師匠の絵を踏襲している。この絵は広重の描く風景画の構成とよく似ている。

手前の横に並ぶキリストや鍵を渡されるペテロたちは頭の高さをそろえて大きく描き、中景、遠景では人物はだんだん小さくなる。また、遠近法の消失点が中央の建物にあることがクリアカットにわかるので、広々とした光景を安定感よろしくみれるのもいい。

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2010.03.14

ビバ!イタリア  ヴァティカン博(3) ラファエロの壁画の傑作!

1357_2    ‘アテネの学堂’

1359_2     ‘聖体の論議’

1360_2    ‘聖ペテロの解放’

1358_2    ‘ボルゴの火災’

古代ギリシア・ローマの彫刻をみたあと、タピストリーと地図のギャラリーをどんどん進んでいくと‘ラファエロの間’にたどりつく。ここにラファエロ(1483~1520)の壁画の傑作がドドッとある。

最初の部屋がヘリオドスの間で‘聖ペテロの解放’、‘ヘリオドスの追放’、‘ボルセーナのミサ’(現在修復中でみれない)がある。次が署名の間、ここに有名な‘アテネの学堂’、その向かい側の‘聖体の論議’、‘パルナッソス’、‘正義の壁’。3番目の火災の間にあるのは‘ボルゴの火災’だけ。

壁画に加え天井の装飾もあるから、じっくりみると1時間くらいかかる。ここの明るい色がくっきり目に焼きつく大壁画をみたら、いっぺんにラファエロの絵にのめりこむ。システィーナ礼拝堂にあるミケランジェロのフレスコ画は天井画でも正面の‘最後の審判’でも、みる位置から距離があるのに対し、ここではすぐ近くで画面の隅から隅までみることができるから目に力が入る。

‘アテネの学堂’でラファエロはダ・ヴィンチを中央のプラトン、そしてミケランジェロを手前でひじを台につけているヘラクレイトスとして登場させている。また、自分をユリウス2世に推薦してくれた同郷の建築家ブラマンテをユークリッド役で描いている。

署名の間に描かれているテーマは神学、詩学、哲学、そして法学。神学を表現しているのが‘聖体の論議’。視線が集中するのが天上の三位一体をとりかこむ聖人や預言者たちが乗っている細長い雲。じっとみているとこちらに飛び出してくる感じ。天上と地上で議論を交わす大勢の人物を遠近法を用いバランスよく配置するラファエロの画面構成力はやはり超一流。

‘聖ペテロの解放’はお気に入りの絵。暗闇の牢獄に明るい光に包まれる主の天使を浮かび上がらせる構成はカラヴァッジョやレンブラントの絵を彷彿とさせる。ヘロデ王に牢獄に閉じ込められたペテロを天使が救い出す場面が描かれているが、異時同図法が使われている。真ん中が天使が寝ているペテロを起こすところ、右は首尾よく牢の外に二人が出たところ。左では居眠りしていた牢番が‘おい、ペテロがいないじゃないか?’とたたき起こされている。

描かれた順番としては‘聖ペテロの解放’と‘ボルゴの火災’が最後。‘ボルゴの火災’はぱっとみるとコルトーナやプッサンが描いた‘ザビニの女たちの略奪’(拙ブログ3/308/3/31)を思い出させる。ズキンとくるのが真ん中にいる裸の幼児の泣き出しそうな顔。左の建物では火が勢いをまし、若者は壁をやっと降りてきた様子。手足がやけに長いこの人体描写は200%マニエリスム様式。

この男の体と同じくらい惹き付けられるのが右端で衣服をひらめかせながら水を運んでいる女。また、その向こうで水をリレーしている二人の女にも釘付けになる。しばらく息を呑んでみていた。

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2010.03.13

等伯のここが好き!

1354           ‘善女龍王像’

1353       ‘日通上人像’

1355   ‘寒江渡舟図’

1356   ‘松林図’(右隻)

長谷川等伯展(東博)の後期(3/9~3/22)をみてきた。当初は16日の予定だったが、平日でも相当混雑しているという情報が入ってきたので、急遽昨日に変更。

会場には10時に着いたのだが、もう30分待ち。この時間帯でこのくらいの人が集まっているのだから午後になるとかなりの待ち時間になるだろと思われた。果たして、12時ごろは70分待ち。この調子だと土日は2,3時間待ちになるかもしれない。これはすごい人気!

後期にでてくるのは4点、肖像画1点、金地にお猿さんの絵‘竹林猿猴図屏風’(重文、相国寺)、‘松に鴉・柳に白鷺図屏風’(出光美)、‘烏鷺図屏風’(川村記念美、拙ブログ06/1/15)。このうち肖像画と‘竹林猿猴図’は初見。

‘烏鷺図’は6日、マリー・ローランサン展で川村へ行ったら平常展示で飾ってあった。ここへ出すのだったら、等伯展に通期展示すればいいのに。‘国宝2点が出ずっぱりなのに、重文の絵がどうして出せないの?’どうもこの美術館にたいする好感度は昔から悪い。
 
‘竹林猿猴図’はそれほどぐっとこなかった。もともと金地の絵は東博蔵の‘瀟湘八景図’にしても‘山水図襖’(重文、隣華院)にしても墨一色に較べるとあまり響かない。で、お気に入りの仏画や肖像画をもう一回みた。等伯は人物描写がとても上手い。はじめてみる‘善女龍王像’(七尾美)の女姓の顔のきれいなこと。また、‘釈迦多宝如来像’(大法寺)の金で彩色された如来も心を打つ。

肖像画でお気に入りは‘日通上人像’(重文、本法寺)。03年、東博であった‘大日蓮展’で遭遇したが、等伯は上人の内面を見事に描いている。これは西洋の肖像画と並べても遜色の無い傑作である。

前期(3/3)同様、絵の前に長くいたのが‘寒江渡舟図’。横に‘山水図’があるが、構図はこの絵のほうがいい。男がつけている蓑の白が輝いているのが印象的。中国画でない日本の絵師が描いたこの手の絵ではこれが最も心を打つ。忘れられない絵になりそう。

‘松林図’をまたじっくりみながら、結局、等伯は墨の濃淡だけで描いた水墨画に取り組んでいるときが一番心が落ち着くのだなと思った。好きなモティーフは柳、竹、松。人物画は名人だが、ボリュームのある馬とか虎は平凡であまりおもしろくない。巨大な‘仏涅槃図’の左下にいる馬はどうなっているのかよくわからないし、‘牧馬図’で多数描かれている馬の形もなんだか変。

小鳥とか猿(09/1/23)とか鶴はお手本があるから描けるが、虎や馬などはじっくり動きを観察しないとちゃんとした形にならない。思うに等伯は柳や松の葉とかススキといった直線をすっとのばせるモティーフが好きで、まるいものを形にするのは性に合わなかったのかもしれない。

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ビバ!イタリア  ヴァティカン博(2) 絵画館の名画!

