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2009.12.31

目を楽しませてくれた蒔絵・やきものの名品!

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今年の美術品鑑賞で大きな収穫だったのが漆工とやきもの。とくに蒔絵の名品が次々と現れてくれた。
★‘マゼラン公爵家の櫃’(ヴィクトリア&アルバート美)
★‘梅蒔絵手箱’(国宝、三嶋大社)
★‘龍濤螺鈿稜花盆’(重文、東博)
★‘倶利迦龍蒔絵経箱’(国宝、当麻寺)

★‘備前火襷水指’(重文、畠山記念美)
★‘三彩貼花文壺’(重文、静嘉堂文庫)
★‘唐物肩衝茶入 銘 油屋’(重文、畠山記念美)

サントリー美で遭遇したヴィクトリア&アルバート美蔵の蒔絵には腹の底からたまげた。これほど精巧かつ豪華につくられた蒔絵が海をわたりヨーロッパの貴族たちの目を楽しませていたとは。この‘japan 蒔絵展’が日本にある蒔絵の名品を呼び込んでくれたのかもしれない。お陰で追っかけ国宝の2点をみることができた。

おもしろいことに東博で‘龍濤螺鈿’の光輝くうす緑とピンクにいい気分でいたら、世田谷美でもオルセーが所蔵する孔雀の螺鈿にも遭遇した。螺鈿細工の優品が響き合うのにうまくライドした感じ。

やきものの追っかけリストには畠山記念美と根津美のものがいくつか入っている。ここ5年、畠山へは定期的に足を運び、お目当ての作品をみてきた。今年は備前の水指と肩衝茶入。どちらも本当に感激した。

静嘉堂文庫と永青文庫と出光美であった唐三彩の展覧会も印象深い。そのなかで、とくに心を打ったのが‘三彩貼花文壺’。思いがけずに出会ったのでちょっと興奮した。展示の機会は少ないが、やはりいい美術館にはいいものがある。

来年、思いの丈が叶えられるのではないかと密に期待しているやきものは次の3点。
★‘唐物肩衝茶入 銘 松屋’(重文、根津美):上の画像
★尾形乾山の‘色絵絵替土器皿’(重文、根津美):真ん中
★‘志野水指 銘 古岸’(重文、畠山記念美):下

本年も拙ブログにおつきあい頂きまして誠に有難うございます。どうか良いお年をお迎え下さい。

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2009.12.30

美術大国日本 西洋絵画の名画が切れ目なくやってくる!

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西洋絵画の展覧会はそこにTASCHENの画家本とか美術館の図録、あるいは美術全集などに載っている絵が1点でも入っていれば出かけることにしている。

手元にこうした絵画情報はかなり揃っているので、主催する美術館がつくるチラシのキャッチコピーが展示内容を正確に伝えているか過大広告かはおおよそわかる。チラシに‘必見の至宝、名画!’というような言葉が踊っているときは話半分とみていたほうがいい。

作品を貸し出す海外の美術館は当然所蔵品にはランキングをつけている。一般的には、ランキング1位の絵や美術品が館の外にでることはまずない。だから、やってきてもせいぜい3,4位クラスのもの。

だが、ときどき感激も半端ではないトップクラスの絵が公開されることがある。今年はそんな絵がいくつもあった。

★クラムスコイの‘忘れえぬ女’(国立トレチャコフ美)
★アンチンボルドの‘ウエルトゥムヌス(ルドルフ2世)’(スウエーデン・スコークロステル城)
★ピカソの‘鏡の前の女’(ノルトライン=ヴェストファーレン美)
★ベックマンの‘夜’(ノルトライン=ヴェスファーレン美)
★ゴーギャンの‘われわれはどこから来たのか’(ボストン美)
★ロスコの‘シーグラム壁画’(テートモダン&ワシントンナショナルギャラリー)

こういう画家の代表作となっている有名な絵が海外へ出かけず日本にいて見られるのだから、つくづく日本は美術大国だなと思う。とくに‘忘れえぬ女’と‘ルドルフ2世’はエポック的な展示ではなかろうか。

来年も名画が続々やってくる。すこし先行して前半の展覧会情報をいくつか。
★‘ルノワール展’(国立新美、1/20~4/5):上の画像
★‘マネとモダン・パリ’(三菱一号館美、4/6~7/25):真ん中
★‘オルセー美術館展2010・ポスト印象派’(国立新美、5/26~8/16):下

‘ルノワール展’のチラシに使われている絵‘団扇を持つ若い女’(クラーク美)に会いたくてしょうがない。また、大好きなボストン美蔵の‘ブージヴァルのダンス’がまたやってくるのもすばらしい。

三菱一号館の‘マネ展’には追っかけ作品が2点入っているので、開幕がとても楽しみ。そして、オルセーからまたまたすごい絵がやってくる。アンリ・ルソーの‘蛇使いの女’やゴーギャンの‘タヒチの女たち’が日本で鑑賞できるなんて夢のよう。それにしてもオルセーやルーヴルは毎年々気前がいい。

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2009.12.29

大観・春草がインド体験のあと描いた絵!

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明治神宮文化館で開催された‘菱田春草展’(10/3~11/29)の図録をながめていて感慨深い絵がある。その絵について少し。

★菱田春草の‘乳糜供養’(長野県信濃美):上左の画像
★横山大観の‘釈迦と魔女’(長野県信濃美):上右
★菱田春草の‘弁財天’(シービー化成):真ん中
★横山大観の‘流燈’(茨城県近美):下

これらの作品は大観と春草がインドを体験したあとに描いたもの。‘流燈’を除く3点はインドへ出かける前にみたのだが、実際にインドの大地に足跡を残したあとでは絵との距離がぐんと縮まり、リアリティをより実感する。

二人がインドへ行ったのは1903年、大観35歳、春草29歳のとき。2月から6月にかけて滞在し、コルカタ(カルカッタ)、ダージリン、アジャンタを訪問している。インド観光は10月~3月がベストシーズン。3月から暑くなり4~6月には気温は45℃~48℃になる。

この最も暑いインドを大観と春草は体験したことになる。106年前の交通事情は今とは較べものにならないくらい悪かっただろうから、町から町、村から村へ移動するのに相当な時間がかかったと思われる。

アジャンタ石窟寺院の仏教壁画に描かれた人物表現の特徴(拙ブログ11/22)がこれらの絵にもみられる。‘乳糜供養’は苦行に体力を消耗した釈迦に村娘スジャーターが牛乳がゆを捧げるところ。

このスジャーターや‘釈迦と魔女’の釈迦を誘惑する女たちの濃く長い眉毛の描き方、身につけている装飾品は壁画を思い起こさせるし、魔女たちの体をひねるポーズや指の曲げ方などもよく似ている。

‘乳糜供養’や‘流燈’の背景に描かれているのは菩提樹。デリー観光で最初に行った‘レッド・フォート’の庭にこの菩提樹があり、栗鼠がすばやく走りまわっていた。ただの木なのに、‘釈迦はこの木の下で瞑想をしたり、入滅したのか’という思いが頭をもたげ、しげしげと眺めていた。

‘弁財天’はヒンドゥー教の学問や音楽の神様、サラスヴァティーのこと。弦楽器ヴィーナーをもっている。弁財天ではこれは琵琶になる。春草はこの絵をインド滞在中に描いたようだ。

‘流燈’はお気に入りの絵。火をともした陶器をガンジス川に流して将来の幸運を祈るインドの女性を描いている。これをみると3度目のインドではガンジス川はやはりはずせない。

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2009.12.28

館外展示が極めて少ない足立美術館の名画!

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今日は菱田春草の‘紫陽花’を所蔵している足立美術館についてのお話。広島に9年住んでいたので、安来市にある足立美術館(1970年開館)は3回訪問した。ここは旅行会社の山陰名所めぐりツアーに組み込まれているので、いつ行っても盛況。

目玉は横山大観のコレクションを中心にした近代日本画、地元出身の陶芸家河井寛次郎と北大路魯山人のやきもの、そして日本庭園。絵画ややきものに関心のない人でもすばらしい庭園があるから十分楽しめる。

実業家足立全康氏(1899~1990)が集めた大観の絵は130点くらいある。この日本一の大観コレクションは5年前東芸大美で行われた‘海山十題展’に‘海潮四題・夏’など8点が公開され、日本橋三越の‘足立美名品展’でも主要な作品が出品された。だから、大観が好きな方は現地へ行かずして名画を楽しまれたはず。

が、ほかの画家の絵はなかなか館の外にでてこない。そんな名画は次の3点。
★川端龍子の‘愛染’:上の画像
★鏑木清方の‘紅’:真ん中
★川合玉堂の‘雪降る日’:下

幸運にも現地でみた‘愛染’は声を失うほどすばらしい絵だった。これは‘昭和の日本画100選’(1989年、朝日新聞社)にも選ばれた龍子の代表作のひとつ。ところが、過去体験した大きな回顧展(97年日本橋高島屋、05年江戸東博)に2度とも出品されなかった。

主催者はNGがわかっているから依頼しなかったのか、それともお願いしたのに断られたのか、その辺はわからない。回顧展というのは作家の全画業をレビューする特別な展覧会。そこに、龍子の特○の名画がでないのはなんとも残念なことである。

清方の絵も玉堂の絵も結局見れずじまいで横浜に戻ってきた。2点とも図版をみているだけでもすごく魅せられる。サントリー美であった‘清方 ノスタルジア’に‘紅’が展示されるなんて端から思ってもいなかった。

玉堂の回顧展は龍子同様、2回でかけたのに‘雪降る日’は姿をみせなかった。足立美の図録には玉堂はこの絵のほかに‘鵜飼’など3点載っているが1点も縁がない。

ただ、この美術館は貸し出しを一切しないということではない。例えば、05年東近美であった‘小林古径展’には‘楊貴妃’、‘木蓮’、‘阿新丸’の3点がでたり、今年3月の‘上村三代展’(日本橋高島屋)に松園の名画‘牡丹雪’と‘楠公夫人’(拙ブログ3/5)が登場した。

こういうこともあるのだから、紹介した2点も諦めずに辛抱強く待つことにした。

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2009.12.27

もっと見たい春草・大観の名画!

