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2009.09.25

お知らせ

拙ブログはしばらくお休みします。

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2009.09.23

日本民藝館の柳宗悦の世界展

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定期的に足を運んでいる日本民藝館では、現在‘柳宗悦の世界展’(9/8~11/19)が行われている。今年は柳宗悦の生誕120年にあたる。これを記念した特別展だから、日用品の美を生涯追い求めた柳が朝鮮や日本各地で集めた絵画や民藝(民衆的工芸)が目いっぱい展示されている。

のびやかで素朴な味が存分にでた陶磁器やなにげない形や意匠が心に響く木工、色の鮮やかな沖縄の着物、ユーモアたっぷりの大津絵や朝鮮の民画などを心ゆくまで楽しんだ。そのなかから過去に取り上げてないものをいくつか紹介したい。

★李朝民画 蓮華図(上の画像)
★大津絵 鬼の行水(真ん中)
★棟方志功の観音経曼茶羅・夜叉の柵(下)

朝鮮時代(18~19世紀)の民画がここには沢山ある。今回は中国の瀟湘八景図にならった‘洞庭秋月’と‘平沙落雁’の山水図2幅と‘蓮華図’、‘蓮池飛鶴図’がでている。‘蓮華図’は緑の葉の上に見事に咲いたうすピンクの花弁が目に心地いい。

ゆるキャラの元祖といってもいい大津絵も人気の絵が登場している。‘鬼の行水’は体の赤い鬼が湯桶に入ろうとしているのは見ればわかる。じゃあー、上にあるのは何?これがわかりにくい。黄色のは鬼が脱いだ虎皮の褌。これが雲にまきついているのである。

はじめてこれを見たとき、オタマジャクシのお化けかフクロウが空を飛んでいるのかと思った。どうでもいいことだが、湯からあがったとき、また雲が虎の褌をひゅーっともってきてくれるのだろうか?

柳宗悦を人生の師として尊敬していた棟方志功が描いた‘観音経曼茶羅’は3点飾ってある。お気に入りは動感描写がすばらしい‘夜叉’。カーラチャクラよりは少ないが、顔が3つ、手が5本ある。また、代表作‘華狩頌’も楽しんだ。

柳宗悦との出会いについてすこしばかり。20数年前、宗悦のつくった心偈(こころうた)を知った。これは31文字の短歌や17文字の俳句より短くして、6、7字から多くても10字くらいの句に折々の心境を託したもの。そのなかに美術鑑賞に役立つものを見つけた。‘見テ 知リソ 知リテ ナ見ソ’ (先ず見よ、かくて知れ、知ってから見るな)。

ここで‘見’は直観の意味で、‘知’は概念のこと。柳は‘まず直観を働かせて得たものを、後から概念で整理せよ。これを逆にして概念から直観を得ようとしても無駄。知ってから見ると、見方は知に邪魔されて、純に見れなくなる’と言っている。

以来、美術品を鑑賞するときはこの心偈を言い聞かせている。余分な情報や美術史家の解説文は頭のなかに入れないで、いつも白紙の状態で作品と接する。画家のモノグラフは本物を7割みるまでは読まない。これから先もこの精神で展覧会へでかけたい。

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2009.09.22

聖地チベット展に驚愕の仏像があった!

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トリノエジプト展、古代ローマの遺産展でファラオや女神のすばらしい彫刻に出会ったが、上野の森美で開催中の‘聖地チベット展’(9/19~1/11)にも驚愕の仏像があった。

チベットの密教美術というとエロチックで恐ろしい図像や仏像をすぐイメージする。97年、山口県美でエルミタージュ美やサンフランシスコ美などから名品が沢山集結した‘チベット密教美術展’を体験した。ここにあった多面多臂の仏像に大変魅了されたが、今回のチベット展はそのとき以上にテンションがあがった。

一生の思い出となるのが2つあった。‘十一面千手観音菩薩立像’(上の画像)と‘カーラチャクラ父母仏立像’(真ん中)。国内で仏像は数多くみてきたが、これは感激度からいうとトップグループにはいる傑作!言葉を失い、しばらく興奮状態で見続けた。

観音菩薩(チベット・17~18世紀)の手は一体何本ある?宝珠や弓矢を持っているのが8本、これにはそう驚かないが、体の両側から扇型になってでている小さな手、手、手、、にはびっくり仰天。992本あるそうだ。とげとげした手の塊をみたとき、すぐ生け花の剣山が頭をよぎった。こんな千手観音ははじめてお目にかかった。未だに興奮がおさまらない。

カーラチャクラのすばらしい造形性に200%KOされた。これがつくられたのは14世紀前半。チベット密教彫刻の最高傑作と解説されているが、即納得!チベットを旅行する計画は無いので日本でこれが見れたのは本当に有難い。‘カーラ’はサンスクリットで‘時間’を、‘チャクラ’は‘輪’を意味し、カーラチャクラは時間のサイクルを象徴する仏。視線が集まるのが真ん中の顔。8つあるがどうなっているの?

4面のカーラチャクラは明妃ヴィシュヴァマーター(こちらも4面)を抱いているからややこしい。忿怒相の顔もあり、穏やかで美しい顔もある。手もいっぱい。カーラチャクラの24本の手は金剛杵、鈴、斧などをもっている。まったくいつまで見ていても見飽きない父母仏立像である。

下は清時代(17~18世紀)につくられた‘カーラチャクラマンダラ・タンカ’。タンカは軸装仏画のこと。日本ではあまり見ない文様がびっちり描かれているので単眼鏡を使い夢中になってみた。これは綿布に着彩したものだが、もう一点絹の布面に刺繍した‘グヒヤサマージュ座像タンカ’(明時代・永楽)も見ごたえがある。

仏像や仏画のほかにも、仏具、陶磁器、玉、楽器などがあり、奥深いチベット文化を幅広く感じられるようになっている。大満足!

上野のあと、二つの博物館を巡回する。
・大阪歴史博:10/1/23~3/31
・仙台市博:4/20~5/30

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2009.09.21

トリノエジプト展の次は古代ローマ帝国の遺産展が見逃せない!

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西洋美で開幕した‘古代ローマ帝国の遺産展’(9/19~12/13)は3年前、
Bunkamuraで行われたポンヘイ展(拙ブログ06/5/30)のパートⅡとみているので、見逃すわけにはいかない。

お目当てはチラシに載っているポンペイの邸宅から見つかった壁画、モザイクとかブロンズ像や皇帝の彫刻。蛇を形どった黄金の指輪などの宝飾品は前回沢山みたから、軽い気持でみられる。最も見たかったのは上のブロンズ像‘アレッツオのミネルヴァ’(フィレンツェ国立考古学博)。

これはイタリアのナポリターノ大統領の特別なはからいにより出品が決まったらしい。オリジナルは前4世紀に制作されたアテナ(ミネルヴァ)像で、このレプリカは前3世紀頃、イタリアの彫刻家の手になるもの。修復(00年~08年)が終わったばかりのものが日本で公開されるのだから貴重な体験である!

小さな顔とは対照的に腰回りがどっしりしたアテナのこの立ち姿は堂々としている。体全体の深い緑が印象深く、胸当にはトレードマークのゴルゴンがみえる。05年、東博で‘踊るサテュロス’(05/2/22)を見たときのように大変感動した。

7月まで西洋美の館長をしていた青柳氏が率いる東大の調査団が02年から発掘しているソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡(ヴェスヴィオ山北側)から出土した大理石の彫刻がこれまたすばらしい。真ん中の‘豹を抱くディオニュソス’と‘ぺプロスを着た女性’。

酒の神ディオニュソスだからマントの葡萄はすぐ理解できるものの、豹はいつから一緒に描かれるようになったのだろうか?腕の一部が無く、両足の下の部分は補強されているものだが、残っているところの表面は大理石の質感がよくでており、つるつるしている。しまったお尻をみると女性は胸キュン?