1352_2          アンジェリコの‘聖母子と聖ドミニク、聖女カタリナ’

1351_2          フォルリの‘ヴィオロンを弾く天使’

1349_2            ラファエロの‘キリストの変容’

1350_2          カラヴァッジョの‘キリストの埋葬’

ヴァティカン博で絵画をみれるのは4箇所ある。入館して左側に進むとみえる絵画館。次が古代ギリシア・ローマ彫刻のあとの導線になっているラファエロの間と現代絵画の部屋、そして最後がお待ちかねのミケランジェロの‘最後の審判’と天井画‘天地創造’があるシスティーナ礼拝堂。

絵画を全部楽しもうと思ったらやはり1時間半から2時間は必要。もし彫刻も含めて2時間で見終わりたいのであれば彫刻は大急ぎで30分でみて、残りを絵画にあてる。ラファエロとミケランジェロは合わせて1時間はみたい。となると、絵画館に30分とり、ラファエロの間の次の導線になっている現代絵画はどんどんパスして、シシティーナ礼拝堂にとびこむ。

絵画館には中世ゴシック、ルネサンス、バロック時代の絵が展示してある。ルーヴル美のようにはいかないが、ビッグネームの作品はかなりある。ざっとあげてみるとジョット、アンジェリコ、リッピ、クリヴェリ、ペルジーノ、ラファエロ、ダ・ヴィンチ、ベリーニ、ティツィアーノ、ヴェロネーゼ、カラヴァッジョ、レーニ、コルトーナ、ルーベンス、プッサン。

フラ・アンジェリコ(1395~1455)は3点。聖母の青い衣裳と細密画のような黄金の線描が目に焼きつく‘聖母子と聖ドミニク’と港の情景を描いた‘聖ニコラスの生涯’にとても魅了された。クリヴェリは1点あったが、前回見逃した‘聖母子と4人の聖人’は現在修復中で展示されてなかった。残念!

アンジェリコの黄金に輝く天上界同様、気分が明るくなるのがメロッツォ・ダ・フォルリ
(1438~1494)のフレスコ画の断片14枚。いずれも明るい色彩なので浮き浮きしてくる。フレスコ画でこれほどインパクトのある青や緑、橙色、赤、紫、ゴールドがみれるのはそうない。とくに青と黄金の輝きが目に焼きつく。お気に入りは昨年紹介した‘リュートを弾く天使’(拙ブログ09/9/7)と可愛い大きな目とカールした金髪が心を揺すぶる‘ヴィオロンを弾く天使’。この2枚は極上の天使画。再会できた喜びを噛み締めている。

一番奥の部屋にあるのがラファエロ(1483~1520)の遺作となった‘キリストの変容’。若い頃はやさしい聖母子の絵を描いたラファエロだが、30代になると画風に変化がみられ激しい動感描写とマニエリスム的な人体描写のみられる絵が登場する。‘キリストの変容’でびっくりするというか戸惑うのが画面の下半分。

右で両手を大きく広げている少年はドキッとするほどマニエリスム的に描かれており、この少年を指差し見つめる使徒たちの衣服や表情には明暗の強い対比がみられ、緊迫した空気が漂う。少年は悪魔に憑かれており、使徒たちはどうしても治せなかった。ところが、キリストが奇跡を起こしたのである。キリストは飛翔し、聖ペテロら3人の弟子はキリストから発せられる輝かしい光に手をかざして地上にひれ伏している。ともに両手をあげているキリストと少年が長く頭から消えなかった。

次の部屋へ進むと、今度は女性が両手をあげている。オランスという両手を広げる身振りでキリスト、少年、女性が響き合っていた。カラヴァッジョ(1571~1610)が1602~04年ごろ描いた‘キリストの埋葬’をみるのは3度目。おもろいことに人物で覚えているのは右のクレオパのマリアと手前でキリストを支えているニコデモだけ。

この絵は誰がみてもこの二人に視線が向かう。背中をまるめてこちらをみているニコモデは鼻のあたりが赤くなっており、その逞しい足とあわせて考えるとどうみてもローマの周辺で働く農民のイメージ。そして、その後ろで焦点の定まらない目をして手を高く上げている女は街の一杯飲み屋の給仕女風。宗教画なのに、こういう風俗画として描かれているのでかえって宗教上の出来事は身近なものに感じられる。そこがカラヴァッジョの絵に惹きつけられるところ。

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2010.03.12

ビバ!イタリア  ヴァティカン博(1) 古代彫刻の傑作と再会!

1348_2          ‘ラオコーン’

1345_2            ‘ベルヴェデーレのアポロン’

1347_2            ‘ベルヴェデーレのトルソ’

1346_2    カノーヴァの‘ペルセウス’

10年ぶりに訪れたヴァテイカン博物館は入館の仕方が変わっていた。前は螺旋通路をどんどん上がっていったが、今はエスカレータができていた。これは助かる。

ここは古代ギリシア・ローマ彫刻、エジプト・アッシリア美術、エトルリア美術、絵画館、現代美術、ラファエロの間、システィーナ礼拝堂とみるところは沢山ある。まずは古代彫刻から。

ヴァティカン博というとすぐ思い浮かべるのが‘ラオコーン’。これは前2世紀後半にペルガモンでつくられたブロンズ像をローマ時代に大理石でコピーしたもの。1506年、トロヤヌスの浴場の下にあったティトゥスの宮殿の廃墟から発見されたときはローマ中が大騒ぎになり、あのミケランジェロもしっかりみている。

二匹の獰猛な蛇が神官のラオコーンと二人の息子を締め殺そうとしている。ラオコーンの表情があまりに絶望的なのでその肉体的苦痛の激しさがわかろうというもの。彫刻は立体的だから、この悲劇の瞬間を絵画より数倍のリアルさをもって表現することができる。何度みてもこれには感動する。ちょうど居合わせた韓国の団体ツアー客が次々に記念写真を撮っていた。

ヴァティカンにはベルヴェデーレ(見晴らしのよいの意味)と呼ばれる中庭があり、‘アポロン’と‘トルソ’はここに置かれていたのでベルヴェデーレという名前がついている。‘アポロン’の原作は前4世紀のブロンズ像、これはローマ時代、2世紀のコピー。‘ラオコーン’同様、ここの至宝である。とても惹かれるのがマントを左手に掛け体を横にひねって立つ姿。人体の理想の形が示されており、これほど美しくカッコいい像はほかにない。

ミケランジェロが熱心に研究したのが‘トルソ’(50年頃、大理石)。フィレンツェのカーサ・ブオナロッティにこれとよく似た‘河神’の粘土の模型(2/18)があった。また、バロック絵画の巨匠、ルーベンスも1601年にこれを模写している。

‘ラオコーン’や‘アポロン’が飾ってあるのは八角形の中庭。ほかにはギリシアのアスリートが疲れて手足の汗をぬぐっている姿を表した‘アポクシオメノス’(原作は前320年頃)とかカノーヴァ(1757~1822)の‘ペルセウス’などがある。

‘ペルセウス’はイタリアを占領したナポレオンが‘アポロン’をパリに持ち去ったのでその穴埋めとして1802年、ピウス7世が購入した。この作品はここにあってもなんら違和感がないのだから、新古典主義のカノーヴァもすごい彫刻家である。

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2010.03.11

ビバ!イタリア  ラファエロの‘ガラテアの勝利’と歓喜の対面!

