ビバ!イタリア ウフィツィ美(1) ボッティチェリにうっとり!
‘マニフィカトの聖母’
ウフィツィ美は99年と06年のとき時間をかけてじっくりみたので、今回はおさらい気分だった。前回とのちがいは季節柄、あまり混雑してないことと第一廊下の八角形の展示室トリプーナが改築中でクローズしていたこと。
2時間の鑑賞のうち長くいたのがボッティチェリ(1445~1510)の絵が飾ってある部屋。大好きな‘ヴィーナスの誕生’(拙ブログ06/5/7)や‘春’にまた会うことができた。この二つをはじめてみたのは1983年。前年に修復が終了し、明るく生まれ変わっていた。だから、絵の前に立ったときは言葉を失い、天にも登るような気持ちでみつめていた。
‘ヴィーナスの誕生’で目が釘付けになるのが水面の波立。連続する逆への字のような線は若冲が描く菊と同じようにふぐ刺しをイメージさせる。揺れる波の上にひらひら舞うピンクの花びらの配き方が実に巧み。
そして、動きのある人物描写も魅力のひとつ。ゼフュロスが頬をふくらませて吹き出す風は相当強そうで、右にいる時の女神ホラーがヴィーナスに掛けようとするマントは大きくなびいている。
この絵にすっと入っていけるのは恥じらいのポーズでほたて貝の上に立つヴィーナスがイタリアの街を歩けばすぐ出くわしそうな女性に思えるから。西洋における美人のひとつの特徴であるえらのはった顔立ちも心を揺すぶる。
‘春’で視線が集中するのは真ん中のヴィーナスではなく、その右隣にいる花の女神フローラ。腰に抱く切り花のバラを手でつかみ左足を前に出すポーズがなかなかいい。日本画で花は定番のモティーフだが、西洋絵画でこれほど花が描かれている絵がほかにあっただろうか。
修復により人物の足元やフローラの衣裳の柄に40種類以上、500もの植物が描かれていることがわかった。しかも題名の通り春の花。例えば、ヴィーナスの前にはヒヤシンス、ストロベリー、右から二人目のゼフュロスから逃げているクロリスの足元にはアイリスやヒロハノマンテマがみえる。
ボッティチェリは聖母子像の傑作をいくつも描いている。200%痺れているのが‘マニフィカトの聖母’。ミラノでポルディ・ペッツォーリ美蔵の‘書物の聖母’をみるつもりだったが、こちらは休館日で願いは叶わなかった。
‘マニフィカト’のキリストはラファエロの描くキリストに較べると好みは半分といったところだが、聖母と5人の美少年天使の美しさは心を虜にする。金髪一本々や二人の天使がかかげる宝冠、衣裳の縁取り模様に施された金彩は神業的な精緻さ。少年のころ修行した金細工の技が如何なく発揮されている。
‘受胎告知’はフラ・アンジェリコの作品と較べるだいぶ雰囲気が違う。天使の芝居がかった身振りに動揺したのか、マリアは不安げな顔をしている。いろいろある受胎告知のヴァージョンのなかでは気になる絵なので、いつもしっかり目に焼きつけている。
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コメント
ボッテイチエリは、
もう誠に ザ・ルネサンス !
写真とホンモノの差がはげしいのもボッテチエリの凄さでしょうね。
おかげさまで
イタリアルネサンスを楽しんでます。
(写真の美しさがいいです。↑と矛盾してます。)
投稿: Baroque | 2010.02.25 23:11
to Baroqueさん
おっしゃる通り、ボッティチェリの絵は
ルネサンスのシンボルですね。
‘ヴィーナスの誕生’は一番好きな絵
です。
投稿: いづつや | 2010.02.26 11:51