皇室の名宝展 その二 待望の海北友松と芦雪の絵と対面!
皇室の名宝展にでているお宝はザックリいって7割くらいが10年前あったときと同じもの。でも、展示替えで見れなかったものがいくつかあるので、今回はそのリカバリー作品に鑑賞エネルギーの多くを割いた。
★海北友松の‘浜松図屏風’(上の画像)
★円山応挙の‘旭日猛虎図’(真ん中)
★長澤芦雪の‘唐子睡眠図’(下)
海北友松(かいほうゆうしょう、1533~1615)と芦雪(1754~99)の絵は三の丸尚蔵館で展示されるかなと5年間定点観測していたが、結局お目にかかれず、10年の月日が流れた。日本画の名品をみるのはやはり時間がかかる。友松は‘網干図’も期待していたが、これは叶わなかった。
‘浜松図’で惹かれるのは俯瞰の視点で捉えられた金の州浜と銀泥で表現された波頭(銀が褪色して茶色になっている)のフォルム。また、すごい速さで飛翔する鳥たちにも釘付けになる。右隻(上)の上のほうでは水平に飛んでいるが、左隻では真ん中あたりから金地に浮かぶ緑の松のまわりを気持ちよさそうに右に大きくカーブし、左下の松林のほうへ向かっている。色的には州浜の金と松の鮮やかな緑の対比が目に沁みる。
‘唐子睡眠図’をやっとみることができた。幼児が遊ぶ絵(拙ブログ9/4)はお目にかかったが、こういう眠っている赤子の絵はめずらしい。肩の力がすっとぬける本当にいい絵。誰でも描けそうな絵にみえるが、類を見ない画面構成を思いつく芦雪だからこそ、こんな現実感のある人物描写ができるのだろう。これで芦雪にも済みマークがつけられる。
応挙(1733~95)は再会した‘源氏四季図屏風’、‘牡丹孔雀図’と初見の‘旭日猛虎図’がでている。‘猛虎図’は美術本でも見たことがないので、興味津々だった。とても大きな絵。例によって虎は虎でも、山楽が描く虎のように獰猛さはなく、ぬいぐるみ感覚のかわいい虎。前足をきちんと揃えて旭日を眺めている。大きくて見栄えのするいい絵だが、残念なことにコンディションが少し悪い。
この絵はNO情報だったが、実は密かに期待していたのは象や虎、猿、犬、鹿などが登場する‘群獣図屏風’(前回展示なし)。今回もダメだった。若冲の象と会ったから、もって瞑すべしということか。
今回飾られている有名な近世絵画のこともふれておきたい。皇室のお宝の一番は何といっても狩野永徳の‘唐獅子図屏風’(07/11/9)。日本画のど真ん中にいる名画である。2年前の永徳展に続いて展示されたから、この先10年くらいはでてこないと思ったほうがいい。お見逃しなく!
そして、酒井抱一の名品‘花鳥十二ヶ月図’(06/7/28)も目を楽しませてくれる。ぞっこん惚れている絵なので、うっとりしながら見ていた。
もう1点、忘れてならないのが岩佐又兵衛の‘小栗判官絵巻’。又兵衛絵巻の楽しみのひとつは男女が身に着けている衣装の色と文様の精緻な描写。細いゴールド線やほかの絵巻ではあまり見られない鮮やかな橙色やうす紫、うす青、、浮き浮きするような色合いに目が点になる。見てのお楽しみ!
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