« 2009年9月 | トップページ | 2009年11月 »

2009.10.30

大倉集古館の根来展

1001
1002
1003
大倉集古館では現在、‘根来展’(10/3~12/13)が行われている。ものすごく見たい展覧会ではないが、急遽‘ぐるっとパス券’を買うことになったのと、入手したチラシにこの展覧会が根来研究の第一人者である河田貞氏の監修によるもので、中世期につくられた根来の優品を集めているとあったので、寄ってみた。

これまでも朱が目に飛び込んでくる根来塗を見る機会はあった。だが、魅せられるところまでには至ってない。だから、目の前にある沢山の神饌具、仏具、僧侶たちが使う器などは見る人が見れば相当いいものだろうが、なにせこれまでの鑑賞がアバウトだから、皆同じ朱漆に見えてくる。で、折角の機会だからじっくりみてみた。

すると、見るからに保存状態が良く、なんだかこれまで体験したものとはちょっと質が違う感じがしてきた。上の平安時代後期につくられた‘足付盤’は神前に供物を供える台。福井県の大滝神社に伝来したもの。これほど朱色が美しいものは見たことがない。

根来塗の中で最も惹かれるのは真ん中の‘瓶子’(室町時代)。瓶子は神前に供える酒を容れるための器。胴の上部が大きく膨らみ下部が細くなるS字カーブのフォルムはとても美しく、見てて飽きない。繰り返して使用したために朱塗りは擦り減り、下塗りの黒漆が現れており、枯淡の趣を感じさせる。

下はチラシに使われている‘練行衆盤’(鎌倉時代、1298年、北村美)。これは東大寺二月堂の修二会(お水取り)で食事に使用した盤。形から‘日の丸盆’と称され、茶道では珍重され‘根来の中の根来’、最高の根来として有名なものらしい。

ほかで足がとまったのは、家で使いたくなるようなすばらしい‘湯桶’(室町時代)や形のいい‘六角盆’(室町)や白洲正子が所蔵していたという‘楓文漆絵大鉢’(室町)。とくに‘楓文大鉢’を釘付けになってみた。根来塗というと紋様はなく、朱一色というイメージなのだが、これは黒漆塗の外側から内側の全面に楓の木を朱漆描きしている。

5年前、和歌山をクルマで旅行し、根来寺を訪れた。そのとき根来衆の鉄砲のことに詳しくなったが、もうひとつ有名な根来塗の日用雑器については関心が薄かった。これで、良質の根来塗に少し目が慣れた。これからは朱漆に敏感に反応するかもしれない。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009.10.29

唐物肩衝茶入の名品 銘油屋に200%しびれた!

1000_2
999_2
998_3
5年前から定期的に訪問している畠山記念館に来るのはあと数回くらいになりそう。館の図録に載っている絵画ややきものの名品で見たいのは残すところ3点。

その1点が今回の‘戦国武将と茶の湯展’(10/10~12/20)に展示されている‘唐物肩衝茶入 銘油屋’(上の画像)。これを見たくて足を運んだ。

茶入に開眼したのは2年前の‘大徳川展’(東博)。ここに出品されていた唐物肩衝茶入‘銘 初花’(重文)と‘銘 新田’(重美、ともに徳川美)との出会いは衝撃的だった。茶入はこれまでも結構見ているが、このときほど小さな茶入の形に魅せられ、‘こげ茶色の美’に強く感動したことはない。

以来、畠山記念館の‘銘油屋’(重文)との対面をひたすら待っていた。これがつくられたのは南宋時代(13世紀)。釉のなだれがいく筋もあり、重みと気品を感じさせる景色に声を失った。‘初花’同様、心を揺すぶる茶入である。もとは堺の町衆油屋常言と息子がもっていたが、油屋は豊臣秀吉に献上している。

茶入の名品ビッグファイブは‘初花’、‘油屋’、‘新田’、‘松屋’、‘北野’。まだ見てない根津美蔵の‘松屋’(重文)は新館記念特別展の第2弾、‘根津青山の茶の湯’
(11/18~12/23)で見られそうな予感がする。‘北野’(重文、三井記念美)はすでに鑑賞済みだから、今年中に茶入は済みマーク付きとなるかも。

1点買いの作品にお目にかかれたので、あとは32点をさらっと見た。真ん中は秋の季節にぴったりの本阿弥光悦書&俵屋宗達下絵の‘金銀泥薄下絵古今和歌巻’(江戸時代・17世紀)。風に揺れる細い薄がとても美しい。

チラシで気になっていたのが下の‘梅に山鳥図屏風’(部分、江戸時代・17世紀)。山鳥のまわりの画面構成に魅せられる。ダイナミックに曲がる太い幹から梅の咲く枝が下にのび、それと向かい合うように胸の赤が目を惹く山鳥が岩にとまっている。一瞬、京都の大仙院にある狩野元信の装飾的な水墨画‘四季花鳥図’(4/24)が頭をよぎった。

11/21~12/6に牧谿の国宝‘煙寺晩鐘図’(南宋時代・13世紀、拙ブログ06/11/2)が登場する。この絵は展示の機会が極めて少ない。3年前やっと遭遇したのに、またでてきたから、この先10年くらいは出ないと思ったほうがいい。牧谿が好きな方はどうかお見逃しなく。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.28

フェルメールの‘真珠の耳飾りの少女’が12年7月にやってくる!

995996997
今日の朝、ビッグニュースがとびこんできた。朝日新聞の記事によると、フェルメールの傑作‘真珠の耳飾りの少女’が12年7月に再度日本にやってくる。これを所蔵するオランダのマウリッツハイス美(ハーグ)の名品展として東京と神戸で7月から12月まで公開されるという。これはすごいことになった。

美術館名と具体的な日程については発表されてないが、東京は西洋美or国立新美or東京都美? 神戸は兵庫県美ではなかろうか。それにしても、フェルメールの代表作が頻繁にやってくる。フェルメール愛好家にとって、わが国における西洋画の展覧会シーンはまったくすばらしく、そして有難い。日本は本当に美術大国!

で、これまで国内で体験したフェルメール作品をレヴューしてみた。

‘フェルメールとその時代展’(00年4月、大阪市立美)
★聖プラクセディス : バーバラ・ピアセッカ・ジョンソン・コレクション
★リュートを調弦する女 : メトロポリタン
★天秤を持つ女 : ワシントン・ナショナル・ギャラリー(拙ブログ08/4/13
★真珠の耳飾りの少女 : マウリッツハイス(上の画像)
★地理学者 : シュテーデル美

‘栄光のオランダ・フランドル絵画展’(04年4月、東京都美)
★絵画芸術の寓意 : ウィーン美術史美(真ん中)

‘ドレスデン国立美展’(05年7月、西洋美)
★窓辺で手紙を読む女(下)

‘オランダ風俗画展’(07年9月、国立新美)
★牛乳を注ぐ女 : アムステルダム国立美(07/10/6

‘フェルメール展’(08年8月、東京都美)
★マリアとマリアの家のキリスト : スコットランド・ナショナル・ギャラリー(08/8/6
★ディアナとニンフたち : マウリッツハイス
★小路 : アムステルダム国立美
★ワイングラスを持つ娘 : アントン・ウルリッヒ美(08/8/6)
★リュートを調弦する女 : メトロポリタン
★ヴァージナルの前に座る若い女 : 個人蔵
★手紙を書く婦人と召使い : アイルランド・ナショナル・ギャラリー(08/8/6)

‘ルーヴル美展’(09年2月、西洋美)
★レースを編む女(3/12

日本で鑑賞したフェルメールの絵は以上の16点。確か、もう一点、アムステルダム国立美蔵の‘恋文’もやってきたように記憶しているが、これは見ていない。

この調子だと、大好きな‘デルフトの眺望’(マウリッツハイス、05/4/17)とか追っかけ作品の‘真珠の首飾りの女’(ベルリン国立美、1/8)もひょっとして日本で対面できるかもしれない? 期待したいが‘デルフトの眺望’はやはり無理か。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.27

静嘉堂文庫の水墨画展 パートⅡ

992_2
994_2
993_2
静嘉堂文庫で開幕した‘水墨画展 パートⅡ’(10/24~12/20)を見た。半年前お目にかかった式部輝忠の‘四季山水図屏風’(拙ブログ4/25)の余韻がまだ残っているので、パートⅡ‘山水・人物・花鳥’にも期待がふくらむ。

前期(10/24~11/23)に展示される31点は2点を除いて、後期(11/26~12/20)の28点と全部入れ替わる。ここの入館料は800円だが、こうしたスッキリ展示だと満足感がある。

今回のお目当ては伝周文の‘四季山水図屏風’(重文、上の画像)。この絵をはじめて見たのは02年にあった‘雪舟展’(京博)。7年ぶりの対面となった。四季の情景といっても、大和絵のように桜や楓、鶯などの鳥がでてくるわけでもないから、中国画に慣れないとすぐには春夏秋冬の移り変わりはわからない。

画像は左隻で、手前中央には驢馬にのった旅人がみえる。そこから目を上にやると家々があり、門の前で騎驢の男が同じように左のほうへ進んでいる。枝振りのいい木のフォルムが画面を引き締めており、右端の飛翔する雁、水面の舟、木々の向こうに広がる雪と四季を感じさせるモティーフは揃っている。