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展覧会の鑑賞は一応半年の訪問計画をベースにして美術館を訪問しているが、時折開幕直後にその情報がとびこんでくることがある。明治神宮文化館で開催された‘菱田春草展’(10/3~11/29)はうかつにもNOタッチだった。美人画以外の近代日本画で今年とくに感動した絵は3点あり、その筆頭が春草の絵。

★菱田春草の‘武蔵野’(飯田市美術博物館)
★池上秀畝の‘国之華’(三の丸尚蔵館)
★橋本雅邦の‘山水図’(東博)

‘武蔵野’の雀をじっとみているとほかの画家の絵がいろいろ思い起こされる。すぐ目の前をよぎるのが東山魁夷の‘白い朝’(拙ブログ08/4/9)、そして昨年東博であった‘対決ー巨匠たちの日本美術’に登場した与謝蕪村の晩年の傑作‘鳶鴉図’(08/7/11)も魁夷の絵との連鎖反応で思い出される。こういう静謐で詩情あふれる風景はほろっとくる。日本人の琴線にふれる典型的な絵かもしれない。

池上秀畝の屏風には200%痺れた。これまでこの画家が描いた絵はそれほど惹かれてなかったので、このすばらしい花鳥画を息を呑んでみていた。おそらくこれが代表作。

つい最近東博で遭遇した橋本雅邦の‘山水画’はまったくの想定外。追っかけリストは定期的にみているので、これがお目当ての絵であることはすぐわかった。でも、こんな大きい絵だったとは。ビッグサイズの絵というのは展示スペースを食うので展示しづらいところがある。長いこと飾られなかったのはこのためだろう。

一人の画家の創作活動をよく理解するため、回顧展は2回体験したい。東近美か国立新美のどちらかが大規模な春草展を開いてくれるのを強く希望している。そのときの出品リストは勝手ながら一部つくっておいた。

★菱田春草の‘紫陽花’(足立美):上の画像
★菱田春草の‘月下の雁’(個人蔵):真ん中
★横山大観の‘水温む’(五島美):下

足立美は作品の貸し出しをあまりしないから、回顧展に‘紫陽花’がでてくるかわからないが、この絵に会えるのを夢見ている。大阪の藤田美にある応挙の絵が春草の雁の絵とよく似ている。春草は応挙を参考にしたのかもしれない。まだ、2点とも縁がないが、来年三井記念美で応挙展があるので、藤田美蔵のものと会えるかも?

春草の盟友、横山大観の絵でずっと待ってるのが水墨画の傑作‘水温る’(みずぬるむ)。五島美は来年開館50周年を記念する特別展を開催することになっているから、この絵もほかの名品と一緒に飾られるにちがいない。やっと対面できそう。

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2009.12.26

今年は雪村と白隠の当たり年!

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今年は追っかけリストに載せている日本画および中国絵画をみる機会が予想以上に多く、また顔輝の絵のようにその存在を知らなかったいい絵とも遭遇した。主だった成果をあげてみると、

★国宝‘文殊渡海図’(醍醐寺)
★国宝‘秋野牧牛図’(泉屋博古館)
★顔輝の‘蝦蟇鉄拐図’(知恩院)

★雪村の‘欠伸布袋’(茨城県立歴史館)
★雪村の‘釈迦羅漢図’(茨城・善慶寺)
★雪村の‘竹林七賢人’(畠山記念美)

★曽我蕭白の‘松鶴山水図’(個人蔵)
★白隠の‘達磨像’(大分・万寿寺)
★白隠の‘自画像’(静岡・龍沢寺)

このなかで最も嬉しいのが国宝の2点。長年追っかけていた絵だから、絵の前では感慨深くながめていた。白隠が多くみれたのは‘妙法寺展’(東博&京博)のお陰。全部で17点の展示はミニ白隠展といってもいいくらい。万寿寺蔵の‘達磨像’はこんな特別展でもないかぎり、寺の外にはでない作品だから、妙法寺展様々である。

白隠とともに念願の絵がみれたのが雪村。畠山記念美にある‘竹林七賢人’がやっとみれたと思っていたら、想定外のオマケが茨城県立歴史館で2点用意されていた。そして、三井記念美の‘道教の美術展’でも大好きな‘琴高・群仙図’(重文、京博)と再会した。最後の締めが静嘉堂文庫蔵の‘柳の鷺’。この絵は一度会場でまったく忘れていたので、また出かける羽目に。

蕭白の絵ははじめてお目にかかったが、その構成にとても魅せられた。また、MIHO MUSEUMの‘若冲ワンダーランド’には回顧展でみたことのある‘波濤鷹鶴図’と‘虎渓三笑図’(千葉市美)がでていた。

さて、来年以降の追っかけ、リストに残っているもののうち見たい度が強いのは、
★‘病草子・肥満の女’(福岡市美):上の画像
★雪村の‘花鳥・柳と鷺’(東芸大美):真ん中
★白隠の‘蓮池観音像’(個人蔵):下

‘絵師草子’(三の丸尚蔵館)をみれたから、次の狙いは‘病草子・肥満の女’。この絵は7,8年前サントリー美であった展覧会に登場したが、展示替えで見逃した。それ以後、どこどこの企画展に出品されたというのを耳にしない。そろそろでてきてくれる?

東芸大美には雪村の絵が3点ある。‘竹に虎’は平常展でみたが、‘柳と鷺’と‘竹・葡萄・芙蓉・鳥’はずっと待っているのに縁がない。来年1点くらいは願いが叶うような気がする。勝手に期待して待ちたい。

白隠の画風にだいぶ慣れてきた。東博が白隠展を開催してくれたら最高なのだが。

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2009.12.25

三の丸尚蔵館にある追っかけ作品もあとわずか!

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今年開かれた日本美術の展覧会で最も期待していたのが‘皇室の名宝展’。開幕前は10年前に体験した名宝展で見逃した絵画が再登場することを願い、狙いの作品が新規にでてくるのを期待していた。思いえがいていた作品の全部ではないが8割は願いが叶えられた。嬉しいかぎり。

★海北友松の‘浜松図屏風’
★長澤芦雪の‘唐子睡眠図’
★狩野探幽の‘井出玉川・大井川図屏風’
★‘絵師草子’
★‘小野道風像’
リカバリーできた5点のうちとりわけ心が和んだのが‘唐子睡眠図’と‘絵師草子’。

名宝展を2回体験したので、三の丸尚蔵館蔵で残っているのは次の3点だけになった。ここの作品はもうちょっとで済みマークがつく。
★海北友松の‘網干図屏風’:上の画像
★‘南蛮人渡来図屏風’:真ん中
★円山応挙の‘群獣図屏風’:下

‘網干図’というのは漁に使う網を乾かしている場面を絵にしたもの。この‘網干’は江戸時代以降、水辺の景色を表す文様として、波、千鳥、葦などと組み合わされて衣裳や工芸にさかんに使われた。

‘南蛮人渡来図’は長いこと待っているのだが、なかなか会えない。この六曲一双の屏風は展覧会に出品されたことがあるのだろうか?図版でみる限り、狩野山楽の‘南蛮屏風’(サントリー美)や狩野内膳の‘南蛮屏風’(神戸市博)と同じくらいいい絵にみえる。なんとしてもみなくては!の思いが強い。

応挙が象や虎や猿など動物を沢山描いた絵は4年くらい前仙台の美術館に出品されのに見逃してしまった。来年10月、三井記念美で‘円山応挙展’が開催されるから、そこに登場してくれたらご機嫌なのだが。

日本画の場合、いい絵との対面は本当に時間がかかる。これらの絵が10年後の名宝展までおあずけとなるとかなりシンドイ。せめて、三の丸尚蔵館の平常展で展示してほしいものである。来年の干支は虎なので、‘群獣図’を飾るいい機会。期待したい。

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2009.12.24

ずっと待っている藤島武二と竹久夢二の女性画!

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今年は洋画の当たり年で、いい回顧展が3つもあった。損保ジャパン美の‘岸田劉生展’、ブリジストン美の‘安井曾太郎の肖像画展’、そして松涛美の‘村山槐多展’。また、東京都美や川村記念館で行われた企画展でも山本芳翠や岸田劉生のいい絵が登場した。

そのなかで収穫は3点。
★安井曾太郎の‘F夫人像’(個人蔵)
★安井曾太郎の‘本多光太郎肖像画’(東北大学)
★岸田劉生の‘麗子座像’(個人蔵)

‘F夫人像’は追っかけリストにある絵だから大きな満足が得られたのはいうまでもないが、川村記念美で遭遇した‘麗子座像’にも大変魅了された。この絵を見るために佐倉へ3度も足を運ぶ羽目になったが、悔いを残さずに済んだ。昔からチラシなどに載っている絵が気になってしょうがないときは、‘絵が呼んでいる’のだと思って、1点だけの鑑賞でコストが高くなったとしても出かけることにしている。

日本のビッグネーム洋画家が描いた女性の絵には松園や清方の美人画同様、強い関心を持っている。東近美や東博平常展、ブリジストン美などに出かけ、ひとつ々済みマークをつけてきた。今、追っかけているのは藤島武二の2点と夢二の河村コレクション。

★藤島武二の‘芳蕙’(個人蔵):上の画像
★藤島武二の‘チョチャラ’(石橋美):真ん中
★竹久夢二の‘黄八丈’(河村コレクション):下

夢二のモデルもつとめたお葉に中国服を着させて描いた‘芳蕙’(ほうけい)に早くお目にかかれないかとミューズにお願いをしているのだが、とんと反応がない。この絵がこの前展示されたのは一体いつ、10年前?20年前?仮に藤島武二展が来年開催されたとして、この絵は登場する?今のところ、清方の‘築地明石町’のように遠い存在のままである。果たして、目の前に現れてくれるだろうか。

‘チョチャラ’は3年前全国を巡回した‘日曜美術館30年展’に出品されたが、東芸大美では惜しいことに展示されなかった。これは八重洲ではなく久留米のブリジストン美にある作品だから、また鑑賞の機会が遠のいた。こうなると、ブリジストン美で回顧展が行われるのを期待するほかない。

夢二の絵に開眼したのは03年尾道市美であった回顧展。このころ広島に住んでいたが、その一年前に山口県美で公開された河村コレクション(河村氏は下関の出身)は知る由もない。美術品の追っかけには時間のズレがよくある。これはどうしようもない。で、今はコレクションの再公開をじっと待っているところ。

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2009.12.23

鏑木清方の‘築地明石町’に会えるだろうか?

