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2010.02.28

祝 スピードスケート女子団体追い抜きで銀メダル獲得!

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スピードスケートの女子団体追い抜きで日本は田畑、穂積、小平の3選手が銀メダルを獲得した。拍手々!この種目は金メダルの可能性があるので、今日は5時起きで応援した。

準決勝の相手はポーランド、6周まわるレース展開では、日本チームは予想通り前半に相手をだいぶ引き離した。先頭に田畑選手がいったり、小平選手、穂積選手がいったり、いつも3人は固まってリズムよく滑る。こういうレースをみると相当練習している感じ。最後はポーランドに追い上げられたが、ここはうまく退けた。

決勝戦の相手ドイツは、前のアメリカとの試合はヒヤヒヤものだった。ラスト寸前で3番目を滑っていた選手が足にきて転倒、が、執念の前のめりゴール。これでアメリカを辛くも破った。

さあ、決勝戦。日本は3周目の時点でドイツに1.72秒の差をつけた。このままいけば、金メダル。これは大変なことになりそう。ラストの1周。だいぶその差は縮まってきた。同時にフィニッシュ。日本が勝ったと思った。が、100分の2秒差でドイツの勝ち。ありゃー、惜しいなあー!もうちょっとで金だったのに!

3選手は本当によくがんばりました。もう一度拍手!これまで女子のメダルは銅メダルが最高。これを上回る銀メダルだから立派である。しかも金にかぎりなく近い銀。言うことなし。

思えば、このパシュートは4年前のトリノであと少しで銅メダルだった(拙ブログ06/2/17)。このときの失敗を繰り返さないで、見事銀メダルを獲得したのはコーチ陣をふくめて皆が勝利にむかって結束したからだろう。

こういう組織的な強さがあれば、ソチでも当然金メダルを狙える。そのときは今回は出場の機会がなかったが、現在15歳の高木選手が力を発揮してくれるだろう。次回のオリンピックがとても楽しみ。

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ビバ!イタリア  ローマ国立博(1) 念願の‘円盤投げ’と対面!

1291_3                ‘円盤投げ’

1292_3        ‘休息する拳闘士’

1294_2          ‘レダと白鳥’

1293_2      ‘ローマ郊外の邸宅の装飾壁画’

今回の美術品鑑賞で収穫が多かったのがローマ。幸運にもテルミニ駅近くにあるホテルに3連泊したので、予定していた美術館と教会はほぼ訪問することができた。2日まるまる自由行動にして足を運んだのは全部で12箇所。まずはテルミニ駅の前にある
ローマ国立博物館から。

ローマでの重点鑑賞はカラヴァッジョの絵とギリシャ彫刻。カラヴァッジョは追っかけの第2弾だが、ギリシャ彫刻は遅まきながらようやく実現にこぎつけた。朝9時の開館と同時に入館した。まだ人は少なく、とても新鮮に感じられるギリシャ彫刻やローマ時代の肖像彫刻がゆったり気分で楽しめる。

この博物館が所蔵する美術品は3つの分館で展示されており、ここにあるとばかり思っていた有名な‘ルドヴィシの玉座’はナボーナ広場からテヴェレ川のほうへ向かって2,3分行ったところにある建物でみた。チケットは一度買うと、それを提示すれば他の2箇所も入れてくれる。

お目当ての‘円盤投げ’の前にやっと立つことができた。美術の教科書で出会って以来、オリンピックの陸上というとすぐこの彫刻が目に浮かぶ。これほどスポーツ競技にいどむ人間の美しさを表現した彫刻はほかにない。しなやかで弾力性に富む胸の筋肉に見とれ、血管がリアルに浮き出る右腕を上げたフォームを釘付けになってみた。

この超一級品をつくったのは前5世紀前半に活躍したミュロン。目の前にあるのは本物ではなく、前450年頃につくられたオリジナルをローマ時代にコピーしたもの。模刻でも全然問題ない。

‘休息する拳闘士’は‘円盤投げ’とは違い、作品の存在を知ったのはつい1年前。これはヘレニズム時代の前100~50年頃につくられたブロンズ像だが、その表現は生々しいまでにリアル。最接近してみると体のいたるところ傷痕がある。今は次の相手と戦うまでのつかのまのひと時、腰をかけ横をみつめる表情には戦い続けなければならない男の悲哀が感じられる。

裸婦像のなかで足がとまったのがオリジナルは前360年頃の‘レダと白鳥’。これもローマ時代の模刻。腰のあたりで白鳥(実はゼウス)をうけとめ、布を左手で大きくひろげるレダの身振りに惹き込まれた。ヴィーナス像はいろいろでてくる。‘恥じらいのヴィーナス’、‘うずくまるヴィーナス’、‘キュレネのヴィーナス’、こんなにヴァリエーションがあったとは!

昨年、西洋美であった‘古代ローマ帝国の遺産展’で夢中になってみた邸宅の装飾壁画を本場でも楽しんだ。これはアウグストゥスの妻が住んでいた邸宅の壁に施された風景装飾。花や鳥がでてくるので日本画をみている感じ。色が鮮やかなので大変魅了された。

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2010.02.27

ビバ!イタリア  おしゃべり文化の国イタリア!

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今日はおしゃべりが好きなイタリア人の話。イタリアの美術館をまわっていると、イタリア人にとって展示室の監視員というのはフラストレーションがたまる仕事だろうなとつくづく思う。とにかくイタリア人はおしゃべりが好き。

人が二人以上いたらすぐおしゃべりがはじまるという感じ。店のレジで商品とお金を受けとり、袋に包んだり、お釣りを渡すときでも自分たちのおしゃべりを優先する。‘あんたらの話はどうでもいいから、早くしてよ!’と思うことがしばしば。でも、イタリア人はみんな同じ調子だから、1,2分待たされても誰も気にしない。まさにここはおしゃべり文化の国なのである。

われわれ日本人は物を買ってくれる人には頭を下げ、ていねいな言葉で精いっぱい感謝の気持ちを表すことが当たり前だと思っているから、こういう扱いをされると‘売ってもらっているの?’という気持ちにさせられる。

そう、PRADAで金額の張るものを買うときも、ミュージアムショップで絵葉書を買いときも売ってもらっているのである。だから、彼らにとってみればおしゃべりの間に商品をわたすのはごく当たり前。‘急ぐなら、ほかで買ってよ!’となる。イタリアで買い物をするときは店員の態度は気にしないほうがいい。どこへ行ってもそうだから、そのうち慣れてくる。

ところで、イタリア人はどんな話をしているのだろう? サッカーの試合のこと、それとも近くにいる綺麗な女性やイケ面男性のうわさ、誰々が浮気をして奥さんにばれて離婚になったとか、、、明るく楽しげに話しているから、間違っても仕事のことではないだろう。人生を楽しむために生きているイタリア人のことだから、食べること、男女関係、遊ぶことを延々としゃべっているにちがいない。

アッシジのサン・フランチェスコ教会で案内をしてくださった谷村神父から興味深い話を伺った。日本人はまわりにいる人の顔や表情をみて、‘この人は風邪をひいて体調が悪そうだとか、あの人は顔色が悪いけど、きっと胃が悪いのね’とわかる。ところが、イタリア人でこういうことが分かるのは医者だけで、普通のひとは他人の体調のことはまったくわからないという。

この話を聞いてなるほどなと思った。イタリア人は人としゃべるのは大好きだが、その人の体調までは気をつけてみてないのである。人のことはどうでもよく、自分はこうなんだ、俺はこうしたいんだ!で終始する。これは自己中心のおしゃべり文化。

これに対し、日本人はしゃべるのは極力控えめにして、自分のまわりにいる人、関わりのある人をよく見よう観察しようとする。そして、その表情や身振りからその人が今何を考えているかをわかろうとつとめる。こういう習性により心も体調もわかる‘以心伝心’や‘あうんの呼吸’がコミュニケーションの基本になった。日本は伝統的に視る文化なのである。

イタリア人は医者以外は人の診断はできないという話を聞いて、昔から言われている日本は視覚文化の国ということが以前にも増して腹にストンと落ちた。これは貴重な体験。谷村神父に感謝々である。

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2010.02.26

祝 女子フィギュア 浅田真央ちゃん 銀メダル獲得!

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女子フィギュアの浅田真央ちゃんが銀メダルを獲得した。拍手々!SPでトップにいた同い年の韓国ヨナ選手にフリーでも敗れ優勝は逃したが、高いレベルで競争した結果の2位だから、立派な成績。本人は演技のあとのインタビューでは大泣きで悔しさいっぱいだったが、時間がたつにつれあの愛くるしい卵顔に笑顔がもどっていた。

フリーの演技時間は4分。見てるほうもこれは随分長い演技だなと思う。選手たちはこの中にジャンプを要所で入れ力強さをアピールし、さらに軽やかなステップを踏み、体の柔らかさや俊敏な身のこなしを披露しなければいけない。だから、後半は相当シンドイかもしれない。

前半は得意の3回転半ジャンプ(トリプルアクセル)を2回完璧に決め、会場を沸かせた。顔の表情は音楽の曲想にあい、ノッている感じ。だが、後半は2度明らかな失敗があった。残念だが、これで金メダルは逃げていった。

前に滑ったヨナ選手はミスがないのだから点数が下がりようがない。この選手は真央ちゃんより体がひとまわり大きい。だから、3回転ジャンプを2回連続させる演技はものすごく見栄えがする。無難にやっている感はあるが、ミスをせず流れに勢いがあるので演技全体がとても優雅でしかも力強い印象を与える。

トリノ大会で荒川静香が金メダルに輝き、世界中にアジアンビューティをみせつけたが、今回もヨナ選手、真央ちゃんの19歳ビューティコンビ。しかも、安藤美姫ちゃんが4位、鈴木選手が8位に入った。いまや、日本、韓国の女子フィギュア陣は最強といっていい。真にすばらしい!

真央ちゃんは次のソチで技術面、表現力でピークを迎えるにちがいない。誰もできないトリプルアクセルに磨きをかけ、4分間スタミナ切れになることなく、きっちり滑れる体力をつけたら、きっと金メダルは獲れる。大いに期待したい。


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ビバ!イタリア  美味しいイタリア料理!

1287_3       海の幸スパゲッティ

1289_3       ミラノ風カツレツ

イタリアを旅行していてとりわけ楽しいのが食事タイム。イタリアだけは特別で料理がまずかったという経験はあまりなく、満足することが多い。

ツアーでいくと典型的なイタリア料理は昼食、夕食にだいたいでてくる。昼は毎日パスタとかピザだが、好きなのはスパゲッティ。いつまでたっても種類の多いパスタをいろいろ食べているイタリア通にはなれず、好みの中心はスパゲッティのまま。

ミラノなど北イタリアではスパゲッティは硬めの麺。日本のレストランで食べるスパゲッティはやわらか麺のほうが多いが、好みは硬いほうだから、ミラノやヴェネツィアでこれを食べるときはご機嫌になる。具はシーフードやイカ墨などヴァラエティに富む。一度仕事でヴェネツィアへ行ったとき、日本の鯛のような魚を具に使ったスパゲッティを食べたことがあるが、最高に美味しかった。

メインディッシュでいつも食べるのはミラノ風カツレツ。ウィーンの名物料理シュニッツェルと同じで仔牛肉を薄くのばし、薄く衣をつけて油でカラット揚げたカツレツ。ソースとかはかけず、レモンをたらすだけだが、歯ごたえがよくとても美味しい。もうひとつニコニコ顔になるのがフィレンツェ風ステーキ。これは塩、胡椒のみの味付けで直火で焼き上げるいたってシンプルなTボーンステーキ。27年前はじめて食べたときは、あまりの美味しさに次の日もそのレストランへでかけた。

ワインのことは詳しくないが、フィレンツェでは赤ワインのキャンティを飲みたくなる。その登録ブドウ園はトスカーナ州に約7000あり、熟成期間が5年以上のものがキャンティクラシコと呼ばれ、最上級(DOCG)に格付けされる。添乗員Tさんの話だと、イタリアワイン全体の2%にあたる最上級は12あるそうだ。ちなみに、ワイン生産国の上位は1位フランス、2位イタリア、3位スペイン。

今回、Tさんからローマにあるいいレストランを紹介してもらったので、その話を少し。この店はテルミニ駅の左手の通り(Via Marsala)沿いにある‘Mangrovia’。ホテル 
Madisonのすぐ近くで、共和国広場のところにあるローマ三越でもらえる周辺地図(日本語)にも載っている。

お奨めはペスカトーレスパゲッティと熱々の野菜スープ、本当に美味しい!嬉しいことに日本語のメニューがあるので注文がすごく楽。料理が沢山でてくるコースでなくても、好みの組み合わせでもOKなので日本人好みのサービスになっている。しかも料金はリーズナブル。満足度200%だったので、次にローマを訪れることがあったら、また寄ろうと思っている。ご参考までに。

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2010.02.25

ビバ!イタリア  ウフィツィ美(3) カラヴァッジョの怖い絵!