1341_4        ラファエロの‘ガラテアの勝利’

1343_2          キューピッドとプシュケの間

1342_2   ラファエロ派の天井画‘神々の会議’

1344_2    外の景色がみえるホール

ローマにおける自由行動の二日目はまずお目当てのラファエロの絵があるファルネジーナ邸をめざした。この邸宅はテヴェレ河畔にあり、サン・ピエトロ広場からは1.2kmくらい。

もとは富裕な銀行家アゴスティーノ・キージの別荘(1511年)だったが、16世紀末にここがファルネーゼ家に買い取られ、ファルネジーナ邸と呼ばれるようになった。ラファエロが大パトロンのキージから依頼されて描いたのがフレスコ壁画‘ガラテアの勝利’。この絵との対面を長いこと待っていたが、やっと実現した。

真ん中で赤いマントを風になびかせているのが海神ネレウスの娘、ガラテア。2頭のイルカが引っ張る鳥貝の凱旋車に乗っている。このまるっこいイルカの目は茶色で口の歯がギザギザに尖ってはいるが、全体の雰囲気はとても可愛く、ゆるキャラとして売り出せばすぐ人気が出る感じ。ラファエロの絵を沢山みてきたが、こういうくだけた気分になったのははじめて。

この絵には人物が大勢登場するのに配置がとても上手く、動的描写に統一感があるので、ビジーな感じは一切せず、絵のなかにグイッと惹き込まれる。視線が集まるのが3人のキューピッドが愛の矢を放とうとしているガラテアのひねりのきいた姿態。その一方で、左右にいるガラテアの従者が法螺貝やラッパを吹いているので、空間の横への広がりが生まれる。期待通りのすばらしい絵だった。

これで画集に載っているラファエロの絵で見てないのはボローニャの国立絵画館にある‘聖チェチリアの法悦’だけになった。大好きなラファエロの名画を幸運にもこれだけ多くみれたのはひとえに心やさしいミューズのお陰。感謝々。

1階のみどころはもうひとつあった。キューピッドとプシュケの間の天井画。ここにはラファエロ派によって‘神々の会議’と‘キューピッドとプシュケの結婚’が描かれている。ギリシャ神話はライフワークのひとつだから、こういうゼウスやヘラ、アテナといったオリンポスの神々や英雄がでてくる絵をみると俄然目に力が入り、楽しくなる。

この館は2階建て。ガラテアの絵以外は情報がないまま2階に上がると、広いホールにサプライズがあった。両サイドには太い大理石の円柱があり、そこから外の景色がみえるのである。うむ?!本当に壁がないの?一瞬そう錯覚するがこれはだまし絵。ありゃらー、ここにも外の景色をみせるだまし絵があった!

また、隣のキージの寝室にある‘アレッサンドロの結婚’でも遠近法や短縮法を使い外にのびているように思える廊下や天井に浮かぶプットーたちが描かれている。ポッツォの天井画がファルネジーナ邸と響き合っていたとは思ってもみなかった。

だまし絵との遭遇にすっかりいい気持ちになって、ここのすぐ隣にあるコルシーニ美へ急いだ。カラヴァッジョの‘洗礼者ヨハネ’をみるためである。ところが、館のなかは人影がない、嫌な予感。案内係りの人に聞くと、ここは月曜が休館日だった!ガックリ。

実はこの美術館はガイドブックの地図にはでているが本文には紹介されてないので、はじめからリスクはあった。でも、ファルネジーナ邸とここは隣合わせなんだから、誰だってセットで訪問しようと思う。まあ、これは仕方がない。カラヴァッジョ追っかけ第2弾は結局4勝3敗に終わった。

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2010.03.10

ビバ!イタリア  ちょっと一服 イタリア雑感!

1340_2

ローマの美術めぐりは残すところファルネジーナ邸、ヴァティカン博物館、サン・ピエトロ大聖堂の3つ。もうしばらくお付き合いください。今日はちょっと一服して、イタリアに滞在して気づいた街の風景や生活習慣の違い、イタリア人気質のことを少々。

★‘ホテルのエレベーターは閉めボタンがない!’

ホテルに到着すると、添乗員さんから翌日のモーニングコールや荷物出し、朝食の時間を聞いて、とりあえずは解散となる。部屋の鍵をもらって、エレベーターに乗り込むが、ここでは開けボタンはあっても閉めボタンがない。じっと待っているとやっと閉まって上がっていく。総じてエレベーターの速度は遅い。日本の速いエレベーターに慣れていると、なんだかかったるい。この調子だからスローライフには縁がなさそう。

★‘ローマにタクシー乗り場が沢山増えた!’

4年前、カラヴァッジョの絵がある教会をタクシーを利用してまわった。だが、このタクシー拾いに結構時間を食う。ちゃんとした乗り場がないので、こちらが先に待っているのに、狙ったタクシーが到着する前に強引に割り込まれることが数回あった。今はそういう嫌な思いをすることがない。広場や主要通りの一角にタクシー乗り場ができており、利用者はそこに並んでいる。これはとてもいいこと。

★‘歩道には相変わらず犬の糞が落ちている!’

観光客の多いフィレンツェでもローマでもヴェネツィアでも歩道のいたるところに犬の糞が落ちている。イタリアに限らず、ヨーロッパの街はどこでも犬の糞に悩まされる。フィレンツェのサンタ・クローチェ教会のあたりを歩きながら、27年前住んでいたジュネーブの街とまったく変わらないなと思った。肉を主食にしている人たちは排泄物にたいしては無頓着。だから、日本では当たり前のマナーとして行っている犬の散歩中の糞の処理はこちらではまったくなされない。

★‘ローマの街に乞食がいた!’

ローマのマグドナルドでカプチーノを飲んでいたら、あたりをキョロキョロ見渡しながら年配の男が物乞いに来た。‘ええー、店の中まで乞食が入ってくるの?!’店内を掃除している女の子はその男を追い出すかと思ったら、なにも言わない。そのうち、婦人がお金を渡すと出て行った。日本では考えられない光景だった。イタリア人はおおらかだネ。

★‘日本人はグラッツィェ(ありがとう)がちゃんと発音できる!’

イタリア語でありがとうはGrazie、グラッツィェ。添乗員のTさんによると、日本人はこれがきれいに発音できるが、中国人や韓国人はグラッチェになるそうだ。だから、日本人がグラッツィェを言うとイタリア人がしゃべるのと変わりないからすごくいい感じらしい。これでコミュニケーションがうまくいくのだから、グラッツィェはまさに恵みの言葉!