真ん中の明時代(14世紀)に描かれた‘竹林山水図’(重文)は最も日本人の琴線に触れる水墨画かもしれない。余白がたっぷりとられ、細い竹があまり多くなくさらっと描かれているところがなんともいい。日本人の絵では室町時代の作品‘蜀山図’(重文)にもすっと入っていける。余白があり、遠くにかすむ険峻な峰々がバランスよく配置され、幽玄的な世界を見ているよう。

収穫のひとつは下の‘十王図’(重美、元時代後期・14世紀)。画面下の罪人たちが首に板をはめられて、鏡を見せられ犯した悪行を見せ付けられるのは見慣れた場面だが、びっくりするのは真ん中にでんと座っている十王の体の大きさ。周りにいるものに較べると異常にデカイ。

こういうガリバー級の王とははじめて対面した。そして、デカイわりには顔はそれほど怖くない。でも、最後の審判では‘地獄の一丁目一番地へ行ってもらうからな!’と声を低くして言うのであろう。人物画では三幅対の‘観音・蝦蟇・鉄拐図’や明兆の‘雪中文殊図’にも足がとまった。

家に帰って出品リストをおさらいしていて大事な絵を見てなかったことに気づいた。それは雪村の‘柳鷺図’。リストには載っているが展示してあった?大きな部屋ではないから、順番にみていて見逃すはずはないのだけれど。

この絵は追っかけ作品のひとつで、memeさんの記事を見てとても喜んでいたのに、会場ではてっきり忘れていた。リカバリーするつもりだが、その前に展示されていたか美術館に聞いてみようと思う。展示されていたら、トホホである。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2009.10.26

東博平常展の名画! 与謝蕪村・岩佐又兵衛・渡辺崋山

989_2
991_2
990_2
2度目の‘皇室の名宝展1期’(10/6~11/3)を見たあと、本館の平常展に寄った。この度は他の展覧会をいくつも回ったので2階の書画(10/6~11/15)と浮世絵
(10/6~11/1)のコーナーに展示してある作品だけをみた。書画10点のなかにいい絵があったので紹介したい。

★与謝蕪村の‘山野行楽図屏風’(上の画像)
★岩佐又兵衛の‘本性房怪力図’(真ん中)
★渡辺崋山の‘佐藤一斎(五十歳)像’(下)

蕪村(1716~1783)のこの絵(重文)は2年前くらいにでたような気がする。とてものんびりした絵。上は左隻で、右隻には男を乗せた3頭の馬がちょうど坂道にさしかかるところが描かれている。最後尾の男のすぐ近くに三日月がみえる。月がこれほど低い位置にあると、山道とそこまでの距離は相当あることになるのだが、こういう絵はそんなことは気にしないでアバウトに楽しむのがいい。

左の場面では4人の文人と従者の童子6人は左から斜め上にむかって進んでいる。文士は皆酔っ払っているのか自分ではまともに歩けない様子で、おぶってもらったり、背中を押してもらったり、また肩を担いでもらったりしている。ここでは山々の線描はさらっとしており、親しみを覚える人物が主役。気楽に見ているつもりでも、惹きこまれる。

‘本性房怪力図’は色が薄いのでちょっと見づらいところがあるが、漫画をみているようでおもしろい。はじめて見たのは04年の岩佐又兵衛(1578~1650)の回顧展(千葉市美)。視線は左上で大きな石を頭上に持ち上げ、下にいる敵軍に投げつけようとしている坊さん(本性房)に集中する。この坊さん、とにかく怪力なのだ。

敵方の兵士(六波羅軍)が石の下敷きになり悲鳴を上げているのに対し、坊さんの向こう側では味方の兵士たち(宮軍)がこれをニヤニヤ笑いながら見ている。‘あの坊主、ものすごい怪力だな!これは頼もしい。お陰でわが軍の勝利は間違いなしだな。お酒でも飲みにいこうか、まだ早い?’合戦絵で笑っている人物はみたことがないので、夢中になってみた。

‘佐藤一斎’(重文)は二つの絵とは対照的にぐっとシリアスな肖像画。渡辺崋山
(1793~1841)というとすぐ思い浮かべるのは国宝‘鷹見泉石像’(拙ブログ07/9/3)とこの絵。そして、儒学者、佐藤一斎(1772~1859)の顔を見ると条件反射的に片岡鶴太郎の顔が出てくる。見れば見るほど二人はよく似ている。鶴太郎も絵描きだから、まわりから一斎のことを言われているに違いない。

崋山の肖像画でもうひとつ是非見たいのは顔の横にこぶがでている‘市河米庵像’(重文、京博)。また、静嘉堂文庫にある魚図鑑タイプの絵‘遊魚図’(重文)にもいつかお目にかかりたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.25

今、高橋誠一郎浮世絵コレクションに夢中!

986
987
988
現在、三井記念美で開催中の‘高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展’中期(10/14~11/1)を楽しんだ。作品は前期(拙ブログ9/19)とは全部入れ替わり102点でている。数の多いのが春信(9点)、歌麿(9点)、北斎(16点)、広重(17点)。

目に力が入るのはやはり春信。前期に展示されたもの同様、摺りの状態がとてもよく、心が弾む。極上の浮世絵を見る機会はボストン美やギメ美、ベルギー王立美からの里帰り作品だけではなかった。日本にもあるところにはある。

Myカラーが緑&黄色だから、上の‘子供の相撲’は敏感に反応する。これは回顧展で見たが、遊女が鶴に乗って文を読んでいる‘鶴上の遊女’は初見。もうすぐやってくる冬の光景を描いたものは‘雪転がし’と‘風俗四季哥仙 庭の雪’。春信も広重と同じく雪を描くのが上手い。

今回の収穫は合戦絵2点。奥村政信の‘義仲最期’と真ん中の歌川国芳の‘宇田川合戦之図’。ともにはじめて見る絵で構図にとても魅せられた。奥村政信のような準ビッグネーム絵師の絵は東博の平常展でよく見るが、足をとめて見るのはあまりない。

これが海外からの里帰りした絵だと、政信でも北尾重政でも鳥居清倍でも、‘こんないい絵があったのか!’とひっくり返るくらいのサプライズがある。高橋コレクションの奥村政信をみてると、里帰り展のような気になる。それだけ質が高いということである。

国芳の絵は思わず‘ウワッー、これはすごい!’とつぶやいてしまった。馬が海を泳いで渡るのを実際にみたことはなく、映像で知るだけだが、この絵により宇田川の合戦のイメージがふくらんでいく。国芳は武者絵の名手、合戦の場面を広くみせ、暗い色調で緊迫感がストレートに伝わってくる馬と武士を見事に描いている。

広重はお馴染みの‘東海道五十三次’からは下の‘岡部 宇津之山’や‘藤沢 遊行寺’など8点がでている。‘岡部 宇津之山’で目を惹くのは緩くカーブしている坂道と川の両サイドの崖がV字のようになっているところ。道はちょうど中央あたりで上りが終わり、その向こうは下りになっている。ぱっとみると平面的な画面なのだが、広重は道や崖のフォルムに変化をつけることにより奥行きのある空間にしている。

北斎の絵で釘付けになってみたのは‘柳の糸’。浜の浪うち際の情景だから、あんな大げさな波頭はありえないが、絵のなかに見せ所を意図的につくるのが北斎流。

この展覧会はもう一回楽しみがある。後期(11/3~11/23)にも期待したい。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009.10.24

明治神宮で菱田春草展が行われていた!

983_3
984_2
985_2
日本画家の菱田春草(1874~1911)は一生付き合っていこうと思っている画家の一人。それほど思い入れが深い画家なのにまだ回顧展に縁がない。7、8年前、愛知県美で開催された回顧展を日程の調整がつかず見逃したので、春草の絵をまとまったかたちで見るのは90%くらい諦めていた。

が、明治神宮文化館で‘菱田春草展’(10/3~11/29)が行われていることをつい先だってmemeさんに教えてもらった。この情報はまったくNOタッチ。memeさんに感謝々である。すぐ喜び勇んで出かけた。

作品の数は51点だから中規模な回顧展。前期(10/3~10/29)に28点、後期(10/31~11/29)に29点(うち6点は前期と同じ)。嬉しいことに前期追っかけ作品のひとつがでている。上の‘武蔵野’。これを所蔵する富山県近美に行く機会はなかなかないので、ここで見られるのは本当に有難い。

これは花鳥画と風景画を組み合わせた絵。手前いっぱいに生い茂る秋草のなかに一羽の鳥がとまっており、その遠く向こうに富士山がかすんでみえる。視線を寂しげな鳥に向かわせるとともに、大きな富士山と小さな鳥をフォルム的にセットにして秋の情趣をしみじみ感じさせる構成に見とれてしまう。

感動の絵はまだある。‘老子’(真ん中、長野県信濃美、)の牛のポーズにやられた。このように体半分を正面向きにして広く開けた前足をぐっと踏ん張る牛はみたことがない。東芸大美から出品されている‘秋景山水’も長いこと対面を待っていた絵。先輩画家である橋本雅邦の画風を彷彿とさせる。

しばらく息を呑んで眺めていたのが下の‘蓬莱山’(飯田市美博)。右に描かれた水晶の結晶体みたいな形をした岩山は中国を旅行すると見られる光景なのだろう。こういう岩を見る度に、現地でそのリアリティを体験しなくてはと思う。来年実現するか?左の松林は遠近感を出すために墨の濃淡で塗り分けているので、空間が大きく広がっていくように感じられる。

後期には見たい度の強い‘鹿’(豊田市美)や大好きな‘雀に鴉’(東近美、拙ブログ07/1/25))が登場するから、また出かけるつもり。

| | コメント (4) | トラックバック (1)

2009.10.23

THE ハプスブルク展 その二 イタリア・ドイツ絵画の名画!