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鑑賞した展覧会のふりかえりと同じくらい楽しいのが追っかけ作品の成果を確認すること。幸運にも遭遇できた絵を思い出し、その図版を眺めているとすごく満ち足りた気分になる。

近代日本画の美人画は追っかけリストの2点とNO情報の1点が心を熱くしてくれた。
★鏑木清方の‘秋の夜’(秋田県近美)
★鏑木清方の‘墨田川両岸’(川口市)
★上村松園の‘草紙洗小町’(東芸大美)

いい美人画に3点も会えたのは大きな喜び。最終ステージに入っている松園と清方の追っかけは来年もこのペースが続くことを信じたいが、これからはなかなか難しそう。是非みたい清方の絵は次の3つ。

★‘築地明石町’(個人蔵):上の画像
★‘祭さじき’(福富太郎コレクション):真ん中
★‘朝図’(静嘉堂文庫):下

代表作‘築地明石町’は長いこと追っかけているが、まったく縁がない。この傑作は個人の所蔵なのだが、鎌倉の記念館の方に聞くとずっと所在がわからないという。過去あった清方の回顧展についての情報が整理されてないから、いつごろまで展覧会に出品されていたのかも不明。

10年くらい前横浜美であった回顧展の図録をみたが、この絵はなかった。東近美でも清方展をやったようであるが、これは知らない。みたくてしょうがない絵だが95%はあきらめ気分。5%の夢が実現するだろうか?

サントリー美の回顧展で密に期待していたのが‘祭さじき’。が、残念ながら願いは叶わなかった。この絵は今年に入って古本屋でみつけた図録(82年、新宿小田急で開催された清方展)で知った。頁を開いた瞬間、もうこの絵の虜。記念館はよく福富コレクションを展示してくれるので、じっくり待とうと思う。

静嘉堂文庫の‘朝図’は図版だけでははっきりしないが、目や着物の柄などをみるといい雰囲気が漂っている。ここのコレクションは質が高いから、きっといい絵にちがいない。早くみたいものである。

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2009.12.22

09年感動の展覧会・ベスト10!

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今年出かけた展覧会の感想記は村山槐多展で終了。インドのアジャンタ石窟寺院などを含めて美術館を訪問した回数は170。昨年の164回をすこし上回った。

ここ2年は鑑賞済みの美術品が増えてきたこともあり、出かける展覧会は重点作家や分野に絞り込んでおり、美術館めぐりは‘選択と集中’に徹した企画展と東博の平常展を軸にしてまわっている。そして、鑑賞の対象は絵画から古代遺跡、彫刻、工芸へシフト中。

恒例となった1年のまとめ、‘09年感動の展覧会・ベスト10!’は出動の回数を絞っている分、あまり悩まない。展覧会へ出かけるのは追っかけ作品を鑑賞するためだから、最終的にリストアップされるのは未見作品のインパクトの総量が大きかったものになる。

このため、すばらしい名画が沢山やってきた‘ルーヴル美名品展’(西洋美)や‘ハプスブルク展’(国立新美)のような一級の展覧会でも、過去にみた作品が多かったのでリストからはずれる。

とりわけ感動の度合が大きかった展覧会を西洋美術から4つ、日本美術から6つ選んだ。いつもの通り、拙ブログでは展覧会に順位はつけない。開催された順番に並んでいる。上の画像は若冲の新しく発見された象さんの絵だが、これが展示された‘若冲ワンダーランド’がNO.1だったということではない。

★‘よみがえる黄金文明展’     1/29~2/15    大丸東京店

★‘マーク・ロスコ 瞑想する絵画’  2/21~6/7     川村記念美術館

★‘ゴーギャン展’           7/3~9/23     東京国立近代美術館

★‘トリノ・エジプト展’         8/1~10/4     東京都美術館

★‘まぼろしの薩摩切子’       3/28~5/17    サントリー美術館

★‘写楽 幻の肉筆画’       7/4~9/6       江戸東京博物館

★‘冨田渓仙展’           8/8~9/23      茨城県立近代美術館

★‘若冲ワンダーランド’       9/1~12/13     MIHO MUSEUM

★‘皇室の名宝展’          10/6~11/29    東京国立博物館

★‘清方 ノスタルジア’       11/18~1/11    サントリー美術館

古代トラキアの秘宝、‘黄金のマスク’を大丸でみたときの感動は一生忘れないだろう。黄金はアテネの国立考古学博物館にある‘黄金のマスク’(ミケーネ遺跡から出土)より数倍輝いていた!

今年は遺跡関連の展覧会が多かった。そのなかで、美意識が最も高揚したのがトリノからやってきた古代エジプトの彫像。‘イビの棺の蓋’と‘アメン神とツタンカーメン王の像’を息を呑んでみた。こんなすばらしい像が日本で見られたのは本当に幸運だった。

マーク・ロスコの‘シーグラム壁画’展示は現代アート関連の企画展ではエポック的な出来事。お陰でロスコがだいぶ近くなった。来春、アメリカの美術館で再会するのがとても楽しみ。

当初あまり期待してなかった‘ゴーギャン展’だったが、未見のいい絵があり、大満足だった。流石、東近美という感じ。

サントリー美は薩摩切子と鏑木清方でうっとりさせてくれた。この美術館は本当にファンの期待値に応えてくれる。その高い企画力をこれからも存分に発揮してほしい。

浮世絵展は毎年海外からの里帰り展が目を楽しませてくれる。江戸東博で公開されたギリシャのマノスコレクションには浮き浮きする名品が沢山あった。摺りの状態のいい浮世絵をみるときほど幸せなことはない。

2回通った茨城県近美で冨田渓仙の実力をまざまざと見せつけられた。対象の巧みな動感描写と美しい花の絵に釘付け。いい思い出になった。

若冲の‘象と鯨図’を心から楽しんだ。水墨画にしろ著色画にしろ若冲の絵にはやはり魅せられる。来年また千葉と静岡で回顧展があるから、プラスアαに今から気持ちが向かっている。

10年ぶりの‘皇室の名宝展’は別格の展覧会だった。前回見逃した芦雪や海北友松の絵がリカバリーでき、正倉院にある見事な螺鈿装飾の楽器などをみることができた。これほど嬉しいことはない。

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2009.12.21

待望の村山槐多展!

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現在、渋谷の松涛美術館で‘村山槐多展’(12/1~1/24)が開催されている。この画家は東近美へ行くたびに上の代表作‘バラと少女’をみるので、青木繁や岸田劉生と同じくらいの強さで頭の中にインプットされている。でも、はじめのころは槐多(かいた)が読めなかった。

村山槐多は1896年横浜の生まれで、1919年に22歳の若さで亡くなっている。だから、その絵が世の中に認められ、類まれな才能が発揮された期間は5年たらず。20歳で生涯を終えた関根正二同様、本当に短い画家人生だった。

槐多の絵で画集に載っている有名な絵は東近美であった‘20世紀美術がのこすもの展’(02年)&‘青木繁展’(03年)、神奈川県近美葉山館の‘時代と美術の多面体’(07年)でみたから、どんな画風かはおおよそわかる。が、体験した絵が少ないから心の80%は‘村山槐多は一体どんな画家だったの?’で占められている。

前期(12/1~27)の出品作はデッサンをいれて100点くらい。後期(1/5~24)に16点が入れ替わる。惹きつけられる絵はやはり‘バラと少女’。この絵で少女は岸田劉生の‘麗子像’(拙ブログ07/11/7)や関根正二の‘三星’とか‘少年’(07/2/4)のように写実的に描かれてなく、その姿はこけしや彫刻像みたいにみえる。縦に走る幅広の線が印象的な着物を身につけた少女のほっぺは真っ赤。その後ろで咲き乱れる赤いバラがこの少女の生命力を祝福しているかのようである。

真ん中の‘自画像’はものすごく気になる絵。この絵に会ったときからその気持ちは変わらない。画面全体は暗い印象をうけるが、目にとても力があり、じっと向き合っていると若さゆえの純でロマンチックな感情のほとばしりにたじろいでしまう。青木繁の絵にも同じような気持ちにさせられる自画像がある。

今回の一番の収穫は下の‘紙風船をかぶる自画像’。丸坊主の槐多の自画像をみると神経質でもっといかつい顔をしているのに、この絵では女みたいな顔つきをしている。これをみてすぐ思い浮かんだのがピカソが‘青の時代’に描いた自画像(08/10/25)。ご存知のようにピカソは自分を実像とはかけ離れた表情がやわらかく青白い顔をした青年に仕上げた。

槐多がこの絵を描いたのは18歳。この頃、美少年に恋していた。その恋文が展示されている。男色というよりは女性の美しい肉体にあこがれるのと同じ感情をやわらかい男に抱いたというほうがあたっている。美に対する感性は研ぎ澄まされているから、こういうことがあってもおかしくはない。で、自分もこの子のように美しくなりたいという変身願望が槐多にこの自画像を描かせたのかしれない。

関心の高かった村山槐多の回顧展に運良くめぐり合ったのを大変喜んでいる。次は関根正二。東近美あたりが開催してくれると嬉しいのだが。

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2009.12.20

3回楽しんだサントリー美の鏑木清方展!

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サントリー美で開催中の鏑木清方展後期(12/16~1//11)を楽しんだ。最初この展覧会の情報を得たとき、‘なんでまたサントリーが鏑木清方の回顧展をやるのだろう?!’というのが率直な反応。だから、期待半分、リスク半分だった。

でも、ふたをあけてみれば予想を大きく上回るすばらしい内容だった。福富太郎コレクションや頻繁に通っている鎌倉の記念館、東近美、横浜美、千葉市美などから集められた作品は清方の代表作の8割方カバーしている。

清方の追っかけが最終ステージに来ているとき、秋田県近美から‘秋の夜’(前期、拙ブログ12/3)を呼んでくれるのだから、思わず‘サントリーはファンの見たい絵がよくわかっている!’と拍手を送りたくなる。

こういうレベルの高い回顧展はこの先10年はないだろうから、この際全作品を見ることにした。で、初見の‘女役者粂八’と‘肌寒’(12/2~14の展示)の2点をみるために
12/9にまた出かけた。

一人の画家を好きになるのはやっかいなことではある。傍からみれば、‘また見る機会があるのだから、その時まで待っていればいいのに’となるのに、それが待てない。日本画の場合、次に出てくるのはずっと先になることが多いから、余計にそういう心理状態に陥る。

3回目の出動となった後期には清方作品は70点弱。すでに手に入れている図録で注目の絵や再会したい絵には○をつけてある。そのなかで再度目がとろんとなったのが上の‘いでゆの春雨’。06年にこの絵と会って以来(06/2/16)、浮き浮きモードがオンになりっ放し。

清方の美人画は皆同じような顔をしていると思われるかもしれないが、歌麿の美人画同様よくみると目の描き方、顔の輪郭が微妙にちがう。人物画は目が命であることは西洋画でも日本画でも変わりない。清方の絵でぐぐっと引き込まれる目をしている絵はそんなに多くはない。

今回出ている絵のうち細目タイプで美しさが際立っているのは‘いでゆの春雨’と通期展示の‘春雪’(サントリー美)、‘虫の音’(前期、鏑木清方記念美)。そして、大きな丸い目をしている絵で心を揺すぶるのが‘秋の夜’と後期に登場した真ん中の‘江の島’(横須賀美)と‘遊女’(横浜美、08/9/28)。

清方は物語絵をいくつも描いている。‘西鶴五人女のおまん’、‘道成寺(山づくし)・鷺娘’、‘お夏清十郎物語’。前期から展示されている‘お夏清十郎’(全6面、07/4/13)は場面が替わり、下の清十郎の死を知り狂乱するお夏が村の子どもたちの歌にあわせて踊る場面など4点がでている。

満足度200%の清方展だった。サントリー美に感謝!