★‘イタリアではかわいい女をみて声をかけない男は男ではない!’

イタリア男の女好きというイメージがすっかりできあがっている。はたしてそうなのか?これは聞くだけ野暮。200%そうなのである。イタリアの男はいい女をみたら声をかけるのが礼儀だと思っているとTさんは言っていた。

おもしろい小話をひとつ。あるとき、豪華客船でタイタニック号と同じ事故が起きた。船はどんどん沈んでいくので、乗客は海に飛び込まないと命は助からない。でも大半は怖くてふんぎりがつかない。で、船長は国籍によって言い方を変え決心を促した。

ドイツ人には‘飛び込むのがルールになってます’というと、皆一斉に飛び込んだ。
アメリカ人には‘飛び込むとヒーローになれますよ’とささやくと、声をあげて飛び込む。
日本人には‘皆さん飛び込んでますから’というと、安心して前の人に続く。
さて、イタリア人には船長はニヤッと笑い‘飛び込むと女の子にもてますよ’というと、急に元気がでて飛び込んだ。

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2010.03.09

ビバ!イタリア  国立近美(2) カノーヴァの大彫刻に釘付け!

1339_2   クールベの‘雪道を行く密猟者’

1337_3   セガンチーニの‘プローヨークにて’

1336_3      コルコスの‘夢’

1338_3   カノーヴァの‘ヘラクレスとリカス’

国立近代美術館に展示されているのは19世紀以降の絵画と彫刻、オブジェ。大半が名前を知らないイタリア人作家のもの。印象派はドガ、セザンヌ、ゴッホが1点ずつあるだけ。ただ、今回はゴッホの男の肖像画はなかった。ルノワール、モネ、マネ、ゴーギャンはない。

時間がたっぷりあるわけではないから、知らないイタリア人画家の絵のまえはどんどん通りすぎ、多少は馴染みのある画家のものを時間をかけてみた。クールベ(1819~
1877)の‘雪道を行く密猟者’は08年パリのグランパレで開催された大回顧展(拙ブログ08/2/23)でみた。この展覧会でクールベの偉大さがわかったので、つい目に力が入る。

イタリア人の画家で、すぐ思いつくのはモディリアーニ、デ・キリコ、未来派のバッラ、ボッチョーニ、セベリーノ、静物画のモランディ、セガンチーニ、フォンタナあたり。前々からもっと作品をみたいと願っているのはセガンチーニ(1858~1899)だが、これまでに体験したのは片手くらい。だから、新規の作品に遭遇すると幸せな気分になる。

前回同様、この横長の画面にアルプスを背景に野原と牛が描かれた絵をしっかりみた。この絵はセガンチーニ28歳頃の作品で、ミラノの美術館にある‘ギャロップで走る馬’(05/11/22)と同じくはじめて分割法が用いられている。明るい光のあたる自然の色と暖かい空気が漂う雄大な景色にとても魅了された。

今回の収穫はあまりに美しい女性なのでヘナヘナになった‘夢’。どういうわけか前回、この絵を見た記憶がない。どうして?クリムトと未来派にばかりに心が向かっていたから、この絵がある部屋をパスしてしまったのかもしれない。画家の名前はヴィットーリオ・コルコス(1859~1933)、女性画専門のフィレンツェの画家。My好きな女性画に即登録した。

入り口の左にある大きなルーム1に飾ってあるのがアントニオ・カノーヴァ(1757~
1822)の大彫刻作品‘ヘラクレスとリカス’。高さ3.5mもある巨大なヘラクレス像をびっくり眼でしげしげ眺めていたら、80歳くらいの品のいいお婆さんトリオが寄ってきて‘これはそう、カノーヴァの作品よ、すごいわネ’と話かけてきた。これを見たら子供だって老人だってみな感動する。

ヘラクレスは足を大きく広げ、右手は伝令使のリカスの髪、左手は足先をつかんでいる。これからこの男を海に投げ込むところ。リカスの顔は恐怖心でひきつっている。どうして、ヘラクレスはこんなに激怒しているの?ケンタウロスのネッソスの復讐にあい、ヘラクレスはダウン寸前。その原因がリカスにあると怒り狂っているのである。

以前、ヘラクレスの妻デイアネイラは川の渡し守ネッソスに陵辱されそうになった。が、ヘラクレスの放った矢で失敗に終わる。ただでは死なないのがネッソスの執念深いところ。死ぬ間際、デイアネイラに‘自分の血のついた着物は愛を燃え立たせる効能がある’といって与える。これは真っ赤なウソ、この血には水蛇ヒュドラの猛毒が混じっているのである。

ある時、デイアネイラの耳に旦那の浮気の噂が入ってきた。もう大変、嫉妬に狂ったデイアネイラはなんとかヘラクレスの愛を取り戻したい、どうしたらいいか、‘そうだ!ここはネッソスがくれた血のついた着物を使おう。ネッソスは自分の血は愛をもえたぎらせるといっていた’。‘ちょいと、リカス、これをヘラクレスに送り届けておくれ’。何も知らないリカスは‘ハイー、わかりました’とヘラクレスのもとへ走る。

この着物を肩にかけるや否や、ヘラクレスの全身に猛毒がまわった。リカスは嫉妬に狂ったデイアネイラの使いを忠実に実行しただけなのに、ヘラクレスに海へぶん投げられてしまった。リカスは血の気を失い、体の水分がなくなって固い岩になったと伝えられている。

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2010.03.08

ビバ!イタリア  国立近美(1) バッラと再会!

1333_3   バッラの‘争いの内側’

1334_2        ボッチョーニの‘フェルッチオ・ブソーニの肖像’

1332_3   ヴィルトの‘指揮者トスカニーニの肖像’

1335_2          モディリアーニの‘アンナ・ズボロフスカ’

ボルゲーゼ公園のなかにある国立近代美術館は二度目の訪問。4年前は改築工事のため一部が閉鎖されていたので、そのときみれなかった作品に期待して入館した。

一番の楽しみは未来派、とくにバッラ(1871~1958)の絵。その数は突出して多く、前回見た絵(拙ブログ06/5/27)や‘争いの内側’など13点。そのなかには初期の点描風の風景画や女性を描いたものが3点あるが、残りは目の覚めるような青や赤、白で切れのいいフォルムを構成する躍動感あふれる絵。これぞ、未来派!浮き浮きしながらみた。

ボッチョーニ(1882~1916)は彫刻1点と絵画が4点。とても惹きつけられるのがセザンヌの画風を思わせる‘フェルッチオ・ブソーニの肖像’。肖像画は目が命だが、横向きでこちらをじっとみつめるブソーニはすごく精神のどっしりした大きな人物に思えてならない。

バッラ同様作品の数が多いのがデ・キリコ、自画像3点を含め全部で11点ある。また、デュシャンもお馴染みの便器や自転車の車輪などを11点揃えている。今回再会を楽しみにしていたクリムトの‘女の生の三段階’は姿が見えず?ええー、という感じだが、貸し出し中だった。残念!