982_2
981_3
980_2
海外美術館の作品を展示するお馴染みの名品展は頻繁に開催されるが、その7割は名前倒れ。期待を裏切らず、館の図録に載っている自慢の絵を惜しげもなく公開してくれるのはルーヴル、オルセー、そしてウィーン美術史美。

西洋絵画の展覧会で○をつけるのは図録に登場する絵が3点やってきたとき。日本にいて名画が3点も見れればもう立派な展覧会、気持ちよくビールが飲めるというもの。今回、ウィーン美蔵の作品50点のうち19点が図録(日本語訳あり、200図版)に掲載されている。そのなかで、とくに惹かれるのは、

★ティツィアーノの‘イル・ブラーヴォ’(上の画像)
★ヴェロネーゼの‘ホロフェルネスの首を持つユディット’(真ん中)
★デューラーの‘若いヴェネツィア女性の肖像’(下)

マドリッドのプラド美やロンドンのナショナルギャラリーにあるティツィアーノ(1485~
1576)コレクションには敵わないが、ウィーン美にもぐっとくるのがいくつかある。今回でている‘イル・ブラーヴォ’はとても気になる絵。6年前現地を訪問したときは飾ってなくて図録でその存在を知り、惜しいことをしたなと思っていた。その絵が目の前にある。これはサプライズ!夢中になってみた。

‘イル・ブラーヴォ’は雇われた刺客のことで、手前の男は左手に持った短刀を背中に隠し、金髪の男の襟をつかんでいる。金髪の男は恐怖心を感じはじめている様子で、そのリアルな顔の表情は見る者にも緊張感を与える。こういう内面性がでたカラヴァッジョ風の絵はこれまで見たことがない。

ヴェロネーゼ(1528~1588)は02年の名品展(東芸大美)のときは‘ルクレツィアの自害’で、今回は‘ユディット’。光に照らされたユディットの姿を見るとそれほど緊迫感がない。虫も殺したことのないような若い女性が気持ちを昂ぶらせることもなく、怖いホロフェルネスの首を落としたという感じ。

‘わたし、やっちゃたわよ!でも、意外に冷静だったの。皆がこの首をみると喜ぶから早く持っていって’。外見は弱そうにみえても度胸の据わった女性はいるもの。こういう女性がデカイことをやる。

デューラー(1471~1528)の女性の肖像画はとても気に入っている。前回もやってきたから、また多くのデューラー好きの心をとらえたに違いない。この絵はウィーン美の図録の表紙に使われている。モデルは現代に生きるイタリアの女性となんら変わらないから、絵の中にすっと入っていけるのがいい。

写真がなかった時代では、卓越した描写力をもっている画家の絵は大きな価値があり、心を和ましてくれる。ドイツ絵画にあってはデューラーはやはり特別な存在である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.22

THE ハプスブルク展 その一 目玉はスペイン絵画!

979_2
977_2
978_2
国立新美で開催中の‘THE ハプスブルク展’(9/25~12/14)は東博の‘皇室の名宝展’同様、大盛況。ウィーン美術史美とハンガリーのブダペスト国立西洋美からやってきた絵画75点は02年の‘ウィーン美術史美術館名品展’(東芸大美)の内容を2割くらい上回る感じ。

いい絵がいくつもあった前回のレベルをこえるのだから、これは春のルーヴル美展と遜色のない一級の西洋画展覧会である。しかも武具や装飾工芸品のオマケつきだから、気分は相当盛り上がる。

ビッグな展覧会なので絵画を2回取り上げることにした。目玉はずばり、スペイン絵画!
★ベラスケスの‘白衣の王女マルガリータ・テレサ’:ウィーン美術史美(上の画像)
★エル・グレコの‘受胎告知’:ブダペスト国立西洋美(真ん中)
★ムリーリョの‘悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル’:ウィーン美術史美(下)

今回、5歳の王女マルガリータは弟の‘皇太子フェリペ’(2歳)も連れてきてくれた。ベラスケス(1599~1660)はマリガリータの肖像画を3点(拙ブログ08/8/5)描いているが、国立新美は昨年が3歳のときの‘バラ色のマルガリータ’、今年が5歳のマルガリータを展示してくれた。

これで‘フェリペ’を入れて美術史美にあるべラスケスの作品は日本で全部公開されたことになる。‘待てば海路に日和あり’である。3歳の絵も心に響くが、この白衣を着たマルガリータもとても可愛い。まるでお人形さんみたい。

また、ベラスケスが20歳頃に描いた‘食卓につく貧しい貴族’(ブダペスト美)と再会できたのも有難い。このカラヴァッジョを思わせる光の使い方を目に焼けつけた。

グレコ(1541~1614)の‘受胎告知’は86年に西洋美であったエル・グレコの超一級の回顧展に大原美蔵の‘受胎告知’と一緒に展示された。また、03年中欧を旅行した際、ブダペスト美でも見たから縁が深い。

グレコの絵にのめりこんでいったのはこの回顧展から。Myカラーが緑&黄色なのはグレコの絵に魅せられているため。ヨーロッパでも有数のグレココレクションを誇るブダペスト美からこの傑作がやってきたのは本当にすばらしい。うっとりしながら見ていた。

ムリーリョ(1618~1682)の大天使ミカエルの絵もなかなかいい。血のついた剣を右手のもつ躍動感のある姿に思わず惹きこまれる。

ゴヤ(1746~1828)はブダペスト美から男性の肖像画が1点。あまり欲張ってもいけないのだが、これでなくて1810年に描かれた傑作‘水を運ぶ女性’が登場したら嬉しかったが。そううまくはいかない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.21

古代カルタゴとローマ展はモザイクが大当たり!

974_2
975_2
976_2
現在、大丸東京で行われている‘古代カルタゴとローマ展’(10/3~10/25)は予想以上に良かった。年はじめに公開された‘トラキア王の黄金のマスク’に続いて、今回もクリーンヒット。これで当分は大丸の古代遺跡展は‘買い’ということになる。

大丸へ行く前に六本木ヒルズに寄り、テレビ朝日に飾ってある縦5.34m、横4.92mの大舗床モザイクを見た。大丸には残念ながらこれは入りきらないのでここで公開されている(無料)。これがつくられた時期は3世紀末から4世紀初頭。

神殿や橋、建造物などのある地中海の島々が浮島の形で描かれており、島と島の間には舟に乗ったキューピッドや魚、蛸、貝がみえる。これがモザイクの序章だったことは大丸に入場してからわかった。

カルタゴは古代ローマ軍を苦しめた国というイメージがインプットされているから、チュニジアのどこにあるかくらいはわかる。でもほかの地名はまったく知らない。だから、歴史的なことは横において目の前にある遺跡物をみることに専念した。

興味深いものがあった。それは前3世紀~前2世紀につくられ、名将ハンニバルの軍との関連が指摘されている‘胸当て’(青銅、上の画像)。目が吸い寄せられるのがミネルヴァ女神が被っている兜の丁寧な装飾飾り。隣にはよく似た意匠の背当てもある。

真ん中の大理石でつくられた‘有翼女性神官の石棺(蓋)’(前3世紀)にも足がとまった。この女性の髪型はエジプト風だが、顔貌はギリシャ、ローマ系。腰から下が魚の鱗のようなので人魚を連想したが、よく見るとちゃんと足が出ていた。

最後の部屋はサプライズの連続。舗床モザイクがなんと16点!しかも大きなサイズのものが多い。これは大収穫。下はチラシに使われている‘バラのつぼみを撒く女性’。画面から少し離れてみると、全体がよくみえる。その片足を前に出す動きのあるポーズにとても魅了された。

ほかにもオケアノスの大きな顔がぐっとこちらに迫ってきたり、象に噛みつくニシキヘビがいる。西洋美の‘古代ローマ帝国の遺産展’でみた‘モザイクの噴水’がカルタゴのモザイクとコラボしていたとは思ってもみなかった。貴重な体験である。これを見れただけでも足を運んだ甲斐があった。

なお、このあと次の会場を巡回する。
・岡山市デジタルミュージアム:10/31~12/20
・京都文化博物館:10/2/11~4/4
・浜松市美:4/17~5/30
・宮崎県総合博物館:7/16~9/12
・名古屋松坂屋:10/23~11/21

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.20

美術に魅せられて! 今最も期待している回顧展(近代日本画)

972_2
971_2
973_2
近代日本画家の回顧展はなるだけ多く見ることにしている。理想はどの画家についても回顧展が2回体験できること。長いこと日本画をみているので、これが実現した画家もだんだん増えてきた。これまで見たものをざっとまとめてみた。

・狩野芳崖:08年 東芸大美
・橋本雅邦:08年 川越市立美
・富岡鉄斎:96年 愛知県美、07年 大倉集古館
・神坂雪佳:06年 日本橋高島屋
・竹内栖鳳:07年 山種美
・横山大観:93年 京都文化博、04年 京近美&東芸大美、08年 国立新美
・菱田春草:09年 明治神宮文化館
・下村観山:06年 三渓園
・小堀鞆音:06年 明治神宮文化館
・川合玉堂:94年 日本橋高島屋、96年 山種美、07年 日本橋高島屋&山種美
・上村松園:96年 Bunkamura、03年広島県美、05年山種美、09年日本橋高島屋
・鏑木清方:08年 鏑木清方記念美
・冨田渓仙:09年 茨城県近美