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2009.12.19

東博平常展で追っかけの国宝蒔絵経箱と遭遇!

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東博の平常展に展示される国宝は見逃さないようにHPで定点チェックしている。

今回足を運んだのは13室で展示中(12/8~3/14)の‘太刀 伯耆安綱(名物 童子切安綱)’(平安・10~11世紀)、‘刀 相州正宗(名物 観世正宗)’(鎌倉・14世紀)、‘太刀 福岡一文字吉房(号 岡田切)’(鎌倉・13世紀)と5,6室に登場した‘白糸威鎧’(鎌倉・14世紀、島根・日御碕神社)をみるため。

ここは所蔵のものだけでなく、全国の寺社にあるものがときどき展示される。出雲神社のすこし先にある日御碕神社(ひのみさき)は一度訪れたことがあるが、上の有名な鎧はみれなかった。もう、ここに出向くことはないだろうからこれを見ることはないなと思っていた。

ところが、なんとも幸運なことに12/15~3/22まで展示されるのである。白い組糸なので派手さはないが、とても風格のある鎧である。国宝の鎧をみたのは過去2回くらいしかないから、まだ目が慣れてない。これを機に鎧を追っかけリストに加えることにした。

お目当ての刀と鎧をみたから、あとは陶磁器と漆工を軽くみるつもりだった。でも、そうもいかなくなった。まったくリスト外だったものが目の前に現れたのである。真ん中の国宝‘倶利迦羅竜蒔絵経箱’(くりからりゅうまきえきょうばこ、平安・12世紀)!この蒔絵の追っかけ作品(拙ブログ2/20)が奈良の当麻寺からやってきてくれたのか!という感じ。12/15~3/14まで公開される。

これは長方形の木製黒漆塗経箱。淡い平塵に金銀の研出蒔絵で描かれた意匠が強いインパクトをもっており、夢中にさせる。釘付けになるのが中央の燃えさかる炎のなか、倶利迦羅剣の剣先を呑もうとしている竜。迫力満点。

この竜は不動明王の変化身である竜王。下の渦巻く波の描写も見事。左右の岩座には合掌する矜羯羅(こんがら)と金剛棒を手にした制吨迦(せいたか)の二人の童子がいる。本当にいい蒔絵をみた。

不思議なことに、このあとまわった近代日本画の部屋でまたNO情報の追っかけ作品と会った。下の橋本雅邦の‘山水図’(明治26年・1893)。画集に載っているこの絵はここ5年ではじめて展示された。とても大きな絵だから、この風景を今まさに眺めているような気分になる。

近くと遠くにある木々を丁寧に描き分け奥行き感をつくり、遠くの山を霞の中に浮かび上がらせている。画集から受けるイメージを大きく上回った。やはり絵は本物の前に立たないとその絵のすばらしさが伝わってこない。なお、この絵の展示は来年の1/11まで。

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2009.12.18

好感度が低下する新山種美術館!

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新山種美の‘東山魁夷と昭和の日本画展’(12/5~1/31)をみてきた。ここへは開館記念の速水御舟展に続いて2度目だが、この美術館に対する好感度は低下するばかり。新美術館はいくつも経験したがこういうのは珍しい。

まず、入場料を払う際のヘンな対応で出鼻をくじかれた。次回の‘大観と栖鳳展’(10/2/6~3/28)の前売り券(1000円)が案内されていたので、これを一緒にお願いして3000円出した(入場料1200円+1000円)。

すると、この女性は‘前売り券は別ですから、まず2000円いただきます。おつり800円です’と言う。そして、隣に移って前売り券を封筒に入れ‘千円をいただきます’。で、千円を払う。???どうして、3000円をもらって、2枚のチケットを一緒にしておつり
800円をわたせないの?まったくあきれてしまった。

九段下にあった山種美ではさっと入館して、あまり長居はせず質の高い日本画を楽しみ、受付に預けていたバッグを受け取り、とてもいい気分で帰るパターンが多かった。ところが新山種美はJRあるい地下鉄の恵比寿駅からここまでたどりつくのがとてもおっくう。九段下のときもアクセスは悪かったが、新館の場合、坂道プラス途中の歩道橋がアクセスの悪さを余計に印象づける。さらに、館に入ってまた展示室がある地下まで階段を降りていかなければならない。

出品作は52点。うち東山魁夷は8点あるが、これらは皆鑑賞済み。ここにある東山魁夷の絵は大作ではないが、すばらしいものばかり。一番のお気に入りは‘年暮る’(拙ブログ05/12/11)。暮れになるとこの絵を無性にみたくなる。そして、俯瞰の視点がぐっとくる‘緑潤う’や‘月出づ’にも惹きつけられる。

今回足を運んだのは山種美にある東山魁夷作品の図録が欲しかったから。出光美のようにほかの画家の絵も入れて1500円くらいでつくってくれるかなと期待していた。が、これは見事に裏切られた。展示されているのは一級の日本画だから、内容については文句のつけようがない。が、入場料の1200円は高すぎる。九段下のときも作品の数はこれと同じくらいでていた。でも、料金は800円でしかもぐるっとパス券が使えた。

1300円のサントリー美の‘鏑木清方展’や1200円の新根津美の‘根津青山の茶の湯展’と較べると、ここの1200円はすごく割高。前と内容は同じなのに400円も値上げしている感じ。料金は大幅値上げ、図録も制作しないでは、所蔵作品はだいたい目の中におさめているからもう数回来たら、東近美のように足が遠のく。

この美術館はいつまでも所蔵品だけで企画展を構成するのだろうか?いい作品が揃っているのは十分わかっているが、それだけでお客を呼べる?高い料金、アクセスの悪さ、窮屈な印象を与える展示空間、スタッフの気持ちの通わない対応などマイナス面ばかりが目立つ現状では、日本画愛好家の館に対する好感度はだんだん低下していく。

西洋美術関係では相変わらずオルセーやルーヴル、ウィーン美術史美などブランド美術館の名画がひっきりなしに公開され、エジプト美術やギリシャ・ローマ美術の名品などもどんどんやってくる。日本美術だって、来年は大規模な長谷川等伯展があるし、人気の若冲展も開催される。また、奈良では‘大遣唐使展’がありボストン美蔵の絵巻の傑作が里帰りする。

近代日本画の老舗美術館とあぐらをかいておられるような状況ではない。サントリーや出光、五島のように他館の作品もあつめた特別展とかほかの美術館とのコラボを真剣に検討しないといずれ先細りになる。

やって欲しい日本画家の回顧展はいくつもあるのだが、ここは権威主義で有名だからその可能性はほとんどなさそう。

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2009.12.17

干物の人気NO.1はホッケ!

11042日前の朝日新聞にアスパラクラブ会員に対して定期的に実施されるアンケートが載っていた。

今回のテーマは‘日本一の干物’。アジの干物はかなり頻繁に食べるのでこの結果には興味深々。回答総数4534人によるベスト10は次のようになっている(複数回答)。

1位 ホッケ(北海道・羅臼)    1266人
2位 アジ(静岡・沼津)       1068人
3位 シシャモ(北海道・鵡川)   1059人
4位 キンメダイ(千葉・銚子)    902人
5位 イカ一夜干し(新潟・佐渡)  823人
6位 若狭ガレイ(福井・小浜)    806人
7位 タコ(兵庫・明石)        670人
8位 カワハギ(千葉・房総)     427人
9位 クサヤ(東京・新島)      424人
10位 ハタハタ(秋田・象潟)     401人

人気NO.1の干物は北海道のホッケ。飲み会でメニューのなかにホッケがあれば注文することが多い。つい2週間前も食べる機会があった。身が厚く食べやすい熱々のホッケはとても美味しい。

我が家では魚というと秋刀魚かブリの焼き物とアジの干物。刺身は飲み会のときはもちろん食べるのだが、夕食で食べる習慣がなく、宴会モードの正月のときだけ。また、魚の煮付けもでてこない。

アジの干物はほんとうに美味しいからご飯がすすむ。最近はMOAへクルマを走らせることが少なくなったが、2,3年前は帰るとき道路沿いにある干物やかまぼこのお店に寄ってアジの干物を買っていた。

3位のキンメダイはホッケ同様身離れがよく食べ応えがある。4位のシシャモは大好物、塩のしょっぱさと苦味の混じる食感じがいいので炉端焼きではつい注文してしまう。

イカ一夜干しとか若狭ガレイとかカワハギはビールのつまみにもってこい。研修合宿が終わったあとの懇親会ではこういうものは必ず出てくる。秋田のハタハタはこれまで食べたことがない。鍋のイメージがあるのだが、食べ方としては干物?それとも煮付け?

クサヤはまず無理。あの強烈な匂いには耐えられない。伊豆への団体旅行で一度この匂いを体験した。バスの最後尾の席に陣取って宴会気分で酒を飲んでいるシニア男性グループがいた。その一人がクサヤがはいったビニールの袋かなにかをチラッと開けただけなのに、あの匂いがドバッとでてきた。その人は流石に常識をわきまえていて、すぐバッグの中にしまった。

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2009.12.16

浮世絵の楽しみがぎゅっと詰まった浮世絵百華展(後期)!