1283_3    カラヴァッジョの‘バッカス’

1286_4                 カラヴァッジョの‘メドゥーサ’

1284_3          ジェンティレスキの‘ユディットとホロフェルネス’

1285_3            レーニの‘勝ち誇るダヴィデ’

ウフィツィ美の鑑賞の流れとしては2階の部屋が最後、あとはミュージアムショップに寄って絵葉書や図録を購入してお仕舞いとなる。普通の美術館の場合、ミュージアムショップではだいぶ疲れたなという感じでひとときを過ごす。だが、ここは最後の部屋にすごい絵があるので、鑑賞疲れもふっとぶ。

その衝撃の絵を描いたのはカラヴァッジョ(1571~1610)。いつもは‘バッカス’、‘イサクの犠牲’、‘メドゥーサ’の3点がみられるのに、今回は‘イサク’がどこかへ貸し出し中だった。展示してある2点は対照的な絵。初期の風俗画のひとつ‘バッカス’は首や右腕をみるとまさに逞しい若い男の姿なのだが、顔はおとなしそうな甘ちゃん少年のイメージ。

‘バッカス’をみて‘メドゥーサ’をみるとちょっと混乱する。カラヴァッジョという画家の感情の揺れはまことに複雑。‘メドゥーサ’が描かれているのは凸面の木製楯。この楯をみたらどんなに強い勇者でも一瞬後ずさりするだろう。ほかのカラヴァッジョ作品は釘付けになってみるのだが、これだけは長くみれない。

小さい頃から蛇が大の苦手。蛇は何匹いるのか数えたくもないが、今にも飛び出してきそう。そして、メドゥーサがペルセウスに首を切られるときにみせた苦しみの表情が衝撃的。血がいく筋も勢いよく滴り落ち、メドゥーサが死の恐怖におびえている様子がひしひしと伝わってくる。

ナポリで活躍した女流画家、アルテミジア・ジェンティレスキ(1593~1652)が描いた‘ユディットとホロフェルネス’も‘メドゥーサ’以上にショックを受ける。師匠の同じ題名の絵(拙ブログ2/14)よりもジェンティレスキが描く暴力性のほうがかなり強烈。

彼女は若いとき画家に陵辱された悲しい体験があるから、その思いに駆られて剣を持つ手に力が入るのかもしれない。‘血しぶきがかかって気持ちがいいワ 思いっきり首をちょん切るからね!’これほど凄みのある絵はみたことがない。 西洋美で6月から開催される‘カポディモンテ美展’(6/26~9/26)にジェンティレスキの別ヴァージョンがやってくる。とても楽しみ。

レーニ(1576~1642)もカラヴァッジョに影響を受けて‘勝ち誇るダヴィデ’を描いた。これはルーヴルにあるダヴィデのヴァリアント。やっつけたゴリアテの首が石の上に載っているが、異常にデカイ。

巨人ゴリアテは‘お前みたいな小僧が俺と戦う?身の程をわきまえろ!’とかなんとかうそぶいていたら、コチーンと石を額にぶつけられてジ・エンド。女だって、小僧だってやるときはやる。必死の覚悟で向かっていったほうが勝つのだ。戦いに油断は禁物!

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2010.02.24

ビバ!イタリア  ウフィツィ美(2) ブロンズィーノはお好き?

1279_2   ベリーニの‘聖なる寓意’

1281_2   ペルジーノの‘聖者とともにいる聖母子’

1280_2          ブロンズィーノの‘ルクレツィア・パンチャティキの肖像’

1282_2   コレッジョの‘幼いキリストを礼拝する聖母’

ウフィツイ美の鑑賞時間としては1時間半から2時間はとりたい。1時間だとかなりせわしくなるので、名画を絞り込んだほうが感動の総量は大きくなる。

ひとつのアイデアはジョットの‘王座の聖母’、ボッテイチェリ(全部)、ダ・ヴィンチの‘受胎告知’、ここまでで30分。残りの30分は反対側(第三廊下)の最初の部屋にあるファラエロとティツィアーノ作品、これらをみたら大急ぎで廊下の真ん中あたりにある階段を降りて2階のカラヴァッジョの絵(3点)がある部屋にとびこむ。

今日取り上げるのは短い滞在時間では目にとまらないかもしれない絵。ヴェネツィア派をつくったジョヴァンニ・ベリーニ(1434~1516)の‘聖なる寓意’は不思議な絵。手前の両サイドと正面が石で囲まれたテラスみたいなところに幼児、聖人、聖母、女性が横に広がっている。

4人の幼児のうち左向きで座っているのがキリストで、その前のリンゴをもっているのがヨハネらしい。右端の若い男は体に矢が刺さっているので聖セバスティアヌスというのは察しがつく。

画像ではわかりにくいが、テラスの後ろに流れる川の岸には男が一人腰掛けており、その右には鹿は3頭、さらによくみるとギリシャ神話にでてくるケンタウロスまでいる。画面には聖書とギリシャ神話がミックスアップされたベリーニ流の寓意が描かれているのだろうが、その意味はまったく謎。で、寓意のことは横において、のびやかに描写された自然の情景をじっくりみることにした。

ペルジーノ(1448~1523)はラファエロの師匠。目が慣れてきた‘聖者とともにいる聖母子’はお気に入りの一枚。ラファエロの初期の作品、‘マリアの結婚’(ミラノ、ブレラ美)はこの絵に見られる甘美な雰囲気を引き継いでいる。人物をアーチの前に配置し、アーチを通して野原や山々をみせるのが構成の特徴。

古代彫刻やブロンズィーノの絵が沢山展示してあるトリプーナは現在改築中なので、絵だけがラファエロの部屋の隣に移動していた。毎度気になる絵が‘ルクレツィア’。はじめの頃はマニエリスムの匂いに過剰反応しさっとみて終り。

それが96年のときからこの絵にたいする感じ方が変わり、しっかり向き合えるようになった。これはパルミジャニーノの絵についても同じ。この女性の手や肌のリアルな描写や衣裳の豊かな質感に思わず体が寄っていく。

コレッジョ(1489~1534)の絵も半分はマニエリスムだが、その神秘的な雰囲気を漂わせる人物のぼんやりした輪郭が心をちくちく刺激する。今回3点でていたが、この絵には魅了された。ルーヴルでもロンドンナショナルギャラリーでも、展示作品に惹かれる割合は5割くらい。同じマニエリストのパルミジャニーノとブロンズィーノだと、これは8割にあがる。

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2010.02.23

ビバ!イタリア  ウフィツィ美(1) ボッティチェリにうっとり!

1276_3   ‘ヴィーナスの誕生’

1277_3   ‘春’

1275_4                  ‘マニフィカトの聖母’

1278_2   ‘受胎告知’

ウフィツィ美は99年と06年のとき時間をかけてじっくりみたので、今回はおさらい気分だった。前回とのちがいは季節柄、あまり混雑してないことと第一廊下の八角形の展示室トリプーナが改築中でクローズしていたこと。

2時間の鑑賞のうち長くいたのがボッティチェリ(1445~1510)の絵が飾ってある部屋。大好きな‘ヴィーナスの誕生’(拙ブログ06/5/7)や‘春’にまた会うことができた。この二つをはじめてみたのは1983年。前年に修復が終了し、明るく生まれ変わっていた。だから、絵の前に立ったときは言葉を失い、天にも登るような気持ちでみつめていた。

‘ヴィーナスの誕生’で目が釘付けになるのが水面の波立。連続する逆への字のような線は若冲が描く菊と同じようにふぐ刺しをイメージさせる。揺れる波の上にひらひら舞うピンクの花びらの配き方が実に巧み。

そして、動きのある人物描写も魅力のひとつ。ゼフュロスが頬をふくらませて吹き出す風は相当強そうで、右にいる時の女神ホラーがヴィーナスに掛けようとするマントは大きくなびいている。

この絵にすっと入っていけるのは恥じらいのポーズでほたて貝の上に立つヴィーナスがイタリアの街を歩けばすぐ出くわしそうな女性に思えるから。西洋における美人のひとつの特徴であるえらのはった顔立ちも心を揺すぶる。

‘春’で視線が集中するのは真ん中のヴィーナスではなく、その右隣にいる花の女神フローラ。腰に抱く切り花のバラを手でつかみ左足を前に出すポーズがなかなかいい。日本画で花は定番のモティーフだが、西洋絵画でこれほど花が描かれている絵がほかにあっただろうか。

修復により人物の足元やフローラの衣裳の柄に40種類以上、500もの植物が描かれていることがわかった。しかも題名の通り春の花。例えば、ヴィーナスの前にはヒヤシンス、ストロベリー、右から二人目のゼフュロスから逃げているクロリスの足元にはアイリスやヒロハノマンテマがみえる。

ボッティチェリは聖母子像の傑作をいくつも描いている。200%痺れているのが‘マニフィカトの聖母’。ミラノでポルディ・ペッツォーリ美蔵の‘書物の聖母’をみるつもりだったが、こちらは休館日で願いは叶わなかった。

‘マニフィカト’のキリストはラファエロの描くキリストに較べると好みは半分といったところだが、聖母と5人の美少年天使の美しさは心を虜にする。金髪一本々や二人の天使がかかげる宝冠、衣裳の縁取り模様に施された金彩は神業的な精緻さ。少年のころ修行した金細工の技が如何なく発揮されている。

‘受胎告知’はフラ・アンジェリコの作品と較べるだいぶ雰囲気が違う。天使の芝居がかった身振りに動揺したのか、マリアは不安げな顔をしている。いろいろある受胎告知のヴァージョンのなかでは気になる絵なので、いつもしっかり目に焼きつけている。

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2010.02.22

ビバ!イタリア  美術館感覚のサンタ・マリア・ノヴェッラ教会!

1274_2    サンタ・マリア・ノヴェッラ教会

1271_2           マザッチオの‘三位一体’

1272_2                     ジョットの‘キリスト磔刑’

1273_2   ギルランダイオの‘洗礼者ヨハネの誕生’

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の前に立つとどうしてもこれをバックに写真を撮りたくなる。1983年はじめてフィレンツェを訪れたときのアルバムをみてもここはしっかり入っている。

でも、教会の中にあるマザッチオ(1401~1428)が描いた有名な‘三位一体’をしかと見たという記憶がない。ひょっとして時間の関係で白と緑とピンクの大理石が使われた外観をみただけかもしれない。

で、仕切り直しのつもりで教会の中に入った。お目当ての‘三位一体’は遠近法の効果を実感するにはもってこいの絵。トンネル形天井はまさに窪み、後ろに後退しているようにみえ、その中に磔刑像が収まっている感じ。

絵画は三次元の空間や立体が二次元の平面に描かれているのだから、画面はもともと空間のイリュージョン。これもだまし絵といえばだまし絵。昨年Bunkamuraであった‘だまし絵展’の別会場展示に居合わせたような気になった。

ジョット(1267~1337)の‘キリスト磔刑’は身廊の中央あたりに天井から吊り下げられている。12年の歳月をかけて修復され、01年4月この教会へ戻った。大勢の信者や市長らが集まり、これが披露される様子をTVのニュースでみたときは、‘えらく大きな磔刑図だな!’という印象だった。実際、その通りでビッグサイズ。またキリストのわき腹から吹き出る血の赤が鮮烈!

ここで期待していた絵はもう二つあった。ひとつは大礼拝堂に描かれているギルランダイオ(1449~1494)のフレスコ画。左右の壁に聖母マリア伝と洗礼者ヨハネ伝の連作6点が3段にして飾ってある。

そのなかで最も惹かれたのが‘洗礼者ヨハネの誕生’。右にいる女性たちの衣裳の明るい色合いにうっとり!この絵にはボッティチェリの絵をみるときと同じような楽しさがある。右端の頭の上に果物の入った皿を載せた女性の動感描写に限りなく魅せられる。

ウッチェロの‘大洪水’をみたかったのだが、緑の回廊がクローズで夢は叶えられなかった。これは再度フィレンツェを訪問するインセンティブとしてとっておくことにした。

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2010.02.21

感激の‘ルノワール展’!