また、入ってすぐの部屋に展示してある大きな彫刻‘皇帝座像(アウグストゥス)’にも圧倒される。これははじめてナポリを訪れたとき、考古学博物館でみた覚えがある。25年ぶりの対面。

最後のコーナーにある庭園の風景が描かれたフレスコ壁画(下)とモザイクの噴水が目を楽しませてくれる。壁画には青い空の下に草木が生い茂り、沢山の鳥が飛んでいる。穏やかな空気に包まれた庭園の風景なのにハッとする女性の顔がふたつ。口を大きくあけびっくり眼でこちらをじっと見ている。

古代ローマ人にとっては鳥や花だけではやはりおもしろくないので、意匠化された人間の顔を使ったのだろう。モザイクの噴水は思わず惹きこまれる。これは大収穫。見てのお楽しみ!サプライズに遭遇するのが一番。

なお、この展覧会は次の会場を巡回する。
・愛知県美:10/1/6~3/22
・青森県美:4/10~6/13
・北海道近美:7/3~8/22

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2009.09.20

ウィーン世紀末展のクリムト、シーレにのめりこんだ!

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日本橋高島屋で今開かれている‘クリムト、シーレ ウィーン世紀末展’(9/16~
10/12)を楽しんだ。でも、中にいたのは30分。はじめからこの展覧会はクリムトの追っかけ作品をみるのとシーレのヴァリエーションを増やすの狙いだから、このくらいで十分いい気持になる。

クリムトは8点で、シーレは19点。今回の作品は全部ウィーン・ミュージアム(旧ウィーン市立歴史博物館)が所蔵するもの。チラシをみて嬉しかったのはまだ見てないクリムトの初期の作品が入っていたこと。掛け軸のような画面の上に美しい女性やグロテスクな顔の老婆などが幽霊のように描かれている愛’とイソップ物語の‘ライオンとネズミ’を絵にした‘寓話’。

図版ではよく眺めていたが、実際に絵の前に立って見ると‘寓話’がわりと大きな絵であることがわかった。目が向かうのは左で眠っているライオンではなく、中央の暗い背景に浮かびあがる裸婦の白い肌。同じように真っ白なネズミが枝の上におり、裸婦の隣で鶴がカエルを口ばしに食わえている。そして横の狐が手にしているガラスの瓶にもカエル。クリムトの描写力は抜群だから、古典絵画をみているよう。そして、裸の男の体が彫刻的に描かれている‘牧歌’が展示されていたのは嬉しいオマケ。

上はメインディッシュの‘パラス・アテナ’。これはクリムトの黄金様式の定番。有難いことに何度も長期出張してくれる。たしか今回で3度目の公開。拙ブログ05/7/12でも取り上げた。兜の真ん中と鼻のところに光があたりゴールドが一段と輝いているのが実に印象的!官能的なパラス・アテナは刺激がいっぱい。胸当の舌をぺろっとだしているゴルゴンにはすぐ目がいくが、左腕にとまっているフクロウはバックが暗いのでぼやっとしていると見逃す。

シーレの絵も収獲あり。真ん中の再会した‘自画像’は気どったポーズで明るい雰囲気の‘ほおずきの実のある自画像’(6/9)と較べると自閉的で無感覚な感じが漂っているが、絵にはとても力がある。角ばった直線による筆致、亡くなったマイケル・ジャクソンを連想させる白い顔、2本の指をくっつけて三角の空間をつくる手の表情が目にしっかり焼きつけられる。

初見の‘イーダ・レスター’(下)は小さな絵だが、すごく魅了された。ここでもシーレは自画像と同様に背景を白にし、それと同じ白で顔を描いている。水彩にもいいのがあった。茶色の包装紙に白で輪郭を太く縁どって描かれた‘意地悪女’。その表情には女性の内面が強く現われている。また、エロティシズムの美しさをカリカチュア的に表現した‘裸の少女’にも足がとまった。シーレの絵で惹きつけられるのはこういうストレートな生感覚。

お目当てのクリムトとシーレが期待に応えてくれたので満足度は高い。ウィーンに出かけなくて二人の代表作がみれるのだから、本当に幸せ。ほかの画家では、また登場したココシュカの‘夢見る少年たち’、モーザーのポスターや‘麦わら帽子の娘’、オッペンハイマーの‘エゴン・シーレ’、シェーンベルクの‘自画像’の前に長くいた。

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2009.09.19

高橋誠一郎浮世絵コレクションは噂通りすばらしかった!

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三井記念美で開幕を心待ちにしていた‘高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展’(9/19~11/23)を見てきた。

摺りのコンディションのいい名品300点がスッキリ展示で楽しめる。会期は3つに分けられ、100点くらいの作品は全部入れ替わる。前期:9/19~10/12、中期:10/14~11/1、後期:11/3~11/23。料金は1200円だが、半券を提示すれば200円割引になる。

高橋コレクションは浮世絵本でその存在を知っていたが、すばらしい絵が目の前にぞくぞく現れる。上は追っかけていた菱川師宣の‘衝立のかげ’。これは揃いものの枕絵のひとつ。中期にもうひとつの‘低唱の後’がでてくる。

画面中央に大きく描かれた男女の衣装の文様が目を惹く。瓢箪みたいな‘立湧’、庭のむこうを流れる小川に呼応するかのような‘立波’。入ってすぐにお目当ての絵があったからテンションが一気にあがった。

そのあとにご機嫌な春信がずらずらとある。これはたまらない。会期中に春信は27点でてくる。このうち前期は9点。これほど質の高い春信だったとは!7年前あった回顧展になかったものがいくつもあるので、夢中になってみた。真ん中は名品中の名品‘風流四季哥仙 二月 水辺梅’。これを回顧展でみたときの感激は半端ではなかった。

背景の墨の地潰しが心を揺すぶる。若い女が石灯籠に肘をつき‘白梅が綺麗だこと!’というと、若衆は恋人のために朱の垣根にのぼり、枝を折ろうとする。久し振りに息を呑んでみていた。ほかにも母子絵のいいのがある。‘廊下相撲’、‘宮参り’、‘子供の遊び 影絵’。

重点鑑賞絵師、歌麿も多く、全部で27点ある。前期は下の‘伝兵衛女房おしゅんが相’、‘高島おひさ’、‘当時全盛美人揃 扇屋内花’など9点。手元にある歌麿本に載ってないものでとくに惹かれたのが‘おしゅんが相’。この女の目は歌麿が描くいつもの女に較べ明らかにちょっと大きいので、親近感がわく。

ビッグネーム絵師はまだいる。写楽の摺りのいい大首絵、国芳の雪景色にとても魅了される‘高祖御一代略図 佐州塚原雪中’、初見で大満足の清長の大きな絵‘雪のあした’、そして浮世絵展の定番、北斎の‘冨嶽三十六景’や広重の‘東海道五十三次’、‘名所江戸百景’。

楽しみの尽きないコレクションに興奮しっぱなしだった。もう2回楽しめると思うと嬉しくてたまらない。

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2009.09.18

東博浮世絵エンターテイメント! 北斎・広重・英泉

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現在、東博に浮世絵コーナーに展示してある作品は33点。数はいつもこのくらい。今回の展示期間は9/8~10/4。3週間ちょっとで入れ替わるから、年間にすると350点近くでてくる。ここへはもう5年通っているのでトータルすると1500点を超える数を見たことになる。