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たばこと塩の博物館で開催中の‘平木コレクションのすべて 浮世絵百華展’の後期‘浮世絵とは何であったか’(12/15~1/11)を楽しんだ。前期(拙ブログ12/4)とそっくり入れ替わった70点は4つの切り口でグルーピングされている。

Ⅰ ‘錦絵’という事件
Ⅱ 時代の中の浮世絵
①‘知’の発現としての浮世絵 ②文芸世界との交歓 ③‘知’の底上げ ④江戸の‘浮世絵学’
Ⅲ 浮世絵という情報媒体、浮世絵の情報回路
①絵は読むものー絵解ー ②悪所に開く窓 ③絵草紙屋の風景 ④‘メディア’としての浮世絵⑤浮世絵と広告
Ⅳ 生活の諸相と浮世絵
①雛形 ②柱の立つ美女 ③子どもと浮世絵

摺りの状態のすばらしい平木コレクションをとても上手い構成でみせてくれるのだから、浮世絵ワールドを満喫できることは請け合い。こういう楽しくてためになる展覧会というのが一番いい。魅了される絵がいくつのあるので絞り込むのに苦労する。迷ったときは素直に最も好きな絵師を選択することにしている。

★鈴木春信の‘機織’(明和3年・1766頃):上の画像
★鈴木春信の‘本柳屋お藤’(明和5~6年頃):真ん中
★石川豊信の‘妓楼の酒もり’(宝暦1751~64年中期):下

背景が紅一色の‘機織’は春信作品のなかでもお気に入りの絵。春信の絵でいつも感心させられるのが動感描写。機械を操作するため紐を巻きつけた右足をみると、機織作業の‘カチャ、カチャ’という音が聞こえてきそう。

明和期に人気の娘が二人いた。笹森稲荷前の茶屋の看板娘お仙とここに登場する浅草の化粧品屋の看板娘お藤。お藤をひと目みようと店にやってきた頭巾姿の若い男は‘お藤ちゃん、いつもきれいだねぇー、爪楊枝をおくれ’とかなんとか言っている?それともズバリ、‘今夜、俺と遊ばない!’と直球勝負?

こういう実在のカワイイ女を描いた絵を何枚も摺って江戸中にその存在を広めるのだから、浮世絵は情報メディアそのもの。これは今でいうと若い女性が読んでいる‘カリスマ店員○○ちゃん’を紹介する雑誌と同じ。春信の絵は後に歌麿の美人画になり、そして現代にもしっかり受け継がれていた!

今回の収穫のひとつは石川豊信が描いた座敷あそびの絵。コンディションがよく、こちらもつい浮かれてしまう。東博の浮世絵コーナーに5年通っているが、豊信の絵でこんなにうっとりさせられることはなかった。流石、平木コレクションである。

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2009.12.15

松井秀 エンゼルスへ移籍!

1100ヤンキースの松井はFAでアリーグ・西地区のエンゼルスへ移籍することになった。

1年契約で年俸は650万ドル(約5億
7000万円)。

マスコミ情報だと松井は來シーズンはヤンキースの縦縞のユニフォームは着ないだろうとみられていたが、その通りになった。

松井自身は来年はDHではなくて守備についてプレーしたいと思っていたから、DHでしか契約してくれないヤンキースよりは外野手として期待してくれるエンゼルスのほうがプレーする環境としてはいいはず。松井はベストの選択をしたのではないだろうか。

でも、本人は覚悟していたかもしれないが、年俸が650万ドルというのはファンからするとかなりショック。今年の年俸1300万ドルの半分であり、イチローの1800万ドルの1/3。大リーガーの評価は実績主義をベースにしているから、ここ2、3年怪我で期待される成績が残せてない松井に対する評価は大幅に下落する。厳しい世界である。

イチローとともに日本球界を代表する松井の給料がここ2年並みの成績に終わったカブスの福留(年俸13億円)を下回るのは我慢ならないという人もいるだろうが、アメリカは契約社会、これは仕方がない。福留だって、このままだと次回の契約では相当評価を下げられるのは目にみえてる。その前にトレードに出される可能性も十分ある。

松井の新天地エンゼルスは西地区で3年連続優勝した。同じ地区のマリナーズは今年はエンゼルスとそこそこ戦えたが、昨年まではボコボコにやられていた。このチームは有能なソーシア監督がなんといっても強み。投手力と打撃力のバランスがよく、機動力もある。また、センターには守備力抜群のトリー・ハンターがいる。中軸バッターのゲレーロはFAでエンゼルスを去るとみられているから、大きな試合で勝負強いバッティングをする松井への期待値は高い。

来年は大リーグ中継を見る楽しみがぐっとアップする。イチローと松井は同じ地区のチームでプレーすることになるので、対戦カードの中継回数が5割くらい増えそう。二人の活躍が一緒にみられるのだから、これはたまらない。LAからエンゼルスの球場があるアナハイムに大勢の日本人客が押し寄せることは間違いないし、シアトルでも同じ現象が起こるだろう。

NYより断然暖かいLAに生活の場を移すのは松井の膝にはいいだろうし、コンディションを維持しやすい。エンゼルスの松井におおいに期待したい。

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2009.12.14

ボストン美蔵の‘吉備大臣入唐絵巻’が来年奈良博にやってくる!

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今日はとてもいいことがあった。来年の展覧会情報をゲットするため、ネットで美術館のHPなどをサーフィンしていたらビッグニュースにぶち当たった。

平城京が誕生して1300年を迎えるのを記念して、2010年奈良博では‘大遣唐使展’が開催される(4/3~6/20)。ここにボストン美が所蔵する‘吉備大臣入唐絵巻’(平安時代後期12世紀、上の画像)が展示されるというのである。

この絵巻は海外に流失したお宝のひとつで、日本にあったら国宝間違いなしの名品。
00年春に東博であった‘日本国宝展’に里帰りしたのだが、当時は広島に住んでいて見逃した。だから、これをみるのはほとんど諦めていた。それがなんと10年ぶりにまた日本にやってくる。嬉しくてたまらない。奈良行きを即決めた。

来年、奈良県内では‘祈りの回廊~奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳’が行われるから、この展覧会の会期中に公開されるものを一緒に鑑賞すると楽しみは倍増する。タイミングがうまく合うのは、

★東大寺 国宝 重源上人像  (4/2~15)
★朝護孫子寺 国宝 信貴山延喜絵巻・延喜加持の巻 (4/22~5/5)
★法華寺 国宝 十一面観音像 (5/1~9、6/5~9)
★室生寺 国宝 十一面観音像 (5/15~8/31)
★當麻寺 国宝 東塔初層   (5/20~6/20)

★壺坂寺 重文 三重塔初層  (3/1~5/31)
★大安寺 重文 十一面観音像・馬頭観音像 (4/1~5/9)
★岡寺  重文 書院内陣    (4/10~5/5)
★西大寺 重文 愛染明王像  (4/23~5/31)

追っかけ国宝に入れている法華寺の十一面観音像は見たい度がかなり強いから思案中だったが、‘大遣唐使展’の情報を入手したので訪問は決まり。‘吉備大臣入唐絵巻’が背中を押してくれた感じ。もうひとつ、まだ行ってない當麻寺にも寄ってみたい。

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2009.12.13

これぞ菊池コレクション 藤本能道の色絵磁器!

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展覧会へ出かけるとき、内容に関する情報はいつもチラシのみ。ひたすら作家の作品への美欲(My造語)をふくらませている。大倉集古館と目と鼻の先にある智美術館で現在行われている‘藤本能道展’(10/31~4/18)は期待のやきもの展。

藤本能道(よしみち)は色絵磁器の名手(1986年人間国宝)。その作品は近現代陶芸展でよく見るので、どういう特徴をもったやきものかはおおよそインプットされている。でも、回顧展に縁がなかったから作家との距離は近くはなかった。その関係がようやく解消された。

菊池コレクションのなかで一番の自慢がこの藤本能道の色絵磁器。今回、56点でている。作風は1970年前後から1990年までのものと最晩年の1990年・91年では大きく変わる。上と真ん中はこれまでよく見かけた写実的な表現のもので、下は写実を離れ幻想的な印象を与える作品。

藤本の色絵が好きなのは花鳥画をみているような気分にさせてくれるから。絵のような絵付けというと‘そういうやきものはどこにでもあるのでは?’と思われるかもしれないが、藤本のようなものはそうないのである。

上の長四角筥はぱっとみると花鳥画そのもの。川の上を飛ぶ一羽の鳥を俯瞰の視点で描いている。川の流れを斜めにして鳥を左右の草木ではさみこむように配置する構成と岩のまわりにできるリアルな白い泡が心を揺すぶる。

色彩で目を楽しませてくれるのが翡翠の青。真ん中の六角筥や扁壺に描かれた色鮮やかな翡翠をじっとみつめていた。

扁壺は10点あるのだが、形がどうもしっくりこない。で、お気に入りの筥を重点的にみた。とくに惹きつけられるのが画画中央、横にのびる枝にみみずくがとまっている大きな八角筥。また、2羽の鴉が寄り添っている四角筥にも魅せられる。

1990年までの色絵が自然のいのちを愛でる写実的な描写だったのに対し、90年・
91年の作品はまさにサブタイトル‘命の残照のなかで’制作されたもの。藤本は癌におかされ1992年の5月、73歳で亡くなる。

作風はがらっと変わり、辰砂の赤や金が多用される。下の六角筥では透き通る白磁に赤い花がひろがり、そこに金色の昆虫や蝶が戯れている。隣の扁壺は吹き上がる赤い炎のなかで蛾が舞う。

ここが所蔵する藤本作品は質量ともにすごい!展示室が新しくなったのはこの回顧展のためだった。わざわざアメリカのデザイナーに依頼するほどの力の入れようだが、藤本とコレクター菊池智の交友を考えればその気持ちはよくわかる。年が明けたらまた足を運ぶつもり。

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2009.12.12

とても渋い柴田是真の漆×絵!