1268_2    ‘団扇を持つ若い女’(クラーク美)

1269_2              ‘ブージバルのダンス’(ボストン美)

1270_2    ‘テレーズ・ベラール’(クラーク美)

国立新美で開催中の‘ルノワール~伝統と革新’(1/20~4/5)は予想を大きく上回る一級の回顧展。3年前のモネ展に続き今回も大ヒット、こうなると‘日本で印象派の展覧会をみるなら国立新美!’が美術愛好家の間で広まるにちがいない。

チラシに載っている‘団扇を持つ若い女’に開幕前から魅了され、これとボストン美の‘ブージバルのダンス’があるのでこのルノワール展は◎とみていた。それがAクラスのプラスαをオルセー、マルモッタン、ワシントンナショナルギャラリー、シカゴ美といったブランド美から集めている。これはすばらしい!大きな拍手を送りたい。

いい女性画を見るのは一生の楽しみだから、ルノワールの絵を心から愛している。だが、ルノワールが描く女性画ならどれも好きというわけではない。ピカソの絵と同様、退屈なのもある。今回は粒が揃っている上、目玉にいいのを持ってきているから会場を出るまでテンションはプラトー状態のままだった。

‘団扇を持つ若い女’は手元のルノワール本、例えば、TASCHENに載ってないので、チラシでみたときはびっくりした。だから、いの一番にこの絵があるところへ行った。色白の愛らしい顔に心がとろけそうになる。2年前シカゴ美で‘テラスにて’(拙ブログ08/4/5)に会ったときと同じくらい感激した。

ルノワールが1879年に描いた絵は色彩を濃くして(とくに青)人物をしっかりとらえているので、絵の完成度は高いレベルにある。今回の出品作ではクラーク美の‘団扇を持つ若い女’&‘テレーズ・ベラール’、シカゴ美の‘縫い物をする若い女’、‘タンホイザーの舞台(1、3幕)’が1879年の作で、色の使い方や全体の雰囲気がよく似ている。この5点に会えたのは大きな収穫。

再会した‘ブージバルのダンス’(08/4/22)も心を揺すぶる。ダンスシリーズは3点とも大好きだが、やはりこれが一番いい。日本へ来るのは確か2度目。ボストン美もオルセー同様、名画中の名画を気前よく貸し出してくれるので、好感度はますます上がる。日本にいて極上のルノワールの絵がみれるのだから、本当に幸せ。

購入した図録にびっくりする絵があった。有名な‘可愛いイレーヌ’が大阪展、国立国際美(4/17~6/27)にだけ出品されるという。所蔵するチューリッヒのE.G.ビュレル・コレクションのお宝はこの絵とセザンヌの‘赤いチョッキの少年’。これは見逃すわけにはいかない。即、大阪行きを決めた。

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ビバ!イタリア やっと見れたゴッツォリの‘東方三博士の行列’!

1264_2    ゴッツォリの‘東方三博士のひとりガスパールの行列’

1265_2    ‘東方三博士のひとりバルタザールの行列’

1266_2    ‘東方三博士のひとりメルキオールの行列’

1267_2      ‘礼拝する天使たち’

観光客にとってフィレンツェは歩きやすい街。お目あての教会や美術館は容易に見つかり、移動にかかる時間も短い。ゴッツォリ(1421~1497)の代表作‘東方三博士の行列’があるパラッツォ・メディチ=リッカルディへはドゥオーモからほんの数分で着く。

ルネサンスの本には必ず載っている‘東方三博士の行列’は見たい度がすごく大きかったのに、訪問はのびのびになっていた。長年の夢が叶い、嬉しくてたまらない。この豪華な壁画があるのは小さな礼拝堂。内陣に‘礼拝する天使たち’、広間に‘東方三博士の行列’が描かれている。

‘ガスパールの行列’で先頭の若い王は豪華王ロレンツォ。この絵が描かれて頃は12歳で、容姿はかなり理想化されている。従者団の先頭で白い馬にまたがっているのはロレンツォの父、ピエロ・デ・メディチ。この絵の発注者。ピエロのうしろで茶色の馬にまたがり紺色の地味な服装をした老人が大コジモ。

この絵ですごく魅了されるのは衣裳に惜しげもなく使われた金箔。サン・マルコ修道院にあるフラ・アンジェリコの宗教画の前に立ったとき、その輝くゴールドに天国気分になるのとよく似ている。やはり金色は心をくすぐる。

そして、豪華な衣裳と同じくらい惹き込まれるのが行列の背景に描かれる風景。木々、植物とともに鳥が丁寧に描かれ、犬、牛、兎、チータも登場する。だから、これは聖書の定番テーマをあつかった宗教画でありながら、日本の洛中洛外図のような風俗画の楽しさも併せもっている。

さらにつっこんでいうと、この行列にはメディチ家の記念すべき出来事が暗示されている。1439年、コジモ・デ・メディチはギリシャ正教会とカトリック教会の東西宗教会議をフィレンツェに招致することに成功する。3人の王が引き連れる豪華な行列の様子はコンスタンチノープルからやってきたギリシャ正教会の要人の行列が重ね合わされている。

これはフレスコ画だから明るくてすっきりした色が目を楽しませてくれる。それを一番感じるのが‘礼拝する天使たち’。高価なラピスラズリが使われた青い空を明るい茶色、赤、青、緑の衣裳を着た天使が飛んでいる。時間があれば、ずっとみていたい気持ち。

ゴッツォリがアンジェリコに協力して仕上げたサン・マルコ修道院の僧房の絵を鑑賞したあと、こちらに寄ったのは流れとしてはよかった。ここの壁画は一生忘れないだろう。

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2010.02.20

ビバ!イタリア  ミケランジェロの‘ダヴィデ’と再会!

1260_2           ‘ダヴィデ’

1261_2               ‘聖マタイ’

1262_2               ‘囚人たち:髭の囚人’

1263_2             ‘囚人たち:アトラス’

フィレンツェを観光して強く印象に残るのがミケランジェロ(1475~1564)の彫刻と
ボッティチェリ(1445~1510)の絵画。

絵画に関してはラファエロ(1483~1520)の名画も沢山みれるのだが、‘小椅子の聖母’や‘大公の聖母’などはピッティ宮殿内にあるパラティーナ美にあり、ここは自由行動で訪問しない限りみる機会がない。で、旅人の感動袋はウフィツィ美にあるボッティチェリの‘ヴィーナスの誕生’や‘春’でいっぱいになってしまう。

これに対し、彫刻は‘ミケランジェロをみなくて何をみたの?’という感じ。もちろん、ドナテッロの美少年ダヴィデ(バルジェッロ)やチェッリーニの‘ペルセウス’(シニョーリア広場)のような美しいフォルムの彫刻にも心は奪われるが、彫刻家のイメージが体中に刷り込まれるのはほかならぬ天才ミケランジェロ。その気になれば、ミケランジェロの代表作の多くをみることができる。

ダヴィデ像がみれる場所は3つ。観光コースのだいたい最初に行くミケランジェロ広場(複製)、シニョーリア広場(複製)、そしてオリジナルが展示してあるアカデミア美。サン・マルコ美同様、アカデミア美のなかに入るのは27年ぶり。展示のレイアウトは未完成の5体がある通路とその先の‘ダヴィデ’があるホールはどうにか覚えている。

その大きさ(4m)に圧倒されるが、複製を何度もみているので久しぶりという感じがしない。筋肉隆々の肉体の特徴もおおよそインプットされている。異常に大きい右手や大きな足、浮き上がる血管、彫りの深い目鼻立ち、もうどこをみても‘これぞ勇者ダヴィデ!’これが1504年に完成したときの人々の驚きようは半端ではなかったことは容易に想像がつく。

未完成の絵画に足が長くとまることはないが、ミケランジェロの未完成彫刻は別。ここにある5体の人物像は大理石の塊からまだ全部彫り出されておらず、表面にはのみの痕が残され仕上げが施されてない。でも、こういうつるつるした大理石の質感にはほど遠いざらざらした触感は妙に惹きつけられる。ミケランジェロはこんなふうにして傑作を生み出したのかと思うとじっとみてしまう。

5体のなかで彫りが進んでいる感じなのが‘髭の囚人’と‘若い囚人’。‘早く石塊から出たいだろうな’とつい思ってしまうのがはじまったばかりの‘目覚める囚人’。‘アトラス’は‘どうせ俺は一生つらい目に会うのだ!’と呻いてるようで、未完ながら激しい感情の表出がうかがえる。

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2010.02.19

祝 男子フィギュア 高橋選手が銅メダル獲得!

1259

男子フィギュアで高橋選手が3位に入り、日本人初のメダリストとなった。拍手々!二日前のショートプログラムで90点台をだした、ロシアのプルシェンコ、アメリカの大男ライサチェク、高橋選手の3人の金メダル争いになることははじめからわかっていたが、高橋選手にも優勝の可能性は充分あった。

最初に演技したライサチェクは4回転ジャンプはしなかったが、3回転をことごとく決め、安定した演技で終わった。背が高く、手が長いから演技にたいする印象がすごくいい。しかもノーミスだから、当然高い得点がでる。これをみせられると、高橋選手の金はどうかな?という感じになる。

最後から3番目に登場した高橋選手は最初に跳んだ4回転が失敗したので、心がザワザワしたが、その後は落ち着いてジャンプを次々と決めた。ステップも軽やかで顔の表情もよく、名ダンサーが踊っているよう。ジャッジが演技構成点で出場選手中1位に評価したのも納得。この演技力はすばらしい!高橋選手の演技はSPではじめてみたが、これほど上手いとは知らなかった。金メダル候補にあげられていたことがよくわかった。

プルシェンコという選手がトリノで金メダルを獲ったことは知っているが、その華麗な4回転ジャンプはこれまでみたことがなかった。3年もブランクがあり昨年9月に復帰して、このバンクーバーでもジャンプは完璧に飛ぶのだからその実力はとびぬけている。連続金メダルは逃したが、また本格的にトレーニングを重ねると王者への復活は間違いないところ。

高橋選手はひざのじん帯切断という大怪我を克服して、銅メダルを獲ったのだから本当にエライ。日本人があのロシアとかアメリカの選手と一緒に表彰台に上るのだからフィギュア界も鼻高々だろう。高橋選手は23歳と若いが、これで引退し荒川静香のようにプロのスケーターに転進するのだろうか?

織田選手と小塚選手も7位、8位に入りがんばった。拍手々!織田選手は途中までジャンプが皆成功し、なかなか調子がいいなとみていたら、途中で靴の紐が切れて演技を中断した。こんなこともあるんだ!4回転を決めた小塚選手はこれから強くなりそう。この二人は次のソチでメダルの可能性はおおいにある。とても楽しみ。

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ビバ!イタリア  ほっとするフラ・アンジェリコの‘受胎告知’!

1255_2   ‘受胎告知’

1256_2         ‘われに触れるな’

1257_2     ‘キリストへの嘲笑’

1258_2  ‘最後の審判’右部分

27年ぶりにサン・マルコ美を訪れた。ここにあるフラ・アンジェリコ(1395~1455)の‘受胎告知’は美術の教科書にも載っている有名な絵なので、前回息を呑んでみたことをよく覚えている。でも、ほかの絵についてはちゃんとみたのかどうかもあやふや。画家の画集をみるたびに、もう一度しっかりみなくてはいけないと思っていた。

その機会が巡ってきたので、気を引き締めて教会へやってきた。どこが入り口か迷っていると、ツアー参加者でわれわれ同様、名所観光をパスして美術館めぐりをされているHさんに出会った。彼女も大の美術好きだから、話がはずむ。で、一緒に回ることにした。

一度来たことがあるから中に入れば記憶が戻るだろうと思って進んでいくが、まったく忘れている。昔の記憶がトレースできたのは‘受胎告知’がある2階へあがる階段だけ。この階段の真正面に‘受胎告知’がある。久しぶりに会いに来ました、という感じ。天使とマリアの姿をみるとほっとする。

同じテーマで描かれた絵は数え切れないほど沢山あるが、受胎告知というとこの絵をすぐ思い起こす。まさに‘THE 受胎告知’。とくに惹きつけられるのが鮮やか色で羽一本々まで精緻に描かれた天使の翼。細いゴールド線とグラデーションをきかせたえんじ色、薄青、黄色がえもいわれず美しい。どうでもいいことだが、マリアをみると何故かアグネス・チャンを連想する。

修道士が暮らした僧房にアンジェリコが描いた絵を今回は1点々じっくりみた。このキリストの生涯のなかで再会したようなそうでもないようなのが第1僧房の‘われに触れるな’。身をかわすキリストと悔い改めたマグダラのマリアのポーズが目に焼きつくが、それと同時に釘づけになるのが背景一面に咲く草花と中景・遠景の木々。実に細かく描写されており、‘受胎告知’の天使の後ろと較べても花の数が多く、大きくはっきり描かれている。

ドキッとするのが第7僧房の‘キリストの嘲笑’。空中にキリストに唾をはきかける男の顔と手が4つ浮かんでいる。これは一体何なの?マグリットやクレーのシュールな絵のなかにこういう風に描かれた手がある(拙ブログ05/4/2506/7/4)。あるフラ・アンジェリコ本にはアンジェリコはキリストへの平手打ちの暴行を写実的に描きたくないから、このように象徴的な表現にしたとあった。なるほどネ。この表現をマグリット、クレーはひょっとしてみたのかも?

