一生の思い出となる‘土偶展’!
現在、東博で開催中の‘国宝 土偶展’(12/15~2/21)を楽しんだ。早くみたい気持ちはあったが、年間パスポートを更新し特別展を6回鑑賞できる特典の最初にしようと考えて、年が明けてからの出動となった。
これは昨年の秋、イギリスの大英博物館で行われた展覧会の帰国記念展。土偶の
国宝3点が一緒に並ぶなんてことはこの先何十年もないだろうから、絶対に見逃せない!
一般の日本美術の展覧会と違うのは会場に外国人が多いこと。おそらく、大英博物館で開催されたことが英文のイベント情報誌や東京観光案内などで紹介されているのだろう。
人の形をした素焼きの土偶は縄文時代のはじめ(1万3千年前)からみられ、早期(前7,000~前4,000年)、中期(前3,000~前2,000年)、後期(前2,000~前1,000年)、晩期(前1,000~前400年)にかけて、その形を変えながらつくられてきた。これまでに発見されたのは約17,000~18,000点。
今回展示されているのはその中から選ばれたとびっきり形がよく、インパクトがあるもの。土偶のほかにも器体の表面や取っ手に顔の形が彫られた土器や仮面などもあり、出展数は全部で67点。縄文の‘土偶ワールド’にこれだけ浸れたのはじめて。長い美術鑑賞のなかでエポック的な体験となった。
最もみたかったのが上の国宝‘縄文のヴィーナス’(縄文時代中期・前3,000~
前2,000年)。週間‘日本の国宝’(02年、朝日新聞社)を購入したとき、この土偶の存在を知った。86年に茅野市の八ヶ岳山麓の遺跡で発見され、95年国宝に指定された。穴のなかに完全な形で横たわっていたという。
視線が集中するのがなんといっても豊満な下半身。後ろにまわってみるとそのデカ尻にくらくらとなった。そして、図版では色がよくでてないが、人肌のような滑らかな表面にもぐっとくる。
インドにおいて官能的で曲線美を誇る女性の彫像が古代からつくられたのは女性は豊饒多産のシンボルであり、女性像は成長、繁栄を象徴し吉祥なものだったから。日本の縄文時代に生きた人々も同じことを考えていたにちがいない。
真ん中はこの展覧会で知った国宝‘中空土偶’(後期・前2,000~前1,000年)。出土したのは函館市。発見されたのはヴィーナスより早く75年、つい2年前の07年に国宝になった。‘頑固そうで不敵な面構えをした男だな!’というのが初対面の印象。肩と足に施された羽状縄文などの文様をみて、モンゴル相撲の選手を連想した。
もうひとつの国宝に成り立てほやほやの‘合掌土偶’(後期・前2,000~前1,000年)は昨年、東博でみたからまだ記憶に新しいところ。これは八戸で出土している。太くつながった眉毛と大きく口を開け、座った体の真ん中で手を合わす姿が目に焼きつく。
下は東博本館2階でよくお目にかかる‘遮光器土偶’(晩期・前1,000~前400年)。これは見慣れているせいかその愛嬌のある顔にすごく親しみを覚える。その気になればすぐにでも人気のゆるキャラになれる。
ほかで印象に残ったのは三角形の板盤を顔にくっつけたような‘仮面土偶’(後期)と顔の輪郭がハート形の‘ハート形土偶’(後期)。いずれも重文。
土偶がこれほど強いインパクトをもちバラエティに富んだものとは思わなかった。いい展覧会にめぐり合った。一生の思い出になる。
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