沢山の浮世絵をみていても、まだ来るたびに初見のサプライズがある。ここのコレクションは本当に底なし沼。美術鑑賞で大切にしているのがこのサプライズ。作品が変わるといってもチラシがあるわけではなく、HPにあるリストをコピーしてもっていくだけだから、部屋に入るまでは作品に対してはまったく白紙の状態。これがいいのである。

事前の情報が無い分、いい絵に出くわすと天にも昇るような気持ちになる。企画展では関心のある作品や追っかけ作品を見るのが大きな喜びだが、こういう気軽に出かけて思わぬサプライズを経験するのもとても楽しい。今回の展示にも新鮮な絵があった。それを含めてとくに心に響いたものを。

★北斎の‘冨嶽三十六景・本所立川’(上の画像)
★広重の‘東海道五十三次・土山’(真ん中)
★渓斎英泉の‘日光山名所・三滝’(下)

お馴染みの‘本所立川’は左の二人の職人の動作に視線が集中する。それにしても材木を高く積み上げたものである。下から木を投げている男はそろそろ‘まだ積める?もうやめとこうか’と思うころ。上にいる男はどうやって降りるのだろう?エイッと跳び下りる?

土山宿は東海道西の難所として知られる鈴鹿峠を越えたところにある。ここは雨の多いところ。川は水かさを増しているから、長いこと降っているのだろう。幾本も引かれた春雨の描線と雨合羽を着た行列が橋を渡っていく様子を全部描かず画面の下にはみ出さす構成に惹きつけられる。

英泉の‘裏見ケ滝’(下の右)は一度見たことがあるが、北斎の‘諸国滝廻り・下野黒髪山きりふりの滝’を連想させる‘霧降の滝’(左)と‘華厳の滝’は初対面。北斎の‘きりふりの滝’が巨大なタコの足のイメージなのに対し、英泉の‘霧降の滝’は鯉の滝のぼりを思わせる。大きなサプライズだった。

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2009.09.17

地獄絵はお好き?

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日本画の楽しみのひとつに地獄絵がある。大きな絵巻展では源氏物語絵巻などと一緒に地獄絵も展示されるから、有名なものはほぼ目のなかにおさめた。つい最近も三井記念美の‘道教の美術展’で同系の‘辟邪絵’2点(国宝)と再会した。

地獄絵には腹の膨れた死人が転がっていたり、鬼の獄卒から責苦1ダースを食らいフニャフニャなっている罪人など、目をそむけたくなる場面や怖い場面がこれでもかというくらいでてくる。また、細部もよく描かれているので、洛中洛外図を見るときと同じように単眼鏡は必須アイテム。

現在、東博の国宝室に展示されている‘地獄草紙’(10/4まで)とは3年ぶりの対面。三井の辟邪絵に続き地獄絵を見たから、以前ネーミングした地獄劇場(拙ブログ06/3/17)をまた開演してみた。

★地獄草紙・雲火霧地獄:東博(上の画像)
★六道絵・阿鼻地獄図:滋賀、聖衆来迎寺(真ん中)
★河鍋暁斎の地獄極楽図:東博(下)

数ある地獄の炎のなかで目に強く焼き付いているのが‘地獄草紙’のこの場面。炎で罪人が焼けれているのだろうが、燃え上がる炎の勢いが彼らの悲痛な叫びをかき消し、その流線形の重なる力強いフォルムは地獄パワーがまさに全開している感じ。

‘六道絵’(国宝、13世紀)は地獄草紙(12世紀後半)より後に描かれており、全部で15幅ある。そのうち地獄が4幅。‘阿鼻地獄図’(部分)は八大地獄中、もっとも悲惨なところ。火焰のかたまりにつつまれるこの最悪の大集熱地獄に落ちてくるのは父母を殺したり、仏を冒瀆した者。二人の鬼が男の口を大きく開け、そこへ火で焼いた鉄の玉を突っ込もうとしている。

下は9/6まで近代日本画のコーナーに出ていた暁斎の見事な地獄絵(部分)。脚立に登った獄卒は棒の先から男を炎のなかに投げいれようとしている。なんとも残酷な場面である。

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2009.09.16

国宝 扇面法華経冊子と久しぶりの対面!

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今日取り上げるのは装飾経の優品3点。いずれも国宝。
★扇面法華経冊子:東博(上の画像)
★平家納経:厳島神社(真ん中)
★法華経(勧発品):大和文華館(下)

現在、東博の平常展にでている‘扇面法華経冊子’(9/8~10/18)をみるのは16年ぶり。ここ5年間、展示を待っていたが、やっと登場した。これは大阪の四天王寺に伝来した十帖のうちの一帖。‘法華経’八巻のうち二から五まで四巻は失われ、四天王寺(五帖)、東博(一帖、巻第八)など7ヶ所に分蔵されている。

大きな仏教美術展に出品されるのはだいたい四天王寺蔵で、2年前に奈良博であった‘院政期の絵画展にも‘平家納経’や‘法華経’と一緒にでていた。東博の図様は表紙に続き1扇から10扇まであり、上は‘紙選びの図’。おもしろいことに絵の内容は書かれている経文とは関係のない貴族や庶民の風俗。

西洋の写本画では文字と絵は独立しているのに対し、この冊子は絵の上に漢字一字々がはっきり書かれている。でも、ビジーな印象はあまりなく、料紙に散らされた金銀の切箔、砂子による装飾性とやまと絵のやわらかい人物描写が華やかな王朝気分に誘ってくれる。

装飾経のなかで最も美しいのが‘平家納経’。幸運なことにこれまで5回見た。いつもおしげもなく使われた金銀の箔や泥を夢中になってみてしまう。真ん中は‘厳王品’で身返の銀地には経文から射してくる光に向かって二人の女房が合掌するところが描かれている。空中には連花が散り、汀には鷺がみえる。

法華経(勧発品)では、一字ごとに紫や緑の蓮華座をつけて円相のなかにおさめられ、経文の字そのものを意匠化しているのが特徴。身返絵には金銀箔と濃密な彩色で法会に参集した貴族たちが描かれている。

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2009.09.15

散歩で街角ウォッチング! すれちがうジョガーが羨ましい

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散歩をしていると、同じようにウォーキングしている人とか走っている人とすれちがう。向うはこちらの顔を覚えていないかもしれないが、こちらは人の顔を見るのが生来好きなので、‘いつもの人が来たな!’と少し意識する。

昨年のリーマンショックで経済状況が厳しくなってから、歩く人も走る人も目に見えて増えてきた。大事な年金でいい加減な仕事をするような国は信用できず、勤めている会社からいつ何時首を斬られるかもわからない状況下で、病気になったりすると大変だし家族を心配させるのもよくない。頼れるのは自分だけだから、健康管理はしっかりやっておこう。よし、ジョギングかウォーキングでもはじめるか!