もうひとつ収穫があった。記憶がまったく飛んでいるオスピツィオの間(1階入ってすぐの部屋)に飾ってあった‘最後の審判’。目が点になるのが画面右の地獄の世界。最下部では悪魔の親分が口を大きく開けて、人間を食べている。その上では鉄の鍋に入れられた者たちが火に炙られている。

こういう西洋の地獄絵は一度、サン・ジミニャーノでみたことがある(06/5/12)。‘受胎告知’のような静謐でやさしい絵を描いたフラ・アンジェリコがこんなおぞましい地獄絵もてがけていたとは思ってもみなかった。

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2010.02.18

ビバ!イタリア  はじめて訪れたカーサ・ブオナローティ!

1251_4        ミケランジェロの‘階段の聖母’

1252_2   ミケランジェロの‘ケンタウロスの戦い’

1253_2   サン・ロレンツォ教会ファサードと河神像の模型

1254_2   ミケランジェロの‘レダと白鳥’のデッサン

バルジェッロ国立博の前の通りをまっすぐサンタ・クローチェ教会のある方向へ10分くらい歩くとカーサ・ブオナローティに着く。I LOVE ミケランジェロなのに、まだここへは足を運んでなかった。ここのお宝はミケランジェロ(1475~1564)の初期の浮彫り彫刻、‘階段の聖母’と‘ケンタウロスの戦い’。

この二つはミケランジェロがロレンツォ豪華王にその才能を見出され、メディチ家に寄寓していた17歳頃の作品。薄浮彫りの‘階段の聖母’はドナテッロの影響を強く受けており、絵画のような彫刻。彫りは薄く、階段は遠近法を用い立体感を出している。キリストを抱く聖母の手が綺麗な横顔に較べて異常に大きい。

‘階段の聖母’のあとにつくられた‘ケンタウロスの戦い’では、丸みのある肉体を持った兵士たちが手をあげ体をぶつけ合い激しく戦っている様子が動感豊かに表現されている。バルジェッロでミケランジェロが手本にしたジョバンニ作のブロンズ浮彫‘戦闘’をみたが、お手本より‘ケンタウロスの戦い’にやはり惹き込まれる。

ここの展示スペースはあまり広くなく、ルネサンスの頃に建てられた一般的な家の部屋をまわる感じ。ミケランジェロは16世紀のはじめここに家を建てるつもりでこの土地を買ったのだが、一度も住むことがなかった。興味深かい部屋があった。ここにはミケランジェロが構想したサン・ロレンツォ教会のファサードと擬人像4点と一緒に設置する予定だった河神像の模型が並べて展示してある。残念ながらどちらも未完に終わった。

ミケランジェロが彫刻や建築物をつくる準備段階で制作したデッサンや設計図にも足がとまった。5点あるデッサンのなかでとても魅せられたのがダ・ヴィンチとコンペした‘カッシナの戦い’と‘レダと白鳥’のためのデッサン。‘レダと白鳥’は現在は失われてないが、この絵の習作はメディチ家礼拝堂にある擬人像‘夜’にも使われている。こうしたデッサンは大英博物館とかメトロポリタン美などにしかないから、貴重な体験である。

ミケランジェロの彫刻を長いこと追っかけてきたが、ここにあるものがみれたので残るはロンドン王立美術アカデミー蔵の‘トンド・タッデイ’のみ。ダ・ヴィンチに続いてもう一息でミケランジェロも済みになる。

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2010.02.17

ビバ!イタリア  念願のドナテッロの‘ダヴィデ’と対面!

1247_4           ドナテッロの‘ダヴィデ’

1249_2    ドナテッロの‘聖ゲオルギウス’

1250_4         ミケランジェロの‘バッカス’

1248_2    ミケランジェロの‘ピッティの聖母’

4年ぶりのフィレンツェは午前中の名所観光をパスして、一日中美術館や教会めぐりをした。訪問したのは7箇所。まず向かったのがシニョーリ広場のすぐ近くにあるバルジェッロ国立博物館。フィレンツェはこれまで3度来ているが、ここは縁がなかった。一番のお目当てはドナテッロ(1386~1466)がつくったブロンズ彫刻‘ダヴィデ’。

ドナテッロの彫刻が飾ってあるのは2階。全部で10点くらいある。そのなかで美少年‘ダヴィデ’は一際輝いている。左手を腰にあて右手には剣をもち、やっつけたゴリアテの首を足で踏んづけている。右足に体重をかけS字カーブを描く姿勢、いわゆるコントラポストはどこからながめても美しい。ここにはヴェロッキオ作の同じ美少年タイプのダヴィデがあるので、較べてみようと思ったが、こちらは展示室が修復中で中に入れなかった。

オルサンミケーレ教会の外壁に飾られていた‘聖ゲオルギウス’も傑作。これは大理石の彫像。足を少し広げて立つゲオルギウスの端正な顔には静かな闘志が秘められている。もう一点、髪の毛がやわらかくカールしているところや身につけている毛衣のしわのリアルな描写が目に焼きつく‘少年の洗礼者ヨハネ’にも魅了された。

1階の展示室ではミケランジェロやチェッリーニ、ジャンポローニャの作品が目を楽しませてくれる。ミケランジェロ(1475~1564)は4点ある。追っかけリストに入れていたのは‘バッカス’と‘ピッティの聖母’。‘バッカス’は美術本のイメージよりだいぶ大きい。台座を含めて2mちょっとあるから見上げる感じ。

彫刻が楽しいのは作品をいろんな角度から鑑賞できるから。これはバッカスの正面に立つと後ろで葡萄をこっそり盗んでいる小さなサテュロスはみえない。横にまわるとサテュロスの笑っているように見える顔にぐっと惹きつけられる。ギリシャ神話は絵画でも数多く取り上げられるが、彫刻は登場人物を立体的にみせてくれるので、絵画以上に話が体の中に沁み込む。

期待していたベルニーニの女性彫像‘コスタンツァ・ボナレッリ’に会えなったのは残念だが、心を打つ‘ピッティの聖母’に遭遇したし、リストに入ってなかったジャンポローニャの‘メルクリウス’が目の前に現れてくれ嬉しいオマケもあったから気分は上々。トータル的にいうと、重点鑑賞にしていたドナテッロ彫刻が沢山みれたことがなによりの収穫だった。フレンツェ美術めぐりの出足は好調!

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2010.02.16

祝 スピードスケート男子500mで銀・銅メダル獲得!

1246

バンクーバーオリンピックのスピードスケート男子500mで日本は長島選手(上の写真左)が銀、加藤選手(右)が銅メダルを獲得した。拍手々!

今日はメダル期待の種目だから、朝からTVに釘付け。この500mは昔から日本は強い。長野大会では清水選手が金メダルをとり日本中が沸きかえった。前回のトリノは当時の世界記録を持っていた加藤選手が優勝するのではないかとワクワクしながらみたが、結果はまさかの6位。

今回は1回目のレースでその加藤選手は3位につけ、好調を維持していた長島選手が6位となった。2回目で17番目に滑った長島選手は素人目にも1回目とは違って手をのびのび振っているようにみえた。記録は35秒を切る34秒876。本来の実力をみせつけた感じ。

インタビューで‘転んでもいいから、開き直って滑った’と語っていたが、なかなか思いっきりのいい選手である。気持ちを切り替えられたのは自分の力に自信をもっていたからだろう。

最後に滑った加藤選手はラストの100mがちょっとバテ気味。1回目で35秒を切っていたから、金メダルを獲るのではと必死に応援したが、3位に終わった。狙っていた金でなくてとても悔しそう。話を聞いていると今回は絶対本命の選手がいなかったから、トップ10クラスは皆優勝を狙っていた様子。

金メダルを獲得したのは韓国の選手。2回とも34秒台で滑った。新聞の記事によると、現在の世界ランキング1、2位は韓国勢。この二人が日本のライバルのはずだったが、優勝したのはランキング14位の選手。韓国の選手層の厚さにびっくり。

メダル授与式は明日らしいが、表彰台はアジアの選手が独占する。韓国も日本も500mは強いね。まったくすばらしい。

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ビバ!イタリア  アッシジ観光は日本人神父さんの案内つき!

1243_2    聖フランチェスコ大聖堂

1245_2    ジョットの‘聖フランチェスコの栄光’

1242_2    ロレンツェッティの‘夕陽の聖母’

1244_3    ジョットの‘聖フランチェスコの生涯:改心した異端者の釈放’

アッシジの聖フランチェスコ大聖堂はほかの教会と違って、中で案内ができるのはここで生活している神父さんのみでガイドさんによる説明はなし。このため、06年来たときは添乗員さんが用意してくれたミニ図版入りの案内図を手にして、上堂や下堂の壁や天井に描かれているジョット(1267~1337)の‘聖フランチェスコの生涯’やチマブーエの‘荘厳の聖母’などをみてまわった。

この度も同じ鑑賞スタイルを想定し、またこの資料をみながら再度ジョットの絵を楽しもうと思っていた。ところが、今回は6ヶ月前、日本からやってきたから谷村神父さんが特別に案内してくれるという。へえー、これは有り難い。どうして?添乗員Tさんのコネクションのお陰なのである。

神父さんの話を聞くのは教会での葬儀に出席したとき以外はないから、熱心に耳を傾けた。案内してもらったのは前回見なかった聖フランチェスコの墓、聖人が使用していた修道服や自筆の手紙などがある遺品展示室、下堂、上堂の壁画や天井画。
 
この案内で最も嬉しかったのがシエナ出身の画家、ロレンツェッティ(1280~1348)が描いた‘夕陽の聖母’。前回これを確かに見たという実感があやふやだった。だから、ここでのお目当てはこの絵。で、神父さんが下堂の別のところに向かったので、そこから離れ資料で確認した場所に行きこの絵を一応見た。が、画集に載っている絵のようでもあり、そうでないようでもある。中は暗いので絵がはっきりみえないのである。なにかひっかかる感じだがみたことにして、皆さんのいるところへ戻った。

すると、神父さんは今しがたみたところに行き、‘夕陽の聖母’の話になった。神父さんが指差しているのは資料が示していた場所の左隣。そこをよくみると図録で見慣れた絵があった。資料が間違っており、さっきみたのは別の絵。これは助かった!‘夕陽の聖母’と呼ばれるのは日没になると階段の上の出入り口から夕陽が当たり、美しさを際立たせるからだという。幼子キリストを見つめる聖母の切れ長の目に200%痺れた。

‘聖フランチェスコの栄光’は本祭壇の天井に描かれている絵のひとつで、隣には‘清貧のシンボル’、‘貞潔のシンボル’、‘従順のシンボル’がある。ここでは長椅子に座って神父さんから絵の解説とキリストの話を聞いた。とてもためになる話があったのでいずれ取り上げたい。

上堂の見所はなんといってもジョットの代表作のひとつ、‘聖フランチェスコの生涯’の28点。前じっくり見たのは‘小鳥の説教’(拙ブログ06/5/14)。時間が限られていたので神父さんにしてもらった解説は‘改心した異端者の釈放’や‘生き返った未亡人の告解’など4点くらいだったが、とてもわかりやすかった。神父さんによる特別案内をセットしてくれたTさんに感謝々である。

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2010.02.15

ボルゲーゼ美展にベルニーニ、カラヴァッジョがやってきた!

