新・根津美術館の国宝那智滝図と自然の造形展
新しい根津美術館を訪問してきた。敷地内への入り口が信号を渡ったその前だから、導線がスムーズ。料金は1200円。前も同じ金額or1000円?美術館通いが3年間も遠ざかると前の記憶がだいぶ消える。
新・根津美ではこれから来年の9月まで開館記念展として、所蔵品の公開が続く。スケジュールをみると作品は展示替えなしで1ヶ月展示し、次の企画展にリレーしていくスタイル。第一弾‘国宝那智滝図と自然の造形’は10/7~11/8。これは今、東博で行われている‘皇室の名品展’と同じ展示の方法で、いわゆる‘京博方式’。
こういう作品を期間中展示替えなしで全部みせるスッキリ展示は好感がもてる。大歓迎である。所蔵品だからできるとはいえ、多くの日本美術ファンが望んでいる展示の仕方を実際にやってくれる美術館には何回も足を運びたくなる。
ここの所蔵品はかなり鑑賞済みになっているので、サプライズがドッとあるわけではない。だから、1点買い、2点買いの訪問になるのはわかっているが、それらは美術本に載っているほどの名品なので、対面できるのがとても楽しみなのである。
一回目の出動でもいいのが見れた。やはりここはブランド美術館。あまり長くはいなかったが、展示室1に展示されている25点のなかで心を打ったものを。
★那智滝図(上の画像)
★芸阿弥の‘観瀑図’(真ん中)
★春日山蒔絵硯箱(下)
★野々村仁清の‘色絵山寺図茶壺’(拙ブログ06/12/26)
国宝の那智滝図は5、6年ぶりの対面かもしれない。美術の教科書に載っている有名な絵だから、最初に見たときの印象が強く体にしみこんでいる。まず驚くのは縦の長さ。1.6mある。現地で滝をみた方なら、この長さに納得がいくと思う。滝の造形はじっくり観ると絵の前を離れてもしっかりイメージできるようになる。
水が落ち始めのところで左に緩くカーブしたあと、垂直に気持ちよく落ち、滝壺に近づくにつれ水の幅は2倍くらいになる。そこから右に曲がると水しぶきがあがり、水流の線が多くなり、水は岩の間を勢いを増してS字に通り抜けていく。画面の下半分で目立つのが苔を表す緑の丸。
この絵の見所は平面的な胡粉の色面だから、明るいところでみるより、照明をすこし落としたなかで見るほうが胡粉の白が強く印象づけられる。那智滝図はやはり特別の絵という感じがする。
‘観瀑図’(重文)は昨年、徳川美でもお目にかかった(08/11/9)。滝は上から三段階になって流れ落ち、最後は4本の水に分かれドドーッと下の滝壺に激しく落下する。僧侶と子供が渡っている橋の下は洪水みたいで、ぼやっとしていると水に流され溺れてしまいそう。
追っかけ作品の‘春日山蒔絵硯箱’(重文)に出会ったから機嫌がいい。土坡(どは)の稜線でできる斜めの曲線が画面を上と下に二分している。赤茶色の土坡を背にしてシルエットのように描かれている3頭の鹿が目に焼きつく。
気分がとてもハイになったのが3年ぶりの対面となった仁清の‘色絵山寺図茶壺’。小ぶりの壺だが、金の輝く見事な装飾美に声を失った。仁清好きにはたまらない一品である。
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