ここは近現代イタリア彫刻の宝庫。前回とても気になったのがアドルフォ・ヴィルト
(1882~1931)。3点とも顔にインパクトがあり、ヴェネツィアのカーニバルで人々がつけている仮面を連想する。上半身の指揮者トスカニーニの像もそうだが、顔しかないマゾリーニは仮面そのもの。

また、角々した顔が特徴のメリの作品やマルティニの‘アテナ’、ジャコメッティの極細の人物像にも足がとまる。沢山あるはずのルーチョ・フォンタナがなぜか1点も展示されてなかった。特別展をやっていたので休憩中?

モディリアーニ(1884~1920)の‘アンナ・ズボロフスカ’はTASCHEN本に載っている有名な絵なのに、前回どういうわけか記憶がない。たぶん貸し出し中だったのだろう。とてもいい絵。アンナの瞳は黒いので親近感がわき、つい声をかけたくなる。これは大きな収穫。

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2010.03.07

心に沁みる小野竹喬ワールド!

1328_3      ‘宿雪’(ベネッセコーポレーション)

1329_2   ‘夕茜’(岡山県美)

1331_2   ‘日本の四季・京の灯’(天満屋)

1330_2   ‘奥の細道句抄絵 暑き日を海にいれたり最上川’(京近美)

待望の‘小野竹喬展’(3/2~4/11)を初日にみてきた。小野竹喬(1889~1979)は近代日本画家のなかで一生付き合っていこうと思っている画家のひとり。99年にあった回顧展のときも、当時住んでいた広島から岡山県の笠岡市にある竹喬美術館へわくわく気分で出かけた。

今回の図録をみると出品作は前回と8割方同じ。予想していたことだが、これが有難いのである。というのも、10年前のときは巡回先の京近美、東武美(現在はなし)だけに展示されたものがあるので、今回はそのリカバリーの絶好のチャンス。で、前期(3/2~22)、後期(3/24~4/11)に展示される119点は追っかけ作品を中心にみた。

最も対面を望んでいたのが‘宿雪’。竹喬が描く木は初期の‘郷土風景’でみられるように幹はだいたい細く、緩く曲がりながら上に長くのびる。この絵では画面を上に突き抜ける垂直性に加え、木を前後左右に何本も巧みに配置し奥行きをつくっている。

木の根元は雪が溶けて窪みになっているが、灰色の色を重ねその深さを表現しているのはとても印象的。じっとみていたら長谷川等伯の‘松林図’が目の前をよぎった。

カラリスト竹喬が描く風景画で心をとらえて離さないのは茜色の空。何時間でもみていたのがいくつもある。再会した‘夕茜’や‘夕雲’、‘沖の灯’、‘奥の細道句抄絵・あかあかと日は難面もあきの風’、やっとリカバリーした‘残照’。

竹喬の絵にぞっこん惚れているのは色がとても美しく感じられるから。日本画のなかで真性カラリストは竹喬と福田平八郎。色に遊びたいときはこの二人の作品を眺めている。前回、その色に震えたのは日本の四季シリーズ、なかでも‘京の灯’と‘鴨川夜景’の美しい青や黄色、赤が目に焼きついている。その絵が前にある。うっとりしてながめていた。

京近美が所蔵する‘奥の細道句抄絵’は嬉しいことに10点全部でている(通期)。前は半分しかみれなかった。お気に入りは水面の波の動きが広重の‘阿波鳴門之風景’を連想させる‘五月雨をあつめて早し最上川’、大きな太陽と青や緑の色面の帯が心を揺すぶる‘暑き日を海にいれたり最上川’、赤い太陽と薄ピンクの雲、風になびくススキが見事に融合した‘あかあかと日は難面もあきの風’。

後期はあらたに18点が登場する。もう一回竹喬ワールドを楽しみたい。

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ビバ!イタリア  ポッツォの壮大な天井画に仰天!

1325_2   サンティニャーツィオ教会内部

1324_3   ポッツォの天井画‘イエズス会の伝道の寓意’


1326_3    ‘アメリカの擬人像’

1327_3    ‘ヨーロッパの擬人像’

お目当ての天井画があるサンティニャーツィオ教会はドーリア・パンフィーリ宮殿の隣にあった。ジェズ教会からは5分で着く。当日は雨が降っており、教会の内部は晴れの日に較べれば暗い。だから、双眼鏡を使っても正面のアプシス(祭室)の半ドームや天井に描かれた絵の全体はつかめない。

アプシスの上にクーポラ(丸屋根)がみえる。でも、これはだまし絵。見せかけのクーポラなのである。もし、ここを訪問されたら、本物のクーポラかどうかしっかり見ていただきたい。資金不足と隣の教会がクーポラができると自分とこの図書館が暗くなるという理由で反対したため、それじゃあ絵で本物のように見せようということになった。

これを任されたのがポッツォ(1642~1709)。この画家は数学者でもあり、計算事はお手のもの。上級遠近法を用い立派な‘クーポラ’をつくりあげた。となると、次なるイリュージョンは天井画。テーマは聖イグナティウスの賛美とイエズス会の伝道の栄光。

ここはジェズ教会とは違って鏡は置いてない。だから、首が痛くなるのも我慢して双眼鏡を使って描かれている内容に迫ってみた。上から2番目の画像は正面のアプシスに向かって右端から上を眺めたもの。右が正面のほうで左が入り口側。

絵のタイトル‘イエズス会の伝道の寓意’を表すように父なる神やキリスト、聖イグナティウスがいる天井の中心部分を四大陸の擬人像がとりかこんでいる。ヨーロッパは世界の女王として冠をかぶり笏を持っている。半裸で矢をもって異教と戦っているのはアメリカの擬人像。ヨーロッパ、アメリカの反対側にはアジア、アフリカの女性が描かれている。

登場する人物は皆頭上の中空に浮かんでいるようにみえる。これには200%仰天!また建物の柱はまっすぐのび、天井がそのまま空にむかって開いているように錯覚する。これぞ究極のだまし絵!この天井画は一生忘れることはない。

こういう天井画はその場でみないと真のサプライズは体験できない。この仰天感動をできるだけ多くの人と共有したいので、関心のある方は是非サンティニャーツィオ教会へ。そして、なにかの縁でこの教会を教えてくれた男性に心をこめてグラッツィェ!

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2010.03.06

ビバ!イタリア  目を見張らされるジェズ教会天井画!