1240          ベルニーニの‘枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼの肖像’

1241     カラヴァッジョの‘洗礼者ヨハネ’

1239           ラファエロの‘一角獣を抱く貴婦人’

現在、東京都美で開催中の‘ボルゲーゼ美展’(1/16~4/4)を見てきた。東京都美はこの展覧会の後、2年間の改築工事に入るから、ここへ来るのもとりあえずは今回が最後。気が早いが、新館記念展は何をもってくるのだろうか?またビッグな展示を企画していると思いたい。

ローマにあるボルゲーゼ美は4年前に訪問し、そのすばらしいコレクションに感動の袋がはちきれそうになった。西洋美術ファンでここへ出かけた人はたぶん同じ感想をもたれるはず。だから、ここの所蔵品が日本にやってくるというのは大変なことなのである。といっても、ベルニーニの‘アポロとダフネ’、‘プルートとプロセルピーナ’、ティツィアーノの‘聖愛と俗愛’、カラヴァッジョの‘蛇の聖母’のような超人気の傑作は絶対でてこない。

今回の目玉となっているのはラファエロの‘一角獣を抱く貴婦人’とカラヴァッジョの‘洗礼者ヨハネ’。これは主催者のPR戦略。この2点とベルニーニの胸像を所蔵品のランク度でみるとどのあたりになるか。相撲の番付でいうと、ズバリ大関クラス。大関だからすごいのがやってきたのは間違いない。

海外にある美術館の展覧会の場合、いつも言っているように目玉が3点あればもう立派な展覧会。東京都美は今回も◎。日本でラファエロやカラヴァッジョ、ベルニーニが見られるなんてこんな贅沢なことはない。で、この3点があるからほかの作品が前頭クラスであっても全然気にならない。My時間配分はこの3点が90%で残りの45点が10%。

‘シピオーネ・ボルゲーゼの肖像’は着ている服の上から6番目のボタンが穴からはずれているところとやわらかく折れ曲がった襟に目が点になった。硬い大理石なのにベルニーニの超絶技巧にかかるとやわらかい生地に変わる。その質感表現にはつくづく感心させられる。あらためて‘ベルニーニの作品を全点見るぞ!’モードに火がついた。おもしろいことに映画‘カラヴァッジョ’に登場した枢機卿シピオーネ・ボルゲーデの顔はこの胸像になんとなく似ている。

カラヴァッジョが亡くなる年に描いた‘洗礼者ヨハネ’は現地で見た5点のなかでは一番印象が薄く、ヨハネの肉体表現もだいぶ緩くなっているなというのが率直なところ。当初この企画が発表されたときは‘聖ヒエロニムス’だったが、途中から‘ヨハネ’に変わった。01年日本で開催されたカラヴァッジョ展に出品された‘聖ヒエロニムス’よりはやはり、初お目見えの‘ヨハネ’のほうが受ける。ともかく日本でカラヴァッジョの絵がみれるのだから、これほど嬉しいことはない。

大好きなラファエロが最後になったのはこの絵の女性に惹かれないから。これは好みの問題。もう一点あるダ・ヴィンチの‘モナ・リザ’タイプの‘マッダレーナ・ローニの肖像’(フィレンツェ、ピッティ美)もダメ。この貴婦人とは目を合わせないのに、背景に描かれた心が晴れ晴れするような青い空やえんじ色とうす緑の衣裳は釘付けになってみた。絵の出来栄えは本当にすばらしい。で、好みの人物ではないとはいえ3点のなかでは最も長くみていた。

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ビバ!イタリア  二度目のシエナでミケランジェロに遭遇!

1235_2   ドゥオーモ

1236_2         ドゥオーモ内のピッコローミニ祭壇

1237_3   ミケッランジェロの‘聖パウロ’(左)と‘聖ペテロ’(右)

1238_2   カンポ広場とマンジャの塔

シエナ観光は午前中のみ、その後はアッシジへ向かう。ここを訪れたのは二度目。前回からまだ4年しかたってないので町の様子はよく覚えている。サリンベーニ広場やメインストリートのバンキ通りまでは一緒にガイドさんについていったが、ドゥオーモの説明を聞いたところで皆さんと別れ、この大聖堂の中へ入った。集合時間まで40分ちょっとしかないから忙しい。

前回みたピサーノがつくった大理石のライオン像が交互に配置されている八角形の説教壇や床一面に施されている見事な象嵌装飾はさらりとみて、ミケランジェロ(1475~1564)の彫像が4体あるピッコローミニ祭壇の前に長くいた。これはミケランジェロの
20代後半の作品で、あの‘ダヴィデ’と同じ時期に制作された。

I LOVE ミケランジェロなのに添乗員のTさんに教えてもらうまではここにミケランジェロの彫刻があることをまったく忘れていた。というのも、今回頭の中はここにあるベルニーニ作、‘聖ヒエロニムス’と‘マグダラのマリア’のことでいっぱい。4年前、中に入ったのにキージ礼拝堂にあるこの2体の情報がなかったため、見逃してしまった。日本に帰り図録で知ったが後の祭り。そのリカバリーの機会が到来したので、朝から目は気合充分。

ところが、Tさんからは‘この礼拝堂は現在修復中かもしれない、現地のガイドさんに聞いてみます’と想定外の話。ウウーン、雲行きが怪しくなってきた。ガイドさんによるとやはり‘ミケランジェロはみれるが、礼拝堂はクローズ’。残念!

ピッコローミニ祭壇に飾る彫像はミケランジェロが全部つくるということになっていたのだが、完成したのは‘教皇ピウス1世’(真ん中の左)、‘聖グレゴリウス’(真ん中の右)、‘聖パウロ’(下の左)、‘聖ペテロ’(下の右)の4体のみ。ミケランジェロはこの頃同時進行でいくつもの作品を制作中で、途中から‘ダヴィデ’を引き受けたのでこの祭壇に手が回らなくなったのである。ベルニーニはみれなかったが、忘れていたミケランジェロの作品と遭遇できたので満足度は高い。

集合時間が押し迫っていたのでカンポ広場へ急いだ。観光客の数は前に較べると少ないが、広場のすばらしい景観は変わりない(拙ブログ06/5/13)。次はベルニーニを見るぞと思いながら、シエナの町を離れた。

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2010.02.14

大入り満員の映画‘カラヴァッジョ 天才画家の光と影’!

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1233_4   ‘ユディットとホロフェルネス’(バルベリーニ宮国立古代美)

1234_3   ‘洗礼者ヨハネの斬首’(マルタ・ヴァレッタ、サン・ジョヴァンニ聖堂)

映画‘カラヴァッジョ 天才の光と影’を公開初日の昨日(13時)、銀座テアトルシネマで観た。この映画への関心は予想以上に高く、その回の席は全部売り切れになっていた。5日前の8日にわざわざここへ出向きチケットを事前に購入していたのが正解だった。

07年につくられたこの映画が2年遅れで上映されることになったのは、今年がカラヴァッジョの没後400年にあたるから。ローマのスクデリア・デル・クイリナーレ美ではこれを記念して大規模な‘カラヴァッジョ展’が2/18からはじまった(6/13まで)。これから
4ヶ月間、ローマの街はカラヴァッジョの回顧展の話題で持ちきりになることだろう。

2/1からアップしている‘ビバ!イタリア’でローマにおける美術めぐりは一番最後。もうしばらくお待ちいただきたいが、重点鑑賞画家のいの一番にしているカラヴァッジョの映画をみたので、映画の内容と絡めてカラヴァッジョ作品にすこしふれてみたい。

イタリアにおけるカラヴァッジョ追っかけは2度目。4年前はミラノのブレタとアンブロジアーナ、ローマのボルゲーゼや教会で目いっぱいカラヴァッジョ作品を楽しんだ。今回ローマで見る予定にしていたのは4館7点。が、思いの丈をとげられたのは4点。パーフェクト賞はもらえなかった。どれをみれたかは先で書くとして、残念無念だった絵をここでとりあげておきたい。

それは映画のなかでその制作現場がでてくる‘ユディットとホロフェルネス’。前回バルベリーニではこれが展示されてなく残念な思いをしたから、なんとしてもリカバリーしようと意気込んで入館した。が、なんとまたふられてしまった!再度貸し出し中の案内。ガックリ。ここへ足を運んだのはこの絵1点をみるためだったのに、、、

ユディットのモデルをつとめたのはシエナ出身の高級娼婦、フィリデ。ユディットは短めの剣でホロフェルネスの首を切り落とそうとしている。‘血ってこんなに吹き出るものかしら!?お婆さん、もうちょっとで終わるから、すぐくるんでもっていってちょうだいね’とでも言っているのだろうか。

血の滴りが鮮烈に目に焼き付けられる絵がもう一枚ある。殺人罪で追われる身になったカラヴァッジョが逃亡先のマルタ島で描いた‘洗礼者ヨハネの斬首’。この絵にはまだ縁がないが、教会のなかにある絵だからここを訪問しない限り永遠にみれない。なんとかしたい絵である。カラヴァッジョ全作品のなかで最も大きく、縦3.62m、横5.2m。いつか見てみたい。

さて、映画のことである。カラヴァッジョの真の姿が映画のままであるということはないだろう。作品のすばらしさとは別にそれを描いたカラヴァッジョという男はかくも無頼漢で荒くれ野郎だったにちがいない。が、その反面自然にたいしてとても素直な感情を持ち、キリストや聖人や生身の人間に対しても真摯に向かい合い、宗教や自分の人生を深く考え、それを卓越した技量で表現した。そんなことを感じさせてくれる映画だった。カラヴァッジョがお好きな方は是非!

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ビバ!イタリア  眺望の良さが魅力のサンマリノ!

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1230_3    ティチーノ山の頂にあるサンマリノ

1229_3   フラッタ城塞

ラベンナから南に70kmくらい行ったところに世界で5番目に小さい独立国家、サンマリノ共和国がある。広さは東京都の世田谷区くらいで、人口は約3万人。首都のサンマリノはティチーノ山(標高749m)の頂にある。バスは街の駐車場までどんどん登っていく。上にいくにしたがい霧のかかる度合いが多くなる。

ガイドさんの案内で主要な観光スポットを見て回るが、ラベンナ同様、寒いので動きは緩慢。道路の傾斜はすこしきついから参加者のなかには途中でひと休みする人もいる。眼下のレンガ色の建物は見下ろす感じなので、今歩いているところはそこからかなり高いところにあることを実感する。

通りの両サイドにある土産店やワインを売っている店などに入ったりしながら、街の中心に位置するリベルタ広場にある政庁舎に着いた。ここからの眺めがなかなかいいので写真タイムがしばらく続く。ここで一旦自由行動になるのだが、ほとんどの人はガイドさんの後についていく。しばらく坂道を登っていくと、切り立った岩山につくられた城塞が姿を現す。300m間隔で3つある。

最後のモンターレ城塞につくとガイドさんが皆をここまで連れてきたかったのがよくわかる。ここから眺める2番目のフラッタ城塞は最高!なんとも絵になる光景である。ふと昔みたドイツのノイシュバンシュタイン城を思い出した。寒さを我慢して登ってきた甲斐があった。

あとはバスの出発時間までここの土産品である切手や陶器などをみていた。ここはワインが安く、何本も買った人がかなりいた。ヨーロッパを旅行することは多いが、ワインを買って帰る習慣がない。普段家でワインを飲むことがないため、はじめから土産に入らない。

もうひとつの理由は重量を食うものは大量に購入する美術館の図録や名所のガイドブックだけにしたいから。スーツケースが重くなるのはこの本のせい。わが家のスーツケース事情はいつも本に左右されている。

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2010.02.13

ビバ!イタリア  ラベンナのモザイク装飾に大感激!