こんな考えかどうかはわからないが、とにかくすれちがう人が多くなっている。週末は軽快に走る若年層が目立ってきたし、平日はシニアが黙々と歩いている。この現象はおそらくほかのところでも起きているのではなかろうか。

ジョギングは中学生のころから長距離ランニングは得意でないので、はじめから選択肢に入っていない。若い人がカッコよく走るのをみてもそれほど驚かないが、同じ世代か明らかに年が上の人がひょうひょうと走っているのをみるとすごく羨ましくなる。

‘すごいな、この人は’といつも思う人が二人いる。一人は女性。走り方からして若い頃は長距離かマラソンをやっていたにちがいない。ピッチ走法で速い々!もう一人のグイグイ走る男性はかなり汗もかいているから、長い距離を走るのをルーティンにしている様子。

2,3週間前、ランニングを加えてみるかと思い、何年ぶりかに2キロくらい軽く走ってみた。平坦なところはまあいいが、下り坂は結構膝にくる。筋肉痛になるのは目にみえてるから、次の日からウォーキングに戻した。長い距離を走るのはやはりキツイ。

高校生の頃あった校内マラソン(5㎞)は毎年気が重かった。どん尻グループではないが、ゴールするのはいつも真ん中あたりで疲労困憊。上位を占めるのは陸上部員を軸にバスケットとかハンドボールの選手。バスケ、ハンドはスタミナ抜群の選手が多く、陸上部員を抑えて勝つこともよくあった。マラソンはつらい思い出ばかりだから、毎日出会うジョガーが神々しくみえることがある。

上の絵に描かれているのはギリシャ神話に登場するヘルメス。ヘルメスは技術と商業、雄弁と狡猾さをつかさどる神。ゼウスの息子で使者だから、何か事があると天空をものすごいスピードで駆けていく。

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2009.09.14

イチロー 大リーグ新記録9年連続200安打!

909イチローが9年連続200安打の大リーグ新記録を達成した。拍手々!

左ふくらはぎの怪我で8試合休んだあと試合に復帰し、なんなく200安打に到達。

天才イチローだから、この大リーグ記録をやりとげるだろうと思ったが、胃潰瘍のため開幕から8試合休んだので、シーズン中に故障者リストに入るような怪我をするとちょっと難しかったかもしれない。

幸いにも、今年もDL入りは一度も無く、いいバッティング状態が続いた。打率0.355は9シーズンのなかでは04年の0.372に次ぐ高打率。最終的には現在アリーグの首位を走っているマウアー(ツインズ)を抜く可能性は十分ある。

春先から好調な打撃を維持できたのはやはりWBC決勝で韓国の投手から打った歴史的なヒットが大きい。このときイチローの胃はそれまでの打撃不振によるストレスで潰瘍ができ最悪だったが、精神的には‘美味しいところをいただいて、ご馳走さま’だったから、あの日以降は気分が悪かろうはずがない。好成績の一番の理由は決勝戦のセンター前ヒットなのである。これでイチローの調子は一気にプラトー状態になった。

いい体調を長く維持できるのは毎日のルーティントレーニングの賜物。とはいえイチローは今年35歳。そろそろ肉体的な衰えが部分的に現われてもおかしくないが、そういう怪我に見まわれることなくシーズン終盤まできた。レンジャーズの球団社長で往年の大投手、ノーラン・ライアンが‘イチローは打つだけでなく、足が早く、守備も上手い完璧な選手!’と絶賛していた。

これまでは大リーグの価値ある記録というとホームランの数だったが、薬物使用疑惑でマグワイア、ソーサ、ボンズが打ち立てたシーズン記録や通算最多記録、さらに現役のAロッドのホームラン数までも急速に色褪せたものになっている。でも、そうだからといってイチローのプレーがメディアで大きく取り上げられることはない。

アメリカの野球ファンは相変わらずホームランがとびかう試合が好きだし、三遊間にゴロをころがして内野安打にしてもそれは安っぽいヒットとしかみてない。これには日本人選手に対するやっかみもあるだろう。TVの解説者や野球記者の大多数は連続200安打記録をあまり重視してない。彼らやかつての名選手たちはヤンキースのジーターのほうがイチローより上の選手だと思っているし、イチローは西海岸の弱いチームで自分の記録のためにプレーしていると決めつけている。

イチローにはこういうOBやスポーツライターの馬鹿げた評価を気にすることなく、また新たな記録にチャレンジしてもらいたい。あと2年200安打を続け、ピート・ローズの10シーズン200安打記録を破ることを強く願っている。われらがイチローならやってくれるでしょう。

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2009.09.13

蔦の細道図比較! 芦舟 vs 光琳 vs 抱一

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東博本館2階の‘屏風と襖絵’コーナーに今、深江芦舟の‘蔦の細道図屏風’(重文)が展示されている(10/4まで)。で、これと関連する絵も併せて紹介したい。

★芦舟の‘蔦の細道図屏風’:東博(上の画像)
★光琳の‘蔦の細道図団扇’:ワシントン、フリア美(真ん中)
★抱一の‘宇津山図屏風’:米国、ファインバーグ・コレクション(下)
 
芦舟(1699~1757)は‘吉野山図屏風’で有名な渡邊始興(1683~1755)と同時代を生きた琳派の絵師。芦舟が亡くなって4年後の1761年に抱一が生まれている。‘蔦の細道図’は人気の高い絵なので1年半から2年くらいのサイクルで登場する。

岩山の描き方は師匠の光琳(1658~1716)の‘つつじ図’(拙ブログ06/6/15)を彷彿とさせ、その岩や樹皮にみられる巧みなたらしこみ技法や装飾的に表された朱色の蔦に惹きこまれる。場面は‘伊勢物語’(九段)の駿河の国に入った業平が名高い宇津山にさしかかっているところ。

山道は蔦や楓が繁る暗い細道。‘えらい所に来ちゃったな!無事に峠を越せるだろうか?’と不安になってきた業平は落ち込み気味。そんなとき顔見知りの修行僧にばったり出会った。‘いいとこでお会いしました。これでちょっと元気がでます。勝手なお願いで申し訳ないのですが、京へ文を届けていただけませんか。今すぐしたためますから’とのべる。

京にいる思い人への歌は、‘駿河なる宇津の山辺のうつつにも夢にも人にあはぬなりけり’ (駿河にある宇津の山辺で現実にも夢にもあなたには逢わないことですよ)。

画面の中央にいるのが業平。では、修行僧はどこにいるの?ぱっとみると何処にいるかわからない。この絵の物語を知らない人は僧に気づかないまま、次の絵へ向かうのではなかろうか。僧が描かれているのは業平のちょうど左斜め上で、岩と岩がぶつかるところにできた逆三角形の左辺に荷物を背中に担ぐ後姿がみえる。

芦舟の絵に較べると、光琳と抱一の絵はわかりやすい構成。光琳は僧、業平、従者の3人をS字の道にうまく配置している。これに対し、抱一は細くなる道の前で歌を詠む業平と僧を向かい合わせに描いている。この屏風は昨年あった‘大琳派展’に展示されたから、覚えておられる方も多いはず。抱一にはもう一点、掛け軸の宇津山図(山種美)がある。

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2009.09.12

オルセー美展 パリのアール・ヌーヴォーにも見事な螺鈿装飾があった!

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美術品の鑑賞でも読書と同様に、‘螺旋式鑑賞法’を実践している。西洋美術の深堀り分野のひとつにしている‘アール・ヌーヴォー&デコ’で今年出動を決めていた展覧会は3つ。

国立新美の‘ルネ・ラリック展’(拙ブログ6/27)と今日からはじまった世田谷美の‘オルセー美 パリのアール・ヌーヴォー’(9/12~11/29)、そして茨城県陶芸美で今月26日に開幕する‘エミール・ガレ展’(9/26~11/29)。

世田谷美のアール・ヌーヴォー展は会期中、地下鉄半蔵門線の用賀駅から美術館へ直通のバスが運行されているから、いつもと違いアクセスのおっくうさは少ない。

今回公開されているのは金銀細工、装身具、椅子、家具、陶芸、ガラスなど95点。このなかにはオルセーの図録に掲載されているものが3点ある。これで海外美術館展を評価するときのMy基準はOK。立派な展覧会である。数はもっと欲張りたい気持ちもあるが、質的にはかなりいいものが揃っているから、お宝を満喫するにはちょうどいいボリュームかもしれない。