・菊池契月:06年 長野県信濃美
・小杉放庵:09年 出光美
・小林古径:05年 東近美
・竹久夢二:03年 尾道市立美、04年日本橋高島屋&東急東横、07年千葉市美
・小林かいち:07年 小杉放庵記念美、08年竹久夢二美、09年ニューオータニ美
・近藤浩一路:06年 練馬区美
・安田靫彦:93年 愛知県美、09年 茨城県近美
・川端龍子:97年 日本橋高島屋、05年 江戸東博
・前田青邨:06年 岐阜県美
・川崎小虎:06年 日本橋三越
・土田麦僊:97年 東近美
・村上華岳:05年 京近美
・小野竹喬:99年 笠岡市立竹喬美、06年 香雪美

・奥村土牛:08年 山種美
・中村岳陵:08年 横須賀美
・福田平八郎:04年 蘭島文化振興財団、07年 京近美
・山口蓬春:06年 神奈川県近美葉山
・速水御舟:08年 平塚市美、09年 山種美
・池田遥邨:05年 倉敷市立美
・小倉遊亀:02年 滋賀県近美
・伊東深水:06年 えきKYOTO美
・山本丘人:05年 練馬区美、06年 平塚市美
・上村松篁:96年 名古屋三越、08年 横浜そごう、09年 日本橋高島屋
・棟方志功:00年 島根県美、03年 大原美&Bunkamura、06年 横浜そごう
・橋本明治:04年 島根県美
・片岡球子:05年 神奈川県近美葉山、09年 日本橋高島屋
・東山魁夷:93年名古屋松坂屋、04年兵庫県美、05年市川市記念館、08年東近美

・奥田元宋:97年 広島県美、05年 日本橋高島屋
・高山辰雄:08年 練馬区美
・石本正:06年 横浜高島屋
・加山又造:05年日本橋高島屋、06年大丸神戸、07年茨城県近美、09年国立新美
・平山郁夫:97年平山郁夫美、01年日本橋高島屋、05年日本橋三越、07年東近美
・福王寺法林:06年 三鷹市美術ギャラリー
・安野光雅:06年 日本橋高島屋
・上村淳之:08年 日本橋三越、09年 日本橋高島屋
・村上豊:07年 野間記念美
・中島潔:05年 日本橋三越
・千住博:06年 山種美
・会田誠:07年 上野の森美
・山口晃:07年 上野の森美& 練馬区美

幸いなことに近代日本画で名の通った画家の回顧展は数多く観ることができた。それでも縁のない画家もいる。そのなかで、なんとか大きな回顧展に遭遇したいと思っているのは、
★杉山寧 ‘澗(かん)’(上の画像)
★横山操 ‘ふるさと’(真ん中)
★堂本印象 ‘法然院方丈襖・静風自来’(下)

杉山寧(1909~1993)の大回顧展をずっと待っているのだが、縁がない。画集をもっておらず、これまで散発的に見たものを眺めるだけなので、まだみていない名画がどのくらいあるか見当がつかない。東近美の平常展でいい絵をよくみるから、ここでやってくれると有難いのだが。

加山又造とウマがあった横山操(1920~1973)の絵になかなか会えない。晩年に描いた水墨画の傑作の前に立つのを夢見ている。

堂本印象(1891~1975)は京都の記念館へ出かけ、その前衛的な作品から切れ味のいい刺激を受けてきたが、今のところ00年日本橋高島屋などで行われた回顧展の図録をながめてため息をついているばかり。この画家の色使いにぞっこん参っているから、いつか回顧展をとの思いが強い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.19

美術に魅せられて! 今最も期待している回顧展(日本画)

 969_2
968_3
970_2
展覧会は一人の作家の作品を沢山集めてくる回顧展のときが一番ワクワクする。で、江戸時代末までに活躍した日本絵画の絵師と明治以降の近代日本画家のなかで、今最も回顧展を見たい画家をとりあげてみた。本日は室町時代から江戸時代までの絵師で、明日は近代日本画家。

今後期待する回顧展の前に、これまで体験した回顧展について整理してみたい。

・雪舟:02年 京博、05年 根津美
・雪村:02年 山口県美
・狩野永徳:07年 京博
・長谷川等伯:05年 出光美
・俵屋宗達(琳派展):94年 名古屋市博、04年東近美&日本橋三越、08年東博
・岩佐又兵衛:04年 千葉市美、05年 MOA
・狩野探幽:02年 東京都美
・英一蝶:09年 板橋区美
・尾形光琳(琳派展):94年 名古屋市博、04年東近美、05年根津美、08年東博
・白隠:08年 永青文庫
・与謝蕪村:08年 MIHO MUSEUM

・伊藤若冲:05年 京博&静岡県美、06年三の丸尚蔵館、07年相国寺、09年MIHO
・曽我蕭白:05年 京博
・円山応挙:03年 大阪市立美、06年 奈良県美、07年 東芸大美
・長澤芦雪:06年 奈良県美
・仙厓:07年 出光美
・浦上玉堂:06年 千葉市美
・谷文晁:07年 板橋区美
・亜欧堂田善:07年 府中市美
・狩野一信:06年 東博
・酒井抱一(琳派展):94年 名古屋市博、04年東近美&日本橋三越、08年東博
・鈴木其一(琳派展):04年 名古屋市博、04年東近美&日本橋三越、08年東博

・鈴木春信:02年 山口県立萩美
・鳥居清長:07年 千葉市美
・東洲斎写楽:95年 東武美(現在は無し)
・葛飾北斎:93年 東武美、05年 東博、07年 江戸東博、08年 日本橋三越
・渓斎英泉:97年 太田記念美
・歌川広重:03年 太田記念美、05年太田記念美&日本橋三越、07年神奈川県歴博
・歌川国芳:96年 サントリー美&下関大丸、04年 東京ステーションギャラリー
・河鍋暁斎:04年 東京ステーションギャラリー、08年 京博

来年春の長谷川等伯展(東博)を除いて、今、回顧展の開催を最も望んでいるのは次の3人。絵は見たい度の強いもの。
★池大雅 ‘夏雲霊峰図屏風’(上の画像)
★菱川師宣 ‘吉原風俗屏風’(真ん中)
★喜多川歌麿 ‘北国五色墨 切の娘’(下)

昨年、滋賀のMIHO MUSEUMで与謝蕪村展を見たので、池大雅展が近づいてきたと勝手に妄想している。この絵師が描く丸っこくて愛くるしい人物描写にとても惹かれており、なんとしても一度大きな回顧展を経験したい。数年前から、京博へ行ったときは必ず、アンケート用紙に‘京博で池大雅展を是非開催して欲しい!’と書いている。

浮世絵師はビッグネームの多くを見てきたが、まだ菱川師宣と歌麿が残っている。師宣の作品は代表作はかなり見ているつもりだが、回顧展に遭遇してないので、済みマークはつけられない。昨年発見された肉筆の風俗画が含まれた大回顧展を見たい。学習院大教授小林氏が館長をしている千葉市美がこれを企画してくれるのではないかと密に期待している。果たして?

現在、重点鑑賞絵師にしている歌麿は東博が実施してくれることを心から願っている。05年の北斎展のように世界中の美術館から歌麿の傑作を集めてくれると嬉しいのだが。千葉市美が開館記念展として歌麿をとりあげてから14年経つから、そろそろかなと思いたい。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.18

新・根津美術館の国宝那智滝図と自然の造形展

958_5
960_2
959_2
新しい根津美術館を訪問してきた。敷地内への入り口が信号を渡ったその前だから、導線がスムーズ。料金は1200円。前も同じ金額or1000円?美術館通いが3年間も遠ざかると前の記憶がだいぶ消える。

新・根津美ではこれから来年の9月まで開館記念展として、所蔵品の公開が続く。スケジュールをみると作品は展示替えなしで1ヶ月展示し、次の企画展にリレーしていくスタイル。第一弾‘国宝那智滝図と自然の造形’は10/7~11/8。これは今、東博で行われている‘皇室の名品展’と同じ展示の方法で、いわゆる‘京博方式’。

こういう作品を期間中展示替えなしで全部みせるスッキリ展示は好感がもてる。大歓迎である。所蔵品だからできるとはいえ、多くの日本美術ファンが望んでいる展示の仕方を実際にやってくれる美術館には何回も足を運びたくなる。

ここの所蔵品はかなり鑑賞済みになっているので、サプライズがドッとあるわけではない。だから、1点買い、2点買いの訪問になるのはわかっているが、それらは美術本に載っているほどの名品なので、対面できるのがとても楽しみなのである。

一回目の出動でもいいのが見れた。やはりここはブランド美術館。あまり長くはいなかったが、展示室1に展示されている25点のなかで心を打ったものを。

★那智滝図(上の画像)
★芸阿弥の‘観瀑図’(真ん中)
★春日山蒔絵硯箱(下)
★野々村仁清の‘色絵山寺図茶壺’(拙ブログ06/12/26

国宝の那智滝図は5、6年ぶりの対面かもしれない。美術の教科書に載っている有名な絵だから、最初に見たときの印象が強く体にしみこんでいる。まず驚くのは縦の長さ。1.6mある。現地で滝をみた方なら、この長さに納得がいくと思う。滝の造形はじっくり観ると絵の前を離れてもしっかりイメージできるようになる。

水が落ち始めのところで左に緩くカーブしたあと、垂直に気持ちよく落ち、滝壺に近づくにつれ水の幅は2倍くらいになる。そこから右に曲がると水しぶきがあがり、水流の線が多くなり、水は岩の間を勢いを増してS字に通り抜けていく。画面の下半分で目立つのが苔を表す緑の丸。

この絵の見所は平面的な胡粉の色面だから、明るいところでみるより、照明をすこし落としたなかで見るほうが胡粉の白が強く印象づけられる。那智滝図はやはり特別の絵という感じがする。

‘観瀑図’(重文)は昨年、徳川美でもお目にかかった(08/11/9)。滝は上から三段階になって流れ落ち、最後は4本の水に分かれドドーッと下の滝壺に激しく落下する。僧侶と子供が渡っている橋の下は洪水みたいで、ぼやっとしていると水に流され溺れてしまいそう。

追っかけ作品の‘春日山蒔絵硯箱’(重文)に出会ったから機嫌がいい。土坡(どは)の稜線でできる斜めの曲線が画面を上と下に二分している。赤茶色の土坡を背にしてシルエットのように描かれている3頭の鹿が目に焼きつく。

気分がとてもハイになったのが3年ぶりの対面となった仁清の‘色絵山寺図茶壺’。小ぶりの壺だが、金の輝く見事な装飾美に声を失った。仁清好きにはたまらない一品である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.17

紫式部日記絵巻(五島本)の第一段にやっとめぐり会えた!