1225   サン・ヴィターレ教会

1226   モザイク画‘ユスティニアヌス帝と随臣たち’

1227   モザイク画‘皇妃テオドラと随臣、待女たち’

1228         ダンテの墓

6世紀ごろビザンチン文化の中心地として栄えたラベンナは初期キリスト教の教会の円蓋や壁面に施されたモザイク装飾でつとに有名。このツアーを申し込んだ一番の決め手はここがコースに入っていたから。今は長年の夢が叶い、その余韻に浸っている。

現地のガイドさんは親日家のシニアレディ。雅子という日本の名前までつけているのだから、好感がもてる。説明はもちろん日本語。すこし言葉につまるところがあるが、それはご愛嬌。目を楽しませてくれるモザイクが見られるのはサン・ヴィターレ教会(548年)とその奥にある5世紀中ごろ建てられたガッラ・プラチディア廟。

外観はいたって質素なサンタ・ヴィターレ教会は現在、上の部分を修復中。中に入るとその地味なイメージが一変する。息を呑むほどきらびやかなモザイクがびっしり。その鮮やかな金や青、赤、緑の色ガラスに頭がクラクラするのが主祭壇左手の壁面上部を飾る‘ユスティニアヌス帝’とその向かい側の‘皇妃テオドラ’。

モザイク画に描かれる人物は男でも女でも目が大きく、鼻やまつげもくっきり描かれ、真正面向きに立っているのが特徴。視線が向かうのは皇帝よりはどうしても皇妃のほう。女性たちは一見すると皆同じような顔立ちで差はそれほどないようにみえるが、たんねんにみるとそうでもない。

モザイク職人はそのへんはよくわきまえている。テオドラの美貌にかなう待女は妃の隣の隣だけであとは平凡に描かれている。妃の美しさを一層際立たせているのは真珠をちりばめた冠と金の刺繍がいっぱいの衣裳。こんなすばらしいモザイク画を見れたことが嬉しくてたまらない。

添乗員のTさんによると、‘世界三大モザイク’はこことシチリア島のパレルモにあるパラティーナ礼拝堂、トルコ・イスタンブールのアヤソフィアだそうだ。アヤソフィアにも縁があったから、パレルモも是非みてみたい。次のイタリア旅行はシチリアを含む南部イタリアになりそう。

町の名所散策は寒かったので体が軽やかに動かなかったが、ダンテ(1265~
1321)の墓を訪れたときは気持ちがしゃんとした。ダンテが1317年フィレンツェを追われてラベンナにやってきたことは歴史好きとしては一応知っている。今こうしてこの町に足跡を残してみると、ダンテに半分くらい近づけたようで感慨深い。叙事詩‘神曲’が完成したのは死ぬ直前。墓の前に立つと、この詩をまた読んでみたくなった。

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2010.02.12

ビバ!イタリア  ペギー・グッゲンハイム(2) ‘月の女’と再会!

1221_2      セヴェリーノの‘海ー踊り子’

1223_2            ポロックの‘月の女’

1224_2   デ・キリコの‘赤い塔’

1222_2          モディリアーニの‘画家ハヴィランドの肖像’

ペギー・グッゲンハイム・コレクションの主な作家をあげてみると、キュビスムのピカソ、ブラック、レジェ、エコール・ド・パリのシャガール、モディリアーニ、形而上絵画のデ・キリコ、シュルレアリスムのダリ、ミロ、マグリット、エルンスト、タンギー、ブラウワー、クレー、ダダのピカビア、デュシャン、抽象絵画のカンディンスキー、モンドリアン、アルプ、未来派のボッチョーニ、バッラ、カッラ、セヴェリーノ、ロシア前衛派のマレーヴッチ。

そして、アメリカ抽象絵画のポロック、スティル、ロスコ、ゴーキー、デ・クーニング、マザウェル、イギリスのベーコンやフランスのデュビュッフェ。また、カルダーのモビール作品やジャコメッティやブランクーシやムーアの彫刻もある。いずれも一級品揃いだから、どれをアップしても豪華なラインナップになるのだが、とくに惹きつけれた作品で過去取り上げたものと作風がダブらないのを選んだ。

未来派の絵はシュルレアリスム同様、大のお気に入り。イタリアの作家なので作品の数も多い。一番多いのはボッチョーニで絵画が5点と彫刻が3点ある。カッラも5点。セヴェリーノとバッラは2点ずつ。そのなかで最も魅了されたのはセヴェリーノ(1883~
1966)の‘海ー踊り子’。

未来派が表現したかったのは都市のもつエネルギッシュな動きや人々や自動車などがみせるスピード感あふれるフォルム。この絵で目を楽しませてくれるのは点描法とキュビスムの組み合わせによって生み出されるリズミカルな曲線フォルムとはっきりした色調。絵のタイトルがそのままイメージできる。

ポロック(1912~1956)が30歳のときに描いた‘月の女’と久しぶりの対面。10年前はどういうわけか展示されてなかった。この絵は1991年セゾン美(現在は無い)で開かれた‘グッゲンハイムコレクション展’に出品された。だから、かれこれ18年ぶりの鑑賞になる。ぱっと見るとミロの絵とピカソのキュビスムが同居している感じ。ほかにもアクションペインティングの生き生きした絵はあったが、今回はこの絵の前に長くいた。

‘赤い塔’はこれぞデ・キリコの絵! デ・キリコ(1888~1978)が描く非現実的で神秘的な町の光景には人物とかマネキン、古代の彫像が登場することが多いが、ここには出てこない。右の建物の向こうにシルエットになった騎馬像の前半分がみえ、像の影が前に長くのびている。このデジャ・ヴュ(既視感)を感じさせる静寂で不思議な世界にわけもなく吸い込まれる。

想定外だったのがモディリアーニ(1884~1920)の点描のような肖像画。これはミラノのジャニ・マッティリコレクションだが、ここへ長期寄託されている。絵の存在はTASCHEN本で知っていたものの、ここで遭遇するとは思ってもいなかった。ビッグなオマケに上機嫌。

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2010.02.11

ビバ!イタリア ご機嫌なアート空間 ペギー・グッゲンハイム(1)

1220_2   ペギー・グッゲンハイム・コレクション

1217_2            エルンストの‘花嫁の着付け’


1218_3      ミロの‘オランダの室内Ⅱ’


1219_2   ダリの‘液状の欲望の誕生’

アカデミア美とサルーテ教会のちょうど真ん中あたりにシュルレアリスムや抽象美術の傑作が揃っているペギー・グッゲンハイム・コレクションがある。10年前に訪問し200%感激したので、また出かけた。

前回、図録に載っている作品のうち展示されてなかったものがあり、いつかリカバリーをしたいと願ってきた。その機会がやっとめぐってきたというので、館に入る前から少し興奮気味。展示室は6室くらいで、各部屋はそれほど広くない。ここはペギー・グッゲンハイム(1898~1979)が生前暮らしていた館なので一般的な美術館とは違って、とてもくだけた気分でアートを楽しめる。

その作品がなんとも贅沢。ビッグネーム作家の一級の絵画や彫刻がずらっとある。また、建物の外のテラスや庭にもマリーノ・マリーニの‘町の天使’とかジャコメッティの‘レオーニ宮の貴婦人’などの彫刻が展示されており、館全体がコンテンポラリー・アートを満喫できる展示空間になっている。

追っかけリストの筆頭がエルンスト(1891~1976)の‘花嫁の着付け’。18年前手に入れた画集にこの絵が載っていた。シュルレアリスム作品の鑑賞をルネサンス、印象派同様、ライフワークにしているのだが、ダリ、ミロ、マグリットに較べるとエルンストへの接近度は半分。でも、この絵にはすごく惹かれている。

これはよくみると怖い絵。ボスの‘快楽の園’を彷彿とさせるような魔術的な雰囲気が漂っている。目の覚める真っ赤なマントは不思議なことに鋭い目と嘴をした猛禽のものでもあり、その下で小さな顔をちょこんと出している裸婦のものでもある。裸婦の手が顔にくらべて異様に大きいのが不気味。

先が尖った槍をもった左の白鳥人間が威圧的な構えをしている。この絵で唯一官能的な美を感じさせてくれるのが蝶々の羽を広げたような髪形をした女。だが、うっとりするのはほんの数秒。女の足元に目をやると、腹が大きく膨らみオッパイが4つあるブロテククな化け物にまた心がザワザワする。

ミロ(1893~1983)の‘オランダの室内Ⅱ’もみたくてしょうがなかった絵。これはミロが1928年オランダを訪問したとき魅せられた17世紀の画家ヤン・スターンの‘猫の踊りの稽古’(アムステルダム国立美)に着想を得て描いたもの。浮世絵で例えると春信の見立絵と同じ発想。

原画もおもしろい絵で、男の子が猫を二本足で立たせ、女の子の吹く笛に合わせて躍らせている。左では幼な子が腹を抱えて大笑い、また犬も楽しそうに吼えている。ミロ流のバリエーションでは、最も視線が集中するインパクトのある顔は幼児からおっさん風になり、笛を吹く少女はよじれた青の鉄アームに変わっている。

ミロは原画の写実的に描かれた対象はどれも平面的に転換しており、下の横向きの犬もだいたいイメージできる。では、無理やり踊らされている猫はどこ? 踊っているようには見えないが青のアームの隣にいるのがそれ。白と土色と黒で描かれ、尻尾がみえる。ユーモラスで遊び心にあふれるミロの絵をみると心が明るくなり元気がでる。

‘液状の欲望の誕生’はダリ(1904~1989)の画集に載っている代表作のひとつ。目を奪われるのが強烈な色彩と穴があいたり、表面を穿たれた意味不明の大きな岩のようなもの。人物は中央に抱き合っている男女?裸の人物はその筋肉からみて男だが、胸には豊かなオッパイがついている?左にはくぼみに入ろうとしている裸の男がおり、右では顔を手で隠した女が皿のなかへ瓶の水を注いでいる。

ダリの絵を理解しようてなんて端から思ってない。ダリの超デッサン力とやわらかくてぬめっとした触感のマチエールが楽しめればそれで十分。いい絵をみた。

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2010.02.10

ビバ!イタリア  オマケがいっぱいあったカ・ドーロ!

1213_3   カ・ドーロ(黄金の館)

1214_3   ティツィアーノの‘ユディット’

1215_3                  マンテーニャの‘聖セバスティアヌス’

1216_3      ヤン・ファン・エイクの‘キリストの磔刑’

カ・ドーロ(フランケッティ美術館)へ行ってみようと思ったのは、ここにティツィアーノが
18歳のころジョルジョーネと一緒に描いたドイツ人商館の壁画の一部があるという情報を得ていたから。ここ5年くらい海外美術めぐりではティツィアーノとティントレットの作品を重点的に鑑賞してきたので、今回のヴェネツィアもプラスαに心が向かっている。

1434年の創建時には運河に面したファサード(上の画像)が青、白、黒、黄金に彩色されていたため‘黄金の館’と呼ばれていたカ・ドーロは簡単な地図によると、リアルト橋を横目にみながら大運河にそって上のほうへ少し行ったところにある。ファサードのすぐ前が水上バスの停留所。ところが、なかなか入り口が見当たらない。

3人聞いてもわからず、運河のほうへでてみて、ファサードを眺めていたら、船から降りてきたお婆さんが‘ここがカ・ドーロよ’と指差してくれる。で、通りのほうへ引き返したら、途中‘入り口はここ’と教えてくれた。通りにはカ・ドーロを案内するサインが何もないのだから観光客泣かせの美術館である。

当時の人々に称賛されたドイツ人商館の壁画は現在、ここにほんのわずかしか残ってない。しかも、ジョルジョーネの‘裸婦像’でもティツィアーノの‘ユディット’でも画面の半分くらいが剥げ落ちている。ティツィアーノのこのフレスコ画がお目当てだったから、あとの作品はオマケ感覚だったのだが、ガイドブックに記されている作品イメージの倍は良かったというのが率直な感想。

サプライズその一はマンテーニャ(1431~1506)が描いた‘聖セバスティアヌス’。縦2.13mあるとても大きな聖人像。マンテーニャのこの聖人像はルーヴルなどで2,3点体験したが、セバスティアヌスに対する虐待度ではこれが最もインパクトがある。彫刻的な人物描写はルーヴルのものと同じだが、体に突き刺さっている矢の数は50%増しという感じで、その分したたり落ちる血の量も多い。苦痛にゆがむ顔は長くはみていられない。

もうひとつ嬉しい絵に遭遇した。それはヤン・ファン・エイク(1390~1441)の‘キリストの磔刑’。最初は目を疑ったがプレートにはちゃんと画家の名前が書いてある。日本に帰ってTASCHEN本をチェックしたら、しっかり載っていた。画像ではわかりにくいが、十字架の後ろに描かれた人物に目が点になった。

肩から頭の部分の後ろ姿が数人続いている。この表現により、人々が急な坂を下りているところだというのがわかる。この描き方は広重が‘江戸名所百景’で人々が神社の石段を下から登ってくる様子を描いたのとまったく同じ。広重と時空を越えてコラボしていたのはマンテーニャと思っていたが、ヤン・ファン・エイクも同じ発想で空間を表現していた!

楽しみはまだあった。なんとベルニーニ(1598~1680)の男性の肖像彫刻が2点。衣裳の襞だけでなくリアルに表現されたボタンをみて、その超絶技巧にまたまたKOされた。ボタン穴からはずれているところやボタンの一部が欠けているところまで丁寧に彫られているのだから、まったくすごい!

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2010.02.09

ビバ!イタリア  サン・ロッコ同信会館の‘磔刑’と再会!