上はチラシではそのすばらしさが伝わってこないバスタールの螺鈿装飾、‘扇子・孔雀’。昨日取り上げた東博の龍に酔いしれていたら、またまた繊細で優美な孔雀の螺鈿に遭遇した。このうすピンクと緑の煌めきは声を失うくらい美しい!龍と孔雀のコラボに心がはずみ、工芸の美に接する喜びを噛みしめている。バスタールはもう一点‘扇子・大麦の穂’があるが、館の図録にはこちらが載っている。

最接近中のラリックは3点。国立新でも展示されていた‘飾りピン・ケシ’(8/12)にまたクラクラし、花を支える金属の部分の巧みな細工が目を惹く‘髪留め・はなうど1対’(真ん中)を夢中になってみた。今年はラリックの当たり年。次の楽しみはパリ装飾美。気持ちだけは美術館の前でスタンバッている。まだ、早いか。

ナンシー派の装飾家、高級家具職人マジョレルとドーム兄弟の合作‘テールランプ・睡蓮’(下)にも魅了される。ランプの明かりは夕焼け空のような感じ。これまで見たドームのガラス作品のなかでは即上位グループに入れたい名品である。

ほかで足がとまったのはカエルやトンボや蝶が意匠に使われているガレの‘婦人用机・オンベリュル’、マジョレルのマホガニー材の‘書斎机・蘭’、ボワンの七宝‘蛇形脚付き小櫃’。

流石、オルセーが所蔵するアール・ヌーヴォー、一点々をじっくり見るとすごいコレクションだなと思う。オルセーを再訪する機会があれば、これまでの倍くらい目に力が入ることだろう。

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2009.09.11

東博平常展の名品! 中国漆工・鈴木長吉

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東博本館の14室(1階)で行われている特集陳列‘中国漆工’(8/25~10/18)を見た。中国の漆器にとくべつ深い関心があるというのではなく、お目当ては上の‘龍濤螺鈿稜花盆’(重文、元時代・14世紀)一点のみ。

昨年、‘東博 東洋美術100選’が出版され、この龍の螺鈿が表紙に使われている。螺鈿はこれまで結構みているが、この龍のうすピンクや緑の煌めきは図版をみているだけでも魅了される。で、鑑賞の機会をじっと待っていたら、割り方早く実現した。

五本の爪をもつ龍は皇帝の象徴。背びれや炎のうすピンクがなんとも美しく、八稜花の器形にあわせてまがりくねった胴体のうろこにはうす緑の螺鈿がキラキラ輝いている。また、下部にみられる細かい貝片を使って表現された渦巻きや波濤の細い線にも釘づけになる。台北の故宮博物院で名品をみている気分。日本にもこんなすばらしい中国の螺鈿装飾があるのだから嬉しくなる。

1階19室の‘帝室技芸員’(9/8~12/6)にも名品が展示してある。真ん中は鈴木長吉作、‘鷲置物’(重文)。この見事な鋳金の置物をはじめて見たのは6年前、東芸大美であった‘工芸の世紀展’。そして、1年後だったか?東近美工芸館で‘十二の鷹’を見た。

こういう鷲や鷹の置物は木彫りにしろ鋳造にしろ、旅行先のお土産屋とか博物館でみかけるから、目が慣れ‘ああー、鷲の置物がある’といった感じでさらっと見ることが多い。でも、長吉の鷲や鷹はそんじょそこらの置物とは作品の出来が違う。この鷲は目が鋭く羽根一枚々が精緻に表現されているので、本物かと見紛うほどである。

シカゴ万博(明治26年、1893)でこれを見た外国人は日本人の高い鋳造技術と豊かな表現力にびっくりしたことだろう。東近美の‘十二の鷹’がまた見たくなった。

同じく長吉の‘岩上ノ虎置物’(下)は1ヶ月前、近代日本画の部屋に飾ってあった。これは‘鷲’から6年後の作品。岩の上と穴のなかに虎を2頭配するのは置物としては凝りすぎており、完璧に芸術作品の領域。

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2009.09.10

染野夫妻のすばらしい陶芸コレクションに大感激!

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2日前、東近美工芸館で見た‘染野夫妻陶芸コレクション展’(9/4~11/3)の興奮がまだおさまらない。

‘道教の美術展’を開催した三井記念美で偶然見つけたチラシでこのやきもの展のことを知った。サブタイトルに‘リーチ・濱田・豊蔵・壽雪’とあるから‘これは絶対見逃せない!’と直感的に思った。果たして、まったくすごいコレクションだった。作品数は約200点。これがたったの200円で見れる!そして図録がちゃんと作られているから、名品の数々を長く体の中にとどめていられる。

大コレクター、染野義信(1918~2007)・啓子(1932~2007)夫妻は2年前亡くなられたが、ご遺族から284点が東近美と山口県立萩美・浦上記念館に寄贈された。それが今回公開されたのである。やきものの専門家の間では誰もが知っている有名なコレクターであることは、目の前にある作品の質の高さをみればすぐわかる。

数が多いのが三輪壽雪(十一代休雪、44点)、荒川豊蔵(41点)、濱田庄司(24点)、藤本能道(14点)、バーナード・リーチ(8点)。ほかにも、六代清水六兵衛、加藤土師萌、十二代休雪など錚々たる作家の作品がずらっとある。

名品揃いのなかから3点を絞り込むのは骨が折れるが、とくに心を揺すぶったものを選んでみた。
★バーナード・リーチの‘鉄釉抜絵巡礼図皿’(上の画像)
★濱田庄司の‘柿釉赤絵角皿’(真ん中)
★三輪壽雪の‘鬼萩花冠高台茶碗 銘命の開花’

チラシでリーチのこの皿を見たときの率直な感想は‘こんないい作品がまだあったのか!’だった。巡礼者をモティーフにした皿は一度みたことがあるが、インパクト度はこの作品の半分くらい。黒いシルエットの巡礼者と上が山の形をした茶色の地の強い対比がとても印象深い。

濱田庄司の赤絵には目がないので、この角皿ともうひとつの絵柄が違うものを夢中になってみた。義信氏は冗談混じりで‘濱田の追っかけ’を自称していたそうだ。リーチと濱田はあるが同じ民藝派の河井寛次郎は一点もなかった。そのかわり、沖縄の金城次郎の魚文が描かれた鉢と瓶があった。

06年の壽雪展(拙ブログ06/7/18)に‘銘命の開花’が展示してあったことはよく覚えているが、これが染野コレクションだったことは知る由もない。この鬼萩を含めて壽雪の作品は37点が萩の浦上記念館に入った。また、十二代(8/25)の茶陶は比較的おとなしいのが3点とアート感覚のが2点でている。

荒川豊蔵の茶碗をこれほど沢山染野夫妻が集めていたとは知らなかった。絶品の志野茶碗に華やかな色絵雲錦鉢。すごいコレクションである。昨年、茨城県陶芸美であった回顧展(08/5/31)の感動が蘇ってきた。

200円しか払ってないのに一級のやきもの展を体験することができた。こんなことは滅多にない。やきもの好きの方は是非お出かけ下さい。

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2009.09.09

期待を裏切らない板橋区美の英一蝶展!