955
956_2
957_2
五島美でいつも秋に公開される国宝‘紫式部日記絵巻’(一、二、三段)を見てきた。‘絵画・墨蹟と李朝の陶芸’は8月28日からはじまっており、会期はあすの日曜までだが、‘紫式部’は10/10~18の限定展示なので、このタイミングにあわせて出かけた。

絵との遭遇はいろいろ。鑑賞欲が急に沸いてきたと思ったら、すぐ対面できたというケースもあれば、どういうわけか展示替えとかでなかなか会えず、いたずらに時間ばかりが流れることもある。五島本の‘紫式部’は後者のケース。なぜか第一段(上の画像)に長いこと縁がなかった。

これにはちょっとした勘違いも絡んでいる。というのも、この絵は一度どこかの展覧会で見たことがあると思っていた。昨年の‘森川コレクション展’(三井記念美)に登場した‘紫式部’(重文、個人蔵)に出会い、これで旧森川本の‘紫式部’(五島美の3点、東博の1点、個人蔵の1点)は全部見たと喜んだ。

だが、過去の展覧会をよく思い返してみると、五島美の第一段はまだお目にかかってないことに気づいた。済みマークの黄色のサインペンを塗るのは間違いだったのである。で、この秋の展示は見逃さないように展示の日をチェックしていたというわけ。

大阪の藤田美が所蔵する国宝‘紫式部’とこの一段はとても気に入っている。一段で視線が向かうのは右の渡り廊下にいる二人の男性のうち顔をこちらに向けている藤原斉信。蔀戸(しとみど)をすこし開けているのが紫式部。

そして、左の庭では廊下の角に呼応するように土坡(どは)が重ねられ、上に描かれた大きな月は半分画面からはみだしている。人物を右に配置し、奥行きのある庭を広くみせる構成は‘源氏物語絵巻’にはみられず、この絵の大きな魅力になっている。これを目の中におさめたので、久しぶりに藤田美の絵が見たくなった。念じておこう。

真ん中は‘佐竹本三十六歌仙絵 清原元輔像’(重文)。2回目だが、前回見たのはいつだったか?どの歌仙絵をみても感じることだが、男でも口びるの赤が大変鮮やか。三十六歌仙絵を全部みるのが夢とはいえ、これは実現しそうにない。これまでみたのは
16点、先は長い。

五島美にはやきものの優品が沢山ある。今回は李朝(朝鮮時代)のものが16点でている。下はMy好きなやきものに入れている‘井戸茶碗 銘美濃’(重美)。‘九重’や‘熊川茶碗 銘千歳’にも足がとまった。

‘紫式部’一段の1点買いなので、館の中にいたのは20分。でも、大きな満足が得られた。学芸員の方の話では、ここは来年開館50周年を迎えるので、所蔵品をどっと展示するとのこと。楽しみがまたひとつ増えた。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2009.10.16

太田記念美の江戸園芸花尽し展に植木鉢が大集結!

952954953
太田記念美は常時通ってはいないが、HPはしっかりチェックしており、今回の‘江戸園芸花尽し展’(10/1~11/26)はずっと前から出動することを決めていた。

江戸時代にブームとなった園芸については以前から興味を抱いていたが、有難いことにこの展覧会は一般庶民の暮らしの一部として溶け込んだ園芸文化を浮世絵がどんな風に描いているかをいろいろな切り口で見せてくれる。

植木鉢に植えられ花の種類、人々はどこでそれを買っていたのか、また、賑わっている花見の名所はどこにあるのか、こんな情報がゲットでき、しかも広重や国貞らビッグネーム絵師の浮世絵も楽しめる。ためになっておもしろいのだから、これは一級の浮世絵展といっていい。流石、太田記念美である!おまけがまた魅力的。染付磁器の植木鉢が沢山ある。その見栄えのする文様を熱心に見た。

作品数は前期(10/1~25)、後期(11/1~26)合わせて187点。三枚続きの大作が結構あるから、鉢に植えられた花の様子がよくわかる。上は国貞の‘四季花くらべの内 秋’。見てわかるようにこれは夜の縁日の景色。季節は秋で、人気の歌舞伎役者たちが縁日に訪れたという設定。真ん中にいるのが八代目市川団十郎。棚の上の植木鉢には万年青や蘇鉄が、下には女郎花、ススキなどがみえる。

江戸の人たちは園芸植物を行商姿の植木売りから買ったり、神社や仏閣の縁日のとき、露店の植木売りで手に入れた。また、花の栽培生産をやっている植木商で買うこともあった。家では植木鉢に水をやり大切に育てる。真ん中の絵は歌川芳虎が団扇に描いた‘座しき八景の内 上漏の松の雨’。五葉松の鉢に如雨露で水をやっている女のしぐさをみると、鉢の植物を愛でる気持ちがよく伝わってくる。

地下の展示室には花見の場面が描かれた名品がずらっと揃っている。広重が多く、どれも心に響く。下は見事な風景画&群像美人画の‘東都 上野花見之図’。同じ三枚続きの‘浅草金龍山 奥山花屋敷’や‘東都名所 御殿山花見 品川全図’も夢中にさせる。また、渓斎英泉の‘四季之内春 花見帰り隅田の渡し’は船頭の姿が滅茶苦茶笑える。

そして、‘名所江戸百景’の定番 ‘蒲田の梅園’や‘亀戸天神境内’の藤の花、‘堀切の花菖蒲’にも魅せられる。花の絵をみていると本当に心が洗われる。後期も出かけることを即決めた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.15

だまされて楽しく、変容マジックに酔わされるエッシャーの絵!

950
961_2
951
横浜そごう美で開催中の‘迷宮への招待 エッシャー展’(10/10~11/16)を見てきた。6月にあった‘だまし絵展’(Bunkamura、拙ブログ6/14)でエッシャーの版画の代表作‘昼と夜’(06/12/30)と再会して、またエッシャー熱が高まっていたら、タイミングよくハウステンボス美の所蔵品と遭遇することになった。

作品は120点あまり。回顧展を2回経験するとその画家に限りなく近づけるから、Bunkamuraの回顧展で見なかった作品にサプライズがあることを期待して会場を進んだ。とくに惹き込まれたのが上の‘魚とうろこ’と真ん中の‘爬虫類’。

エッシャーの絵が見てて楽しいのはスタートはただの四角や三角や菱形がだんだん形を整えて、鳥や魚や爬虫類に変容するところ。‘魚とうろこ’はその変容のプロセスがほかに作品と比べるとちっと複雑で画面に動きがある。

原始状態は真ん中の右と左にある銀杏の葉っぱがいっぱいあるようにみえるところ。そこから白と黒の魚が進む方向を逆にしてだんだん、うろこをつけ体も大きくなっていく。こういうメタモルフォーゼを見るときは最初は白なら白の形に集中して見ないとダメ。ほわんと白も黒もみているとイメージが混乱、変容のマジックに酔えない。この絵は見慣れてくると魚のリズミカルで曲線的な動きにかなり痺れてくる。

‘爬虫類’は息を呑んで見てしまう。ノートの紙にデッサンされたワニがごそごそ体を動かして、本物のワニになってそこから出てくるのである。そして、本の上にあがり、小瓶になかに入ったりしてぐるりと一周し、またノートの中に戻っていく。この変容の繰り返しは本当におもしろい!

平面と立体の組み合わせは並みの発想からは生まれてこない。エッシャーはやはりスーパーエッシャー。‘出会い’もこれと同じタイプのもので、じっくり見ると惹きこまれる。見てのお楽しみ!

下の‘上昇と下降’(部分)は‘滝’とともにエッシャーのだまし絵のなかではだまされて楽しい絵。時計周りに歩く男たちは永遠に続く登り階段を進んでいる感じ。一方、反時計周りに歩く男たちは下り続けるようにみえる。これはありえない構造なのだが、ぱっとみると‘それもありだよネ!’と思えてくるから不思議。エッシャーは階段をあいまいにしたり、角をアバウトにつなげて不思議なイメージを取り去っている。

また、‘ベルベデーレ(物見の塔)’や‘版画画廊’もなんだか変な感じなのだが、じっとみていると‘このままみていればいいや’となる。お気に入りの‘昼と夜’もあったし、エッシャーワールドを存分に楽しんだ。ますますエッシャーの絵にのめりこんでいく。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009.10.14

惚れ直した英一蝶の風俗画!