1209_2   ティントレットの‘磔刑’

1210_2            ティントレットの‘ゴルゴタの丘登り’

1211_2     ティントレットの‘岩から水を湧き出させるモーゼ’


1212_3   ティントレットの‘受胎告知’

フラーリ教会のすぐ隣にあるサン・ロッコ同信会館にもお目当ての絵があるので、テンションはプラトーモードのまま。10年前、サン・ロッコでみたティントレットの壁画、天井画はティツィアーノの‘聖母被昇天’同様、エポック的な鑑賞体験だった。その絵をまた見るのだから、自然に気が張ってくる。

ティントレット(1518~1594)は1564年(45歳のとき)からここに飾られる絵を描きはじめ、23年かけて68点の作品を完成させた。最初が2階奥の接客の間(1564~
67年)、次が2階大広間(1575~81年)、そして最後に1階大広間(1583~87年)を仕上げた。絵の題材は旧約聖書と新約聖書の有名な場面からとられている。

キリスト教の信者ではないから聖書に精通しているわけではないが、西洋絵画や彫刻と長いこと付き合っているので、天地創造やモーゼの話、キリスト物語については西洋美術の趣味がない人に較べたら多くのことを知っているかもしれない。前回は作品に描かれている内容を解説した日本語の小パンフレットがあり、これが大いに役立ったが今回はみかけなかった。図録は前と変わらず日本語版はない。

最も感動するのは接客の間の正面に掛けてある大作、‘磔刑’。磔刑の絵はこれまで数多くみてきたが、この絵が一番すごい。まさに言葉を失う。縦5.18m、横12.25mという絵の大きさに圧倒されるが、ここに描かれている劇的な雰囲気はマグニチュード7クラスの衝撃度で体を揺すぶる。多くの人物は大胆な短縮法で描かれているので、磔にされたキリストを下から見上げる感じ。そして、ティントレットは中心に配置したキリストの部分に光を強く当て、磔刑の悲劇性をいっそう掻き立てている。

‘ゴルゴダの丘登り’は構図が実にいい。一歩先に丘に連れて行かれるキリストは後から坂を登ってくる二人の罪人と中央で上下に交差するように描かれている。坂は傾斜があるのでキリストは相当苦しそう。この絵も忘れられない一枚。

2階大広間に描かれた天井画でお気に入りは旧約聖書・出エジプト記の‘岩から水を湧き出させるモーゼ’。みてわかるようにモーゼが神の言いつけどおり岩を打つと水があふれでてくる。水が下に落ちる曲線のフォルムがなんとも奇跡の水らしい。奇跡が起これば光も輝く。暗さが支配的な画面のなかで、モーゼの背景は光に照らされ神秘的な効果を生んでいる。

‘受胎告知’にもティントレットの画風がよくでている。目を奪われるのが黄金のハトの上にドドドッっと飛んでくるプットたち。われ先にと小さな窓を通っている。天使が宇宙遊泳して、マリアにキリストを身ごもったと告げにきたのだから、そんなに大勢で押し寄せることもないのだが。おめでたいことだから、可愛いプットたちは皆で行こうということになったのだろう。エライね。

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2010.02.08

ビバ!イタリア  フラーリ教会の‘聖母被昇天’にうっとり!

1208_3   サンタ・マリア・グロリオーサ・デイ・フラーリ教会

1205_3            ティツィアーノの‘聖母被昇天’

1206_3            ティツィアーノの‘ペーザロ家の祭壇画’

1207_3            ジョヴァンニ・ベリーニの‘聖母と諸聖人’ 

ティツィアーノが26歳頃描いた有名な‘聖母被昇天’に会うため、ワクワク気分でサンタ・マリア・ブロリオーサ・デイ・フラーリ教会へ向かった。ヴェネツィアはフィレンツェ同様、あまり広くない街。ところが、ここは目的地へたどりつくのにとても苦労する。

サン・マルコ広場からのおおまかな行き方としては、まずリアルト橋をめざす。ここまでは迷うことはない。が、その先があやふや。前回は確か橋を渡って土産物店が並んでいる通りを途中で左に折れて進んだ記憶がある。教会の近くにアバウトいるはずだが、さて、カッレと呼ばれる狭い道を右に進むのか左に進むのか?もう完全に迷子状態。

さっき聞いた店の人は‘ちょっと行って右に曲がる’と教えてくれたが、‘右に曲がるような道があった?’どうみても行きすぎているから元に引き返したら、現地の人が続けてなんとも細い道を進んでいく。どうやらこの道らしい。もう一回横を歩いている男性に聞いてやっと見覚えのある教会がみえるところに着いた。

99年このゴシック建築の教会(1338年)に入るときお金はいらなかったような気するが、今回は3ユーロ払った。主祭壇に飾られている‘聖母被昇天’に近づくにつれ、気分が高揚してきた。綺麗な顔をしたマリアが体を少しひねり、短縮法で描かれた父なる神に向かって両手を広げるという魅力的なポーズをとっているのである。再会した喜びを噛み締めながら、うっとり眺めていた。

この絵をみてると放心状態になるのは、生身の人間らしいマリアの描写や目の覚めるような赤の衣裳だけでなく画面構成がすばらしいから。聖母の立ち位置からも見る者の視線が自然に集まるようになっている。半円形の上部にあわせ大勢のプットが乗ったりぶらさがっている雲の帯は逆アーチの形になっているので、聖母は円の中心にいる感じ。これに対し、地上から聖母を見上げる使徒たちは頭が横に揃い長方形になっている。そして、赤い服を着た使徒二人と聖母が三角形の構図をつくっている。

前回は‘聖母被昇天’に200%感動したこともあって、左側廊にあるティツィアーノ作、‘ペーザロ家の祭壇画’は見逃してしまった。これも堂々たる傑作。目に飛び込んでくるのが背景の2本の巨大な柱。黒い雲に乗っているプットのかわいいお尻に口元がゆるむ一方で、右下でこちらをじっと見ている少年の目線がとても気になる。

この教会を再訪したことの収穫はもう二つある。一つは祭壇向かって右端の聖具室に飾ってあるベリーニの‘聖母と諸聖人’。色彩の力をこれほど感じさせてくれる聖母像はこれまでみたことがない。聖母の衣裳にみられる目の覚める青色、襞の質感描写にくらくらする。‘ベリーニはすごい!’を心のなかで連発していた。

後陣右脇の礼拝堂にあるドナテッロの木彫像‘洗礼者ヨハネ’も熱心に見た。今回の美術めぐりでドナテッロは重点鑑賞作家の一人だから、この彫刻はちょうどいい目慣らしになった。

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2010.02.07

ビバ!イタリア  ティツィアーノをもとめてサルーテ教会ヘ!

1201_2   サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会

1204_2       ティツィアーノの‘王座の聖マルコと聖人たち’

1202_2   ティツィアーノの‘アベルを殺すカイン’

1203_2   ティントレットの‘カナの婚礼’

ヴェネツィアにおける絵画鑑賞で多くの時間を使ったのは再訪したアカデミアとペギー・グッゲンハイム。あとは事前にリストアップした作品をもとめて教会をいくつかまわった。アカデミアの次にめざしたのがここから歩いて10分くらいでつくはずのサンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会(1687年)。

このヴェネツィア・バロック建築の傑作は大運河の入り口のところにあり、ドゥカーレ宮からは対岸の右側にみえる。大きなクーポラを目印に進めばすぐ着くだろうと思って、気楽に歩いていたら、どうも別の教会を目指していたようで、たどりつくのに倍の時間がかかってしまった。

中に入って天井を見渡したがお目当てのティツィアーノ(1485~1576)の絵が見つからない。変だなと思いながら八角形の本堂を2回まわったところで聖具室が目に入った。教会は普段縁が無いから内部の構造がすっと頭にはいってこない。‘ここにあるのかな?‘と半信半疑のまま入ると、なかにイメージしていた絵が並んでいた。教会は無料だが、ここは2ユーロが必要。

ここにある2つの作品は画集に載っている有名な絵。‘王座の聖マルコ’は1510年にヴェネツィアを襲ったペストの大流行がおさまったことを祝して描かれた祭壇画(もともと別の教会のために描かれたが、現在はここにある)。目を奪われるのが明快に表現された聖マルコと聖人たちと身につけた衣裳の色の鮮やかさ。なかでも白い雲を背にした聖マルコの赤い衣裳が目に強く印象付けられる。

天井画は3点ある。旧約聖書を題材にした‘アベルを殺すカイン’と‘イサクの犠牲’と‘ダヴィデとゴリアテ’。いずれも明暗の対照を際立たせ、人物は大胆な短縮法を用いブリューム感あふれる彫刻的な形態で描かれている。

‘アベルを殺すカイン’は緊張感を強いられる絵。弟のアベルの頭を棒で殴り、血をふきださせ、足蹴にしているカインは悪党そのもの。人類最初の殺人者にふさわしい表現といっていい。

予想以上にいい絵に遭遇したという感じなのがティントレット(1519~1594)の‘カナの婚礼’。ティントレットの絵は遠近法の消失点が画面の中心になく、極端に左か右に寄せて画面を構成するのが特徴。これが人々に動きを与え、ライブ感覚のある躍動的な絵画空間を生み出している。

そして、光の表現がすばらしい。細長いテーブルには左の窓から強い光が入り込み、奥にみえる後光のさしているキリストだけでなく、女性たちの顔を明るく照らしている。

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2010.02.06

ビバ!イタリア  アカデミア美(3) カルパッチオに開眼!

1197_2   ジェンティーレ・ベリーニの‘サンマルコ広場の行列’

1198_2   カルパッチオの‘リアルト橋の十字架の奇跡’

1200_2   カルパッチオの‘聖ウルスラ伝・婚約者との出会い’

1199_3   カルパッチオの‘聖ウルスラ伝・ローマ教皇との対面’

アカデミア美で収穫が最も多かったのはカルパッチオ(1460~1526)。この画家の師匠はジェンティーレ・ベリーニ(1429~1507)で、世代的にはベリーニ兄弟とティツィアーノ(1485~1576)の中間に位置する。99年ここでカルパッチオを沢山みたはずなのだが、このときはジョルジョーネの‘テンペスタ(嵐)’に心を奪われていたから、この画家の印象はうすかった。

ところが、08年ルーヴルで‘エルサレムでの聖ステパノの説教’(拙ブログ08/12/29)をみてカルパッチオにたいする評価が一変した。次第にとてつもなくすごい画家に思えてきた。で、今回はカルパッチオの作品を図録でしっかりチェックし、‘見るぞ’モードを全開にしてまわった。その前に、師匠の絵のことを少し。

ジョヴァンニの兄であるジェンティーレが描いた大きな絵2点は前回よく覚えている。上の‘サンマルコ広場の行列’と‘サン・ロレンツォ橋の十字架の奇跡’。‘サンマルコ広場’で目を見張らされるのは聖十字架を運ぶという壮麗な宗教的なシーンよりも背景にみえる広々とした広場とサンマルコ寺院の円蓋のほう。描かれているのは宗教画であるが、その景観にすっと入っていけるので絵にとても親近感を覚える。

カルパッチオはジェンティーレにならい橋をリアルト橋に変えて‘十字架の奇跡’を描いている。師匠の絵と較べると、大勢の人が描き込まれているのは同じだが、カルパッチオのほうが人の配置の仕方とかゴンドラの動きにより変化をつけているので、画面全体が生き生きしている。

こうした風俗画の香りがよくでているのが30歳頃から5年かけて描いた9点の連作‘聖ウルスラ伝’。この傑作には出口近くの専用の部屋が充てられている。こんないい絵なのに前回見た記憶がない。ひょっとすると、部屋そのものをパスしてしまったのかもしれない。入り口が奥にあるため、今回もちょっと見落としそうになったがミューズのお陰で首尾よく遭遇することができた。

聖女ウルスラは伝説上の人物でイギリスの王の娘。イギリスからローマまで1万1000人の乙女を従え、巡礼の旅にでるが、帰途に悲劇が待っていた。ケルンまで来たときフン族に襲撃され乙女たちとともに虐殺されてしまう。9点のうちとくに惹きつけられたのが横幅6mの大画面に婚約者とウルスラが出会う場面が描かれたもの。

橋や建物が遠近法にもとづいてしっかり描かれているだけでなく、人物描写が実に克明。広重の風景画のように近・中・遠景によって大きさを変えて、しかも身振りやポーズに変化をつけて表現されている。ルーヴルにある‘聖ステパノ’で吸い込まれようにみたのはこの描き方。

対象を細かくとらえるのは連作のなかにあちこみられるのだが、はるか遠くまで人物を追っかけたくなるのが‘ローマ教皇との対面’。左端に1万1000人の乙女が遠くの森までS字の列をなしている。思わず単眼鏡をとりだして見た。また、手前の地面にみえる石ころや草花のリアルな描写にも足がとまる。本当にいい絵を見た。一生の思い出になりそう。

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2010.02.05

ビバ!イタリア  アカデミア美(2) ティントレットにぞっこん!