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板橋区美で開催中の‘英一蝶展’(9/5~10/12)を楽しんだ。ここ数年、英一蝶と池大雅の回顧展を待っていたが、そのひとつが実現した。

この美術館は25年前にも一蝶展を行っている。今回の出品数は50点。手元にある美術本に載っているもので対面できるかなと期待していた‘松風村雨図’とか‘僧正遍昭落馬図’(大和文華館)は残念ながら展示されてなかった。おそらく前回出品されたので今回はほかの作品を選択したのだろう。

前期(9/5~9/23)と会期中でているものに拙ブログで取り上げたのがある。
★大井川渡口図 (通期、07/7/19
★朝暾曳馬図 (前期、静嘉堂文庫、09/4/25
★布晒舞図 (前期、遠山記念館、06/12/1
★田園風俗図屏風 (前期、サントリー美、07/8/4
また、後期(9/25~10/12)に登場するものでは
★雨宿り図屏風 (東博、05/7/15

英一蝶(1652~1724)の絵が楽しいのは人物の動感描写が上手で、場面設定がとてもユーモラスだから。思わず笑ってしまうのは‘大井川渡口図’、‘茶挽坊主悪戯図’、‘徒然草 御室法師図’、‘鐘馗図’。見てのお楽しみ!

日常の仕事風景や遊びをリズミカルにスピード感のある筆さばきで描いたのが上の‘麦搗図’や‘投扇図’。‘麦搗図’では、お母さんにかまってもらおうとぐずぐず言っている幼子と木の後ろに隠れて作業をみているお兄ちゃんも一緒に描いているところが実にいい。‘投扇図’のぴゅーと跳んだ扇子の行き先を見逃さないように!

サントリー美蔵の‘吉原風俗図巻’(真ん中)は一蝶が三宅島配流中の作品。江戸にいる頃吉原はよく通ったところだから、格子先の遊女と交渉する武士の気持は手にとるようにわかるだろう。後期に展示される‘四季日待図巻’(重文、出光美)も座敷でおこなわれる華やかで楽しい宴会が生き生きと描かれているので、こちらまでついつい浮かれてしまう。

風景画のいいのがあった。下の大きな‘富士山図’(山梨県博)。雄大にそびえる富士山を背景に渡し場の光景が描かれている。人物は随分小さいので相当高いところから人々をとらえているイメージ。一蝶の空間に対する想像力はやはり並のものではない。

有名な新体操リボンを連想させる‘布晒舞図’(重文)はあるし、‘吉原風俗’も‘四季日待’もある。申し分のない回顧展といっていい。流石、板橋区美である。拍手々!後期にも8点でるので、また出かけるつもり。

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2009.09.08

美術に魅せられて! 西洋絵画のABC理論 C(チャイルド)

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聖母子やキューピッド(拙ブログ2/10)は宗教画の定番だから、かわいい子供の絵は数かぎりなくある。バロック以降でみると、ルーベンスは妻や子供をよく描いているし、ヴァン・ダイクにも少年貴族を描いたいい肖像画がある。

そして、何といっても子供の絵の真打はベラスケス。小さい頃の王女マルガリータの肖像(08/8/5)は‘THE 子供画’の傑作中の傑作。近代になってからは人物画の名手ルノワールが女性だけでなく愛らしい女の子や男の子(女の格好をさせて)沢山描いた。

今日はMy好きな子供画ファイルのうちまだ紹介していないものを。
★ムリーリョの‘善き羊飼いキリスト’:プラド美(上の画像)
★ミレイの‘はじめての説教’:ギルドホール・アート・ギャラリー(真ん中)
★ピカソの‘アルルカン姿のポール’:ピカソ美(下)

ムリーリョ(1618~1682)の描く子供はラファエロ同様、とても心を揺すぶる。この絵のキリストも本当に可愛い。何年か前、西洋美であったプラド美展でも展示されたから、多くの美術ファンの心を和ましたにちがいない。幼児天使でお気に入りはラファエロ、ティツィアーノ、ムリーリョ。この3人に加え‘ガニュメデスの誘拐’(05/7/18)を描いたレンブラントとちょっと意味ありげな顔をした天使が特徴のパルミジャニーノも頭のなかにある。

ミレイ(1829~1896)が愛らしい子供の絵を描くことを知ったのは4年前、Bunkamuraで行われたスコットランド国立美展。ここに‘優しき目は常に変わらず’という題名のついたすばらしい少女の絵があった。それまでミレイというと代表作‘オフィーリア’のイメージがあったので、面食らった。昨年Bunkamuraの回顧展でも、まだ子供ではあるがMy好きな女性画に即登録したい絵があった。‘はじめての説教’に描かれた緊張気味の幼子のパッチリまなこが忘れられない。

男の子の絵ですぐ思いつくのがピカソ(1881~1973)の絵。ポール(3歳)は最初の妻、オルガとのあいだにできた子供。ピカソは1914年から1925年までキュビスムから離れ古典に回帰する。いわゆる‘ピカソクラシック’である。1920年には肘掛椅子に座るオルガを、その4年後に黄と青の菱形模様の衣装を着て闘牛士の帽子を被ったポールを写実的に描いた。このポールの絵がとても気に入っている。

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2009.09.07

美術に魅せられて! 西洋絵画のABC理論 B(ビューティ)

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これまで女性を描いた西洋絵画は数多くとりあげてきた。ラファエロの聖母子やボッティチェリの‘ヴィーナスの誕生’(拙ブログ06/5/7)を見るのは生涯の楽しみであり、フェルメールの‘青いターバンの少女’やルノワールやマネが描いた女性の絵をいつもうっとり眺めている。

My好きな女性画のうち出番を待っているのがまだまだ残っているので、今回CM出演を特別に依頼してみた。
★フォルリの‘リュートを弾く天使’:ヴァティカン美(上の画像)
★ギルランダイオの‘若い婦人の肖像’:カルースト・グルベンキアン美(真ん中)
★ロムニーの‘キルケーに扮したハミルトン夫人’:テート・ブリテン(下)

ルネサンス期に描かれた聖母子や天使や女性の絵には、われわれと同じ時代に生きている女性がタイムスリップしてモデルをつとめたのではないかと思わせるものがある。その最たる絵がボッティチェリのヴィーナスであるが、フォルリとギルランダイオが描く女性も素直にあこがれ、親しみを覚える。

10年前見た‘リュートを惹く天使’(1481)はその清々しい横顔に200%KOされた。まるでトップモデルが翼をつけてリュートを優雅に弾いているよう。このフレスコ画を描いたメロッツォ・ダ・フォルリ(1438~1494)という画家をいっぺんに覚えた。

ギルランダイオ(1449~1494)が1485年に描いた若い婦人もじっとみてしまう。こんなきれいでやさしそうな女性が宣伝する商品なら黙って購入したくなる。リスボンにあるグルベンキアン美には有名なラリックの宝飾品のほか、この絵とルノワールの‘ソファに横たわるモネ婦人’がある。

自慢の絵画をいつか日本で公開してくれると嬉しいのだが。海外美術館名画展で期待したくなるのはやはりBunkamuraと東京都美。帆を上げていると、いい風が吹いて実現するかもしれない。勝手な妄想をしすぎ?

とても気になるのが下のイギリス人画家、ロムニー(1734~1802)の絵。この大きな目をした美しい女性にはじめて会ったのは98年、東京都美で開催された‘テート・ギャラリー展’。昨年行ったテート・ブリテンでもまた見た。このハミルトン夫人はその美貌で何人ものエライ人から愛された。後年にはネルソン提督の愛人になっている。

こういう天真爛漫でキュートな感じの女性はCMでは受けがいい。今人気のベッキーは30代になるとこんな感じの女性に変身する?!

