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2009.09.05

感激二段重ねの冨田渓仙展(後期)!

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冨田渓仙展の後期(9/1~9/23)に展示される作品を見るため、また茨城県近美までクルマを走らせた。常磐道で友部JCTまで行き、そこから北関東自動車道に入り茨城東ICで降りると2時間くらいで到着する。

腹の底から感激する絵が沢山あった前期(拙ブログ8/24)同様、後期にでている25点のなかにもググッとくるものがある。

上の絵は図録をみて、なんとしても見なくてはと思った‘雲上鶴図’。飛翔する鶴の絵でお気に入りは宗達の‘鶴下絵三十六歌仙和歌巻’と加山又造の‘千羽鶴’だが、渓仙のこの絵も心に響く。左隻(上)でも右隻でも真ん中に横方向へ動く大きな鶴4羽描き、その周辺を飛ぶ鶴は見る者に空間の広がりをイメージさせるようにだんだん小さく描いている。

左の鶴をみると、右下を飛ぶ少し小さい鶴は上から降りてきて左に旋回し、松の木の上にいるもうひとつのグループの鶴はこれよりさらに小さくなり垂直に上昇しており、かなり遠くまで飛んでいる先頭の鶴の姿ははっきり見えない。鶴の群れが華麗に円運動をしているように描き、空間を重層的に見せる構成は本当にすばらしい。

真ん中の‘雪中鹿’も是非見たかった絵。対象を静と動で対比させた描写に思わず足がとまる。前期に展示された‘雲ヶ畑の鹿’では陸上の三段跳びのようにジャンプをする数頭の鹿が横からストップモーション的に描かれているのに対し、この雪の中を走る鹿は斜めの構図になっているから、よりダイナミックに跳んでいるようにみえる。

雪の景色を表現するのだから、中央でかたまっている鹿とそのうしろの雪の積る木々に囲まれたお寺を描くだけで雪の日の情趣を充分に伝えられると思うのだが、渓仙は走る鹿を一緒に描き、あたり一面に広がる静寂さに小さな生気を吹き込んでいる。いつまでも見ていたくなる絵である。

最後のコーナーにある絵はどれも魅せられるが、とりわけ屏風に描かれた花鳥画2点‘御室の桜’(下)と‘万葉春秋’の前では心が洗われる。‘御室の桜’は所蔵している福岡市美で7年前対面した。南画風の対象の輪郭がぼやけた絵に比べると、この絵は別人が描いたのではないかと思っても不思議ではない完成度の高い花鳥画。

御室は京都の仁和寺のこと。八重桜の樹皮の描き方は菱田春草の‘落葉’や下村観山の‘木の間の秋’にみられるたらし込みとよく似ている。その枝ぶりもワンパターンではない。右では下から斜めに長くのび、真ん中の木は扇子のような形をしている。そして、そこに咲き誇る白やピンクやうす青の花びらがえもいわれず美しい。この絵と再会できるなんてこれほど嬉しいことはない。

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コメント

「感激二段重ね」って、いづつや様のタイトルは
毎回お上手ですね。
二段重ねなどと言われたら、もう行くしかないです。
カレンダーとにらめっこしています。

投稿: meme | 2009.09.09 21:13

to memeさん
9/5(土)にまた行ってきました。初見の2点
が期待通りのいい絵でした。

‘御室の桜’は美術史家や文化人が行った‘昭和
の日本画100選’(89年)にも選ばれた渓仙
の代表作です。福岡に行かずこの名画がみれた
ことをとても喜んでます。渓仙が後年に描いた絵
はどれも本当にすばらしいですね。

投稿: いづつや | 2009.09.10 10:50

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