大倉集古館の根来展
大倉集古館では現在、‘根来展’(10/3~12/13)が行われている。ものすごく見たい展覧会ではないが、急遽‘ぐるっとパス券’を買うことになったのと、入手したチラシにこの展覧会が根来研究の第一人者である河田貞氏の監修によるもので、中世期につくられた根来の優品を集めているとあったので、寄ってみた。
これまでも朱が目に飛び込んでくる根来塗を見る機会はあった。だが、魅せられるところまでには至ってない。だから、目の前にある沢山の神饌具、仏具、僧侶たちが使う器などは見る人が見れば相当いいものだろうが、なにせこれまでの鑑賞がアバウトだから、皆同じ朱漆に見えてくる。で、折角の機会だからじっくりみてみた。
すると、見るからに保存状態が良く、なんだかこれまで体験したものとはちょっと質が違う感じがしてきた。上の平安時代後期につくられた‘足付盤’は神前に供物を供える台。福井県の大滝神社に伝来したもの。これほど朱色が美しいものは見たことがない。
根来塗の中で最も惹かれるのは真ん中の‘瓶子’(室町時代)。瓶子は神前に供える酒を容れるための器。胴の上部が大きく膨らみ下部が細くなるS字カーブのフォルムはとても美しく、見てて飽きない。繰り返して使用したために朱塗りは擦り減り、下塗りの黒漆が現れており、枯淡の趣を感じさせる。
下はチラシに使われている‘練行衆盤’(鎌倉時代、1298年、北村美)。これは東大寺二月堂の修二会(お水取り)で食事に使用した盤。形から‘日の丸盆’と称され、茶道では珍重され‘根来の中の根来’、最高の根来として有名なものらしい。
ほかで足がとまったのは、家で使いたくなるようなすばらしい‘湯桶’(室町時代)や形のいい‘六角盆’(室町)や白洲正子が所蔵していたという‘楓文漆絵大鉢’(室町)。とくに‘楓文大鉢’を釘付けになってみた。根来塗というと紋様はなく、朱一色というイメージなのだが、これは黒漆塗の外側から内側の全面に楓の木を朱漆描きしている。
5年前、和歌山をクルマで旅行し、根来寺を訪れた。そのとき根来衆の鉄砲のことに詳しくなったが、もうひとつ有名な根来塗の日用雑器については関心が薄かった。これで、良質の根来塗に少し目が慣れた。これからは朱漆に敏感に反応するかもしれない。
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