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2009.09.06

美術に魅せられて! 西洋絵画のABC理論 A(アニマル)

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日本や中国では昔から鳥や花、龍、虎、馬、犬、猿などが描かれてきたのに対し、西洋においては絵画というと長いこと宗教画や歴史画のことだった。動物や鳥がモティーフとして描かれるようになるのは17世紀のオランダ絵画あたりから。

馬の絵で有名なのはイギリスのスタッブズ(1724~1806)とジェリコー(1791~
1824)。ジェリコーの躍動感あふれる馬から強い影響を受けたドラクロア(1798~
1863)もトラを単独で描いたり、歴史風俗画のなかに見る者の視線をあつめる獰猛なライオンや荒々しい馬を登場させている。

お気に入りの動物画をピックアップしてみた。
★デューラーの‘野うさぎ’:ウィーン・アルベルティーナ美(上の画像)
★クールベの‘フランシュ=コンテでの狩’:デンマークオードロップゴー美(真ん中)
★アンリ・ルソーの‘眠れるジプシー女’:NY・MoMA(下)

細密描写の達人、デューラー(1471~1528)が1502年に描いた野うさぎの絵はまだお目にかかってない。この絵や自画像の髪の写実的な描写をみると、この画家がとびぬけた職人技をもっていたことがわかる。次回、ウィーンを旅行するときはアルベルティーナ美を是非訪問しようと思う。

クールベ(1819~1877)が描いた狩猟の絵に動物が沢山でてくる。昨年、パリとNYであった大回顧展で見た牡鹿、雌鹿、馬、犬、狐がまだ目に焼き付いている。馬や犬をのぞいて狩猟の対象である鹿やキツネは死んでいるか殺されかかっているものが多い。

そのなかで真ん中の絵は空中を飛ぶ雌鹿を見事にとらえたとてもいい絵。そのスピード感は昨日とりあげた冨田渓仙の絵と甲乙つけがたい。この絵は20年前日本橋高島屋で展示されたが、回顧展で再会した。

ニューヨーク近代美術館(MoMA)にあるルソー(1844~1910)の絵は不思議な絵。緑で埋め尽くされた熱帯の森の絵ではトラが鋭い牙をむいていたり、黒人を襲うタイガーがいるのに、砂漠の真ん中に眠るジプシー女の隣にいるライオンはえらく大人しく、女に食いつくそぶりもみせない。女の人形とライオンの置き物を描いたみたいな感じがする。

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2009.09.05

感激二段重ねの冨田渓仙展(後期)!

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冨田渓仙展の後期(9/1~9/23)に展示される作品を見るため、また茨城県近美までクルマを走らせた。常磐道で友部JCTまで行き、そこから北関東自動車道に入り茨城東ICで降りると2時間くらいで到着する。

腹の底から感激する絵が沢山あった前期(拙ブログ8/24)同様、後期にでている25点のなかにもググッとくるものがある。

上の絵は図録をみて、なんとしても見なくてはと思った‘雲上鶴図’。飛翔する鶴の絵でお気に入りは宗達の‘鶴下絵三十六歌仙和歌巻’と加山又造の‘千羽鶴’だが、渓仙のこの絵も心に響く。左隻(上)でも右隻でも真ん中に横方向へ動く大きな鶴4羽描き、その周辺を飛ぶ鶴は見る者に空間の広がりをイメージさせるようにだんだん小さく描いている。

左の鶴をみると、右下を飛ぶ少し小さい鶴は上から降りてきて左に旋回し、松の木の上にいるもうひとつのグループの鶴はこれよりさらに小さくなり垂直に上昇しており、かなり遠くまで飛んでいる先頭の鶴の姿ははっきり見えない。鶴の群れが華麗に円運動をしているように描き、空間を重層的に見せる構成は本当にすばらしい。

真ん中の‘雪中鹿’も是非見たかった絵。対象を静と動で対比させた描写に思わず足がとまる。前期に展示された‘雲ヶ畑の鹿’では陸上の三段跳びのようにジャンプをする数頭の鹿が横からストップモーション的に描かれているのに対し、この雪の中を走る鹿は斜めの構図になっているから、よりダイナミックに跳んでいるようにみえる。

雪の景色を表現するのだから、中央でかたまっている鹿とそのうしろの雪の積る木々に囲まれたお寺を描くだけで雪の日の情趣を充分に伝えられると思うのだが、渓仙は走る鹿を一緒に描き、あたり一面に広がる静寂さに小さな生気を吹き込んでいる。いつまでも見ていたくなる絵である。

最後のコーナーにある絵はどれも魅せられるが、とりわけ屏風に描かれた花鳥画2点‘御室の桜’(下)と‘万葉春秋’の前では心が洗われる。‘御室の桜’は所蔵している福岡市美で7年前対面した。南画風の対象の輪郭がぼやけた絵に比べると、この絵は別人が描いたのではないかと思っても不思議ではない完成度の高い花鳥画。

御室は京都の仁和寺のこと。八重桜の樹皮の描き方は菱田春草の‘落葉’や下村観山の‘木の間の秋’にみられるたらし込みとよく似ている。その枝ぶりもワンパターンではない。右では下から斜めに長くのび、真ん中の木は扇子のような形をしている。そして、そこに咲き誇る白やピンクやうす青の花びらがえもいわれず美しい。この絵と再会できるなんてこれほど嬉しいことはない。

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2009.09.04

美術に魅せられて! 日本画のABC理論 C(チャイルド)

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日本は‘子ども天国’の国という思いが世間にはまだつよく残っているから、CMにも子供は頻繁に登場し、商品の認知度向上や好感度アップに一役買っている。

子供のキャラもいろいろ。可愛い赤ちゃんはいじりようがないが、小学生くらいになると大人のようなしぐさやしゃべり方で、ときには大人の心臓をグサリと刺すようなセリフをはく。

1年前頃?流れていたガス会社のCMにでてくる女の子の‘ついでにとおちゃんのオヤジギャグをとめてくれ!’をいつも笑ってみていた。そんな子供の遠慮のない物言いに、昔まいたけのCMに出演した郷ひろみは‘うるさいガキにも、、、’なんて切り返していた。また、トヨタのCMには子供店長が登場するのだから恐れ入る。

おもしろいCMの話はこのくらいにして、お気に入りの子供の絵のことを。
★長澤芦雪の‘唐子琴棋書画図’:個人(上の画像)
★歌川国芳の‘坂田怪童丸’:個人(真ん中)
★横山大観の‘無我’:東博(下)

芦雪の癒し系の絵は応挙同様、犬と子供の絵。この絵では文字通り中国の子供が中国の知識人の基本的な教養である四芸(琴、囲碁、書道、絵画)で遊んでいるところが描かれている。

これは右隻で子供は一応絵画と書道をやっている。ゴソゴソする弟をひもでくくりつけ、布袋さんを描いている男の子の姿がなかなかいい。ところが、右の子は筆がちっとも進まず、字を書かないで犬を描いている。肩の力が抜けて心が和む絵である。中国人が描いたものでは以前取り上げた明代の嬰児図(拙ブログ05/8/2)にとりわけ魅了されている。

浮世絵の展覧会ではときどき子供の絵ばかりを集めたものがあり、鳥居清長、喜多川歌麿、歌川国芳、国貞、渓斎英泉らの‘子ども絵’や‘母子絵’が目を楽しませてくれる。国芳の‘坂田怪童丸’はいくつもある金太郎の絵ではとびぬけていい。跳ねまわる鯉をぐっとつかんでいる金太郎の元気いっぱいパワーに目が釘付けになる。

下の‘無我’は大観29歳のときの作品。東博では2年くらいのサイクルで展示される。東京美術学校の卒業制作である‘村童観猿翁’が子供たちの群像画なのに対し、これは童一人。体は小さくとも安定感のある立ち姿には存在感がある。

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2009.09.03

美術に魅せられて! 日本画のABC理論 B(ビューティ)

