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2009.12.11

束芋にズキン!パート3 断面の世代展

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楽しみにしていた‘束芋 断面の世代展’(12/11~3/3)が横浜美術館ではじまった。若手現代アーティストで誰が今、注目の作家なのかほとんど知らないが、3年前に出会った束芋(たばいも)の創作活動にはすごく関心がある。

といっても、この小柄な作家の映像インスタレーションを体験したのは原美の‘ヨロンヨロン展’(拙ブログ06/8/7)と今年1月、ギャラリー小柳であった‘ハウス展’(1/12)の2回のみ。だから、束芋に再接近していることにはならないが、新作がでたら全部みたいという気持ちは強くもっている。

今回、出品されているのはアニメーション映像5点。館に入って真正面のところに‘団地層’があり、2階の会場に4点がインスタレーションされている。いずれも新作。

最初の部屋にずらっと展示してあるのは映像無しの‘悪人’。これは新聞小説‘悪人’の挿絵原画。シュルレアリスムはライフワームだから、こういうシュールなイメージが濃厚に漂う絵には夢中になってしまう。少ない鑑賞体験だが、束芋は石田徹也とともに世界レベルで通用するシュルレアリストと確信している。ダリやマグリットが束芋の作品をみたら裸足で逃げるにちがいない。

ハッとするのがいくつもでてくる。列車から出てくる手、手や波とか女の髪と水流のダブルイメージ、手と足の融合体、日本そばで輪郭された女性の顔、、束芋の豊かなイメージ力はまさに自在に展開していくという感じ。なかでも足をとめてじっと見入ったのが女の長い髑髏首が何人かの手で閉めつけられている場面(上の画像)。

また、日常よくみるものが意表をついて変容するのも大きなサプライズ。パソコンの画面からでてきた女の髪が電話線に変わったり、携帯電話から連続する波が吹き出しのようにでている。また、便器からでてくる手やネクタイが川の流れになったりするのにもギョッとする。

こうした絵が作品を見る前入り口でお会いしたあのアーティストぽくない気さくな女性の頭の中から生み出されたのである。見た目の印象と心の中が違うところがおもしろい。まったくこの束芋という作家はとてつもない才能をもっている。

この作品のあと大型映像インスタレーションが4点続く。‘油断髪’(真ん中)、‘団断’、‘ちぎれちぎれ’、‘BLOW’(下)。‘油断髪’はまず暖簾とかカーテンをイメージさせる女性の髪の毛が正面にどんと映しだされる。そのうちお馴染みのモチーフである大きな手が登場し、髪を掻き分けむこうの風景をみせる。明かりがつき、花瓶がでてくる。

最後は長い髪が激しくゆれ動く波に一変し、部屋にあった机やら置き台が大洪水に遭遇したみたいにどんどん流されていく。真ん中はこの場面。この構成は‘ハウス’にちょっと似ている。

‘団断’は‘にっぽんの台所’タイプの作品。上中下3つのスクリーンに上から見下ろした団地の部屋がでてくる。少しずつスクロールして何の変哲も無い部屋に入れ替わっていく。じっとみていると、左の部屋では事件が進行中。ここに住んでいる若い女性は不条理にもトイレの水で顔を洗っている。

‘変な女だな!’とみていると次の場面では血に染まったベッドがでてくる。あの女はどうやら手首をカミソリで切ったようだ。隣の若い男はそんなことが起こっているとはつゆ知らず、裸で風呂のなかに消えていく。隣り同士でも交わりもなく個を生きている都会生活の断面が毒味を効かせて表現されている。

今回最ものめりこんだのが‘BLOW’。束芋がこの作品で表現しているのは個の内側から外に向けて発散されるもの。登場するモチーフはくねくね曲がる背骨、四方に出る木の枝、湧き出る泡、大きく咲いた花、キノコ、手や足の指。ちょん切られた手や足の指は束芋作品には頻繁に登場する。

下は足の指先から花がでてくるところ。普通の発想では思いつかない変容だから、ちょっと戸惑う。この作品で束芋はお得意の指や髪の毛など目に見えるものと愛とか憎しみといった目に見えないものの内面性を、映像と音の効果をミックスさせて象徴的に表現している。表層とはちがった個の根っこにあるものが現れたような気がした。

束芋の作品はいつも胸にズキンとくる。2,3年ごとにこれを味わいたい。

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コメント

いづつやさんのブログに刺激されて、さっそく見てきました。
確かにシュールな表現にゾクゾクッとしました。

投稿: 一村雨 | 2009.12.15 04:50

to 一村雨さん
束芋の毒気をたっぷり含んだシュールな表現に
200%嵌ってます。対象の描き方で線のなめら
かさはダリやビアズリーを連想させ、手と足が
合体したようなグロテスクさはクレーの初期の
作品をイメージさせます。

そして、風景の切り取り方や構成はマグリットの
絵に毒性を盛り込んだ感じです。

BLOWには彼女の作風の変化がでてます。波とか
水流といった動的な要素を入れ、シュールで不条
理な変容に加え、花やキノコを象徴的にみせて
います。これがなかなか刺激的です。

どんどん大きな作家になっていくような気がします。
今後の活躍がとても楽しみです。

投稿: いづつや | 2009.12.15 12:37

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朝日新聞の夕刊の連載小説「悪人」の挿絵原画から展覧会は始まる。まるで絵巻物のように横長に展示されている。新聞では、小説の方は、最初だけ読んだだけだったが、束芋のイラストはその粘着感の漂う気持ち悪さが好きで、毎日眺めていた。一本の線が延々と続き、次々と変...... [続きを読む]

受信: 2009.12.15 04:55

» 「束芋展」 [弐代目・青い日記帳 ]
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受信: 2009.12.22 11:14

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