1320_2    ジェズ教会 ファサード

1322_2      ジェズ教会 聖イグナティウスの祭壇

1323_2   バチッチアの天井画‘イエスの御名の勝利’

1321_2   ポッツォの‘だまし絵廊下’

イエズス会の総本山ジェズ教会(1575年)はカンピドーリオ広場から500mくらいのところにある。ここの天井画については以前バルベリーニ宮殿の天井画とともに紹介した(拙ブログ09/5/2906/5/25)。期待のだまし絵をみるのも今回の楽しみのひとつ。

教会が開いているのは6~12時と16~19時。午前中はほかの美術館を回ったので、ここは4時の開門を待って中に入った。スペインの軍人だったイグナティウス・デ・ロヨラは回心しパリで神学を学び、1540年日本でも馴染みの深いフランシスコ・ザビエルらとイエズス会を創設する。

初期バロック様式のジェズ教会が完成したのはその35年後。豪華絢爛たる聖イグナティウスの祭壇を装飾したのはアンドレア・ポッツォ(1642~1709)。イエズス会の本はだいぶ読んだから‘これがロヨラの墓か’と感慨深かった。

さて、お目当ての天井画である。真ん中あたりに大きな鏡が置いてあるので、左右は反転するが何が描かれているかは双眼鏡を使わなくてもつかめる。この‘イエスの御名の勝利’と名のついたイリュージョン画を描いたのはバチッチア(1639~1709)。

顔を上にむけて丸天井をみていると、教会の天井は大きく開いており、青い空の上に金色に輝く天国があるのではないかと錯覚する。当時教会の中にいた信者たちは天国への道がすぐ近くにあるように思え、身も心も震えたことだろう。バロック教会の装飾はかくもおおげさで演劇的!

それにしてもここに登場する天使や聖人や悪魔たちは宙に浮いているように見える。双眼鏡を使っても細部の描写まではとらえきれないが、目の前の光景は現実のようでもあり、幻想のようでもある。バチッチアにしてみれば、こういうだまし絵で見る者のテンションを極限まであげ、キリスト教への信仰をうながしたかったのだろう。

ジェズ教会の右隣にある小さな教会で想定外のだまし絵に遭遇した。ポッツォが描いた天井画があるサンティニャーツィオ教会は手元にある本によると‘ジェズ教会のすぐそばにある’と書かれていたから、てっきり横にある建物(上の写真の右端に入り口がある)と勘違いした。その日はクローズだったので、翌日の月曜にまた訪問した。

が、部屋を進んでいくうちにこれはどうみても天井画はありそうにない、間違っていることに気づいた。そして、だまし絵がある廊下のところにやってきた。正面の聖イグナティウスの肖像画の前では二人の楽士が椅子に座って演奏している。まるで本物の人間がいるよう。

そして、廊下の両サイドや天井に描かれたプットたちは今にも画面からとびだしてきそう。相当巧妙に描かれただまし絵である。ちょうどその隣の部屋で絵を模写している男性がいたので、‘これはポッツォが描いたの?’と片言のイタリア語で尋ねた(ウソです)。これはまさにポッツォの作品とのこと。

これはこれで楽しめるのだが、われわれの目的はサンティニャーツィオ教会にある天井画なので、それはどこにあるのか再度聞いてみた。すると、すぐ近くにあるという。喜び勇んでその場所に向かった。

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2010.03.05

ビバ!イタリア  バルベリーニ宮美術館の名画!

1319_2           ラファエロの‘ラ・フォルナリーナ’

1318_2           コジモの‘マグダラのマリア’

1316_2   ホルバインの‘ヘンリー8世の肖像’

1317_2   ブロンズィーノの‘コロンナ4世の肖像’

4年前見逃したカラヴァッジョの‘ユディットとホロフェルネス’(拙ブログ2/14)のリカバリーが目的でバルベリーニ宮国立古代美を再度訪問した。ところが、映画‘カラヴァッジョ’のところでもふれたように世の中思い通りにはいかないもので、また貸し出し中。

ここが所蔵する3作品のうち日本にやってきた‘瞑想の聖フランチェスカ’もなく、展示は‘ナルキッソス’(09/2/11)のみ。人気のカラヴァッジョ作品をみるのは思いのほか骨が折れる。

館内は現在も修復中で前は大丈夫だった部屋が閉まっていたので、鑑賞できるのは全体の半分くらい。部屋をまわる順番が変わっていて、入ってすぐラファエロ(1483~
1520)の大胆な絵‘ラ・フォルナリーナ’(06/5/23)が現れた。

この女性はラファエロの恋人といわれているが、目の鼻も大きく明るい性格のようにみえる。ここへ来る前、ドーリア・パンフィーリ美でみた二人の男の肖像よりはこちらのほうが断然楽しい。

前回惹かれたピエロ・デ・コジモ(1462~1521)作、‘マグダラのマリア’をじっくりみた。コジモというとウフィツィ美にある子供むけの冒険雑誌に載っていてもおかしくない‘ペルセウスに救われるアンドロメダ’のように、グロテスクな怪獣やワイルドな人間がでてくる絵というイメージが強い。

だから、こうした端正な顔立ちの女性を単独で描いたものには少なからず戸惑う。暗い背景に浮かび上がるマグダラのマリアの顔はツルツルしており、身長がだいぶありそう。またまた、心を揺すぶられた。

ここには男性の肖像画でとびっきりいいのが2点ある。ホルバイン(1497~1543)の‘ヘンリー8世’とブロンズィーノ(1503~1572)の‘コロンナ4世’。いずれも堂々としたすばらしい肖像画である。

‘ヘンリー8世’では豪華な衣裳の精妙な描写、‘コロンナ4世’では鉄製の武具の豊かな質感に視線が釘付けになる。‘二人ともどうしてこんなに上手いのだろう!’と、ただ々見つめるだかり。

カラヴァッジョの追っかけ作品がNGで心の中にぽっかりあいた穴はしばらく開いたままだったが、前回みれなかったベルニーニの肖像彫刻3点がかなり心を癒してくれた。その神業的な彫りの技を息を呑んでみていた。

今回のイタリア美術の旅では、ベルニーニ作品をサン・ピエトロ寺院にあるもののほかに8点みることができた。これほど嬉しいことはない。隣の方も彫刻好きだから、満足げな顔をしている。

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2010.03.04

ビバ!イタリア  ベラスケスの肖像画の傑作に感激!