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江戸末から明治初めの漆芸の第一人者だった柴田是真(1807~1891)の漆工や漆絵をまとまった形でみたいと願っていたが、ようやくそれが実現した。三井記念美では今、アメリカからの里帰り作品を中心にした‘柴田是真の漆×絵’(12/5~2/7)が開かれている。

作品の数はエドソンコレクション66点に国内の20点が加わり全部で86点。これに
1/4ないしは1/13から登場するのがプラス14点。是真の作品を見る機会はこの先
20年くらいはないだろうから、年が明けてもう1回出かけようと思っている。

過去、是真の絵や漆器と縁があったのはほんの数回。1/13から展示される皇居宮殿の杉戸絵(三の丸尚蔵館)は10年前あった‘皇室の名宝展’で、東博蔵の‘蓮鴨蒔絵額’(通期展示)は03年の‘工芸の世紀展’(東芸大美)で遭遇した。

紙や絹の上に色漆で描く漆絵を最初にみたのは新潟の敦井コレクション。20年くらい前のこと。油絵のような絵肌と黒っぽくて茶褐色の色合いはとてもインパクトがあった。そして何よりも惹きつけられたのが余白のとり方と巧みな構図。2度目は山種美。

今回の収穫は漆器。これほどすばらしいものがあったのか!というのが率直な感想。とくに息を呑んで見たのがエドソンコレクションの‘柳に水車文重箱’。コレクションのなかでも群をぬいていい。視線が集中するのが重の中央に流れる海青波の文様。文様そのものは慣れ親しんだものだが、この波文の描き方ははじめてみた。

これは青海波塗と呼ばれるもので、絞漆を鋸歯の箆で掻いて表現する波には光の加減で白黒の濃淡がつき、一般的な様式化された青海波とはちがったフォルムになっている。

同じくエドソンコレクションの黒地に朱色が目に飛びこんでくる‘稲穂に薬缶角盆’(真ん中)にも魅せられる。黄金色をした稲穂はボリューム感たっぷりで、注ぎ口には虫や塵が入るのを防ぐため藁が詰められている。ぼやっとしていると見逃すのが薬缶の堤手に彫られたキリギリス。どれもこれもすごい技である。

いくつかある印籠にはその意匠にうっとりするのとギョッとするのが混じっている。見てのお楽しみ!また、‘だまし漆器’もあるのでお見逃し無く。

漆器に較べれば目がすこし慣れている漆絵は下のユーモラスなカエルの絵に足がとまった。これは山種美蔵の画帖‘墨林筆哥’で2度目の対面。一点々味わい深い花鳥画と風景画なのだが、赤や黄色がでてくるとはいえ画面の大半は黒と茶褐色で占められているから、ブルーな気分になる人がいるかもしれない。好みが分かれるところである。

是真の作品は金銀粉がふんだんに使われた華やかな金蒔絵ではなく、渋い、どちらかというと通好みの漆芸。たまにはこんな渋い蒔絵や漆絵を見て‘黒や茶色の美’に浸るのも悪くない。すごく印象深い展覧会だった。

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2009.12.11

束芋にズキン!パート3 断面の世代展

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楽しみにしていた‘束芋 断面の世代展’(12/11~3/3)が横浜美術館ではじまった。若手現代アーティストで誰が今、注目の作家なのかほとんど知らないが、3年前に出会った束芋(たばいも)の創作活動にはすごく関心がある。

といっても、この小柄な作家の映像インスタレーションを体験したのは原美の‘ヨロンヨロン展’(拙ブログ06/8/7)と今年1月、ギャラリー小柳であった‘ハウス展’(1/12)の2回のみ。だから、束芋に再接近していることにはならないが、新作がでたら全部みたいという気持ちは強くもっている。

今回、出品されているのはアニメーション映像5点。館に入って真正面のところに‘団地層’があり、2階の会場に4点がインスタレーションされている。いずれも新作。

最初の部屋にずらっと展示してあるのは映像無しの‘悪人’。これは新聞小説‘悪人’の挿絵原画。シュルレアリスムはライフワームだから、こういうシュールなイメージが濃厚に漂う絵には夢中になってしまう。少ない鑑賞体験だが、束芋は石田徹也とともに世界レベルで通用するシュルレアリストと確信している。ダリやマグリットが束芋の作品をみたら裸足で逃げるにちがいない。

ハッとするのがいくつもでてくる。列車から出てくる手、手や波とか女の髪と水流のダブルイメージ、手と足の融合体、日本そばで輪郭された女性の顔、、束芋の豊かなイメージ力はまさに自在に展開していくという感じ。なかでも足をとめてじっと見入ったのが女の長い髑髏首が何人かの手で閉めつけられている場面(上の画像)。

また、日常よくみるものが意表をついて変容するのも大きなサプライズ。パソコンの画面からでてきた女の髪が電話線に変わったり、携帯電話から連続する波が吹き出しのようにでている。また、便器からでてくる手やネクタイが川の流れになったりするのにもギョッとする。

こうした絵が作品を見る前入り口でお会いしたあのアーティストぽくない気さくな女性の頭の中から生み出されたのである。見た目の印象と心の中が違うところがおもしろい。まったくこの束芋という作家はとてつもない才能をもっている。

この作品のあと大型映像インスタレーションが4点続く。‘油断髪’(真ん中)、‘団断’、‘ちぎれちぎれ’、‘BLOW’(下)。‘油断髪’はまず暖簾とかカーテンをイメージさせる女性の髪の毛が正面にどんと映しだされる。そのうちお馴染みのモチーフである大きな手が登場し、髪を掻き分けむこうの風景をみせる。明かりがつき、花瓶がでてくる。

最後は長い髪が激しくゆれ動く波に一変し、部屋にあった机やら置き台が大洪水に遭遇したみたいにどんどん流されていく。真ん中はこの場面。この構成は‘ハウス’にちょっと似ている。

‘団断’は‘にっぽんの台所’タイプの作品。上中下3つのスクリーンに上から見下ろした団地の部屋がでてくる。少しずつスクロールして何の変哲も無い部屋に入れ替わっていく。じっとみていると、左の部屋では事件が進行中。ここに住んでいる若い女性は不条理にもトイレの水で顔を洗っている。

‘変な女だな!’とみていると次の場面では血に染まったベッドがでてくる。あの女はどうやら手首をカミソリで切ったようだ。隣の若い男はそんなことが起こっているとはつゆ知らず、裸で風呂のなかに消えていく。隣り同士でも交わりもなく個を生きている都会生活の断面が毒味を効かせて表現されている。

今回最ものめりこんだのが‘BLOW’。束芋がこの作品で表現しているのは個の内側から外に向けて発散されるもの。登場するモチーフはくねくね曲がる背骨、四方に出る木の枝、湧き出る泡、大きく咲いた花、キノコ、手や足の指。ちょん切られた手や足の指は束芋作品には頻繁に登場する。

下は足の指先から花がでてくるところ。普通の発想では思いつかない変容だから、ちょっと戸惑う。この作品で束芋はお得意の指や髪の毛など目に見えるものと愛とか憎しみといった目に見えないものの内面性を、映像と音の効果をミックスさせて象徴的に表現している。表層とはちがった個の根っこにあるものが現れたような気がした。

束芋の作品はいつも胸にズキンとくる。2,3年ごとにこれを味わいたい。

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2009.12.10

見てて楽しいウィリアム・ド・モーガンのタイル装飾!

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汐留ミュージアムはイギリスのアーツ&クラフト運動関連の展覧会にご熱心。今回は
19世紀、タイル装飾で活躍したウィリアム・ド・モーガン(1839~1917)をとりあげてくれた。日本ではじめての回顧展は12月20日まで開かれている。

このタイルデザイナーの作品は5年前、大丸東京であった‘ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ展’で数点みただけだから、知らないのと同じ。今回出品されているのはタイルを中心に皿、花器など150点あまり。これくらいみるとそこに施された装飾文様の特徴がおおよそつかめる。

タイルデザインのモチーフに使われるのは大半が花。いろいろでてくる。ヒナギク、アネモネ、カーネーション、ノバラ、モールバラなど々。上はインドでみたイスラム建築装飾を思い起こさせてくれる‘イスラム風パルメット模様と葉’。白地に映える花模様は優雅な香りを漂わせており、とても魅了された。

ド・モーガンがとりあつかった動物は60種あり、器や花瓶、皿に登場する。鳥ではクジャク、オウム、カモ、ワシ、フラミンゴ、コウノトリ、ペリカン、サギ。最もぐっときたのは真ん中の‘風変わりなクジャク’。

インドのムガール王朝の時代、クジャクは人々に好まれた鳥。インド旅行をしたばかりだから、このアヒルみたいなクジャクに敏感に反応する。ラスター彩皿のなかにとても美しいクジャク模様がある。見てのお楽しみ!

四足動物は定番のライオンとかヒョウ、シカ、空想上の獣、ドラゴンがでてきた。そして、ヘビや魚も描かれている。ヘビは苦手なので‘ヘビと花’の前からはすぐ離れたが、下の‘ヘビとイトスギ’はどういうわけか惹き込まれた。横向きになっているヘビはそれほど怖さを感じないからかもしれない。

今回見てて開放的な気分になったのが大海原を進む‘ガリオン船’。中世あるいはチューダー様式の帆船が絵付けされたタイルや花器、鉢が7点あった。航行する船のまわりを生き生きと泳いでいる魚が目に焼き付けられた。

ロセッティ、バーン=ジョーンズ、モリスのモノグラフをここ一年かけて集中的に読んだので、ド・モリスにもすっと入っていけ、アーツ&クラフツ運動の理解が深まった。見ている時間は20分にすぎなかったけれど、図録もゲットできたし十分な収穫があった。


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2009.12.09

やっぱり気になる安井曾太郎の肖像画!

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八重洲のブリジストン美では今、‘安井曾太郎の肖像画展’(10/31~1/17)が行われている。代表作のひとつ‘金蓉’(東近美、拙ブログ7/24)が使われているチラシをながめながら、そろそろ行かなくてはと思っていた。

開幕するとすぐ足を運びたくなる展覧会ではないが、安井曾太郎(1888~1955)の絵を集めた展覧会となるとやっぱり気になる。好きな洋画家なのにまだ回顧展に遭遇してない。だから、肖像画だけとはいえ30点もみられるのは幸運なめぐり合わせである。その中にいつか見たいと願っていたのが含まれているので、ちょっとわくわく気分。

上の‘孫’(1950、大原美)は広島に住んでいたとき倉敷へでかけよくみた。最初は白一色の顔、服、手足に金田一京助の映画にでてくる人形のイメージがダブり、不気味な感じだったが、今はそれが消え、元気のいい女の子にみえるようになった。

安井は女性だけでなく男性の肖像画も沢山描いているが、美人画や女性画を見るのを一生の楽しみにしているからどうしても女性を描いた絵の前に体が寄っていく。真ん中は追っかけ作品の‘F夫人像’(1939、個人)。

モデルはいかにもパリ仕込みという服装をしており、その気取ったポーズは見る者の心をわしづかみにする。斜めに被った帽子や口紅の赤は背景が黄茶色で着ている服装が白系なのでインパクトが強すぎるというほどではなく、女性の明るい性格をこの赤で表わしている感じ。

もう一点、安井夫人を描いた‘画室にて’(1951、大原美)にも足がとまる。夫人は典型的なおたふく顔。白い着物がよく似合い体全体がふくよかなこの夫人をみるたびに往年の京塚昌子を思い出す。

男性の肖像画では、東博でお馴染みの‘深井英五氏像’(1937)とか東北大学にある‘本多光太郎肖像画’(1936)&‘玉蟲先生像’(1934)とか下の‘安倍能成君像’(1955、ブリジストン美)がお気に入り。そのなかでもとりわけ好きなのがセザンヌの人物画を連想させる‘安倍能成君像’。

初見で意外だったのが横山大観の肖像画。今回、‘F夫人像’とともに収穫だったのが‘大原総一郎像’(1955、個人)。肌つやのよさ、誠実さがそのままでているような目、大きな赤い耳が強く印象に残った

念願の絵が見れたので、次は風景画。こちらは見てないのがだいぶあるが、気長に待ちたい。

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2009.12.08

目玉のないロートレック・コネクション展!