1194_3   ティントレットの‘奴隷を救う聖マルコ’

1196_2   ティントレットの‘動物の創造’

1193_2   ティツィアーノの‘神殿への幼女マリア奉献’

1195_2             ヴェロネーゼの‘聖女カタリナの神秘の結婚’

アカデミア美では作品は2階に展示されており、逆時計周りに各部屋を進んでいく。好きな画家、ティントレット(1519~1594)の大作が飾られているのはⅤの部屋。

ここにある5点は前回全部みたはずだが、どういうわけか‘奴隷を救う聖マルコ’しか記憶に残ってない。その理由が絵の前に立ってよくわかった。この絵が最も大きいのである。縦が4.16mで横が5.44m。

過去2回(拙ブログ05/8/609/8/8)紹介したので、お馴染みになられた方もあるかもしれないが、再度この絵のすばらしさにKOされた。画面中央、宇宙遊泳のような格好で描かれている聖マルコにやはり視線が集中する。その下で金槌を振り上げている男の身振りがなんとも劇的な感じ。

今回目が点になったのが右下の兵士が身につけている網メッシュの鎧。鉄の質感がよくでている。また、すぐ横の男の鮮やかな赤い衣裳にもグッと引き込まれる。

ティントレット初期の作品‘動物の創造’は人物や動物のスピード感あふれる描写が魅力。それにしてもユニークな絵である。海上にはハイライトを上手く使って描かれた奇妙な魚が列をなして、左のほうへ泳いでいる。水平線の上には同じような飛び方をした大小の鳥たちはこれまた左の方向をめざしている。木のまわりは暗いので画像ではわかりにくいが、兎や鹿、そして馬や牛の頭がみえる。

この部屋にはティツィアーノ(1485~1576)の最後の作品となった‘ピエタ’がある。右手をあげて激しく泣くマグダラのマリアの顔が目に焼きつく。ここが所蔵するティツィアーノの絵はティントレットと較べると少なく、5、6点。

‘神殿への幼女マリア奉献’は宗教画の代表作で、最後の展示室に飾られているが、‘奴隷を救う聖マルコ’同様、前回見たのをよく覚えている。とくに印象深いのが急な階段を登って行く幼女マリアが輝く後光につつまれているのと階段の横にいる物売りの老農婦。宗教的なシーンと風俗的なモチーフを一緒にみせるところがおもしろい。

ルームⅤで多くの来館者の目を楽しませるのはヴェロネーゼ(1528~1588)の超大作‘レヴィ家の饗宴’かもしれない。ルーヴルにある‘カナの婚宴’を彷彿とさせる大群像図である。ナポレオンがフランスに持ち帰ったのも納得。同じ部屋にある‘聖カタリナの神秘の結婚’も見ごたえのある傑作。対角線構図がそのドラマ性をいっそう高めている。

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2010.02.03

ビバ!イタリア  ヴェネツィア派絵画の宝庫 アカデミア美(1)

1190_2   ジョヴァンニ・ベリーニの‘聖カタリナとマグダラのマリアのいる聖母子’

1192_2   ジョルジョーネの‘老婆’

1191_2   ロットの‘書斎の若者’

ヴェネツィアの名所観光はパスして、サンマルコ広場から歩いて10分ちょっとで着くアカデミア美術館をめざした。記憶が半分以上消えているメインストリートを進むとアカデミア橋がみえてきてので、安心モードになる。美術館は橋を渡ってすぐのところにある。現在、館の一部が修復中でチケットは側面の臨時ボックスで購入した。

ここにあるヴェネツィア派絵画の名画は99年に一度体験した。それから10年近くが経ち、図録に載っている作品のなかで今もしっかり覚えているものはもちろんあるが、当時しっかりみたかどうかがあやふやなものもかなりある。だから、今回は数の多いベリーニやカルパッチオやティントレットをあらためて1点々鑑賞するのを目標にした。事前に準備した必見リストをチェックしながら忙しくまわった。紹介したい名画が多いので1回では終わらない。

ここにはヴェネツィア生まれのベリーニ兄弟の作品が沢山ある。兄がジェンティーレ
(1429~1507)で、弟がジョヴァンニ(1434~1516)。画集で取り上げられるのはジョヴァンニの方。その作品は世界中にある主要な美術館でだいたい見ることができる。ここは地元だから多いのは当たり前だが、ミラノのブレラ美にも傑作が揃っている。

前回ははじめてのベリーニの絵だったから、どれに最も惹きつけられたかという記憶が希薄。ところが、今回はこれがはっきりわかった。それは上の‘聖カタリナとマグダラのマリアのいる聖母子’。あまり大きくない聖母像だが、豊かな色彩と明るくて情感あふれる画風にぐっとひきこまれた。とくに右のマグダラのマリアにとても魅せられる。この絵が描かれたのは1490年だが、マグダラのマリアの表情は現代に生きる女性をみるようで、現実感に満ちている。この鑑賞体験はずっと忘れないだろう。

ジョルジョーネ(1476~1510)の代表作‘嵐’と再会するのを楽しみにしていたが、残念ながら貸し出し中だった。で、もうひとつの傑作‘老婆’を気合を入れて見た。‘老婆’と10年前に対面したとき、その真に迫る内面描写に驚愕した。‘近代の肖像画のような絵をジョルジョーネは16世紀の初めに描いていたのか!’婆さんのしわくちゃだらけの顔と何か言いたそうな表情が心をズキンと打つ。なんともすごい絵である。

ロット(1480~1556)の‘書斎の若者’にも昨日取り上げた‘若者の肖像’同様、足がとまった。若者の内面を鋭くとらえた表現にはまったく恐れ入る。ロットはジョルジョーネやティツィーアーノ(1485~1576)とともにベリーニ工房で学んだ画家の一人。ティツィアーノの人物画にも‘ブラーヴォ’のような絵があるから、ベリーニ工房の3人衆はいずれも内面描写に長けていた。ロットにだいぶ近づけたような気がする。

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2010.02.02

ビバ!イタリア  念願の‘ロンダニータのピエタ’と対面!

1189_3   スフォルツェスコ城の時計塔

1186_10               ミケランジェロの‘ロンダニータのピエタ’

1187_2   ダ・ヴィンチの‘アッセの間の装飾’

1188_2         ロットの‘若者の肖像’

06年ミラノへ来たときはダ・ヴィンチの‘最後の晩餐’があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会(拙ブログ06/5/1)、ブレラ美(06/5/2)、アンブロジアーナ絵画館(06/5/3)へでかけたので、今回はいの一番にスフォルツェスコ城をめざした。お目当ては
ミケランジェロ(1475~1564)が死の直前までつくっていた‘ロンダニータのピエタ’。

28年前、この城のなかに入ったのだが、当時はここに市立美術館があることを知らず、正面の時計塔や堅牢な城壁の写真を撮ることに忙しかった。だから、‘ピエタ’のピの字も頭にない。漸くその‘ピエタ’をみることができた。

この像は3階建ての美術館の1階、最後のコーナーに飾ってある。この‘ピエタ’は見てわかるように未完成。キリスト像の両足部分とキリストの横にある筋肉豊かに彫られた不思議な腕は大理石がツルツルしているが、ほかは粗削りのまま。年老いたミケランジェロが最後の創作エネルギーをこれに注いでいたかと思うと感慨深い。

長年の思いの丈がとげられたのであとは気楽にみた。入り口でパンフレットをもらった際、案内係りの女性が親切にも‘ピエタ’とダ・ヴィンチ(1452~1519)の‘アッセの間の装飾’がある部屋を教えてくれた。事前の情報には8室の‘アッセの間’はなかったが、ダ・ヴィンチの作となるとぞんざいにみるわけにはいかない。

ダ・ヴィンチがミラノにいたのは1482年(30歳)~1499年(47歳)。この応接室の天井の装飾をダ・ヴィンチは1496~1498年頃てがけている。17年滞在したミラノ時代の最後の時期である。木の枝や蔓を絡ませた意匠はだまし絵になっており、小さな森の中にいるみたい。ここでダ・ヴィンチの作品に遭遇するとは思ってもいなかったから、気分は上々。

2階にあがると1300年代から1700年代までの絵画が展示してあった。イタリアガイドブックにはマンテーニャやコレッジョの絵があると書いてあったが、期待値は高くない。ビッグネームではベリーニ(2点)、マンテーニャ、ティントレット、コレッジョ(2点)、カナレット(2点)、リッピ、クリヴェリとそれなりに揃っていたが、足がとまったのはロット
(1480~1556)の‘若者の肖像’。

この絵はどこかで見た覚えがある。日本に帰って調べたらやはり千葉市美で05年にあった‘ミラノ展’に出品されていた。若者の斜めに向けられた眼差しはすごくインパクトがあるから目に焼きついている。ロットは1527年頃、こうした内面を巧みにとらえた肖像画を描いていた。その比類ない才能にあらためて感心させられた。

スフォルツェスコ城のあと急いだのがスカラ座の近くにあるポルディ・ペッツォーリ美。ここにあるポッライウォーロの傑作‘若い貴婦人の肖像’をなんとしてもみたい。入り口をみつけるのに手間取ったが集合時間40分前に着いた。だが、門が閉まっている!!??

ガイドブックにでている休館日は月曜なのに。なんと火曜日が休みだった。ガックリ。本には時々こういう間違いがある。ここが休みなら、アンブロジアーナでボッティチェッリやティツィアーノのいい絵がみれたのに。残念!

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2010.02.01

ビバ!イタリア  圧倒的な存在感のミラノのドゥオーモ!

 1182_5   ドゥオーモ(画像はクリックすると拡大)

1183_3   ガッレリーア・ヴィットーリオ・エマニュエル2世

1185_3   スカラ座広場のダ・ヴィンチ像

1184_3   スカラ座

4年ぶりに大好きなイタリアを訪問し、名所観光や美術館めぐりをしてきたので、イタリアの話が続きます。しばらくお付き合いください。

今回のイタリア旅行もいつものようにA旅行会社の団体ツアーを利用した。参加者は37人、これくらいの大人数になると添乗員Tさんはかなり神経を使うにちがいない。訪問したところはミラノ、ベネツィア、ラベンナ、サンマリノ共和国、フィレンツェ、シエナ、アッシジ、ローマ。この中には世界遺産が8つ入っている。まずは初日のミラノから。

ミラノへはミュンヘン経由だったのだが、ミラノ・マルサンペ国際空港が濃い霧のため、ミュンヘン空港では飛行機のなかで1時間待たされた。どうなることやらと心配したが、運良く霧につつまれるミラノ空港に着陸することができた。ホテルへ向かうバスの運転手の話ではわれわれの前の便はジェノバに降りたとのこと。

空港周辺の濃い霧をみて、ミラノをはじめて訪問したときのことを思い出した。1982年の11月、友人3家族(皆日本人)で当時住んでいたジュネーブからクルマを2台連ねてミラノをめざした。ところが、これまで経験したことのない深い霧に遭遇した。クルマ前方の視界は5mくらいしかない。こんな最悪の走行状況だから、運転手をつとめていた友人は思わずブレーキをかけ止まることが2,3回あった。

この有名なミラノの霧にまたでくわし、ミラノ入りが遅れたが、その日のうちにホテルにチェックインできたのは幸運なことであった。

ミラノ観光の目玉はなんといっても圧倒的な存在感をもつドゥオーモ。このゴシック建築の大聖堂が観る人の心を奪うのはその外観。天を突き刺すようにのびる小さな尖塔(全部で135本)がつくるフォルムはほかの聖堂とはまったく異なる。これを見るのは3度目だが、水晶の結晶体を思わせるトゲトゲ感に毎回緊張する。06年のときは中に入らなかったので、久しぶりに見事なステンドグラスを息を呑んで眺めていた。

開放的な気分になるのが十字型の商店街にガラスと鉄のドーム屋根をかけたアーケード、ガッレリーア・ヴィットーリオ・エマニュエル2世。中心部のところにPRADAの本店があり、向かい側にロゴマークの色を変えたマグドナルドがある。

このアーケードはドゥオーモ広場とスカラ座広場を結んでおり、オペラの殿堂スカラ座にもすぐ行ける。広場にあるダ・ヴィンチ像の前では誰でも写真を撮りたくなると思うが、スカラ座はちょっと躊躇する。まだなかに入ったことないが観客席は豪華絢爛、これに対し外装はえらく地味。いつか、ここでヴェルディの‘ナブッコ’を鑑賞するのを夢見ている。

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