1312   カラヴァッジョの‘エジプト逃避途上の休息’

1315     ベラスケスの‘インノケンティウス10世’

1314        ベルニーニの‘インノケンティウス10世の肖像’

1313   ブリューゲルの‘ナポリの眺望’

カンピドーリオ広場から歩いて10分くらいのところにドーリア・パンフィーリ美がある。ここのお目当てはカラヴァッジョの二つの絵‘エジプト逃避途上の休息’&‘悔悛のマグダラのマリア’とベラスケスの肖像画‘教皇イノンケンティウス10世’。

ここはローマの名門パンフィーリ家(ウンブリア地方の出身)の宮殿。その一部が美術品の展示に使われている。2階が展示室になっており、廊下の両サイドの壁にびっしり絵画が掛けられている。1時間もいればだいたい見終わる。

カラヴァッジョ(1571~1610)は残念ながら‘マグダラのマリア’がいなかった。ボルゲーゼ美からお呼びがかかっているとのこと。‘エジプト逃避’はヨセフの持つ譜面をみながらバイオリンを弾いている天使の肌がカピトリーニ美の‘洗礼者ヨハネ’の少年の肌同様、びっくりするくらいリアルに描かれている。ふくらはぎのまるみとか顔や手や足が赤くなっているところは生身の女性そのもの。

左からの光は天使の上半身と眠るキリストを抱いてうつむきかげんの聖母を明るく照らしている。天使の羽の質感に気をとられていると、ヨセフの後ろにいるロバを見落とす。それにしてもこの黒い羽は本物そっくり。カラバッジョの対象の質感描写にはほとほと感心する。

ここのサプライズはベラスケス(1599~1660)が描いた‘教皇インノケンティウス10世’。ウルバヌス8世の次の教皇はパンフィーリ家から選出された。1644年、71歳のジャン・バティスタ・パンフィーリがインノケンティウス10世として即位する。この絵は専用の部屋に飾られており、まさにこの美術館の至宝。

図版ではこの肖像画のすばらしさは伝わってこない。政治家のような鋭い目でこちらをみつめる教皇の性格を見事にとらえている。200%脱帽。教皇はこの絵をみて‘あまりに真実すぎる’と言ったとか。ベラスケスに惚れ直した!

贅沢なことにベルニーニ作のこの教皇の胸像が絵の前に展示してある。彫刻では教皇の人間的な生臭さは消え、教皇の権威、精神性の描写に重きが置かれている。ベルニーニ(1598~1680)はこの教皇からあまり仕事がもらえなかったから、それほど熱が入らなかったのかもしれない。

想定外の収穫が1点あった。ブリューゲル(1525~1569)がナポリを旅行したときに描いた‘ナポリの眺望’。日本に帰ってTASCHEN本をチェックしたらちゃんと載っていた。これは嬉しい出会い。パノラマ的にとらえられたナポリ湾に風をいっぱい受けた帆船が何隻も航行している。丁寧に描かれた白波から風が相当強く吹いていることがわかる。

画廊を進んでいるとBunkamuraの‘ヴェネツィア絵画のきらめき展’(07年)でみたティツィアーノの‘サロメ’(拙ブログ07/9/13)に遭遇した。‘そうか、この絵はここにあったんだよね’という感じ。好きな絵なのでまた熱心にみた。

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2010.03.03

長谷川等伯はまるい形は苦手だが細い線の達人!

1311   ‘楓図壁貼付’

1308    ‘波濤図’(部分)

1310   ‘禅宗祖師図襖’(部分)

1309   ‘松林図’(上が右隻、下が左隻)

東博で待望の‘長谷川等伯展’(2/23~3/22)をみた。会期は24日と短く、来週からは後期(3/9~)がスタートするから、また出かけなくてはならない。こういうビッグな回顧展はこの先2,30年はないだろう。全部見るためチケットもちゃんと事前に2枚確保してある。

作品数は78点、東博ではこのなかの5点は展示されない。これらは仏画、肖像画、金碧障壁画、水墨画にグルーピングされている。展覧会へ出かけるのは追っかけ作品をみるのが目的だから、長谷川等伯(1539~1610)のまだみてない作品に鑑賞エネルギーの大半を使うことになる。

その前にまずは久しぶりの国宝‘楓図壁貼付’で目慣らし。いつもこの絵で錯覚するのは横U字のフォルムをした紺色の流水。これがどういうわけか空を飛ぶ鳥の姿にみえるのである。巨大な楓が手を大きく広げるように横にのびる形にとても魅せられる。右と左の花では、視線はどうして余白がある左のほうへいく。

追っかけ一番は‘波濤図’(重文)だった。05年、出光美で‘長谷川等伯の美’があったとき、長谷川派のヴァージョンに会い、いつか等伯のものをみたいと願っていた。待望の絵だが、グッとこない。理由は波頭の形。どうもごちゃごちゃしている。峻厳な岩に負けないように波も乱れまくっているので落ち着かない。で、あまりみずに離れた。

もうひとつのお目当ては予想通り心に響いた。猫をもった‘禅宗祖師図’(重文)がずっとみたかった。愛嬌のあるクリクリっとした目がなんとも可愛い。この絵に描かれている人物の目の瞳は皆黒くない。人物が登場する水墨画で‘竹林七賢図’や‘高士騎驢図’などには瞳に墨がはいっているのに、この‘禅宗祖師図’だけが例外的に黒い点がない。

等伯の絵でどれが最も心に沁みるかといわれれば、NOタイムで国宝の‘松林図’!等伯の描くまるいフォルムはなにか緩くて退屈。例えば、‘萩芒図’では細長いまるの形の葉が連続する右より、左の細い線が丁寧に描かれた芒のほうが惹かれる。また、‘柳橋水車図’で視線が集まるのは左の上から垂れる柳で、水車の横にみえる波の文様は硬く、柳のようなやわらかさがない。

まるい形はいまひとつなのに対し、柳や松の細い線は200%心を打つ。‘松林図’はたちこめる深い霧の中その細い葉を墨に濃淡をつけ幽玄的に描いている。この絵は東洋絵画の真髄である余白の意味をあらためて感じさせてくれる日本の水墨画の金字塔。本当にすごい絵である。

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ビバ!イタリア カピトリーニ美(2) カラヴァッジョ追っかけ開始!

1306_2           カラヴァッジョの‘洗礼者ヨハネ’

1305_2   カラヴァッジョの‘女占い師’

1304_3            グエルチーノの‘聖ペテロニラの埋葬’

1307_2   コルトーナの‘サビニの女たちの略奪’

ローマでのカラヴァッジョ(1571~1610)の追っかけ第2弾はカピトリーニ美(2点)、
ドーリア・パンフィーリ美(2点)、バルベリーニ宮国立古代美(1点)、コルシーニ美
(1点)の4箇所。最初に行ったのがカピトリーニ美。ここには‘洗礼者ヨハネ’と‘女占い師’がある。

‘ヨハネ’は図版でみる以上にすばらしい絵。こちらをむきちょっとほほえんでいる少年の肌の色がじつにリアル。背中と膝に強い光があたりその女性のような肌を際立たせている。この精緻な描写に200%KOされた。真にカラヴァッジョの画力はすごい!

