静嘉堂文庫の水墨画展 パートⅡ
静嘉堂文庫で開幕した‘水墨画展 パートⅡ’(10/24~12/20)を見た。半年前お目にかかった式部輝忠の‘四季山水図屏風’(拙ブログ4/25)の余韻がまだ残っているので、パートⅡ‘山水・人物・花鳥’にも期待がふくらむ。
前期(10/24~11/23)に展示される31点は2点を除いて、後期(11/26~12/20)の28点と全部入れ替わる。ここの入館料は800円だが、こうしたスッキリ展示だと満足感がある。
今回のお目当ては伝周文の‘四季山水図屏風’(重文、上の画像)。この絵をはじめて見たのは02年にあった‘雪舟展’(京博)。7年ぶりの対面となった。四季の情景といっても、大和絵のように桜や楓、鶯などの鳥がでてくるわけでもないから、中国画に慣れないとすぐには春夏秋冬の移り変わりはわからない。
画像は左隻で、手前中央には驢馬にのった旅人がみえる。そこから目を上にやると家々があり、門の前で騎驢の男が同じように左のほうへ進んでいる。枝振りのいい木のフォルムが画面を引き締めており、右端の飛翔する雁、水面の舟、木々の向こうに広がる雪と四季を感じさせるモティーフは揃っている。
真ん中の明時代(14世紀)に描かれた‘竹林山水図’(重文)は最も日本人の琴線に触れる水墨画かもしれない。余白がたっぷりとられ、細い竹があまり多くなくさらっと描かれているところがなんともいい。日本人の絵では室町時代の作品‘蜀山図’(重文)にもすっと入っていける。余白があり、遠くにかすむ険峻な峰々がバランスよく配置され、幽玄的な世界を見ているよう。
収穫のひとつは下の‘十王図’(重美、元時代後期・14世紀)。画面下の罪人たちが首に板をはめられて、鏡を見せられ犯した悪行を見せ付けられるのは見慣れた場面だが、びっくりするのは真ん中にでんと座っている十王の体の大きさ。周りにいるものに較べると異常にデカイ。
こういうガリバー級の王とははじめて対面した。そして、デカイわりには顔はそれほど怖くない。でも、最後の審判では‘地獄の一丁目一番地へ行ってもらうからな!’と声を低くして言うのであろう。人物画では三幅対の‘観音・蝦蟇・鉄拐図’や明兆の‘雪中文殊図’にも足がとまった。
家に帰って出品リストをおさらいしていて大事な絵を見てなかったことに気づいた。それは雪村の‘柳鷺図’。リストには載っているが展示してあった?大きな部屋ではないから、順番にみていて見逃すはずはないのだけれど。
この絵は追っかけ作品のひとつで、memeさんの記事を見てとても喜んでいたのに、会場ではてっきり忘れていた。リカバリーするつもりだが、その前に展示されていたか美術館に聞いてみようと思う。展示されていたら、トホホである。
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コメント
こんばんは。
柳鷺図は展示されていましたよ。
正面の伝周文「四季花鳥図」があるガラスケースと
向かい合わせで柱に1枚だけかかっていたのです。
正面の作品に目が向いていると見落としがち。
背中にくれぐれもご注意くださいませ。
投稿: meme | 2009.10.28 20:54
to memeさん
今日、美術館に電話したら、ご指摘の場所を言って
おられました。久しぶりの周文の絵を夢中になって
見てましたので、すっかり雪村が飛んじゃいました。
向かい合わせの柱でしたか!また出かけてしっかり
見てきます。
投稿: いづつや | 2009.10.28 22:43