947949948


板橋区美へまたでかけ、‘英一蝶展’の後期(9/25~10/12)に展示された作品を楽しんだ。8点のために横浜からはちょっと遠いこの美術館に足を運んだのはひとえに英一蝶の絵が好きだから。

前期を見たとき(拙ブログ9/9)と同様、ユーモラスな絵や底抜けに楽しい宴会の場面を見て、心はプラトー状態。展覧会は12日に終了したので、お気に入りの絵とこれから追っかけたい絵をとりあげてみた。

★四季日待図巻:出光美(上の画像)
★僧正遍昭落馬図:大和文華館(真ん中)
★田園風俗図屏風:ワシントン、フリーア美(下)

この回顧展は展示作品50点がいいだけでなく、それらを収録している図録がとても嬉しい編集になっている。拍手を送りたいのが図巻‘四季日待’(重文)と‘吉原風俗’(サントリー美)の図版がふたつとも巻の最初から終わりまで全部大きいこと。

この2点は所蔵している出光とサントリーで開催された企画展などで数回みており、図録もあるのだが、どれも小さな図版に収まっていて、本物を見たときの楽しい気分が再現しづらくなっている。今回この図録が手に入ったので、絵を見る機会が多くなりそう。

‘四季日待図巻’のハイライトは上の最も浮かれている風流踊りの場面。踊りの輪のなかで一際目立つのが幇間。手にもった盃と扇子をリズミカルに振り、宴会の場をおおいに盛り上げている。

三宅島に流されていた一蝶は自分が幇間として吉原に出入りしていた頃を思い出して、この絵を描いたのだろう。逆境にあっても、心の中ではこんな晴れやかな気分を持ち続け、絵でそれを表現できたというのがすごい!

女郎花(おみなえし)に見とれて落馬した遍昭を描いた真ん中の絵は展示替えなどでこれまで相性が悪い。図録でそのユーモラスな表情を見るたびになんとかしなくてはと思っている。

フリーア美にある六曲一双の屏風‘田園風俗図’は来年春ワシントンを再訪することにしているので、ひょっとすると会えるかもしれない?サプライズがあればいいのだが。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.13

パリに咲いた古伊万里の華!

945
946
944
東京都庭園美に今、有田からヨーロッパに輸出された古伊万里の名品が里帰りしている。‘パリに咲いた古伊万里の華’(10/10~12/23)という洒落たネーミングをつけているから、期待して入館したが、見ごたえのあるものが揃っていた。出品作165点はコレクター碓井文夫氏が長年にわたってパリを拠点にして収集したもの。日本で所蔵品が公開されるのははじめてのことらしい。

何年か前、あるTV番組で古伊万里を現地で熱心に購入して日本に里帰りさせている碓井氏を紹介していたのを記憶しているのだが、それがどこだったか思い出せない。碓井氏はたしか、栃木か群馬の人だったような気がするが?

古伊万里が最初に長崎からヨーロッパへ向けて輸出されたのは350年前の1659年
10月15日。明と清の戦乱のため景徳鎮窯から輸出できなくなった中国磁器の代わりにオランダ東インド会社が目をつけたのが日本の有田磁器。以後1757年までヨーロッパの王侯貴族の注文に応じて大量のやきものがつくられた。

今回は輸出された時期を4つにわけ作品をグルーピングしている。
1.輸出の始まりと活況(寛文様式、1660~70年代)
2.好評を博した日本磁器の優美(延宝様式、1670~90年代)
3.宮殿を飾る絢爛豪華な大作(元禄様式、1690~1730年代)
4.欧州輸出の衰退(享保様式、1730~50年代)

上は王侯貴族を夢中にさせた柿右衛門様式の‘色絵柴垣松竹梅鳥文皿’(1670~
90年代)。乳白手は‘どうしてそんなに白いのか!’と思うくらい白い。そして、その白地にくっきり映える柴垣、小鳥、松竹梅の青、赤、緑、黄色が目に焼きつく。ほかでは北宋の司馬光が少年時代に水甕を割って子供を救い出したという定番の画題を描いた八角皿などを楽しんだ。

この展覧会の収穫のひとつが1700~40年代につくられた口径50cmを超える金襴手様式の大皿。真ん中の‘色絵桜樹巻物冊子文’と‘色絵富士桜樹文’。ともに見込全体に文様が余白をあまりとらず、びっちり描き込まれている。日本人の美意識からすると‘なんとまあ、ビジーな絵付け!’という感じだが、西洋人は塗り残しに意味をみいださないから、どうしてもこんな絵柄になる。口縁部に巻物や冊子が描かれたものはお目にかかったことがない。

チラシに使われている下の‘色絵花鳥文蓋付大鉢’(1720~50年代)はヨーロッパの宮殿を訪問するとよく出くわす。合子(ごうす)というのは蓋と身を合わせた小型容器で、香合や化粧品入として使われるが、欧州の貴族は室内での見栄えを考えてかなり大きなものを要求する。金の装飾は現地で宮殿の室内装飾とマッチさせて行われる。

これと同じように金がどっと目のなかに入ってくる‘色絵鳳凰文八角蓋付大壺’が玄関のところに展示してある。金属部分まで入れると高さは85cmもあるから、見ごたえ十分。国内で開かれる古伊万里展では見ることのできないものをこれほど多く見れたのは無上の幸せ。碓井コレクションに感謝!

なお、このあと次の美術館を巡回する。
・九州国立博:10/4/6~6/13
・MOA美:7/17~10/3
・兵庫陶芸美:10/16~11/1/10


| | コメント (2) | トラックバック (0)

2009.10.12

皇室の名宝展 その三 超絶技巧の工芸に釘付け!

Img_0001_2Img962_2


近世絵画に続いて目を楽しませてくれるのは明治以降に描かれた日本画や織物、金工、やきものなどの工芸作品。絵画は追っかけ作品が前回見逃した鏑木清方の‘讃春’のみだから、テンションの上がり具合は普通。

お気に入りの上村松園の‘雪月花’(拙ブログ7/9)、橋本雅邦の‘龍虎図’(08/9/7)、‘夏冬・春秋山水図’、川合玉堂の‘雨後’をみれれば十分満足する。で、工芸の名品の前に長くいた。とくに息を呑んでみたのは、

★川島甚兵衛(三代)の‘春郊鷹狩・秋庭観楓壁掛’(上の画像)
★川之辺一朝の‘菊蒔絵螺鈿棚’(真ん中)、‘石山寺蒔絵文台・硯箱’
★海野勝珉の‘蘭陵王置物’(下)、‘太平楽置物’(08/10/23
★石川光明の‘古代鷹狩’(08/9/7)
★旭玉山の‘宮女置物’
★並河靖之の‘七宝四季花鳥図花瓶’(08/9/7)、‘七宝舞楽図花活’
★濤川惣助の‘七宝月夜深林図額’

工芸は絵画と違って展示替えがないので、濤川惣助の七宝以外は前回みたのをよく覚えている。大きな綴織壁掛は見てて楽しくなる。まるで絵画をみているよう。これは左側の宮廷の年中行事、紅葉狩りの場面。日本版のゴブラン織といったところ。こういう見事な壁掛を見る機会は滅多にないので、画面の隅から隅までじっくりみた。

川之辺一朝の蒔絵螺鈿棚は本当にすばらしい。菊と小鳥の模様に使われた夜光貝が光にあたりうすピンクとうす緑に輝く様がえもいわれず美しい。また、湖面に広がる波を精緻に研出蒔絵で表現した‘石山寺蒔絵文台’も心を揺すぶる。

海野の代表作2点を見るのはともに3度目。‘蘭陵王’は03年の‘工芸の世紀展’(東芸大美)、‘太平楽’は昨年の‘帝室技芸員と1900年パリ万博’(三の丸尚蔵館)でも対面した。こんな小さいながらも重厚感のある置物は海野のような超絶技巧を持った彫金家にしかつくれない。まさに日本の宝である。一晩だけでいいから、家のリビングに置かせてくれないかな。

象牙の置物は‘古代鷹狩’を1年前に見たばかりだが、これの倍くらいの細工を施した‘宮女’は10年ぶりに見た。十二単の重なりや裾や袖が折れ曲がるところを細密に彫っていく技は半端ではない。ぐるぐるまわってやわらかい象牙の色を目に焼きつけた。

並河靖之の七宝の花瓶は人気が高く、大勢の人が取り囲んでいた。言葉が出ず、黒地の背景に浮き上がるうすピンクの桜と緑の紅葉をただ見つめるばかり。華やいだ気分になる並河の花瓶に対して、無線七宝を生み出した濤川の額は霞が漂う山水画をみているよう。対照的な七宝の名品を心ゆくまで楽しんだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.11

皇室の名宝展 その二 待望の海北友松と芦雪の絵と対面!