‘女占い師’はルーヴルにもあるが、女性も甘ちゃん少年も違うモデルを使っている。着ている衣裳や二人のポーズはほとんど同じだが、順番はカピトリーニのほうが先。みた瞬間、ルーヴルのほうがいいなと思った。それは少年の顔がルーブルのモデルに比べそれほど甘ちゃん面でないのと、背後に光がべたにあたり奥行き感があまりでてないから。

ここでの楽しみはカラヴァッジョとコルトーナだったのだが、驚愕の絵に遭遇した。それはグエルチーノ(1591~1666)が描いた‘聖ペテロニラの埋葬’。これまでグエルチーノの絵はそこそこ縁があるものの、足をとめても見入った体験はない。だが、この絵は違う。とにかくびっくりするくらいすばらしい。

目を奪われるのが空の青と上にいるキリストと聖人を埋葬する男の衣裳の青。その青と体の白が見事に溶け合っている。また、おもしろい描き方がここにはみられる。これから棺におさまる聖人の体を大きな手が支えている。この手は穴の下にいる男の手。一瞬、ギョッとする。こんなのははじめてみた。

コルトーナ(1596~1669)は17世紀のローマバロック絵画を代表する画家の一人。ここにはコルトーナの絵が全部で13点もある。必見リストに入っているのは‘サビニの女たちの略奪’、‘ポリュクセスの犠牲’、‘バッカスの勝利’。とりわけ惹きつけられる‘サビニ’を息を呑んでみた。

女性不足を解消するため、ローマの若い兵士はサビニの女たちを容赦なく奪っていく。略奪される女はたまったものではない。だが、両手を突き上げ、恐怖におののくだけでどうすることもできない。こういう歴史画はみるほうも辛い。

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2010.03.02

ビバ!イタリア カピトリーニ美(1) 傑作揃いの古代彫刻!

1300_2               ‘カピトリーノのヴィーナス’

1301_2     ‘瀕死のガラティア人’

1302_2         ‘刺を抜く少年’

1303_2                ‘カピトリーノの牝狼’

ローマは街のいたるところに広場があるので名前は一度には覚えられない。誰もが行くのがスペイン広場とナボーナ広場。ミケランジェロがデザインを手がけたカンピドーリオ広場ヘでかける人も多い。

ここのマルクス・アウレリウスのブロンズ像(レプリカ)は一度は見る価値のあるすばらしいもの。これを背景にして撮った写真を日本に帰ってからみると、‘うん、あのローマ帝国のローマへ行ってきたんだ!’と妙にローマづいたりする。

ガイドブックにはこの像の左が‘ヴィーナス’や‘瀕死のガラティア人’があるカピトリーノ美で、右が‘刺を抜く少年’やカラヴァッジョの絵があるコンセルヴァトーリ美とある。お目当ての一番は‘ヴィーナス’だから、まず左の建物へ進む。が、案内係りは‘ここは出口のみで入り口は右の建物’と人が並んでいるほうを指差す。では、ここはどこから入るの?

入館してわかったのだが、左の建物は地下道を通って行くことになっている。二つの建物全体がカピトリーニ美で図録には右がコンセルヴァトーリ宮、左が新宮となっている。どちらも古代彫刻の宝庫であるが、コンセルヴァトーリ宮は絵画作品もかなり充実している。まずは傑作揃いの彫刻から。

彫刻の本に必ず載っている‘カピトリーノのヴィーナス’は一体だけの特別室におさまっている。まさに別格の扱いである。原作は前3世紀から2世紀につくられ、これはローマ時代の模刻。大きな腰周り、豊かな胸のヴィーナスは恥じらいのポーズをとり、強い生命力と豊饒さを発散させている。

‘妻を殺害して自害するカラティア人’が見た瞬間、そのショッキングな形に心を奪われるのに対し、‘瀕死のカラティア人’は下をむいた顔と斜めに傾いた体からずしりずしりと戦いの悲劇というものが伝わってくる。この彫刻も精神性においてはものすごく劇的な表現になっている。

コンセルヴァトーリ宮では‘刺を抜く少年’と本物の‘カピトリーノの牝狼’を夢中になってみた。‘牝狼’はローマ建国の祖ロムルスとレムスが顔を横にむけている牝狼の乳を飲む姿がとても印象深い。また、ベルニーニ作の肖像彫刻と‘メドゥーサ’に遭遇したのも大きな収穫だった。

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2010.03.01

ビバ!イタリア ローマ国立博(2)心を打つ‘ルドヴィシの玉座’!

1296_2    ‘ルドヴィシの玉座・ヴィーナスの誕生’(正面)

1297_2    ‘ルドヴィシの玉座・フルートを吹く巫女’(左側面)

1299_2       ‘妻を殺害して自害するガラティア人’

1298_2    ‘ルドヴィシ石棺・ローマ人とゲンマン人の戦い’

ナボーナ広場のすぐ近くにあるPALAZZO ALTEMPSはジェズ教会をみた後に寄った。テルミニ駅前のマッシモ宮のギリシア彫刻に続いて、ここでもサプライズの連続だった。

お目当ての一番は‘ルドヴィシの玉座’。これは本物。前460年頃の浮彫で、正面に‘ヴィーナスの誕生’、左側面に‘フルートを吹く巫女’、右側面に‘香をたく女’が表されている。目を奪われるのがホラの女神にアシストされて海から生まれ出るヴィーナスの髪と海水に濡れた衣裳の繊細な線。

香をたく女の体は着衣と頭巾で覆われているのに対し、フルートを吹く女は裸体で足を組みオーケストラの楽団員のように熱の入った演奏をみせている。この有名な浮彫が最初行ったマッシモ宮になかったのであせったが、ちゃんとみれたので一安心。

ヘレニズム時代の前220年頃つくられた‘自害するガラティア人’にも大変魅了された。これは原作のブロンズ像をローマ時代に大理石で模刻したもの。この高さ2.11mの大きな彫刻が心を虜にするのはそのすばらしい形。男は左手で死んだ妻の手をささえ、右手に持った短剣を首の下あたりに突き刺している。視線が集中するまっすぐ立った短剣の先からは鮮血が吹き出ている。

原作はペルガモン王国アッタロス1世(前240年~230年)の戦勝記念碑としてつくられた。ガラティア人は前300年頃にドナウ河を下り、バルカン半島を通って小アジアに住みついた中央ヨーロッパのケルト民族。エーゲ海に面するペルガモン王国はこのガラティア人に悩まされ続ける。

ガラティア人との戦いに勝利したことを記念してつくられたのはこの像と‘瀕死のガラティア人’(カピトリーニ美)。戦いに敗れたガラティ人は妻が捕虜になって辱めを受けないように自らの手で殺害し、その後自分も自害する。こんな劇的な瞬間を表現した彫刻はみたことがない。言葉を失ったまま、像のまわりをぐるぐるまわってみた。これは一生の思い出になる。

もうひとつすごい石棺浮彫があった。260年頃のローマ彫刻‘ローマ人とゲルマン人の戦い’。ローマ軍団の兵士たちが蛮族のゲルマン人を蹴散らし打ちのめしている場面が描かれている。左側で眉間にしわをよせ相手を威圧する兵士の険しい顔が目に焼きつく。戦闘の叫び声や馬のいななきが聞こえてくるよう。本当にいいものをみた。

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