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Bunkamuraで現在、開催中の‘ロートレック・コネクション展’(11/10~12/23)はロートレックの生地アルビにあるトゥールーズ=ロートレック美術館の館長が監修したというので、この美術館にある油彩の名画が1点くらいやってくるかなと期待していた。が、大ハズレ!

Bunkamuraは西洋画の展覧会では東京都美とともに高く評価している美術館なのだが、今回は不作。これに出かけられた方はたぶん‘目玉の絵がないなぁー’という感想をもたれるはず。率直に言って昨年サントリー美であったロートレック展(拙ブログ08/2/17)を楽しんだ人はパスされたほうがいい。

サントリーがオルセーにある人気の絵をはじめいい油彩を沢山あつめてきたから、1年後にまたこれに匹敵する内容のロートレック展をするのは確かにキツイ。日本で行われるロートレックの展覧会というとポスター中心というイメージが強いが、今回も見栄えがするのはポスターばかり。サントリーでは有名なポスターもしっかり展示してあったから、国内のポスターコレクションを目いっぱい並べても、それほど惹きつけられない。

で、主催者もそこはわかっているから無理やりロートレックとつながりのある画家の作品を取り揃えて‘コネクション’にしてみた。だが、ほかの画家の作品を集めれば集めるほど、ロートレックへの求心性が薄れ、‘私は一体誰の絵をみにきたのかしら?それにしてもグッとくるロートレックがないわねぇー’となる。アルビの美術館の館長が監修したからといってつまらないものはつまらない。

アルビからは上の‘マルセル’など11点の油彩が出品されている。このなかで‘マルセル’はいい絵だと思うが、いかんせん小さい。ほかの絵もどれも小さな絵。TASCHEN本にはアルビ蔵の‘ムーラン街の客間にて’や‘ル・アーブルのスター’などの傑作が何点も載っている。こういう本家の美術館自慢の絵を1点でも飾ってくれれば即○をつけるのに。目玉の絵がなく、低ランキングの絵だとロートレックの絵をみたという気分にはなれない。

油彩全体を見渡してみて一番よかったのは結局、鑑賞体験のあるポーラ・コレクションの‘ムーラン・ド・ラ・ギャレット’だった。ポスターも日本には‘シンプソンのチェーン’(真ん中)などいいのが揃っているから、監修を引き受けたアルビの女性館長は何の仕事をしたの?そうか、うっかり忘れるところだった。今回の収穫、ドニの絵‘ランソン夫人と猫’(モーリス・ドニ美、下)をわざわざ手配してくれたのは館長さんだった。

でも、ほかの画家の絵を構想する前に、本家の所蔵品のなかでどれをもって行ったら日本のロートレック愛好家は喜んでくれるかを熱をいれて検討してほしかった。なかなか行けないアルビにあるロートレックの名画を多くのファンはみたがっているのだから。残念!

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2009.12.07

新根津美術館、所蔵の名品が続々登場!

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新根津美術館の所蔵品展示の第2弾は‘根津青山の茶の湯展’(11/18~
12/23)。ここにでている‘鼠志野茶碗’(重文)のような名品に感激するのは言うまでもないが、展示室2で同時開催されている‘国宝鶉図と中国の花鳥画’にもおおいに魅了される。

作品は15点。‘鶉図’(南宋時代、上の画像)を前回みたのは5年前、この美術館で開催された‘南宋絵画展’。この鶉の目をじっとみていると本物がいるように思えてくる。視線が集まるのがふっくらと丸い胸の羽毛と足の白。そして、鶉の横にみえる4つの赤い花も印象深い。

南宋時代末の水墨画家、牧谿(もっけい)の‘竹雀図’(重文、真ん中)はお気に入りの絵。こういう余白をたっぷりとった画面に花や鳥を一、二羽墨の濃淡で描く絵はしみじみ心に響く。雀の絵ですぐ思いつくのは長澤芦雪と菱田春草。つい最近も春草の雀に感動したばかりだが、この寄り添う2羽の雀も胸を打つ。牧谿はほかにも木にとまる燕や叭々鳥を描いている。

下の絵は明時代に描かれた呂敬甫の‘瓜虫図’(重文)。中央に横たわる緑の瓜があり、右のほうには二匹のハチ、コオロギ、赤トンボ、左側には白い蝶がみえる。見落としてならないのが大きな瓜の実の上あたりに体半分でているカマキリ。こういう草虫画はどこかで見たことない?そう、若冲の‘動植綵絵・池辺群虫図’(拙ブログ8/19)!

若冲は京都の寺にあった宋元画や明画を千点も模写したというから、当然こういう草虫図も学んだことだろう。若冲のすごいところは中国の花鳥画をただ写すだけでなく、これを十分消化した上で誰も真似できない精緻で意匠的な花鳥画や昆虫&魚画をつくりあげたこと。

今回の収穫は円山応挙や若冲も影響を受けた沈南蘋の‘倣北宋人碧梧丹凰図’(清時代)。番の鳳凰や鶴、鴛鴦が大きく描かれているのでとても見栄えがする。また、伝徽宗の‘紫陽花小禽図’などがさらっと飾ってあるのにも驚く。やはりここのコレクションはレベルが高い。

企画展の‘夕陽茶会 斑鳩庵開炉’には馬麟(ばりん)の‘夕陽山水図’(南宋時代、重文)がでているから、これもあわせるとここが所蔵する中国画の名品を一気に見たことになる。こんな機会は滅多にない。上機嫌で館を後にした。

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2009.12.06

4回目の若冲ワンダーランドも二重丸!

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MIHO MUSEUMで開催中の‘若冲ワンダーランド’の6期(11/25~12/13)を見てきた。若冲作品は新規24点とすでにみている9点を入れて全部で33点。

3回目のとき展示が変更になっていた‘蔬菜図押絵貼屏風’がどういうわけかまたダメだった。12/1から登場するはずだったのに、展示リストは11/10~11/29となっている。これは個人が所蔵するものだが、ころころ変わる理由は?

お目当ての1点にふられてしまったが、上の‘白鶴図’が予想以上にいい絵だったので満足度はいつものように大きい。若冲が模写した原画の文正作‘鳴鶴図’は以前根津美であった展覧会でみたことがあり、そのとき鶴の羽の描き方が若冲の描くふぐ刺しのような羽とよく似ているなと直感的に思った(拙ブログ07/8/23)。

若冲流のアレンジで目を奪われるのが右の鶴の下にみえる荒々しい波濤の描写と立っている鶴の足もとに咲いている白梅の小さな黄色の点々。粘着性を強く感じさせる波頭のフォルムは‘旭日鳳凰図’(09/10/10)や今回展示の目玉になっている‘象と鯨図屏風’(09/10/6)にも描かれている。

また、ミクロに美が宿る花弁の精緻な描写はこの絵ではまだ少ししかないが、画面いっぱいに花が咲き誇るあの‘動植綵絵’でフルスロットル状態になる。

‘枯木鷲猿図’は‘白鶴図’の羽の残像に影響されて鷲の羽ばかりに注目していると、あとで‘猿がいた?’になる。まわりの岩と色がかさなっているのでぼやっとしていると気がつかないが、耳を手でふさいでいる猿が右下にいる。

この絵でハットさせられるのは鷲の羽と枯れ葉の対比。鷲の羽がすごく滑らかで透明感があるのに対し、大きくカーブする木の太い幹にからみついている枯れた葉っぱは対照的にざらざらして、今にもぽろっと一部が欠けてしまいそうな感じ。

初見の絵で足がとまったのは真ん中の‘双鶴・霊亀図’。とくに惹き込まれるのが甲羅を正面にむけて鋭い目でみている亀。この対象の正面性が若冲の描く鳥や生き物のひとつの特徴。これは若冲の絵の代名詞になっている鶏に多くみられる。

例えば、今回展示してある‘鶏図押絵貼屏風’(六曲一双)にはマンガチックでシールを貼ったような頭をした鶏が何羽もいる。ここでも2羽いる鶴のうち左のまっすぐこちらを向いている鶴は頭が真上から意匠化して描かれている。

下のモザイク画‘白象群獣図’をみるのは4年ぶり。目に焼きつけれらるのは真ん中の白象とその左にいる熊。象のまつげと熊の口のまわりの髭の白さが印象的。白象の大きな耳とか胸のあたりは‘象と鯨図’の象と本当によく似ている。

象の鼻に乗っている栗鼠とか熊の上にいる手長猿とか下で体を横にしているが顔は真正面をみているいたちは、体の輪郭ははっきりとらえられないが、プライスコレクションの‘鳥獣花木図’(10/8)にでてくる鳥獣とはちがい、その目には生気があるし、若冲の心が200%伝わってくる。

信楽に4回でかけたので、若冲の出品作で見たかったものはほぼ鑑賞することができた。これで若冲は済みマークをつけられる。来年5月、千葉市美で開催される若冲展は‘象と鯨図’との再会とプラスαとの遭遇を楽しみにして開幕を待ちたい。

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2009.12.04

平木コレクションのすべて 浮世絵百華展を堪能!