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ABC理論の‘B’(ビューティ、女性のこと)がCMの華といっていい。美しい女性に心がふわっとしたり、セクシーな女性をみて興奮するのはいつの時代も変わらないだろうが、CMに登場する女性は本人がもっている魅力だけでなく、時代の空気や人々の気分にもおおいに左右される。

石原裕次郎や高倉健らが映画俳優として活躍していた時代なら、誰もが認める美人女優とか色気がありセクシーな女性がCMにひっぱりダコだったろうが、現在は美形とかスタイルがいいだけでCMに起用されるわけではない。個性的で内面的な美しさをもっている人とか清潔感があり明るいキャラクターであるとか、親しみやすイメージとかが重視されることが多い。

今、CMによくでている女優やタレントは誰だろう?ぱっと思いつくのは上戸彩、ベッキー、山田優、仲間由紀恵、藤原紀香。ところで最近は不況の影響でTVでCMの流れる時間がかなり減っている。各社は広告費を削減し、費用対効果をきっちり精査するから、好感度の高いタレントにしかCMの出演依頼がこないだろう。芸能人にとってCM出演で金を稼ぐのはとても厳しい状況である。

女性を描いた絵はこれまで沢山取り上げてきたが、今日はこんな女性が登場するCMなら視聴者の記憶に強く残るのではないかと思われる絵を選んでみた。

★竹久夢二の‘黒船屋’:竹久夢二伊香保記念館(上の画像)
★伊東深水の‘赤と白A’:個人(真ん中)
★小林古径の‘花’:コスモ石油(下)

‘黒船屋’の大きなコピー画を書斎に飾っているので、毎日この女性と会っているようなもの。数多くある女性画のなかで、最も魅せられているのは日本画では‘黒船屋’、西洋画ではフェルメールの‘青いターバンの少女’(拙ブログ07/10/6)。この黒い猫を抱く女性を伊香保にある記念館でみたのは04年の秋。大きな愛らしい目と白い顔や手をもう夢見心地で見ていた。

この絵は毎年1回しか公開されない。しかも事前に予約が必要。展示される期間は
9月16日(夢二の誕生日)をはさんで前後2週間。電話(0279-72-4788)で日と時間を言って申し込むが、2名以上となっている。当日は3階にある畳の部屋でご対面。言葉を失うほど感激した。春に公開される‘五月の朝’(06/6/8)も同じように予約をとりこの特別室でみる。この2点は館の外にでることはまずないから、夢二が好きな方は是非、伊香保までお出かけください。

伊東深水が昭和31年(1956)に同時代風俗の女性を描いた絵の前にいると、こちらまで心が浮き浮きしてくる。これを回顧展でみたときはすぐ女優の熊谷真実をイメージした。こんな明るくてキュートで性格がよさそうな女性と一緒にいたらどんなに楽しいことか。

古径は女性画がとても上手い!なかでもこの絵にぞっこん参っている。上品な絵柄の着物に身をくるみ清楚ですがすがしい雰囲気を漂わせる女性の姿をみていると心がとろけそうになる。

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2009.09.02

美術に魅せられて! 日本画のABC理論 A(アニマル)

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広告の手法のひとつに‘ABC理論’というのがある。営業やマーケティングの仕事をされている方ならよくご存じの手法。別に難しい理屈ではなく、これを知らない人でも毎日TVで流されるCMをみていればすぐ納得できる。

ここでAはanimal(動物)、Bはbeauty(美、女性のこと)、Cはchild(子供)を意味し、ユーザーの関心を惹く広告物はこのどれかが使われているというもの。広告マンは基本的にはこの理論をベースに消費者の購買意欲を掻き立てるCMを制作し、商品の売上増進を図る。

例えば、‘どうするアイフル’シリーズに使われた清水省吾とチワワが登場したCMはこの‘A’のいい事例。このCMはすごくインパクトがあり、チワワ人気に火がつき、家のまわりでもこの犬をよくみかけるようになった。最近のものでは、ソフトバンクモバイルの犬が父親を演じるCMがおもしろい。

さて、今日のタイトルである。CMという映像と絵画では表現メディアとしての違いはあるが、見る者の気を惹く日本画のなかにはCM制作の題材なりアイデアの源として使われたら広く受け入れられ、ABC理論の好例となりそうなものがある。で、そんな絵をピッアップしてみた。まず、A(アニマル)から。

★円山応挙の‘狗子図’:個人(上の画像)
★長澤芦雪の‘群猿図屏風’:和歌山・草堂寺(真ん中)
★曾我蕭白の‘唐獅子図’:三重・朝田寺(下)

応挙は龍や虎や犬や象などいろんな四つ足動物を描いているが、迫力満点の龍とか虎はCMにはちょっと使いにくい。癒し系のCMにもってこいなのが子犬。応挙が描く小さな犬はとにかく可愛い!

芦雪が描いた三角形の岩の頂上にちょこんと座った横向きの猿をみると、ソニーのウォークマンのCMにでてくる猿を思い出す。このCMが登場したとき、直感的に電通or博報堂のクリエーターは芦雪の絵からヒントを得たのでは?と思った。当たってるかも!?

狩野永徳の‘唐獅子図’(拙ブログ07/11/9)がCMに使われたのを見たことないが、蕭白のユーモラスで漫画チックな唐獅子なら広告担当者の仕事はすごく楽。唐獅子をゆるキャラとして使用えるように、蕭白はうまい具合にデフォルメしてくれているのである。

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2009.09.01

もう一度見たい源平合戦の絵!

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昨日に続き、源平合戦に関連した絵を取り上げたい。
★安田靫彦の‘黄瀬川陣’:東近美(上の画像)
★小堀鞆音の‘那須宗隆射扇図’:山種美(真ん中)
★中村正義の‘源平海戦絵巻’:東近美(下)

明治以降に活躍した日本画家で歴史画を多く描いたのは安田靫彦、前田青邨、小林古径。古径は‘竹取物語’や‘清姫’のような女性を中心にした画題が多いのに対し、靫彦と青邨はともに源頼朝や義経を描いている。‘黄瀬川陣’は靫彦の代表作。人気の絵だから、東近美では1年に1回のペースで展示されている。

これは義経が描かれた左隻で右隻が頼朝の坐像。この場面は奥州にいた義経が配下の者を従えて、兄頼朝が陣どっている駿州黄瀬川(沼津市)の宿に馳せ参じ、20年ぶりの再会を果たすところ。時は治承4年(1180年)の10月、2ヶ月前伊豆で挙兵した頼朝に対して平維盛が東進してきたため、頼朝はこれを打つベく黄瀬川に兵を結集しているのである。このとき頼朝34歳、義経22歳。


ここで源氏再興を誓った5年後、義経は讃岐屋島で平家と戦っている。壇ノ浦の戦い
(3月24日)の1ヶ月ちょっと前。小堀鞆音(靫彦の師匠)は弓の名手、那須の与一(宗隆)のとてもカッコいいパフォーマンスを絵にした。合戦の最中、平家の軍勢が小舟の竿に旭日の扇を掲げてこぎ出してきた。で、義経は戯れに与一にこれを射るように命じると、与一は見事にこれを射落として両軍の喝采を浴びたという。‘平家物語’のなかにでてくるとくに名高い故事である。

下の絵は5年前、東近美に展示された。全部で4、5点あり、これは‘海戦’。中村正義の絵は片手くらいしか見てないが、この絵は今でも強烈に目に焼き付いている。画面いっぱいに描かれた合戦の武士たちの顔は漫画的でしかも毒のある表情なので、ついつい絵のなかに吸い込まれてしまう。また、波の荒々しい描写が熾烈な戦いをより際立たせている。中村正義恐るべしという感じ。またみたいと願っているのだが、なかなか登場しない。

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