963_3
965_2
964_2
皇室の名宝展にでているお宝はザックリいって7割くらいが10年前あったときと同じもの。でも、展示替えで見れなかったものがいくつかあるので、今回はそのリカバリー作品に鑑賞エネルギーの多くを割いた。

★海北友松の‘浜松図屏風’(上の画像)
★円山応挙の‘旭日猛虎図’(真ん中)
★長澤芦雪の‘唐子睡眠図’(下)

海北友松(かいほうゆうしょう、1533~1615)と芦雪(1754~99)の絵は三の丸尚蔵館で展示されるかなと5年間定点観測していたが、結局お目にかかれず、10年の月日が流れた。日本画の名品をみるのはやはり時間がかかる。友松は‘網干図’も期待していたが、これは叶わなかった。

‘浜松図’で惹かれるのは俯瞰の視点で捉えられた金の州浜と銀泥で表現された波頭(銀が褪色して茶色になっている)のフォルム。また、すごい速さで飛翔する鳥たちにも釘付けになる。右隻(上)の上のほうでは水平に飛んでいるが、左隻では真ん中あたりから金地に浮かぶ緑の松のまわりを気持ちよさそうに右に大きくカーブし、左下の松林のほうへ向かっている。色的には州浜の金と松の鮮やかな緑の対比が目に沁みる。

‘唐子睡眠図’をやっとみることができた。幼児が遊ぶ絵(拙ブログ9/4)はお目にかかったが、こういう眠っている赤子の絵はめずらしい。肩の力がすっとぬける本当にいい絵。誰でも描けそうな絵にみえるが、類を見ない画面構成を思いつく芦雪だからこそ、こんな現実感のある人物描写ができるのだろう。これで芦雪にも済みマークがつけられる。

応挙(1733~95)は再会した‘源氏四季図屏風’、‘牡丹孔雀図’と初見の‘旭日猛虎図’がでている。‘猛虎図’は美術本でも見たことがないので、興味津々だった。とても大きな絵。例によって虎は虎でも、山楽が描く虎のように獰猛さはなく、ぬいぐるみ感覚のかわいい虎。前足をきちんと揃えて旭日を眺めている。大きくて見栄えのするいい絵だが、残念なことにコンディションが少し悪い。

この絵はNO情報だったが、実は密かに期待していたのは象や虎、猿、犬、鹿などが登場する‘群獣図屏風’(前回展示なし)。今回もダメだった。若冲の象と会ったから、もって瞑すべしということか。

今回飾られている有名な近世絵画のこともふれておきたい。皇室のお宝の一番は何といっても狩野永徳の‘唐獅子図屏風’(07/11/9)。日本画のど真ん中にいる名画である。2年前の永徳展に続いて展示されたから、この先10年くらいはでてこないと思ったほうがいい。お見逃しなく!

そして、酒井抱一の名品‘花鳥十二ヶ月図’(06/7/28)も目を楽しませてくれる。ぞっこん惚れている絵なので、うっとりしながら見ていた。

もう1点、忘れてならないのが岩佐又兵衛の‘小栗判官絵巻’。又兵衛絵巻の楽しみのひとつは男女が身に着けている衣装の色と文様の精緻な描写。細いゴールド線やほかの絵巻ではあまり見られない鮮やかな橙色やうす紫、うす青、、浮き浮きするような色合いに目が点になる。見てのお楽しみ!

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2009.10.10

皇室の名宝展 その一 酔いしれる若冲ワールド!

942
943
941
東博ではじまった‘皇室の名宝展1期’(10/6~11/3)は10年に一度クラスの日本美術の大イベント。展示期間は1ヶ月弱、2期(11/12~11/29)には別の作品がまた一気にでてくる。会期は短いが、展示替えがなく、いつでかけても全部みられるのがいい。このスッキリ展示は京博の狩野永徳展(07年)からはじまったので勝手に‘京博方式’と呼んでいる。

1期の‘永徳、若冲から大観、松園まで’には絵画、やきもの、漆器など皇室が所蔵するお宝が80点展示されている。作品の数としては少ないかもしれないが、心を打つ名品が多いから、全部見終わるのにかなりの時間を要する。鑑賞時間の多くをとられるのが若冲の最高傑作、‘動植綵絵’。

10年前にあった名宝展では12点の展示だったのが、今回は30幅ドドーンと飾ってある。07年、京都の相国寺で大混雑のなか、30幅プラス‘釈迦三尊像’と対面したが(拙ブログ07/5/15)、また東京で同じ体験ができるのだからこれほど嬉しいことはない。本日10時ちょっとすぎに入館したのに、絵の最前列はすでに動きが遅くなっていた。この3連休は大勢の人であふれかえると予想されるので、My鑑賞作戦をお教えしたい。

こういうときは‘5幅区切り作戦’が有効。導線の最初にすぐくっつくのではなく、まず全体を見渡すと後半の列に途切れがでてくるから、こちらから5幅くくりで見ていく。そして5幅をみたら、また元に戻り、あきスペースをみてすっと入り込み、5幅見る。これを小刻みに繰り返す。最後に一番混雑している最初の5幅をみて終わる。

‘動植綵絵’の手前にあるのが一回り大きな‘旭日鳳凰図’(上の画像)。この絵に
200%参っているので、昨年の‘対決 巨匠たちの日本美術’(東博、08/7/29)で会ったときと同様、アドレナリンがどっとでてくる。今回はMIHOに展示されている‘象と鯨図屏風’の鯨のまわりに描かれている波しぶきがインプットされているので、この鳳凰図の下にみられる白の波線を釘付けになってみた。

‘動植綵絵’のなかで鶏を描いたものは8点ある。お気に入りは‘南天雄鶏図’(真ん中)と‘群鶏図’。‘南天’は足を大きくあけ安定感よく立つ一羽の雄鶏の姿に惹きこまれる。羽の黒に対し、上から垂れる南天の実やとさか、顔の赤が強いコントラストをなしているのも印象深い。

若冲ワンダーランドにいる鸚鵡も心を揺すぶる。MIHOで鸚鵡やインコの絵をみたばかりだから、下の‘老松鸚鵡図’はほかの絵より反応がよく、信楽にいる鸚鵡とのコラボをイメージした。同様の響き合いは大好きな‘雪中鴛鴦図’(06/8/18)や‘梅花皓月図’でも感じられ、だんだんいい気持ちになってきた。

とどめ一撃をまたまた食らったのはふぐ刺しを連想させる不思議な絵‘菊花流水図’(06/6/17)。この絵の現代アート感覚には腹の底から驚愕する。豊かな感性とファンタジックな想像力をみせつける若冲は真のスーパー絵師!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.09

日本人大リーガーの今年の成績とワールドチャンピオン予想!

939大リーグはレギュラーシーズンが終了し、昨日からポストシーズン(以下PS)がはじまった。

で、日本人選手の成績をふりかえるとともに、ワールドチャンピオンを予想してみた。まず、野手から。

大リーグでプレーする選手は増えているが、期待通りの活躍をしてくれる選手がだんだん少なくなっている。

そのなかで、きっちり結果を出し、実力を見せつけたのがイチロー。9年連続シーズン
200安打の大リーグ記録をつくったのは流石というほかない。開幕当初は胃潰瘍でゲームを休んだが、回復してからは好調な打撃を維持し、自分の立てた目標を達成した。

イチローは‘競争から開放された’と清々しい顔をしていたが、来シーズンからは安打数にはあまりこだわらないで、のびのびとしたバッティングをするだろうから、かえって200安打をクリアできピート・ローズの10回を更新するのではなかろうか。

もし、この記録にイチローがこだわってないのなら、打順が3番になり打点をあげるまさに中心打者としての役割をはたすことになるかもしれない。チームの勝利に直結するイチローの打撃を是非みたいものである。

昨日、ツインズとのPS第1戦で2ランホームランを打ったヤンキースの松井の成績は打率.274、ホームラン28本、打点90。打率3割、ホームラン30本を期待したが、これに届かなかった。途中、怪我で打撃の調子が上がらず心配したが、夏以降持ち直し、なんとか格好のつく成績になった。

PSで活躍すれば球団に来年以降の契約をしてもらえるのではなかろうか。ビッグゲームに強い松井のことだから、チャンスで打ってくれそうな気がする。TV観戦がとても楽しみ。

期待はずれに終わったのがカブスの福留。打率.259、ホームラン11本は10億円の年俸をもらっている選手の働きではない。2年連続でたいしたことない成績だったから、もうアウトかもしれない。トレードで他チームへ移籍?十分ありうる。来年は3割打たないとチーム内での存在価値がなくなるが、そこまでカブスが期待してくれるか、正念場である。

マリナーズの城島とアストロズの松井はもう並みの大リーガーになってしまった。イチローに次いでよくがんばったのはレイズの岩村。左ひざを痛めてシーズン内のプレーは無理と思われてたのに、復帰してきた。たいした選手である。拍手!来年なんとか3割を打ってもらいたい。

投手陣は総崩れ。レッドソックスの松坂はたったの4勝、ドジャーズの黒田は8勝どまり。今年大リーグ入りしたオリオールズの上原が2勝で、ブレーブスの川上が7勝。川上は故障無しだが、ほかの3人はDL入りが多く、期待された勝ち星にはほど遠い結果となった。

松坂は2年の実績があるから、来年復活する可能性はあるが、上原の足腰は相当弱くなっている感じだから、先発を年間通して続けるのは無理ではないか。川上はなんとかシーズンを投げきった。今年の経験は来年のピッチングに生きてくるだろう。

さて、今年のワールドシリーズを制するのはどのチームか?ずばり、ヤンキース!ナリーグはトーリ監督が率いるドジャースだろうが、チャンピオンになるのは投手力、打撃力が一枚上のヤンキース。松井は念願のチャンピオンリングをゲットする。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.08

プライス氏蔵のモザイク画を若冲の絵としてまだ展示するの?