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渋谷にあるたばこと塩の博物館で今、すばらしい浮世絵展が開催されている。平木コレクションを公開する‘浮世絵百華展’は前期(11/21~12/13)と後期(12/15~1/11)で作品(ともに70点)が全部入れ替わる。先般行われた‘皇室の名宝展’同様、ここでもスッキリ展示。しかも料金は300円と格安。

2年前、プロの摺師と展覧会を見終わったあと話をする機会があったが、平木コレクションは摺りの状態がとてもいいので、ららぽーと豊洲内にあるUKIYO-e TOKYOをときどき訪問すると言っておられた。そのことは実際、ららぽーとへ何度も通っているとよくわかる。

浮世絵は大きくない絵だから70点といってもワンフロアーにちゃんとおさまり、ささっと見ると15分で終わる。でも、こういう質の高いコレクションは1点々が見ごたえがあるから、時間がどんどんたっていく。

いつものように重点絵師の春信、歌麿、広重に注目してみた。春信は4点ある。座敷八景の‘あんとうの夕照’と‘琴路の落雁’、上の‘鷺娘’、そして‘風流六哥仙 僧正遍照’。このうち‘鷺娘’ははじめて見る絵。キメ出しで雪のふわっとした感じを表現しているのがすごい。こういういい浮世絵をみると本当に幸せな気持ちになる。

歌麿はららぽーとでもみたことのある‘芸者亀吉’(拙ブログ07/10/11)など4点。清長の代表作のひとつ‘六郷渡船’(07/6/1)や‘隅田川渡船’に描かれた女性の表情や波の動感描写にも足がとまる。女3人が上の松と下の勢いのある波とで挟み込まれるように描かれている窪俊満の‘六玉川之内 高野’がこれまたいい。

夢中になってみたのが広重の‘江戸近郊八景之内 玉川秋月’(真ん中)、‘芝浦晴嵐’、‘飛鳥山暮雪’(05/1/5、いずれも重文)。同じ絵でも平木コレクションのものは摺りがワンランク上。‘玉川秋月’では川の青のすばらしいグラデーションや中景から遠景にみえる木々の墨の微妙な変化が心を揺すぶる。

色彩が鮮やかな北斎の‘絵本隅田川両岸一覧’はお気に入りの絵。これは入館してすぐのところに飾ってある。その隣にあるのは傑作。見る度にKOされる‘富嶽百景’の一枚、‘龍と富士山’(下)。いつかこれを紹介しようと思っていた。

左下で頭のてっぺんをこちらに向け、富士山を仰ぎ見ている龍の姿は誰かの絵にでてくる龍と似ている。それは横山大観が描いた‘生々流転’(05/11/26)の最後の場面に登場する龍。大観は北斎の絵をみたにちがいない。

後期にも浮き浮き気分で出かけたい。

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2009.12.03

清方ノスタルジア展に追っかけ作品があった!

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サントリー美で開催中の‘清方ノスタルジア展’(11/18~1/11)を見てきた。鏑木清方(1878~1972)の美人画にぞっこん惚れているから、今回の出品作にはおおいに関心がある。でも、その情報はチラシに載っている絵だけにとどめ、あえてHPのリストをチェックせずに六本木へ出かけた。

清方の絵は雑誌の表紙絵や団扇絵、風景スケッチなどを入れて120点くらい。前期
(11/18~12/14)と後期(12/16~1/11)に半々ずつ展示される。展示期間の短いのが数点あるが、ほぼスッキリ展示。サントリー美はやっと京博方式を実施してくれた。これを継続してくれると好感度はさらに増すのだが。

今回、嬉しくてたまらない絵と遭遇した。上の‘秋の夜’(秋田県近美、前期展示)。この絵を長いこと追っかけていた。2、3年前、奈良の松伯美の展覧会に出品されたのを見逃したので、対面は遠のいたと思っていたが、思いがけずも目の前にひょんと現れてくれた!

清方が描く女性は2つのタイプがある。大体が目が細めで顔が面長の女性、この日本的な女性が9割を占める。残りの1割がこの絵のように目が大きく、ぽっちゃり丸顔タイプの女性。最近はTVでフィギュアスケートの浅田真央ちゃんを見るたびにこの絵を思い出す。

画集をいつもうっとり眺めていたが、期待通りのいい絵。こおろぎをじっとみつめている姿と身につけている緑地の衣装と菱形模様のなかにさらに意匠を施している青の帯を夢中になってみた。この絵をみたら清方は済みマークがつけられると思っていたから、天にも昇るような気持ち。流石、サントリー美!

真ん中のうす紫の着物が目に心地いい‘春雪’(通期、サントリー美)はつい1年前までは個人蔵だった絵。これを所蔵したので清方展を企画したのだろう。細目タイプの美人画のなかでこの絵はトップグループに入る清方の代表作のひとつといっていい。これも好きな絵だから、釘付け状態。

一際目を惹く六曲一双の屏風は水野美蔵の‘花ふヾき・落葉時雨’(展示は終了)。下は左隻の落葉時雨。大丸東京であった水野コレクション展(拙ブログ08/1/12)に登場したから、覚えておられる方も多いのではなかろうか。籠に手をやり、腰をひねり横をみるしぐさにググッと引きつけられる。

これまで紹介した絵もいくつかあったので、だんだんテンションがあがってきた。
‘妖魚’(福富太郎コレクション、08/9/28
‘お夏清十郎物語’(神奈川県近美、07/4/13
‘慶長風俗’(埼玉県近美、07/2/24
‘明治風俗十二ヶ月’(東近美、06/3/31
展示は‘明治風俗’を除き前期のみ。

後期にも‘いでゆの春雨’(個人)、‘薫風’(千葉市美)、‘朝涼’(鏑木清方記念美)などの傑作がでてくるから、再会するのが楽しみ。また、この回顧展にはオマケがいっぱいくっついているのも有難い。そのひとつが勝川春章の肉筆美人画、びっくりするくらいいいのが前期に飾ってあるので、どうかお見逃しなく。

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2009.12.02

日本画家平山郁夫 死去

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日本画家の平山郁夫が今日午後、脳こうそくで亡くなった。79歳だった。院展に最新作を出品し、現役ばりばりという感じだったから、残念でならない。心からご冥福をお祈りしたい。合掌!

広島市に9年住んでいたこともあり、原爆に被爆した平山郁夫の絵には特別の思い入れがある。回顧展にはこれまで4度足を運び、奈良・薬師寺の壁画もみた。

‘平山郁夫美術館 開館記念展’(97年 瀬戸田)
‘薬師寺・大唐西域壁画の公開’(00年 奈良・薬師寺)
‘高句麗今昔を描く 平山郁夫展’(01年 日本橋高島屋)
‘平成の洛中洛外 平山郁夫展’(05年 日本橋三越)
‘平山郁夫 祈りの旅路’(07年 東近美)

インド旅行を体験したばかりだから、平山郁夫がインドを描いたものをとりあげてみた。
★ブダガヤの大塔(1983年、個人):上の画像
★大唐西域壁画 デカン高原の夕べ(00年、薬師寺):真ん中
★入涅槃幻想(1961年、東近美):下

‘青’の画家というと東山魁夷をすぐ思い浮かべるが、平山郁夫の‘青’にもとても魅せられている。とりわけ惚れているのが‘月華厳島’(1993年、個人、拙ブログ07/9/11)と‘ブダガヤの大塔’(ともに07年の回顧展に出品された)。

また、山種美が所蔵する‘阿育王石柱’(1976年)はサーンチーで獅子の像をみたので、これまでとは見方が変わった。

デカン高原の光景は撮った写真より、平山郁夫の絵のほうが現地の空気を思い出させてくれる。絵心のある画家の作品というのは本当に力がある。

‘入涅槃幻想’も心に響く絵。釈迦はクシーナガルの沙羅双樹の下で北に頭をむけて横たわり入滅したという。泣きじゃくる弟子たちに言ったことが胸にずしんとくる。
‘諸々の事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成させなさい’。

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2009.12.01

その十四 大収穫のファテープル・シクリ!

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アグラの西40kmのところにあるファテープル・シクリ(勝利の都という意味)についてはガイドブックに記されている情報しかないから、エローラ&アジャンタ石窟やタージ・マハルに較べれば期待値はあまり高くない。

ところが、ムガール帝国3代皇帝アクバル(在位1556~1605年)が1571年から15年かけて造ったこの赤砂岩の都城にはヨーロッパからの観光客が沢山いた。ここは彼らには人気の名所のようだ。Bさんによると、日本の旅行会社が組むツアーにはここは含まれておらず、唯一われわれのA社ツアーだけが来ているという。

宮殿などの建築物はイスラム様式とヒンドゥー様式がうまくブレンドされており、そのシンプルでユニークなフォルムが心に響く。大収穫といった感じ。

★ディワニ・アーム(上の画像)
★ディワニ・ハース(上から2番目)
★ディワニ・ハースの中心柱(下から2番目)
★パンチ・マハル(下)

ディワニ・アーム(応接室)の庭におもしろいものがあった。それは石のホック。アクバルのお気に入りの象がこのホックにつながれ、罪人の頭を踏みつぶしていたという。でも、象が3回踏むのを嫌がったら、釈放された。

目を奪われたのがディワニ・ハース(公的な謁見ホール)にある柱の装飾。柱頭にいっぱいくっつけられた腕木は大きなバナナの房みたい。この過剰とも思える腕木が真ん中の柱のほかに4隅にもある。柱の上が円形玉座になっており、橋が架けられている。アクバルはここに座って謁見し、市民の不満を聞いたり、不正を行った者を裁いたりした。

ディワニ・ハースをでてあたりを見渡すと感激ものの建物が目にとびこんでくる。5層の楼閣、パンチ・マハルの前に立つと、写真を撮らずにはいられない。イスラム様式の建物は普通左右対称なのが特徴だが、上へ行くにしたがい規模が小さくなる三角形タイプの楼閣はひとつだけ。そして、上に載っているドームは横から見ると中心をはずしているから、そのユニークさが一際目立つ。
 
ここで宮廷の女性たちは涼んでいた。そして、前の池につくられた舞台ではシタールの演奏にあわせて踊り子が舞いを披露する。アクバルが楽しんだ宴の席にタイムスリップして紛れ込みたい気分になった。

アクバルは賢明な皇帝でイスラム教とヒンドゥー教、キリスト教、仏教、ジャイナ教、ゾロアスター教などの諸宗教を融合させたようとした。その考えがこの建物にもうかがえる。キリスト教徒の妃は絵が好きだったらしく、壁に象の絵が描かれていた。

インド旅行記にお付き合いいただきまして、誠に有難うございます。これで終りにします。インド美術に200%魅せられたので、アジアの次のターゲット、アンコール遺跡、ボルブドール寺院、敦煌莫高窟をみた後、3度目のインドがあるかもしれない。そのときは南インドにあるヒンドゥー教寺院を訪れるツアーに参加しようと思う。

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