ボルゲーゼ美展にベルニーニ、カラヴァッジョがやってきた!
現在、東京都美で開催中の‘ボルゲーゼ美展’(1/16~4/4)を見てきた。東京都美はこの展覧会の後、2年間の改築工事に入るから、ここへ来るのもとりあえずは今回が最後。気が早いが、新館記念展は何をもってくるのだろうか?またビッグな展示を企画していると思いたい。
ローマにあるボルゲーゼ美は4年前に訪問し、そのすばらしいコレクションに感動の袋がはちきれそうになった。西洋美術ファンでここへ出かけた人はたぶん同じ感想をもたれるはず。だから、ここの所蔵品が日本にやってくるというのは大変なことなのである。といっても、ベルニーニの‘アポロとダフネ’、‘プルートとプロセルピーナ’、ティツィアーノの‘聖愛と俗愛’、カラヴァッジョの‘蛇の聖母’のような超人気の傑作は絶対でてこない。
今回の目玉となっているのはラファエロの‘一角獣を抱く貴婦人’とカラヴァッジョの‘洗礼者ヨハネ’。これは主催者のPR戦略。この2点とベルニーニの胸像を所蔵品のランク度でみるとどのあたりになるか。相撲の番付でいうと、ズバリ大関クラス。大関だからすごいのがやってきたのは間違いない。
海外にある美術館の展覧会の場合、いつも言っているように目玉が3点あればもう立派な展覧会。東京都美は今回も◎。日本でラファエロやカラヴァッジョ、ベルニーニが見られるなんてこんな贅沢なことはない。で、この3点があるからほかの作品が前頭クラスであっても全然気にならない。My時間配分はこの3点が90%で残りの45点が10%。
‘シピオーネ・ボルゲーゼの肖像’は着ている服の上から6番目のボタンが穴からはずれているところとやわらかく折れ曲がった襟に目が点になった。硬い大理石なのにベルニーニの超絶技巧にかかるとやわらかい生地に変わる。その質感表現にはつくづく感心させられる。あらためて‘ベルニーニの作品を全点見るぞ!’モードに火がついた。おもしろいことに映画‘カラヴァッジョ’に登場した枢機卿シピオーネ・ボルゲーデの顔はこの胸像になんとなく似ている。
カラヴァッジョが亡くなる年に描いた‘洗礼者ヨハネ’は現地で見た5点のなかでは一番印象が薄く、ヨハネの肉体表現もだいぶ緩くなっているなというのが率直なところ。当初この企画が発表されたときは‘聖ヒエロニムス’だったが、途中から‘ヨハネ’に変わった。01年日本で開催されたカラヴァッジョ展に出品された‘聖ヒエロニムス’よりはやはり、初お目見えの‘ヨハネ’のほうが受ける。ともかく日本でカラヴァッジョの絵がみれるのだから、これほど嬉しいことはない。
大好きなラファエロが最後になったのはこの絵の女性に惹かれないから。これは好みの問題。もう一点あるダ・ヴィンチの‘モナ・リザ’タイプの‘マッダレーナ・ローニの肖像’(フィレンツェ、ピッティ美)もダメ。この貴婦人とは目を合わせないのに、背景に描かれた心が晴れ晴れするような青い空やえんじ色とうす緑の衣裳は釘付けになってみた。絵の出来栄えは本当にすばらしい。で、好みの人物ではないとはいえ3点のなかでは最も長くみていた。
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コメント
いづつやさんお久しぶりです、iPhoneだといろいろ制約があるのでネットカフェでメールチェックなどしています。
しかしいづつやさん、ボルゲーゼのきている服の六個目のボタンが外れているなどよくごらんになられていますね!
ラファエロにあまり惹かれなかったのは僕も同感、カラヴァッジョの青年としてあらわされたヨハネに釘付けになりました!
日本初公開なんですね、よくぞ貸してくださいました。
東京都美術館の休館中に、三菱一号館美術館とか開館しますし、さて再オープンの折はどうなっているでしょうかね?
あと東京都美術館は過去の図録を販売しないで、図録は主催者に問い合わせてくれなんて掲示してありますがミュージアムショップきちんと作って対応してほしいですね。
広尾の山種美術館のミュージアムショップもなんとかならないものでしょうか、今回も小冊子では展示品のインパクトに欠けます
投稿: oki | 2010.02.20 20:48
to okiさん
ボルゲーゼ美が所蔵するベルニーニの彫刻と
カラヴァッジョの絵が日本で見られるのは
本当にすごいことですね。この2点でもう◎
です。
ここにあるラファエロは画集に載っている
‘埋葬’がランキング1位でその次が‘ラ・
フォルナリーナ’、そして‘一角獣’といっ
たところでしょうか。
西洋美術の企画展は最近、国立新美が絶好調
ですね。これから高橋氏が館長の三菱一号館美
も目が離せませんから、競争はきびしくなる
でしょうね。
東京都美もそのあたりは充分わかっているから、
新館をオープンするときはビッグな展示でアピール
するのではないかと勝手に期待してます。
投稿: いづつや | 2010.02.22 15:13