938_3
937_2
936_3
今回でている若冲の絵は大半が個人とお寺が所蔵しているもの。美術館蔵で多いのは京博の‘石燈籠図屏風’(9/29~10/18展示)など6点とMIHO MUSEUMの5点、あとは千葉市美、福岡市博などから1点づつ。おやっと思ったのは20点ちかくコレクションしている京都の細見美からは1点も出展されてないこと。MIHOと相性が悪い?

海外からの里帰りでは、お馴染みのプライスコレクションの‘鳥獣花木図屏風’(上の画像、右隻)が2・3・4期(9/29~11/8)に展示される。

このモザイク画をみるのはこれで4度目。昨年3月訪問したワシントン・フリーア美でもお目にかかった。若冲との付き合いは一生続けようと思っているが、この絵に対する鑑賞欲は3年前の‘若冲と江戸絵画展’(東博、拙ブログ06/7/7)でじっくりみて以来、急速に薄れ、はっきり言うとこれを若冲展に飾るのはふさわしくないとさえ思っている。今日はそのことについて少し。

この絵を若冲展で見たくない最大の理由はこれが動物や鳥や花を意匠、模様として画面を構成したものとしかみえないから。若冲は絵師であってデザイナーではない。今回展示されている絵を含めて、これまで多くの若冲作品を見てきたが、一点々若冲の絵心が伝わってきた。でも、この絵は若冲の表現したい心が全然感じられない。

同じ桝目描きの静岡県美蔵の‘樹花鳥獣図屏風’(06/8/2105/3/7)では、象や虎にしろ、また鳳凰や鶏にしろ、そのポーズや目の表情からは生き物としての生気が窺える。だから、全部を若冲が仕上げたのではないかもしれないが、これは若冲の手が入っていると思えるのである。若冲が好きな人で、二つの絵を経験された方なら10人いたら10人そういう気持ちを抱かれるはず。

難しいことでもなんでもない。ていねいにプライスさんの絵をみたら、この絵が子供が動物のアップリケやシールを貼ったみたいな稚拙な描写の連続であることはすぐわかる。そして、対象の輪郭がはっきりせず、色使いもゴチャゴチャしているのにも嫌気がさす。

例えば、真ん中は象の向かって左側に描かれている動物たちだが、丸い斑点のある豹の頭と胴体がなんともはっきりせず、その隣で象のほうを向いている動物も一体どうなっているの?という感じ、とにかくわかりにくい。

下の左隻に描かれている鳥たちがこれに輪をかけて稚拙。鶏の前にいる黒い鳥の足を見るとまったく嫌になる。首のうす青は背景の池の水の青とかぶって、首なし鳥になっているのはもう最悪!その前にいる鳥だって、体の輪郭がわかりゃしない。花や生き物の神気をつかもうと観察に観察を重ねて、どんな細かい線やどんな小さな点にも精魂をかたむけて描いた若冲がこんな下手くそな絵を描くはずがない。

現在、東博の‘皇室の名宝展’に30幅全部飾られている‘動植綵絵’は3年前修復が完了し綺麗になったし、昨年には幻の絵‘象と鯨図屏風’が発見され、今、お披露目されている。モザイク画については、プライスさんの絵を展示するのはもうやめて、静岡県美のものに切り替えるべきではないか!

考えてみれば専門家というのは不思議な行動をする。あるときは‘これは若冲のほかの絵の描き方からして、若冲の絵に間違いない!’と自信満々に問題の絵を鑑定するのに、一般の美術好きが素直にみて若冲の技と心が伝わってこないこのモザイク画に関してだけは‘研究者の間でも見方が分かれている’とお茶を濁す。

多くの若冲愛好家は静岡県美の‘樹花鳥獣図屏風’と‘象と鯨図屏風’の組み合わせのほうが若冲ワンダーランドをより楽しめると思っているのではないだろうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.07

元祖ギャグ漫画家若冲のユーモラスな絵!

Img_3967Img_0001_3
今日取り上げるのは若冲の絵のなかでとびっきりユーモラスな絵。いずれも個人蔵。
★雨龍図(上の画像)
★蛙図(真ん中)
★布袋唐子図(下)

今回出品されている鶏や鳥の絵、動物画のなかで、もっとも笑えるのが‘雨龍図’。たぶん大方の人はこれをみて赤塚不二夫のギャグ漫画にでてくるキャラクターを連想するのではなかろうか。若冲は元祖ギャグ漫画家!こんなユーモラスな龍を若冲は何からヒントを得て思いついたのだろうか?

上の絵は2期・3期・4期の展示だが、1期に同じような姿格好をした龍がでていた。2つとも目が点になるのは体の鱗が墨の滲み具合を巧みに利用した筋目描きで描かれていることよりも、その可笑しな顔と目!

1期にでていた龍は‘どうしてそんなにびっくりしているの?’と思わず聞きたくなるほどのびっくり形相。口を大きく開け、目ん玉を鼻の近くまで下げている。これに対し、今出ている龍は口を大きく開けているのは同じだが、目は上を向き、なんだかゲラゲラ笑っているようにみえる。この絵を手にいれた者は毎日がそれはそれは楽しかっただろう。

蛙の絵(10/12まで展示)もおもしろい。顔をそっくり返し上のほうを見ている様子が、口の両側にちょこんと描かれた目でよくわかる。この頭を上に向けるポーズは中国画を参考にしたと思われるが、蛙よりも鹿(11/17~12/13展示)や鯉(10/14~11/1)のほうが垂直度はもっと強い。この蛙の姿からすぐ菜蟲譜’(拙ブログ06/4/7)の最後のほうに登場する蛙が思い起こされ、しばらくニヤニヤしながらみていた。

布袋さんの絵はよくお目にかかるが、子供が頭の上にのっている絵はみたことがない。杖と団扇を手に持つ唐子はいかにも楽しげなのに、布袋さんは迷惑そうな顔つきで‘もうそろそろ頭から降りてくれない、おじさん大変なんだから!’と泣き出さんばかり。若冲の人物画はそれほどぐっとこないのだが、この弱気な布袋さんはすごく親しみを覚える。

これをみていて、‘ノルトライン=ヴェストファーレン美蔵のピカソ・クレー展’(Bunkamura、2/27)で遭遇したシャガールのレモンを持つラビの頭の上に小人のラビがいる絵がふと頭をよぎった。この絵の展示は2期と3期。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.06

若冲ワンダーランドに象と鯨がいた!

Img_0003
Img_2
966
滋賀のMIHO MUSEUMを訪問し、‘若冲ワンダーランド展’(9/1~12/13)を見てきた。会期はいつもの日本画展のように6期に分けられている。1期(9/1~9/27)と
2期(9/29~10/11)の2回見たが、出展されている若冲作品100点のうち鑑賞済みを除いて初見のものを全部見尽くすためには、あと2回の出動が必要。

3期(10/13~10/25)、4期(10/27~11/8)、5期(11/10~11/23)、
6期(11/25~12/13)に登場する絵をうまく調整し、4、6期に出かけるとコンプリートになる。クルマを運転するのは好きだから、片道4.5時間の高速走行もなんということはない。その先には楽しい若冲ワンダーランドがある。

今回のお目当てはなんと言っても昨年夏に発見された‘象と鯨図屏風’と長らく待っていた平木浮世絵財団蔵の‘花鳥版画’。まず、‘象と鯨図’のことから。これは会期中出ずっぱり。所蔵していた北陸の旧家からMIHO MUSEUMは譲りうけたようだが、一体いくらで買い取ったのだろうか?若冲の絵のなかでも上位にはいる傑作だから、かなり高かったはず。○億円のどのあたり?

象(上の画像)は右隻に、鯨(真ん中)は左隻に描かれている。象の体は餅をいくつかくっつけたみたいに丸っこくてボリューム感満点。大きな耳や胸や前足のふくらみは一度見たことのあるモザイク画‘白象群獣図’(12/1~12/13展示)にとても似ている。

これに対し、大海原で背中から思いっきり潮を吹いている鯨は目が海中にあり、その表情がうかがえないが、垂直に勢いよくあがる潮の形や巨大な体のまわりにできるダイナミックな波頭からは海の王者の風格がストレートに伝わってくる。潮吹きの白の輝きとたらしこみ風に描かれた体の墨のコントラストが実にいい。

ところで、鯨にギザギザの背びれがあったっけ?そして、後ろの崖から象のところにのびている牡丹の花がアンマッチに大きいのがおもしろい。

この絵が描かれたのは若冲80歳のとき、亡くなる5年前である。これより前に描かれたもうひとつの象と鯨の絵(所在不明、あるのは図版の写真のみ)と比べてみると、目の前にあるほうが象、鯨ともにひとまわり大きく描かれている。

とくに鯨は最初のヴァージョンが波間のなかを悠々と進んでいる感じなのに対し、こちらの鯨は画面の手前に大きく描かれ、まわりの波しぶきも荒々しいから、動きが2倍の迫力。本当にいい絵と出会った。一生の思い出になる!

6点ある‘花鳥版画’は下の‘鸚鵡図’と‘櫟(くぬぎ)に鸚哥(いんこ)図’がでていた。最も見たかった‘雪竹に錦鶏図’は最初に展示され、今はこの2点になったのかもしれない。もう一度見る機会があるが、果たして対面できるか?このシリーズは拓版画みたいな木版画。黒の背景に頭を下にむけた白い鸚鵡が鮮やかに浮かび上がっている。念願がかなって大満足。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

« 2009年9月 | トップページ | 2009年11月 »